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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科18巻5号

1963年05月発行

雑誌目次

外科の焦点

新生児,幼弱乳児の心臓外科

著者: 駿河敬次郎 ,   角田昭夫 ,   庄司佑

ページ範囲:P.577 - P.582

 小児外科の目ざましい進歩と,心臓外科の著実な発展とによつて,いままでの手のほどこしようもなかつた新生児の心疾患にたいして手術治療が試みられるようになり,その成績もしだいに向上してきた.
 すなわち,一見手術などできそうにもない弱々しい患児も,正確な記断に基づく,時期を失しない適切な手術治療には十分耐えて回復する可能性のあることが立証されたのである.

グラフ

救急自動車の実況

著者: 岩本正 ,   針生常郎 ,   橋本美輝 ,   手島英 ,   鈴木寛 ,   岩淵隆 ,   守屋明 ,   鈴木茂 ,   岩本正信

ページ範囲:P.584 - P.589

 われわれは救急初療の内容を②のごとく考えている1).すなわち災害が起つてから患者の移されてゆく過程を,救急車収容前(災害現場),救急車中(患者輸送の途上),救急室(病院初療)としそれぞれの場所でおこなわれる処置を,呼吸系に対する処置,循環系に対する処置,その他の処置(創傷の処置,Splintingなど)に3大別している.このうち患者輸送の問題は現在まであまり医学的に取りあげられてはいない.患者輸送は主として救急自動車によつておこなわれているので,われわれの病院で1958年来運営している救急車を中心として写真で説明する,われわれは日本全国の救急車をアンケートにより,過去20年間にわたり調査したところ,現在救急車を運営しているのは約200の施設,機関であり,その半数に対したのは1958年頃であることが分つた.すなわち日本の救急車はここ数年間に急速に普及して来たことになる.この際に救急車に関して,もつと各方面からの関心が寄せられてよい.
 患者の輸送を開始するには,災害の現場で充分に輸送に耐えうるだけの準備をしなければならない.また輸送の途上も適切な処置が必要である.それ故に救急車はwell equipped and properly staffedでなければならない.

論説

肛門括約筋不全症の手術

著者: 堺哲郎 ,   大森幸夫

ページ範囲:P.591 - P.607

Ⅰ.まえがき
 肛門部手術中で,その術式の選択と効果とが種種論議の対象となつているものに肛門機能不全症(foecal incontinence)に対する手術法がある.
 肛門機能不全症とは肛門からの意識的排泄および括約機能の失調した状態をいうものであつて,これには先天的,後天的など各種原因によつて発生するものが挙げられる.なかんずく直腸肛門部に加えられた手術侵襲に続発するものが,日常の外科臨床において最もしばしばみられる.

痔核の手術について

著者: 小平正 ,   吉雄敏文 ,   柳田謙蔵 ,   五戸達雄 ,   山藤輝彦

ページ範囲:P.609 - P.617

まえがき
 痔核は,従来ずいぶんいろいろの方法で治療されて来た,昭和32年度の調査であるが,わが国内の91の大病院の外科で,坐薬や軟膚などで保存的に加療されたものは4438例.手術されたものは3250例であつた.保存的療法中には,痔核の硬化萎縮や壊死脱落の目的で,特殊の薬剤を塗布,または注射したというものは,きわめて小数であつた.その手術方法としては,61%がホワイトヘッド法,36%がブラーッ法で.3%がミリガン法=結紮切除法であつた10)
 それから5年を経た今日,痔核治療に対する関心は,全国的にかなり高まつてきたようで,全般的に結紮切除法が,ホワイトヘッド法やブラーッ法にとつてかわりつつある13)15).これは,わが国の痔核治療法における大転換というべきであろう.

腸癌によるイレウスについて

著者: 斉藤淏 ,   大矢裕庸 ,   河上純 ,   蟹江弘之 ,   駒崎富士男

ページ範囲:P.619 - P.634

緒言
 長期にわたつて本邦のイレウスの動態を詳細に観察してきたわれわれの教室の莫大な集計結果からも明らかなように最近のイレウス治療の成績は著しく進歩した,しかしここにとりあげた腸癌によるイレウスの治療成績は最近に至つてもなお思わしくない.
 なおまた合併症であるイレウスの解決に止まらず癌に対する根本的治療にまで考慮するときまだ今後に残されている問題は多いと思われる.

