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論説
文献概要
いわゆる混合腫瘍は耳下腺腫瘍を代表する普遍的な腫瘍であり,その性格は概ね良性である.そしてその診断も一般には容易である.臨床上耳下腺の腫脹のある患者を診るさい,いわゆるおたふく風邪の場合とか,急性炎症症状を呈するものまたは全身的な疾患に併発したものなどの例においてはその診断が誤られることも少なく,処置もおのずから定まる.しかし幾月も幾年もの長い年月を経て存在している慢性の耳下腺腫脹ないし腫瘤のときは,それが果して良性のものか悪性のものであるかということが臨床所見上からは必らずしも適確に決定し得ない.上述のようにいわゆる混合腫瘍は発生頻度の高いものではあるが耳下腺腫瘍をその故に一括して総て混合腫瘍と見做して,良性のものとの見地から安易に取扱うような傾向がときに見受けられることは注意すべきことである.確かに耳下腺混合腫瘍は周知のごとく多種多様の組織学的な所見を持つてはいるが,そのことが逆にどのような組織像を持つ耳下腺腫瘍をも総て混合腫瘍と呼んで差支えないことを意味するものではない.さらに,混合腫瘍であるにしてもそれが必らずしも良性でなく,また良性であつたものでも悪性に変化することのあることなどの諸点にも十分留意すべきである.
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