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文献詳細

雑誌文献

臨床外科18巻1号

1963年01月発行

論説

頸部リンパ腺癌転移を初発症状として発見される咽頭癌について

著者: 新津勝宏1 佐々木純1 高橋孝1 小田島昭二2 寺山邦昭2

所属機関: 1岩手医科大学瀬田外科教室 2岩手医科大学耳鼻咽喉科教室

ページ範囲:P.69 - P.73

文献概要

緒言
 咽頭癌は比較的稀なもので,組織学的興味の他,診断面でも治療面でも困難な問題を含んでいる1)2)3).上気道腫瘍中最も誤診され易く,最も理解不足の領域であり,早期に発見されることは少い.それは中咽頭以外は簡単にみることができず,特に上咽頭癌は軟口蓋の陰になるために後鼻鏡検査による以外に発見されることはなく,また扁桃腺癌は単純な扁桃腺炎または扁桃腺肥大と誤られ易く初期にはその発見が必らずしも容易ではない.殊に,これ等の部位は一般外科医にとつては専門外の部位であり,この領域に悪性唾瘍の原発巣の存在することを忘れがちである.しかも疑問をもつて耳鼻科的検査をすれば案外容易に発見できるものであるのに,原発巣が鼻閉,鼻出血等の耳鼻科的症状を欠くため,どうしてもこの領野に注意がむかない憾がある4)
 われわれは最近頸部の硬いリンパ腺腫大を初発症状として来院した2例が,いずれも組織学的に癌転移であり,食道,肺,胃,腸の精査では原発巣が発見できず,結局上咽頭癌ないし口蓋扁桃癌が原発巣であつた症例を経験した.このように頸腺の癌転移が初発症状の場合,肺癌,胃癌などの検索に目がむけられ易く,簡単に行ない得る咽頭の精査が怠りがちとなることは大いに慎しまねばならない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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