研究

術後アミノ酸経腸栄養に関する研究—第1報 術後必須アミノ酸Ratioの検討

著者: 山本勝美 ,   山口慶三 ,   広田和俊 ,   辻輝蔵 ,   木下祐宏 ,   野本昌三 ,   西村明 ,   小越章平

ページ範囲:P.637 - P.643

1.はじめに
 食道癌とか噴門癌のような消化管大手術後に与える食事として,どのようなものが理想的であるかという問題についての検討はあまりなされていない.特に,与える食事中の蛋白質の質についての研究は殆んどみない.
 外科手術,特に,消化管大手術後では,外科侵襲に対する術後の蛋白質のCatabolismが極めて旺盛で,毎日100〜150gの蛋白質に相当する窒素が尿中に排泄される1)2)3)

検査と診断

経皮肝内胆管造影法

著者: 葛西洋一 ,   河村鉄也 ,   玉置明

ページ範囲:P.644 - P.651

Ⅰ.まえがき
 胆嚢胆管造影法として,現今最も一般に普及している経口的ならびに経静脈的造影法(テレパーク,ビリグラフィン法)は,高度の胆汁流出障害や肝機能障害を伴なう閉塞性黄疸の場合には,しばしばその診断的価値は少ないとされている.
 われわれはこの場合,経皮的に肝を穿刺し,肝内胆管内に造影剤を注入する経皮肝内胆管造影法を施行しているが,現在のところ本法の施行により極めて有意義な知見を得ていると考えるので,本法の実施とこれに関する見解を述べ,御批判に供したいと思う.

講義

縦隔腫瘤

著者: 小平正

ページ範囲:P.652 - P.661

 私が小平です.先日篠井教授が私共の学校に来られて,先生の最も得意とされている肺癌について有益な講義をして下さいまして,学生諸君も非常に喜びました.私共の学校には,胸部外科という部門は特に独立しておらないので,私が一般外科の一部として行なつておるわけで,篠井先生のように,この方面の造詣の深いお話をすることはできません.それで今回は普段うちの学生諸君に話している調子で皆さんにお話をすることにいたします.
 まず,ここにあるレントゲン写真を皆さんと一緒に見ましよう(第1図).この写真のどこに病変があるか,それはどなたにもすぐわかることだと思います.すなわち,縦隔の右の中央部が異常に突出しているのが見られます.この1枚の写真を以てこれがどういう病気だろうか,と皆さんに聞いてみたいと思うのですが,するとなんだ1枚の写真だけで何が判るものかといわれることと思います.しかし,このいかも特徴的な縦隔の突出は,やはり縦隔腫瘍だろうと思うのが,普通一般の考え方だろうと思われます.そこでこの例をなかば左の方から,すなわち第2斜位から写した写真を見ましよう(第2図).すると先刻の縦隔の突出陰影は縦隔の前方に移動して見られます.

アンケート

乳腺症—1)乳腺症にBiopsyを一般に行なつてよいか?—2)ホルモンの奏効しにくい乳腺症はどう治療するか?

著者: 今永一 ,   増田強三 ,   綿貫重雄 ,   小原辰三 ,   山岸三木雄 ,   藤森正雄 ,   杉江三郎 ,   間島進 ,   久野敬二郎

ページ範囲:P.663 - P.667

 初期乳癌の発見にBiopsyは最も有力なる手段であることはいうまでもありません.乳腺症の中には触診上初期乳癌と非常にまぎらわしいもの例えば大嚢胞,名称のAdenosis,部分像としてのFibroadenoma等があります.また乳腺症には各種乳管上皮の高度な乳嘴腫様増生を示しいわゆる前癌状態ともいうべき高い癌化傾向を有する部分像を含むものもあります.こうした組織の判別はBiopsyを行なわなければ決定し得ぬものであります.
 このように乳腺症は各種の部分像から構成されており,これらの組合せにより種々異なつた形態をとつて来ます.例えばFibrosisが病変の大部分を占めるもの,また静止期乳腺に比較的近いもの,このような乳腺症は触診上瀰蔓性の形をとり手掌面で局限性の腫瘤としては触れません.このような乳腺症はBiopsyは全く行なう必要はありません,手掌面で限局性の腫瘤として触れる乳腺症のみBiopsyの対象となり氷結切片により鏡検を行ない,乳管上皮の乳嘴腫様増生を示す場合はなるべく広範囲に切除する必要があります.既に癌化像を示すものには直ちに乳癌の根治手術に移らなければなりません.

