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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科17巻7号

1962年07月発行

雑誌目次

外科の焦点

臨床家に必要な小児・未熟児外科の新しい問題点

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.617 - P.621

 最近,小児外科の問題が外科学会における一つの焦点をなしていることは否定し得ない事実である.
 そうなつた理由の一つは外科手術の安全性が増して,小児殊に新生児にみられる急を要する疾患が手術的に治しうる自信が持たれてきたことと,もう一つは産児制限が一般に宏まつた結果,少数産んで,立派に育てようという傾向を生じ,出生児の生命を非常に重視するようになつたことにあると考えられる.

綜説

胃ポリープ

著者: 大槻道夫 ,   礒利次 ,   山崎寛一郎 ,   椎名栄一

ページ範囲:P.623 - P.631

 胃ポリープはOttoが1824年に発表して以来,多くの報告があり,本邦でも中野1)の集計によると221例となつている.その発生についても腫瘍説,あるいは炎症説が多いが,最近特に強調されているように,慢性胃炎と密接な関係があると言う者も多い.胃ポリープの発生について,我々が経験した症例を病理組織学的に検索し,この問題を中心として検討した結果,興味ある所見を認めたので報告する.

胃の良性腫瘍—特に組織学的所見よりみた外科手術の適応

著者: 高橋希一 ,   大原到 ,   沼倉元彦

ページ範囲:P.633 - P.640

 レ線による透視術や内視鏡細胞診等の発達および集団検診の普及等で胃の諸病変を初期の時機に検出することも多くなり,いわゆる前癌性の胃疾患も日常診療の対象となる機会が多くなつた.
 殊に胃ポリープに関してはその良性,悪性の点がしばしば問題とされ,これについて最近5〜6年間に数多くの論文が発表されている.一方胃に発生する良性腫瘍がレ線上,肉眼上,ポリープ状を呈することが多く,これらの組織学的検査に基づく諸疾患の症例報告も近年相当数に及んでいる.しかしこれら良性腫瘍は癌腫に比し発生頻度が低いものであるから,臨床医家が同一人で多種の良性腫瘍を経験することは稀であろう.それにも拘らず胃の良性腫瘍全般について記載しておる文献が比較的少ないので,本文では自家症例を紹介し,各種腫瘍の性質や組織像を述べ,その処置等にも言及したい.

胃切除術後におけるダンピング症候群の外科的治療および予防について

著者: 友田正信 ,   松隈守人 ,   水谷和正 ,   友田秀教

ページ範囲:P.641 - P.644

〔Ⅰ〕緒言
 私共は,術前愁訴の軽い胃十二指腸潰瘍や慢牲胃炎等に胃切除を行い,術後却つて強い苦痛を伴う予期しなかつた後遺症が現われて来て,当該患者は勿論,その手術を行つた外科医も,いろいろと悩まされる症例に時々遭遇する場合がある.ダンピング症候群(早期および後期)もその後遺症の一つで,その発現頻度は我が国においても決して少くない.日常の食生活に関与するいろいろの愁訴を現わすこれらの症候群は,術後管理上極めて重要な問題である.
 扨,ダンピング症候群(早期および後期)の予防治療法については,薬剤投与や食餌管理等の内科的方法もあるが,その効果は不十分な場合も少くなく,また,これら症候群は毎食事に関係するものであれば,上述の予防治療法を常時行うことには不便な場合も少くなかろう.従つて,若し原疾患の治療のみならず,これら症候群の発現をも防止出来るような安全且容易な胃切除術式があれば,最初から斯る術式を施行して,術後後遺症もなく快的に日常生活を患者におくらしめるように外科的に予防することが最も望ましいことは勿論異論のない所であろう.

展望

Protein-losing gastroenteropathies

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.645 - P.658

はしがき
 Malabsorptionという問題を取扱つたついでに,吸収の異常というより,腸管からの喪失の異常亢進ともいうべき状態をうかがつておきたい.前号に述べられた,ショックを伴う直腸絨毛状腺腫のごときは,水分電解質の異常の喪失といつてよいものである.ここでは,消化管から血漿蛋白の異常に失われる状態,つまり,gastrointestinal protein loss (Schwartz 1959),exsudative enteropathy(Gordon 1959),protein -losing enteropathy(Parkins 1960),serum protein exsudation into the gastrointestinal tract(Gross 1960)などとよばれる場合を取りあげてみたい.いいかえると,血漿蛋白,なかんずく,アルブミンが消化管へ異常に失われてゆくというのである.
 特発性(idiopathic)または本態性(essential)低蛋白症とよばれる数少い一群の患者が,数年前からひきつづき注目されて来た.外国では,edema disease,nephrosis without nephrosis,nephrosis without albuminemia,hypercatabolic hypoproteinemiaなどという表現が見られる.

