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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科18巻12号

1963年12月発行

雑誌目次

グラフ

Fiberscope

著者: 福井光寿 ,   前田昭二 ,   比企能樹 ,   守谷孝夫 ,   東条慧 ,   榎本耕治

ページ範囲:P.1451 - P.1453

 胃疾患の診断における内視鏡検査の価値は高く評価されている.
 従来の胃鏡は,患者に与える苦痛がある程度存在し,且つ観察盲点があり,胃内所見の記録に若干の難点があつた.胃カメラは優秀な記録性をもつているが,盲目撮影で胃粘膜の流血状態を動的に観察する内視鏡の特色に欠けている.

Photographic & Radiographic Atlas of Anatomy〔最終回〕—神経系

著者: 横地千仞

ページ範囲:P.1503 - P.1508

外料の焦点

門脈の手術

著者: 杉江三郎

ページ範囲:P.1455 - P.1459

はじめに
 門脈系はいうまでもなく,胃,小腸,結腸,脾,膵などの腹部内臓の静脈血をあつめ,これを肝門にはこぶ静脈系であり,その本幹は肝十二指腸靱帯のなかに埋没されていることも周知のとうりである.従つてこの門脈系に治療的な外科手術操作が加えられる場合を考えてみても,まず第一に門脈圧亢進症における各種門脈血管手術があげられ,ついでは悪性腫瘍の進展に際する門脈切除とその再建手術とであろう.
 前者の門脈圧亢進症に対する門脈手術はかなりな歴史的変遷(約20年に近い)を経て今日では一応定説ともいえる外科手術治療となつているが,後者の門脈切除の問題は静脈移植と関連して今日でも末解決の問題が多く,いわば今後の問題を多く含んでいる.

特集 血管外科 論説

アメリカにおける最近の血管外科

著者: 石川浩一

ページ範囲:P.1461 - P.1465

 アメリカにおける血管外科の現況について述べるようにとの編集者の御意向であるが,彼の地においては広大なる土地に多数の大病院が散在しており,そのいずれもが彪大な機構を備えているので,1〜2年の短期間の滞在でそれぞれについて診療の内容をうかがうことは困難な問題である.よつて,著者が昨年まで1カ年留学していた北米ボストン市のMassachusetts General Hospital(M. G. M.)における模様をのべ,また著者が出席することのできたAmerican College of Surgeons1),International Cardiovascular Society2),Society of Vascular Surgeons3)およびNew England Cardiovascular Societyなどの諸学会の印象を記して責をふさぐこととする.したがつて当つていない点があると思われるが,御容赦を願いたい.
 血管外科の研究については,我が国においても木本教授らのアルコール固定同種動脈移植,井口・中山教授らの血管縫合器製作,あるいは斎藤・清水・橋本教授らの血管撮影法など世界に誇るべき業績が多く,トップレベルにおいてはアメリカはじめ諸外国に並び立つていると思われる.

西ドイツにおける最近の血管外科

著者: 阪口周吉

ページ範囲:P.1466 - P.1472

はじめに
 ドイツといえば今はともかく,かつてはクラシックな医学の本場としてわれわれ医学生の一つの憧憬でもあつた.今なお光を失なわない数多くの業績と先賢を輩出したことは,なお記憶に新しい国である.ところでそのドイツには我が国と比べものにならぬほど末梢血管病が多い.米国のこの領域における発展は,常に耳にするところであるが,さてドイツとなるとどの程度の水準なのか案外知られていないようである.ここで現在のドイツ血管外科について,あるいは広くドイツ医学の傾向の一端をうかがうという目的で,主として末梢血管外科を学ぶべく西ドイツに来ている私の印象を述べるのも,あながち無駄ではあるまいと考える.

末梢血管の外科

著者: 神谷喜作

ページ範囲:P.1473 - P.1481

 末梢血管の外科の全般について限られた紙数でその詳細を記すことはできないので,日常臨床において我々が最も多く遭遇する疾患について,その診断の"コツ"といつたようなもの,治療の方針,方法について重点的に述べてみたいと思う.