トピツク

新しい症候群—(1) Cowden病,他

ページ範囲:P.668 - P.669

 上口蓋が急勾配で兎唇・口蓋裂を呈するのはMarfan症候群に見られる.舌肥厚し幅狭く陰嚢状を呈するのは,後天的の炎症でも起るが,また家族的のMelkersson-Rosenthal症候群に著しい,思春期処女の乳腺肥大は稀で,多くは知能発育障害などの異常に伴う.さてLloyd andDennis(Ann.int.Med.58:136,1963)の報告している20歳処女は以上の異常をすべてもつている.その他,典型的なアデノイド顔貌,鋭くとがつた鼻,小口症,鳩顎のように短小の下顎,幅狭く前後に長い頭蓋,口唇,口蓋・咽頭のhyperke-ratotic papillomatosis,多発甲状腺結節,漏斗胸,両側乳腺肥大して乳腺症様で一部癌に転化,肝および骨の多発嚢胞がみとめられた.口唇・口蓋papillomatosisは歯牙異常でも起るが,本例では歯の不適合による刺激の結果ではない,多発甲状腺結節はadenomaであるが,頸部照射の既往はない.
 I131検査でhyperactive noduleである.母親55歳で巨大甲状腺腫をもつ.乳房は15〜25ポンド,表面皮膚に色素沈着あり,右乳房には3cm大潰瘍あり,組織学的に乳腺症からの癌転化と見られる.

学会印象記 第16回日本医学会総会印象記

心臓外科領域

著者: 三枝正裕

ページ範囲:P.670 - P.672

 第16回日本医学会総会における特別講演のうち、心臓外科に関係のある演題は,東大木本教授の「人工内臓」,東女医大榊原教授の「心臓内直視手術の現況」,スウェーデンBjörk教授の"Problems in the SurgicalTreatment of Aortic and Mitral Valves InsufficiencyおよびでイタリーDogliotti教授の"La Nostra Espe-rienza in Chirurgia Cardiaca"の4題であり,シンポジウム「人工内臓」において岡大砂田教授が"人工心肺"について,シンポジウム「外科領域における低体温法」において岩大米沢教授が"体表冷却による超低体温法の心臓外科への応用",米国Virtue教授が"心臓外科における低体温法",木本教授が"血流冷却による低体温法"について,シンポジウム「冠循環と心筋代謝,心電図ならびに治療面」において阪医大麻田教授が"冠循環障害の改善を詩る外科的な試み"について.またシンポジウム「輸血」において東大水野氏が"新鮮血の輸血,特に体外循環における輸血"について論じた.
 このほか,外科学会,循環器学会,麻酔学会,輸血学会,医学放射線学会その他の分科会においても多くの報告が行なわれたが,会場や時間の関係上,これらすべてをきくことは不可能であつたため、筆者の印象にも多少かたよるところのあることを御諒承いただきたい.

脳外科領域

著者: 大野恒男

ページ範囲:P.672 - P.674

 第16回日本医学会総会は,講演題目や演者の選択が適切で,外国から多数の学者も招待され,大変に盛会であつた.多くの会場では参会者が場内に入りきれず,また通路にまでしやがんで聴いていた.その上大阪市もご多分にもれず甚だしい交通難で,やつとタクシーを拾つても目的の会場につくのにかなりの時間を要し、1つの会場から他の会場へ興味ある問題を追つて移動することが困難だつたのは残念である.
 4月1日のK会場は,Dr.W.Penfieldの後継者として著明なProf.T.Rasmussenの「前頭葉癲癇の外科治療」という特別講演より始つた.Penfield以来の業績の総括であり,薬物療法で制禦し得ない非腫瘍性の前頭葉癲癇183例の術後遠隔成績の発表であつた.しかもこの症例の過半数が出生後の外傷に起因しているということからしても,現在増加の一途にある本邦の脳外傷患者の治療の上に、非常に有意義な講演であつた,治療成績検討例は168例で,そのうち40%は10年以上観察されている.そして完全治癒とみなし得る症例は約1/3,発作傾向の著しい減少をみた症例はやはり1/3におよんでおり,しかも社会適応性の満足できる改善を示したものは全症例の2/3であるという優秀な成績は,私達に非常に大きな勇気と希望とを与えてくれるものと思う.手術的切除後の脳の瘢痕組織が再び癲癇源となるという考え方は,どうやら捨ててもよさそうである.

