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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科18巻6号

1963年06月発行

雑誌目次

外科の焦点

輸血の問題点

著者: 島田信勝

ページ範囲:P.705 - P.707

 わが国に保存血輸血が始められ,しかも全国どこにおいても容易に保存血の入手が可能となり,極めて簡単に輸血が実施できるようになつてから既に10年以上におよんでいる.その間に輸血に関する研究業績も次第に深くかつ広くなり,詳細に解明された問題も多くなつて来ている.かくして基礎および臨床各科に亘るグレンツゲビートの輸血学も一応体系づけられて来たと考える.しかし研究の発展に伴い,さらに探究されねばならない問題また反省すべき問題もかなり多数あるように思われる.
 毎年の学会においても血液凝固,血液型,血液型抗体の基礎的研究から輸血の適応,量,方法,副作用等の臨床的問題におよび,さらに体外循環や血液保存ならびに供血者の問題まで取り上げられて討議されている現況である.特に最近活発に研究討議されている問題は骨髄移植,白血球および血小板の抗体,体外循環に関するものであり、また輸血副作用および供血のあり方に関する問題は常に検討されているところである.

グラフ

Photographic & Radiographic Atlas of Anatomy〔1〕

著者: 横地千仭

ページ範囲:P.708 - P.712

 写真技術が昔とは比べものにならないほど進歩した今日でも,解剖図譜は相変らずほとんど大部分が絵で占められているのは何故だろうという素朴な疑問をたいていの人は持つているのではないだろうか.しかし試みに普通の解剖実習の材料を撮つてみるならば,得られた写真は自分が期待していたものとは遙かにかけ離れているのを見て落胆するに違いない.それほど難かしいものではあるが,私の知つている限りでは唯一の写真を主とした書物であるところのZuckermanの著書A New System of Anatomyでは写真に加筆することによつて絵と写真の中間的なものとしてこの困難を解決した.しかしそのことは同時にこれを絵でも写真でもないような中途半端なものとしてしまつた.かくして絵に較べると表現力において遙かに劣つた写真は解剖図譜には全く不適当な様にみえる.しかし従来のやり方にとらわれず,写真に適した材料のみを選び,写真に適した解剖法を工夫し,写真技術そのものにも特別な技巧を凝らせば絵には見られない迫力のある図譜も不可能ではない.すなわちこの場合の写真は絵と競合するものではなく,絵には得られない迫真性を示すことに意義を有するのであり,この方針にしたがつて作つたのがこのシリーズである.

論説

供血に関する諸問題

著者: 村上省三

ページ範囲:P.713 - P.721

Ⅰ.いとぐち
 わが国の血液事情はまことに多くの問題点を含んでおり,今日ではそれ自体重大な社会問題にまで発展している.この解決には政府の強力な施策の必要であることは論をまたないが,われら医人にとつても対岸の火事視していることはできない.むしろ解決のかぎはわれら医人の手にあると申してもさしつかえない.ここにその問題点のいくつかをあげ私見をのべてみたい.

骨髄移植(輸血)

著者: 市川洋一

ページ範囲:P.722 - P.733

はじめに
 正常な自己あるいは他体からとりだされた骨髄細胞が注入された生体内に着床し,成熟と増殖とを行ない,骨髄細胞としての機能を発揮することを期待しての骨髄移植の研究は,生体機構の免疫学的解明に対して重要な情報を提供しているし,その臨床応用は放射線障害,悪性腫瘍疾患、白血病ならびに再生不良性貧血を含めての造血組織疾患に対する治療の難路を開発している.
 骨髄の単なる注入にとどまらず骨髄細胞の移植Transplantationの成立を主眼とすることからBo-ne-marrow Transfusion胃髄輸血あるいはBone-marrow Infusion骨髄輸注という言葉よりも,Transplantationという表現がより一般的に用いられるに至つたが,移植の成立を立証できない場合,あるいはそれを主体とのみ考えない場合にはInfusionあるいはTransfusionとして厳格に使い分けている報告や発表33,43,50,57)もある.