上腕動脈閉塞症—特に職業と関連性を有するものについて

著者: 木本誠二 ,   和田達雄 ,   上野明 ,   菱田泰治 ,   松本昭彦 ,   村上国男 ,   粟根康行 ,   若林明夫

ページ範囲:P.1487 - P.1494

緒言
 四肢末梢の動脈閉塞性疾患はすでに多くの人々によつて究められ,またその一部のものについては治療法が確立せられている1-7).しかし一方において,内腔のある1本の管すなわち動脈という簡単な器官の,結果的には極めて簡単な閉塞という一つの疾患であるにもかかわらず未だにその本態が不明のものが多くあり,治療法に至つては永久的な方法として認められるものの極めて少ないのが現状である.
 Raynaud氏病,Acrocyanosisなどに代表される機能的原因による動脈疾患や急性動脈血栓症,塞栓症,動脈硬化性閉塞性疾患などの病因の明らかな器質的な動脈閉塞性疾患はよいとしても,明確にこれらのものと決め難い場合にはその病因を云々することは非常に困難でありある場合にはタブーでさえある.例へば弓部大動脈から起る太い動脈の起始部の侵される大動脈弓症候群についてはその原因はおろか組織学的所見についても確然としたものが得られていない現状であり7-13),治療法も確立されていない.

塞栓症

著者: 稲田潔 ,   寺本滋 ,   江草重実 ,   川本精一郎 ,   岩浅茂夫

ページ範囲:P.1495 - P.1501

 急性動脈閉塞症のうち,塞栓症(Embolism)はほとんどすべて後天性の心疾患,とくに僧帽弁疾患に基因するもので,従来は比較的稀なものとして,内外科いずれからもあまり問題とされていなかつた.しかし近年における僧帽弁狭窄症に対する外科的療法をけいきとする心臓外科の発展はめざましいものがあり,僧帽弁狭窄症の閉鎖的弁切開術(Closed method)はすでに一般外科の範疇にいれられるほど広く行なわれている.これに伴なつて本症に合併する塞栓症の発生頻度が少なくないことが判明し,手術適応,手術手技などに関して新らしい問題を提供し一般の注目をひくようになつた.著者らは先年僧帽弁閉鎖不全症に合併した大腿動脈塞栓症に対し,塞栓除去術を行ない良好な結果を得た1例1)を報告したが,その後さらに数例経験したので興味ある症例を中心として本症の診断,治療について述べてみたい.

手術の実際

腸外科—Ⅴ.虫垂炎

著者: 西本忠治

ページ範囲:P.1510 - P.1515

 虫垂炎は,日常最も多く遭遇する外科的疾患である.その病態,治療法についてはあまたの成書に詳細に書かれている.ここでは手術上注意すべき点を箇条書き的に列挙する.

検査と診断

Fiberscopeの臨床

著者: 福井光寿 ,   前田昭二 ,   比企能樹 ,   守谷孝夫 ,   東条慧 ,   榎本耕治

ページ範囲:P.1516 - P.1518

 あらゆる胃疾患に対する診断法の一つとして,内視鏡による診断法が,すぐれた精度をもつておりその必要性がますます強調されている.その内視鏡として胃カメラが一般に広く用いられているが,胃鏡(軟性・硬性)は胃カメラほど普及はされていない。これ等はそれぞれに特色があり,胃カメラは優秀な記録性をもつているが,何分にも盲目撮影であり,果して目的とするところを適確に把握し得るや否や常に一沫の不安がある.一方胃鏡は胃粘膜の流血状態を動的に繰返し観察し得るという特色があるが,その記録性の点に欠くるところがあり,またいわゆる「観察盲点」が存在し,検査に伴う若干の苦痛があつた.ゆえに,胃粘膜を観察し得て,しかも同時に望むところをフィルムに撮影できる胃鏡の出現に幾多の研究がなされて来た.われわれもさきに,軟性胃鏡の先端にカメラを装着し,胃粘膜を観察しながら,さらに撮影し記録にとどめることのできる「Gastro-Photo-Scope」なるものを考案し,内視鏡学会等に発表してきた.その映像も鮮明で,肉眼所見とよく一致したが観察の盲点は如何ともすることはできなかつた.胃鏡による最大の盲点は幽門洞部小彎であり,これが解消のためにも「桐原式胃鏡」等種々努力が払われてきたが,Scopeの随円形,あるいは直径の増大等の欠点が伴つた.観察盲点がなく,肉眼的に観察し得て而も記録し得る内視鏡は,内視鏡を扱う者の齎しく望むものであつた.

