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特集 手こずつた症例―私の経験した診断治療上の困難症(Ⅱ)
直腸瘻
著者: 小平正1 蔵本新太郎2
所属機関: 1東邦大学 2東邦大学外科
ページ範囲:P.889 - P.891
文献購入ページに移動診断に手を焼いたとか,治療にてこずつたとかいうのでなく,始めから終りまでてこずつて,どうともしようがなかつたという症例もある.それも結局は,早期に診断が下せなかつたからということになるのであろうが,ここに述べるものもそんな症例である.
一般に瘻孔というものは,先天性のものでも後天性のものでも,概して厄介なものが多い,直腸膀胱瘻などはそのよい例であろう.幼小児に見られるものは,多くは直腸形成不全を伴つているので,診断上も治療上も,なかなか困難を伴うことは周知の通りであるが,後天性のものの多くは炎症を伴つていることが予測されるので,一層厄介である.何に原因しているかを知り,どの部分に瘻孔を生じているかをつきとめないと方策が樹たない.悪性腫瘍によると判つていれば話は別であるが,この種の瘻孔は,瘻孔を閉ぐということを建前としていろいろ試みるべきであり,単純に,どうとも判定できぬから直腸膀胱の全剔をしてCoffeyの手術を行なつてしまうというわけには行かない.したがつて膀胱鏡と直腸鏡検査は不可欠のことになるのだが,それすらもできないで死亡したこの症例について,その経過をかえりみて,なぜそうなつたかを検討するのも意義あることと思うのである.
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