輸血

著者: 小出来一博

ページ範囲:P.674 - P.675

 日本輸血学会は日本医学会総会の第48分科会として,第11回総会が慶大島田教授会長,神医大藤田教授会頭のもとに,阪大病院大講堂で開かれた,会場は臨床講義用の階段教室で,小じんまりしているが,久し振りに学生に返つたような気持で聞くことができた.
 今回は総会の一環として,特別講演は外人のみ3名であり,われわれ外科臨床医にはやや直接関係のないもののようであつたが,われわれに関連のあることを略記してみる.Columbia大学のE.A.Kabatは,Hetero-geneity of antibodies and the architecture of the anti-body combining siteという題で抗体の異種性と抗体結合部位の構造についてのべられたが,われわれ臨床医の理解し得たのは,デキストランの抗体に異種性のあることであつた.Cutter Lab.のW.E.WardはIsolationand culture of homologous serum jaudance virus fromhuman blood and huma blood Productsという題で,特殊のFL tissue culter cell lineを用いて血清肝炎ウイルス分離に成功し,その性質を検討している.然し動物実験には成功していないが,われわれ臨床医を悩ます血清肝炎解決の一歩として注目に値にする.

保険の話

保険診療の問題について(5-I.)

著者: 近藤芳朗

ページ範囲:P.676 - P.678

Ⅰ.緒言(立場・信条・論義の進め方)
 「保険診療の問題点」という題目で,臨床外科医の参考になるようなことを書くようにとの編集者からの御依頼ですが,メスをとらざること15年,既に,外科医の資格はありません.その方面の詳しいことは,これから続々執筆されるであろう、実地外科医の方々に御願いしたい.私は終戦後18年間現在に至るまで一貫して開業して来た一般医(general praktioner)で常に地区医師会員,日本医師会員であり,しかも現在は日医の怨嗟の的たる健康保険組合の診療所の勤務医でさえもあります.その上,大学で病理学を少しく勉強させて頂いたため,学会の端くれにつながり,大学の教育,研究,という方,面にも少しくお手伝いをするという誠に一方に徹つすることのできない複雑な両棲動物のごとき立場から物を申しているということを御諒承願いたい,織畑教授ならびに中山教授は医学教育と研究という純大学畑からも物を申されていると解しますが,私も,アカデミー派,学術会議派としてレツテルつけられているようですが,実際は「血は水よりも濃し」立場が少し移行しています.大学付属病院また,官・公・私的大小病院,または都会から寒村に至る診療所の勤務開業を問わず,全実地臨床家の立場,すなわち全医人(なかんずく実地臨床医師)の最大公約数を表現したいと考えています.

症例

脾動脈瘤の1例

著者: 鷺尾正彦 ,   十見定雄 ,   田中誠

ページ範囲:P.679 - P.684

 脾動脈瘤は1847年に英国のCrispが第1例を報告して以来,欧米ではMachamer,Fugeは1939年に83例を,Sherlock, Learmonth1)は1942年に124例を,Ow-ens,Coffey2)は1953年までに自験例6例を含め204例を蒐集している.本邦では1911年吉田3)が第1例を報告して以来,現在までに9例の報告をみるのみである.且,報告例の多くは脾動脈瘤自然破裂の救急手術か剖検例であり臨床的には極めて稀な疾患と考えられている.
 最近,われわれは胃炎,十二指腸潰瘍の診断で開腹せる症例に脾動脈瘤を発見し,外科的に治癒せしめたので報告し,自験例をも含めて本邦例10例の観察を試みたい.

これから欧米に旅する人々の為に—アメリカ外科学会を中心に

著者: 鈴木礼三郎

ページ範囲:P.685 - P.691

 リスボンを午後発つた機は大陽を一生懸命追かけている.ひとねむりしてスチュワーデスの流れるような,「腰のベルトをしめて下さい」というアナウンスに目を覚すともう大平洋上の一孤島サンタマリアに着いた.
 何か詩を感じ歌を思出すようなこの島の名とは対照的に全く殺風景な洋上の一給油地である英領でユニオンジャックがひるがへつてるが植民地を全世界に持つ英国の過去における栄えた有様がしのばれた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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