輸液の必要性

著者: 小出来一博

ページ範囲:P.735 - P.741

〔Ⅰ〕はじめに
 輸血に関連した諸問題に付属して輸液の必要性について,総説的に述べよとのことであるが,輸液が外科方面で本格的に取り上げられたのは第二次大戦後である.その頃東大第二外科において,福田教授より「水分代謝の研究」というテーマを裁き,由来輸液—栄養輸液と研究を重ねてきた著者は,輸液の必要性ことに手術前後の輸液の必要性の認識の普及が,今日のごとき手術の安全性,適応の拡大をもたらした1つの原因と考える.
 われわれが医局に入った終戦直後には,重症患者においてのみ,リンゲル氏液,ブドウ糖は使用されるものであり,一般患者には今日のごとく普遍的には輸液が行なわれていなかつた.併し外科領域における水分・電解質代謝を始め諸代謝の解明により,今日では輸液の必要性は最早常識となつているが, この細部に亘つてはなお問題がある.例えば輸液と経腸補給との問題—すなわち蛋白源であるアミノ酸は経皮的にやるか,経腸的にやるかの問題等は医師個人の嗜好によりなお議論の存するところである.

輸血に必要な諸検査

著者: 大谷五良

ページ範囲:P.743 - P.747

Ⅰ.緒言
 輸血を行うさいに血液型を検査しなければならないのは一般の常識で,医師以外のものでも周知していることである.しかし輸血にさいしてはそれ以外の多くの検査が必要なことが,案外臨床医の人達に知られない.輸血に関してはいろいろな省令や告示が出されているが,これも知つている臨床医の方が寧ろ少いのではないだろうか.
 筆者は臨床医であり,免疫血清学的の専門的知識を有するわけではないから,以下にのべることは臨床医が臨床検査室あるいはベットサイドにおいて,自ら検査し得る検査法のみに限り,専門的な知識を必要とする検査法は項目をあげるに止める.

輸血の副作用とその対策

著者: 関川大司

ページ範囲:P.751 - P.760

はじめに
 わが国において保存血の制度が確立し,全国到る所で,希望する血液が自由に入手でき,貧血患者または救急患者に使用できるようになつてから既に10年を経ている.
 基礎および臨床各科に亘つて研究されて来た輸血学も輸血学会の発展とともに一応緒についた感を受けるのである.輸血副作用に関してもあらゆる方面から検討され,また新知見の報告もあつて,その防止および治療も一段と飛躍したと考える.

胃切除後のPostcibal Syndrome

著者: 高山坦三 ,   野崎成典 ,   戸田英男

ページ範囲:P.761 - P.770

1.はしがき
 胃切除後しばしば食餌摂取と関連した一連の不快な症状のおこることは,古くから注目され,患者はもちろん医師をも悩ますものであるが,術前の前準備,麻酔法の発展,抗生物質の出現等により胃手術の直接死亡率がいちじるしく低下したので症状の軽度のうちに手術をおこなう傾向が普及してくるに伴い、ときには術前の愁訴以上の苦痛になりうるこれらの後遺症は,とくにわれわれ外科医の関心の対象となるものであつて,これをいかに予防し,いかに治療するかということが,手術をおこなう立場にとつてまたひとつの重要な課題のひとつとなつたわけである.
 この胃切除術後の障害は,Jonas (1908)が食餌摂取後の不快症状を訴えた例を記載したのにはじまり,Hoffmann (1912)はX線透視上残胃より小腸への急速排出を認め,その後Hoffmann (1922)はこの不快症状に対してapylorische Stürzentle-erung mit Splanchnicusschockと称したが,同年MixがDumping Syndromeなる語を使用してから広くこれが愛用されるようになつた.

