文献詳細
論説
慢性硬膜下血腫摘出術中に発生した急性肺水腫について
著者: 脇坂順一1 倉本進賢1 福田俊一1
所属機関: 1久留米大学医学部脇坂外科教室
ページ範囲:P.177 - P.183
文献概要
術後急性肺水腫といえば,多くは胸部外科との関連において考えられがちであるが,中枢神経系疾患と肺水腫の関係も忘れてはならない.既にCameron(1948)1)は剖検材料を調査して心冠疾患,中枢神経系疾患,肺疾患に特に肺水腫を多く見ると述べ,特にCerebral hemorrage 66例中44例(67%),Fractured skull,38例中24例(63%)と心,肺疾患と同様に中枢神経疾患にも高率に肺水腫を発見している.わが国では斉藤2),勝木3),内田47)等の剖検材料から見た統計があり,斉藤2)は中枢神経疾患や心疾患を有するものに70〜80%の高率に肺水腫が見られたといい,勝木等3)は中枢神経疾患でも特に脳橋部障害を伴つた場合に約44%の高率に肺水腫の合併を見たと述べ,また教室の内田47)は西日本に存在する12大学の病理学教室における剖検記録から統計的観察を行ない,中枢神経,脊髄疾患991例中475例(47.9%)に肺水腫の合併を認めている.
以上は脳神経外科と直接関係ない剖検例の検討であるが,脳手術および脳外傷後の肺水腫について卜部4)は脳手術67例中8例に肺水腫をみており,また脳外傷死亡例に肺水腫を発生したもの11例をみたと述べている.
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