講義

Fallot四徴症の診断について

著者: 榊原仟

ページ範囲:P.1519 - P.1527

 ただいま,ご紹介を受けました榊原でございます.本日はFallot四徴のお話をしたいと思います.皆さんは十分御存知の領域でいまさら申し上げることもあまりありません.しかし演者が変れば話もすこしは違うだらうぐらいのお気持ちで聞いていただきたいと思います.
 最初に患者をお見せいたします.この患者は,ある病院でカテーテル検査の結果,Fallotの四徴でないということは確かであるという診断を受けてきた患者でございます.

印象記

O.Swenson博士の公開手術を見て

著者: 石田正統

ページ範囲:P.1528 - P.1530

はじめに
 今春大阪で開催された第16回日本医学会総会の招待で来日した米国のOrvar Swenson博士が,東京大学でHirschsprung氏病に対するSwensonの手術術式を公開されたので,その印象と当日の討論会の内容をお伝えし,御参考に供したいと思います(討論会の記録の飜訳に疑問があればテープが保存してあるので再検討を致しますから御叱声願います).
 Hirschsprung氏病の治療については今日Swen-son氏手術,Duhamel氏手術,Rehbein氏手術など賛否両論の状態であり,治療方針はもちろん,病因についても問題があるところで,今回の手術公開はその意味で意義あるものと思います.

症例

縦隔腫瘍を疑われた胸部大動脈縮窄症の1例

著者: 堀江伸

ページ範囲:P.1531 - P.1535

緒言
 大動脈縮窄症は本邦においては比較的まれな疾患であるが,欧米では1791年Paris1)において初めて第1例が報告された.その後多くの報告があり仏国の病理学者Bonnet(1903)2).はこれを幼児型と成人型とに分け,Gross(1953)3)Burford (1950)4),Buhnson(1952)5),Bailey (1958)6)らは各々の立場からこれを形態学的に分類した.最初の手術成功例はCarafoord (1944)7)で,次いでGross 1945)8)で,以来手術例数は増加しその成績も向上し,Rumel(1957)9)は1601例の手術例を報告している.
 本邦では1938年三室10)の報告が最初で,現在私の集計できたものは181例25)で,手術例は1955年榊原11)により第1例が報告され,次いで木本(1956)14)の報告があり手術総計はわずかに30例にすぎない.

亜急性硬膜外血腫の2例

著者: 石橋孝雄 ,   豊島純三郎 ,   石川健

ページ範囲:P.1536 - P.1539

緒言
 硬膜外血腫については,従来急性症状を示すもののみ強調されてきた感がある.しかし急性型のみでなく,症状発現の比較的緩慢な硬膜外血腫の存在することも古くから知られており23),最近の統計によつてもかかる例のまれではないことが示されている15)19).しかるにわが国における報告は,いまだ数例を数えるに過ぎない1)3)4)5)6)
 私達は過去2年間に,外傷後それぞれ7日目および9日目に手術して治癒せしめ得た,亜急性硬膜外血腫の2例を経験したので報告する.

Catheter duodenostomyの3例

著者: 大橋忠敏 ,   石井好明 ,   牛木興哉 ,   甲斐原章

ページ範囲:P.1539 - P.1543

緒言
 BII法胃切除術でもつとも忌むべき合併症は十二指腸断端の縫合不全である.これは手術手技と術前術中術後管理の進歩とにより,往時ほどはみられなくなつたがなお絶無とはいえず,特に穿孔または穿通性十二指腸潰瘍などで断端の縫合に十分な余裕がとれず,あるいは十二指腸壁の炎症性肥厚が強いために,縫合不全の不安が持たれる症例にしばしば遭遇する.かかる場合の断端処理法が種々考案されているが1)-6),その1つにcatheter duodenos-tomy(以下本法と呼ぶ)がある.本法は十二指腸断端から内腔にカテーテルを挿入して体外に導き,内圧上昇を防いで縫合不全を避けようとするもので,一定期間後カテーテルを抜去すれば,瘻孔は速かに閉鎖して治癒に赴くことはcholedochostomyの場合と同様である.Martin Friedmann7)が創案し,欧米諸家の追試報告8)-18)はすでに150例を越えているが,本邦では麻田教授ら19)の報告を見るまで,あまり関心を持たれなかつたようである(第1表).われわれは3例の患者に本法を試み満足すべき結果を得たので文献的考察を加えて報告する.