保険の話

社会保険審査員にもの申す—この上ない認識不足

著者: 岩本正

ページ範囲:P.770 - P.770

 われわれが実際に経験した,社会保険の審査員の審査が不都合であつたと考えられる数症例を報告する.症例1,猟銃弾をうちこまれた患者の散弾摘出術を数度にわたつておこなつたところ,何ゆえに銃弾摘出を数度おこなつたかといつて請求書をかえしてきた.症例2,重症ショックをともなつた骨盤骨折患者に,輸血4000cc程をおこなつた.これはもちろん,血圧測定,一般血液検査(われわれの所では救急室において,乾燥二重修酸塩を加えた小試験管に血液を採り,赤血球,白血球,血色素濃度,ヘマトクリット値,血漿蛋白濃度を一度に検査する),および尿検査などを経時的,連続的におこなつて,それらを指標として輸血をおこなつたものである.これに対して審査員は,輸血が多すぎるといつて請求書をかえてきた.症例3,その翌日に殆んど同様に重篤な骨盤骨折患者がきたので,また請求書をかえされると,輸血料だけでなくて,おこなわれたその他の全部の処置料の支払いがさらに数カ月おくれることになるので,安心して輸血ができないから,審査員の誰かに現場にきてもらつて,輸血量を決めてくれるように電話で頼んだ.もちろん来てはくれなかつた.症例4,上腕骨の開放骨折患者に閉鎖循環式全麻をかけて手術をおこなつた.それに対してかえしてよこした請求書にいわく,「全麻は不可,腰麻ではいかが」.われわれは自らの目をうたがつた.

保険診療の問題について(5-Ⅱ)

著者: 近藤芳朗

ページ範囲:P.825 - P.827

Ⅳ.医療と教育の現物給付
 前章で医師以外の第三者は医療そのものの現物としての給付は医療の本質上できない.そしてそれを可能にするには第三者が施設と医師を丸抱えにせねばできないと述べた,現実に施行されている保険医療機関と保険医は自ら首をさしのべて保険者に,医療という城を明け渡したという姿である.自らの自由をしばられた奴隷医という表現は決してオーバではない.しかし,この「自ら」というのが曲者である.医療担当義務だけあつて,それに対する権利は何一つ保障されていない.よく,教育も医療と同じく国民にとつて,不可欠・公的なものであるから,義務教育と同じく医療も義務医療という風に対比して,医療公営・国営を論ずる人がいる.国立・公立の教育は小学校から大学まで確かに現物給付である.その代り施設・運営費は凡て国費公費であり,教育者,学者の身分は公務員で丸抱えである.医療では国立・公立病院もこの方式である.ただし,私的医療施設は私立大学付属病院といえども保険医療機関に指定されるときには,私財をもつて賄つた施設を無料で提供し,而も保険医としては丸抱えとなつたための何等の給与はない.ただ許されているのは出来高払いのその日暮しの労賃を頂いているにすぎない.而も約2カ月おくれで,つくつた商品さえ値切られて.よく大会社の下請工場にたとえられる.この仕組の狂い方の根本原因は何か?

研究

脳動静脈瘤の手術と脳循環代謝—臨床ならびに実験的研究

著者: 斉藤義一

ページ範囲:P.773 - P.782

緒言
 人の内頸静脈上球の静脈血は脳環流混合静脈血と見做し得ること1)からKety-SchmidtのN2O法による脳血流量cerebral blood flow (CBF)は全脳血流量の平均値を示し左右何れの内頸静脈から採血測定しても同一値を示すと考えられる3,4).脳腫瘍に関してもShenkinは両側性の同時的採血により測定値を比較検討して両側測定値の間に甚だしく近似した値を得て,脳腫瘍においても何れか一側性の測定値が脳血流量を代表するとのべている.
 然るにいわゆる脳動静脈瘤あるいは瘻Arterio-venous aneurysma or fistulaなる状態においては甚だ異常な所見が認められる.すなわち同じくShenkin6)は本症においては動静脈短絡により末梢血管抵抗が除かれる結果脳血管抵抗cerebral vascular resistance (CVR)は減少して脳血流量の増大を来たすという.然し実際には脳動静脈瘤はしばしば血管破裂による頭蓋内出血を生ずるからその結果脳血流量低下の因子も加わつて複雑な循環動態が想像される.

