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論説
免疫的立場からみた癌の悪性度—(特に人癌の白家移植からみた抗原性と抗体性について)
著者: 河村謙二1 四方統男1 藤村直樹1 後藤幸生1 上原洋一郎1 小玉正智1 山畑阿佳史1 岩瀬鉄麿1 菅田信次1 田中克明1 本迫徹1
所属機関: 1京都府立医科大学 河村外科学教室
ページ範囲:P.336 - P.341
文献購入ページに移動最近癌増殖に対し宿主抵抗性の問題が種々論議されつつある,すなわち癌治療にたずさわる者としては,悪性腫瘍の剔除術,したがつてまた,周囲転移巣の廓清術の如何は,ある意味において癌の治療に意義を見出し得ることは否めなとしても,このような手術と,あるいは手術によらずとも,放射線,制癌剤およびホルモン等の各種組合せ療法により,長期間生存し得た症例の上に,はるかに重要な意義があると考えねばならないのではないか.
悪性腫瘍は,現在のところ種々の治療を行なつても,早期に転移,再発を来し死の転帰をとるもので,寧ろこれが悪性腫瘍の特徴といつても過言ではないと思う.しかし乍ら,少数例ではあるが,癌手術を行なつた後,長期問,全然転移,再発の徴なく健康に生存している症例も報告されている、これら症例は,癌の予後に関する一因子として,癌の増殖に対する宿主抵抗性の問題を示唆しているものではないかということを考えてみる必要がある.斯る担癌患者抵抗性を考える場合に主として問題となるのは,癌の抵抗性の問題である.最近Warren cole (1958)の報告によれば,癌患者の多くの症例において比較的早期に,すでに循環血液中に腫瘍細胞が証明し得るといい,またEngellの報告では,永続治癒の期待される症例においても10%の高率に腫瘍細胞が証明されるといつている.
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