内服ペニシリンによるシヨツクの1例

著者: 池尻勝 ,   中田嘉則 ,   永井彰 ,   伊崎駿

ページ範囲:P.1543 - P.1544

緒言
 ペニシリンは,化膿性疾患の治療に一時期を劃したものであつて,その卓絶せる効果と,副作用の殆んどないこととによつて広く用いられてきたが,1951年頃よりペニシリンショックが多発するようになつたため,その優秀なる治療効果にもかかわらず,しだいに使用されなくなる傾向が現われた.しかし,一方には,ペニシリンの安全な投与法として内服ペニシリンへの要望も強まり,ペニシリン使用初期において試みられた内服ペニシリンが再び脚光を浴びることとなり数社より発売され,これによつて従来のペニシリンの副作用は大幅に減るものと期待された.そして,内服ペニシリンの効果は,夙に,石山らを始め,多くの臨床家の検索によつて認められてきたが,また,石山らは,すでに「……副作用については,まだ経験するところが少ないが,従来注射ペニシリンに対して行なわれたような注意を全く除外して考えることはできない」といつている.
 事実,その後,内服ペニシリン,ペニシリン軟膏,同腟坐薬,同ネブライザー等による重篤な副作用が散見されるようになつた.われわれも,最近,内服ペニシリンによるショックの1例を経験し,幸いに,重篤にいたらず治癒させえたのでこれを報告し,諸賢の御参考に供したい.

膀胱憩室と回腸を内容とする外鼠径嵌頓ヘルニァの1例

著者: 稲葉穰 ,   平間栄生 ,   中村庸一 ,   寺田健治

ページ範囲:P.1545 - P.1548

 膀胱ヘルニアとは狭義では膀胱の一部が腹膜を被膜としてヘルニア門から外方皮下に脱出したものをいう.しかしいわゆる膀胱ヘルニアではその解剖学的関係から膀胱の腹膜に覆われない部分が脱出する場合が多いのであるが,そのような時はむしろ膀胱脱といつた方がよい.
 膀胱ヘルニアは1520年Giovanni Donemio Salaがはじめて報告して以来,欧米ではすでに多数の報告がなされているが,比較的稀な疾患とされている.

保険の話

保険診療の問題点

著者: 福田保

ページ範囲:P.1550 - P.1551

 本邦の健康保険は被保険者つまり患者側からのみみると,誠にありがたい制度であつて,世界中どこの国をさがしてもおそらく見あたらないことであろう.日本の医師全体の医学的水準は別問題として,少なくも日本の最高医学は世界の最高水準に達しているし,また日夜多忙の仕事に追われつつも,医師ほど間断なく医学の勉強をつづけていく職業は,他にはまれであると思う.日進月歩の医学の歩みにおくれれば,常に進歩しつつある医療ができないので,患者から見放される恐れもあるからである.
 かかる制度をつくりあげた当事者は実に見上げたものであるが,制度をつくつて魂を入れなかつたために現代日本の医療は危機に瀕しているといえよう.世界中どこにも見られない低医療費でまかなわれ,公務員のベースアップは年々止まることなく物価も毎年必らず上つていても,それに相当する部分ですら保険診療費のスライド・アップもなく,十何年前かの医療費はそのままである.医療研究者のなみなみならぬ苦労によつて,医療やその技術の向上はあつて,患者の治療成績はきわめてよくなつても,それに対する援助もなく,進歩しつつある治療器械に対する原価消却もできないような状態で医療を営なんでいる医師そのものはその上法律によつて故なくして患者の診療をこばむことができないと規定され,24時間拘束されている.

一開業医は訴える

著者: 出月三郎

ページ範囲:P.1552 - P.1554

 社会保険医療についての凡百の論文や意見の中で,私が最も深い感銘を受けたのは,昭和36年の医療懇談会におけるいわゆる"吉田メモ"であつた.これは数頁のパンフレットに過ぎないが,医人ばかりでなく一般国民にも非常にアピールした."吉田メモ"の中にいわく"治療方針は,直接患者の診察および治療に当る医師が,その個人的責任においてこれを決定するのが医療の原則である".
 "医学は研究室の研究にのみあるのではない.医師の診療行為をも含む,この全体が医学である.ここが生物学を違う点である".