統計

我が教室31年間における骨腫瘍の統計的観察

著者: 斉藤和彦

ページ範囲:P.783 - P.787

緒言
 悪性腫瘍死の増加に伴い,骨腫瘍に対する関心も高まり,既に諸家により数多くの統計的観察があるが,私達はわが教室において昭和6年より昭和37年3月に至るまで31年間余の外来および入院患者62375名を病歴により整理し,軟部組織の腫瘍を含めて凡ての腫瘍429名(患者総数の0.69%),その中,臨床的に骨腫瘍と診断されあるいは,疑われた159名(全患者数の0.25%)を得たので,此に報告し参考に供したいと思う(第1表),

症例

先天性肥厚性幽門狭窄症の3手術例

著者: 新橋義一 ,   海老原貴一 ,   新原博之 ,   一色昇

ページ範囲:P.788 - P.790

 先天性肥厚性幽門狭窄症は1717年Blairにより初めて報告された疾患であるが,Wallgrenによれば出生1,000に対して2〜4の割合で発生するといわれ,軽症例は日常かなりしばしば小児科医の遭遇する所である.1912年Ramstedtの粘膜外幽門筋切断術の発表以来,欧米においてはかなり一般的に手術が行なわれ,多数の報告があるが,本邦では比較的手術報告が少なく,未だ100例に満たないようである.私共は最近本症の3例に手術を行なつたので,その拙い経験を報告したいと思う.

胃壁内好酸球浸潤性肉芽腫の2例

著者: 村山英太郎

ページ範囲:P.791 - P.793

 胃または腸における好酸球浸潤性肉芽腫の報告は多いものではない.われわれは最近胃における2例を経験したが,それぞれ胃潰瘍あるいは胃癌と診断され切除した.またその1例には肉芽腫内に明らかに虫体を認めた.

検査と診断

小児の肝機能検査としての血清コリン・エステラーゼ測定法

著者: 長島金二 ,   三川宏 ,   岩井誠三

ページ範囲:P.797 - P.803

はじめに
 肝機能の良否は生体の諸機能を円滑に維持するために極めて重要である.このことは外科手術に広く用いられる全身麻酔のさいの種々な合併症が肝機能障害者に多く発生している点からも容易に考えられ,その検査の必要性が強調される所以である.さらに術前における患者の肝機能を知ることは麻酔方法、麻酔剤,麻酔補助剤の選択使用にあたり,種々なる副作用を軽減し,手術成績を向上させる意味からも是非とも必要なことと考える.
 成人の場合には肝機能検査法として,硫酸亜鉛試験,Cephalin cholesterol flocculation test (C.C.F.),高田反応,血中コレステリン濃度,血清ビリルビン濃度,B.S.P.および酵素活性等があげられ,必要に応じて数種の肝機能検査を行なうことも可能であるが,小児特に新生児・乳児においては,従来の検査方法では技術的に,その実施が殆んど不可能に近い.この意味で小児外科の立場からは,検体の量が少なくて済み,検査操作が容易で,しかも肝機能を十分に反映する肝機能検査法が必要となつてくる.われわれはこの目的のために,血清コリン・エステラーゼ(以下S.Ch.E.とする)活性値簡易測定法であるAcholest試験紙を使用して肝機能を測定し,その臨床的価値を検討しようと試みた.

講義

心臓中隔欠損の外科的治療

著者: 榊原仟

ページ範囲:P.805 - P.813

 本日は心臓中隔欠損という題を出しておきましたけれども,まず臨床例をお見せいたしまして,それにつきましてだんだんお話しして行こうと考えております.では症例をお見せいたします.
 この症例は13歳の男子でAnamneseを読みますと,生後3カ月のころに先天性心疾患ということを指摘されました.それで幼稚園から小学校の2年ころまでは風邪をひきやすかつたそうですが,現在はあまりかぜをひくというようなことはないそうです.運動は普通にやることができまして、Beschwerdeが非常にひどいというようではございません.駅の階段を上るときにも,普通に上れるということをいつております.ただ5歳ごろから,体重があまり増加しません.それから5,6歳のころにPneumonieにleidenしたということも特徴でございます.