研究

甲状腺外科におけるクレアチン代謝に関する臨床実験的研究

著者: 佐藤正

ページ範囲:P.661 - P.668

緒言
 クレアチン代謝については,従来主として代謝終末産物たる尿中クレアチニン,クレアチンの値より,あるいは血中値より論ぜられていた.
 クレアチン(Cr),クレアチニン(Crn)の他に直接これらに関連するものとしてクレアチン燐酸(Cp)が存する.このものはLohmann反応によつてATPの動態と密接に連繋することが知られているが,その筋中において占める量は全クレアチン体量からみても極めて大である.

胃底腺—幽門腺境界部に関する研究—胃・十二指腸潰瘍,慢性胃炎と成犬胃との比較

著者: 大島昌

ページ範囲:P.669 - P.680

Ⅰ.緒言
 胃底腺—幽門腺境界部(以下境界部と呼ぶ)は形態学的にも,機能的にも異なる胃底腺領域と幽門腺領域とを境する或る範囲の粘膜である.臨床的に胃潰瘍9)10)や,炎症性糜爛8)14)20)21)の好発部位として重要視されていが,顕微鏡的な境界部は狭い粘膜領域内に胃底腺,幽門腺,被蓋上皮細胞が混在し,各々の腺細胞は鑑別が難しい上に,炎症性変化も異なる等,組織学的所見が複雑なために,現在なお詳細な研究は少ない.
 境界部の研究課題として1)正常胃の境界部,2)胃・十二指腸潰瘍と慢性胃炎の切除胃の境界部の比較,3)肉眼的境界部と顕微鏡的境界部の差,等の問題が考えられる.

症例

Cystosarcoma phyllodesの1症例

著者: 館田良七郎 ,   高橋希一 ,   阿部力哉

ページ範囲:P.681 - P.683

 乳腺腫瘍の臨床において乳腺線維腺腫は乳癌および乳腺症に次いで多く遭遇するありふれた疾患であるがその異型たる線維腺肉腫(Adenofibrosarcoma)すなわちいわゆるCystosarcoma phyllodesは寧ろ稀にのみみる疾患である.最近Cystosarcoma phyllodesの1症例を経験したので報告する.

Otto骨盤の追加例

著者: 佐野精司 ,   横井正純 ,   小室健

ページ範囲:P.685 - P.687

緒言
 Otto骨盤またはProtrusio Acetabuli(寛骨臼底突出症)とは両側性に骨性寛骨臼底が小骨盤腔内へ向つて突出する疾患であつて,1824年A.W.Ottoが婦人の骨格標本から見出して最初に記載したものである.その後英国では1884年にWhiteが,米国では1922年にHertzlerが独逸ではKienbock等がそれぞれX線学的所見を発表した.その後症例報告が増加し,同時に両側性のもののみならず片側性(いわゆる二次性)のものまでも本疾患の範疇に含まれるようになつた.最近の文献によると諸外国では150数例の報告をみるが,本邦では昭和10年杉立氏による報告が最初であり,ついで昭和29年条条氏の1例報告がある.昭和32年当教室梅原等が両側性に現れた症例を報告したが(第1表),最近私達は30歳男子にみられたいわゆる二次性のProtrusio Acetabuliと考えられる1例を経験したのでここに追加報告する.

胆石イレウスの1例

著者: 赤嶺俊 ,   清水巌 ,   浦田吟夫

ページ範囲:P.689 - P.691

緒言
 胆石イレウスは教科書的記載に比して,実際には比較的まれな疾患であるが,われわれは最近分娩直後に,イレウス症状をきたし,開腹により巨大な胆石による閉塞性イレウスであることを確かめ得た1例を経験したのでここに報告するとともに,多少の文献的考察を加えたいと思う.

外国文献

出血ショックの薬物療法,他

ページ範囲:P.693 - P.699

 遮断剤,副腎皮質ホルモン,昇圧剤のショックに対する効果はすでに多方面から研究され,賛否両論がわかれている.著者はイヌを脾剔し,2週後,股動脈にY管を入れて採血し蓄えつつ,血圧を40mmHgにおとす.出血速度は40〜60ml/min.血圧はそのまま1時間据えおく.ついで蓄えた血液を返して血圧70mmHg 30分.ここで管を閉じ血液の出入を全く止めて90分おく.ここで対照犬と実験犬とをわけ.いずれも5%糖点滴(500cc以下).蓄えた血液全部輸注.実験群はhydralizine0.4mg/kg 1回静注.hydrocortisoneは200mg 1回静注,ノルアドは150〜250μg/kg/h点滴の3群とする.実験終了後48時間生存しえたものをpermanent survi-vorとする.対照は全部死亡.Hydralazin群死亡11%,平均生存時間44時間,survivor89%.Hydrocorti-sone群死亡15%,平均生存時間38時間,survivor85%.ノルアド群8割死亡,平均生存時間11.5時間,つまり大出血のショックでも不可逆相発来前に与えると,hydralazinとhydrocortisoneとは生存時間を延長し,生存率をかなり高くすることができる.ノルアドは全く無効であった.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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