アンケート

呼吸不全者の麻酔および手術方法

著者: 脇坂順一 ,   綿貫重雄 ,   山本道雄

ページ範囲:P.1556 - P.1558

 従来,呼吸不全者に対して手術を行なうことは危険であり,また,困難であると考えられていたが,近時このような症例に対しても手術がある程度可能となつてきた.これは呼吸不全に対する病態生理の解明に負う所が大であると思う.一般に,呼吸不全者(Respiratory cripple)とは換気面の大きな障害があるのは勿論であるが,また,同時に循環面の障害も伴う場合の多いことを指摘しておきたい.このことはRespiratorycrippleの麻酔および手術のやり方に基本的な問題となるからである.
 さて,Respiratory crippleに対する手術および麻酔の方法であるが,それはRespiratory crippleを招来した原疾患の如何により,その態度を異にするものである.すなわち,重症肺結核,肺化膿症,気管支拡張症,肺癌,僧帽弁狭窄症のように,各疾患によつて異なる.また,res-piratory crippleの病態生理のあり方により,麻酔および手術は左右される.例えば,換気面績と肺血管床の減少がほぼ平衡しているような重症肺結核の場合では,術中,術後のAnoxia, Hypercapneaに注意すれば,手術は可能であり,これに較べVentilation perfusion relationshipの障害され易い場合(例えば,肺癌肺膿瘍にみられる)では麻酔および手術は余程慎重でないと失敗することを指摘しておきたい.

MEDICAL NOTES

線維素溶解/術後感染

ページ範囲:P.1559 - P.1560

 日本では流行おくれになつたころ英王立医学協会では線溶のシンポジウムをもつて,活発に論じている(Proc.Roy.Soc.Med.56:407,1963).凝固および線溶両者に働きかけ,あるいはセンイ素分子重合の安定性に影響する因子には,Ca¨,globulin-fibrin安定化因子,栓球がある.センイ素分解産物fibrinope-ptides(fibrin lysates)はそれを抑制する.負に荷電したfibrinopeptidesは白血球遊走を阻止し,ヒスタミンに拮抗する.トロンビン形成のconttact factor(内因的)は血管透過性・bradykinin・疼痛などと関連をもつ.plasminは前駆物plasminogenより小分子で,p-gen発動にはactivatorsが必要である.activatorは正常状態でも血中に痕跡的に存し,また,わずかのストレスで血管壁から遊離され易い.もつともすべて同じコースでactivationが起こるか否かは決定されてない.アドレナリン・シヨックpyrogen・ニコチン酸などはいずれもactivatorを遊離させる.activator産生は血管壁らしいが,その他のactivatorsが肺・前立腺で作られることは臨床的に顕著であり,uroki-naseは多分腎でつくられるから,肝以外の組織でひろく産生されると思われる.

外国文献

多腺腺腫症,他

ページ範囲:P.1561 - P.1564

 人体多腺腫症の自験4,文献報告69の所見を,自験のイヌ(1),ラット(2),サル(1,これは文献に最初の例)の多腺腺腫症と比較した.人体本症の臨床所見・検査所見をくわしく知ることは本症治療上もつとも重要だが,実験動物の本症が全く未開拓なのではなはだ不便であつた.このイヌは糖尿病・下痢・多尿あり,多発性のosteitis fibrosa cysticaあり,腎に石灰症・硬化症,全身の転移性石灰症あり.ラット臨床症状取つてない.サルは消化性潰瘍・上記の腎変化・骨変化あり,上皮小体・ラ島・下垂体,副腎,甲状腺,卵巣に腺腫ないし過形成があつた.腺腫の組織像はリボン型で,本症にpathog-nomonicであるが,人体の方が動物より一層典型的に出現する,つぎに過形成はnodular hyperplasiaあるいはadenomatous hyperplという形態で,人体動物ともに共通するが,上皮小体ではdiffuse hyperplということもみあたる.こうした構造が多くの腺に多発してくるのが人体動物ともに共通した所見である.そして上皮小体が大きく腫瘍状となると,骨Recklinghausen病・上皮小体機能亢進症状が前景にでてくるのが普通であり,下垂体腺腫が大きいと末端巨大症状が前景にでてくる.ラ島腺腫症で過インシュリン症がめだつているときには,末端巨大症や上皮小体機能亢進症は背景に没している.

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「臨床外科」第18巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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