アンケート

頭部外傷—頭部外傷神経症で症状が長くつづくとき実地医家の行なうべき治療法

著者: 渡辺茂夫 ,   太田幸雄

ページ範囲:P.814 - P.815

 頭部外傷後遺症としての神経症は,まず大きく分類する必要がある.すなわち心因性反応としての神経症と,器質的変化を伴う神経症との区別である.「外傷性神経症」なる概念によるいわゆる意識的詐病に近い心因反応は経済的、環境的,心理的要素の中に生じてくるが,寧ろ最近の大部分は,脳外傷による器質的変化から来る社会的適応の変化のため,その適応能力を欠いているための重圧となつて来る場合が多い.
 われわれが取扱う神経症症状を呈するものの中に,必ずこの脳外傷による器質的変化が根底となつているものが多いことを,注目し,治療しなければならない.この問題は,脳外傷後遺症の一般的治療と,直接関連を持つもので,広い意味での,脳外傷後精神病的症状の一般的治療を考えるべきである.特に前頭葉症状,側頭葉症状,脳幹,脳底,症状等の症状の分析が必要になつて来る.この「病巣性障害」が局在する部位をできるだけ正確に捉えるため,一般神経症状,髄液,血液,尿等の理化学的検査,気脳写,脳血管写,脳波等による分析がまず必要であろうが,直接「神経症」症状の長期に亘る場合,これ等の結果から,自律神経障害,血管運動性障害,水分代謝,蛋白代謝障害,内分泌障害等と相まつて,「脳作業能力減退」が起つて来る.したがつてこの治療を同時に加味しなければ「脳外傷神経症」の治療にはならない.

ケロイド—多発,ことに大きいケロイドの治療法

著者: 内田準一 ,   藤田恵一

ページ範囲:P.815 - P.817

(1)再発ケロイドの大きさが切除,縫合でき得る程度の場合.
 再発ケロイドは一般に縫合糸痕もケロイドとなるため,電柱状の形となる.この場合縫合糸痕を全部含めて紡錘形に切除すると(第1図),創面張力が大きいので縫合が困難で,かつケロイドを再発し易い.そこで第2図のごとくジグザグ状切開縫合を行なうと,創面張力をある程度減少させ得る.ジグザグ切開の方向は創面張力が最も弱くなる方向に作るのである.
 かくしてケロイドを切除縫合してから,術後24時間目に抜糸して同時にレントゲン照射を開始するのであるが,このさいただ抜糸したのでは創面が哆開するので,コロヂウムガーゼを用いて哆開を防ぐ.その方法としてはまず創の両側にガーゼの耳を創縁よりに向けて置き(第3図),このガーゼにコロヂウム(昭和エーテル)をしみこませる.この2枚のガーゼの耳を糸で縫合する.このガーゼ縫合により創面を完全に減張させて哆開を防ぎ抜糸する.その日から直ちにレントゲン照射を開始する.その条件は深部を照射しないためにソフテックスの軟線レントゲン装置を用うるか,または低電圧で普通の表在治療用レントゲン符を用いて照射する.照射条件は60kV,Al/mm Filt.焦点皮膚間距離16cm,1回200γずつ,合計3000γ〜4200γを照射する.

トピック

新しい症候群—(2)アルドステロン症を伴う傍糸球体装置の過形成,他

ページ範囲:P.818 - P.819

 National Heart Inst(Bethesda)のBartterらが報告した(Am.J.Med.33:811,1962)第1例は5歳黒人少年でテタニー・侏儒を主訴として入院,血清Ca正常,Ca療法不十分で,低K血症(2.2mEq)・アルカロージス(CO2 34 mEq)・低Cl血症(75mEq)とそれに一致するECG変化がある.17-KS,17-OHCSは正常.アルドステロンは25〜50μg/24hでかなり増加しているので,アルド症と考え,8歳の時副腎亜全切,腎生検を行なつた.副腎は球状層過形成で小児アルド症に見る像に一致するが,腎所見は特色的であつた.すなわち傍糸球体装置の60%に,糸球体血管の20%に著明な過形成がみられる.輸入小動脈壁は80〜100μ(正常<30),その細胞はBowie着染のJG顆粒をふくみ,Hartroft細胞は正常と異なり細長い線維芽細胞状となつている.濃斑(macula)は集つて大きく,JG細胞およびPol-kissenに隣接して30〜40個の核よりなる.糸球体血管壁はhyperchrom-atism,糸球体自体は萎縮を示す.こうした傍糸球体装置の所見はレニンしたがつてアンギオテンシン産生亢進像である.

学会印象記 第16回日本医学会総会印象記・2

整形外科(第1日)

著者: 泉田重雄

ページ範囲:P.820 - P.821

 風はいささか冷いが快晴の4月3日,第36回日本整形外科学会総会は第16回日本医学総会,第25分科会として,有原会長司会の下に大阪毎日ホールにおいて,定刻に開会された.この第1日の演題は誌上発表をも含めて61題の多数にのぼり,内容も植皮,骨・軟骨の病理・病態,軟部および骨腫瘍,骨折,リウマチ,癩,頸腕症候群,腰痛,椎間板ヘルニア,脊椎分離症等極めて広汎多岐にわたり興味ある業績が報告された.
 植皮の問題は松波氏(名市大整)の一題のみである.実験的同種皮膚移植における生着率,表皮,結合織の再生状態等について報告されたが,追加討論にもあつたように,同種移植では数週,数ヵ月後壊死脱落するものが尠くないので,長期間の観察が望まれる.

整形外科(第2日)

著者: 嶋良宗

ページ範囲:P.821 - P.823

 第36回日本整形外科学会総会(第16回日本医学会総会第25分科会)の2日目は,春の日差しが麗らかな大阪毎日ホールにおいて,その幕を午前8時20分に切つて落とされた.会場正面の左壁には,第37回日整総会の役員と各地評議員選出責任者と,次々期会長名(永井三郎教授)が提示されており,右側に,次期会長名(青池勇雄教授)と開催予定日(昭和39年4月上旬),および,その主題(脊椎側旁症,骨粗鬆症)の垂れ幕が下げられている.1700名を収容するホールは,午前早々から,既に,満員の盛況であった.
 まず,その日程表をながめると,午前中に,先天性骨系統疾患(1題),脳性小児麻痺(3題,※1題),神経,筋の問題(7題,※2題)と先天股脱(10題,※4題)が休憩をはさんで論じられ,午後1時から宿題報告がなされ,続いて,一般演題に入り,大腿骨骨頭血行に関して2題,ペルテス病1題と変形性関節症が3題,斜頸と内反足の各1題が終つてから,外人演説(G.Imhäuser)があり,やすみの後,結核(2題,※1題),側彎症5題が続き,さらに,J.J.Herbertの講演で締めくくられている(※印は紙上発表).

外国文献

妊娠間の外科的合併症,他

ページ範囲:P.828 - P.831

 Burkhart,K.P.&Mule,J.G.:Coarctation of the aorta and pregnancy.Am.J.Obst.Gyn.85(4):535-537,Feb.15,1963.文献を集めると妊娠に合併したcoarctは150例ある.10000回の分娩に1例ほどの頻度であろう.著者は2例を経験.18歳黒人女,妊娠4カ月で始めて来院,5,6カ月と血圧亢進,眼底vasospasmあり前子癇の治療無効で血圧亢進し股動脈の拍動ふれない.それでcoarctと気づいた.分娩後coarct切除,全治.第2例26歳黒人女,妊娠3カ月で来院,上肢血圧180/100,下肢血圧120/0でレ線学的にcoarctと診断,手術的に分娩し,のちcoarct手術予定.
 Pestelek,B.&Kapor,M.:Pheochromocytoma and abruptio placentae.Am.J.Obst.Gyn.85(4):538-540,Feb.15,1963.妊娠に合併した褐色細胞腫(褐)は40例ほど文献に見あたる.その50%が分娩当日に高血圧クリーゼで死亡している.分娩前に診断,手術,無事分娩したのは3例のみだろう.褐のうち最も注意すべきであり,高血圧を伴う妊娠末期には常に褐を鑑別する用意が必要である.著者例は36歳,内出血ショックで入院.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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