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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科18巻7号

1963年07月発行

雑誌目次

グラフ

Photographic & Radiographic Atlas of Anatomy〔2〕

著者: 横地千仭

ページ範囲:P.845 - P.848

5.頭部
  特に脳の動脈

外科の焦点

外傷とシヨツク—新しい一,二の問題を中心に

著者: 林田健男 ,   森岡幹登 ,   鈴木守

ページ範囲:P.849 - P.855

 私共が日常しばしば遭遇し治療にたずさわる外傷性ショックの大部分は,二次性ショックである.それを契機づける最も主要な因子は,循環血液成分の喪失である故に,治療対策の中心が補液療法におかれるのは当然である."Replace whatis lost"が従来より強調されている補液療法の原則であり,現在でもこれを否定することはできない.しかし,周知のごとく,近年のショック病態生理の厖大な研究は,その原則だけでは全く解決不能な困難な治療上の問題をいくつも示している.外傷からショックヘの進展機序にあずかる諸因子は,現今容認されているものだけでも,第1表に示されるように多数存在し,実際のショックの臨床像は,これら諸因子と生体臓器との間の複雑に錯綜した代償性反応ないし過代償性反応の綜合表現とみることができる.これら諸因子とそれが反応相に介入して随時派生する悪循環の数々は,その中のどの一つが発展しても容易に生命の破綻を招き得るものであり,理想的なショック療法は,これらを全て考慮した上に樹てられるものでなくてはならない.その中でも、今回は特にショックに伴う末梢循環障害の問題をとり上げて,その病態生理と治療に関する最近の知見の一部を紹介することとする.

論説

外傷管理の原則および集団外傷患者の救急処置と応急治療について

著者: 藤田五郎

ページ範囲:P.857 - P.862

はじめに
 昨年のきわめて不幸なできごとの1つに,国鉄三河島における二重衝突事故がある.一瞬にして数百名にものぼる死傷者が発生し,文字どおり阿鼻叫喚の巷に化したが,この災害の実体については当時の新聞やテレビによつて報道され,その原因についても現在なお真相の究明が行なわれつつあるときいている.
 しかし,当時の被害者で,幸い救助された人々でも各方面の非常な努力にかかわらず,いまなお療養の生活を送つている方が少なくないようである.このように"瞬時に降つて湧いた"ような多数の傷者を救護する責任は非常に重大であり,われわれ医療にたずさわるものもそれぞれの立場から考えておかなければならない問題があると思う.

スポーツ外傷

著者: 水町四郎

ページ範囲:P.863 - P.869

はじめに
 スポーツが普及すると共に,スポーツによる外傷が増加するのは当然のことである.しかし,このスポーツ外傷の増加は,このスポーツ人口の増加と平行して多くなつて行くものではない.ある年齢層,すなわち従来スポーツを多く行なう年齢層において,スポーツ人口が増加したのならば,外傷の増加も平行的に増加してもよい.しかし,人口の増加はスポーツ愛好者の年齢的分布を広くしたことも否めない,その結果として,増加そのものも,正比例的増加ではなく,またスポーツ外傷の様相も当然変化して来ている.スポーツ外傷も,外傷そのものとしては他の原因の外傷と変るところはない.しかし,スポーツによる外傷でも,他の原因による外傷と比較して見ると、ある種の特殊性は認められる.このことは,診断にさいしても,また治療においても云いうることである.それ故,その特殊性を中心にして記述することにする.

外傷による下肢関節損傷とその治療

著者: 河野左宙 ,   宮尾益克 ,   堀田利雄 ,   長谷川愫

ページ範囲:P.873 - P.888

いとぐち
 関節損傷は,その機能的予後の点から考えてみても,その治療のあり方に幾多の重要な問題点を含んでいるが,最近産業交通災害の増加に伴つて整形外科領域ではその治療に関心がたかまつている.特に人間の生活における起立,荷重歩行の占める役割から考えて,下肢関節損傷の結果としてもたらされる各種の後遺症は,肉体的に大きな障害を残すばかりでなく,精神的な面でも患者に少なからざる苦痛を与える結果となつている.私たちは外傷による関節損傷のうち,特に下肢関節損傷について,主としてその治療面における2,3の問題点にふれてみたいと思う.

手の外傷の診断と治療

著者: 荻原一輝 ,   端野博康 ,   井上昌則 ,   花岡道治 ,   富永純男 ,   加古誠

ページ範囲:P.889 - P.898

はじめに
 1.手の外傷は日常生活の中で,家庭や職場で発生することが多く,特に工場災害では,色々の統計でみると,ほぼ1/3は手,手指の外傷である.宮本氏によると昭和27,28年の全国労災患者の約30%は手の災害であり,この中の15%は障害補償に該当している.
 2.工場災害でみられる手の外傷は一般に次の特長を持つている.

腹部外傷について—特に診断を中心として

著者: 飯塚積

ページ範囲:P.899 - P.906

 交通,産業およびスポーツ災害の増加に伴つて腹部外傷も年々急増の一途をたどつている.
 しかしながら頭部,胸部および四肢の外傷に比較して腹部の損傷が少ない1)2)のは,刑事的事件を除くと腹部臓器が身体の中央にあつて衣服で被われ,しかも脊椎,肋骨および骨盤などから保護されているためであろう.このような腹部外傷の発生頻度が低いにも拘らず,重要臓器が損傷されるためにその死亡率は著しく高く1)3),また最近になつて重症例の増加が目立つてきている.これは交通災害にしてもスポーツ災害にしても特にスピード化されてきたことが第一の原因で,また産業災害では重工業の規模の拡大とこれに伴つた技術未熟者の増加が原因と考えられる.本誌編集部から腹部外傷について依頼をうけたので,特に診断を中心として取上げてみたい.これは救急手術の適応となるような損傷であつても次に述べる種々の障害があつて損傷の部位と程度を判定することがなかなかむずかしいためである.閉鎖性外傷では当時の受傷機転について詳しい過程を説明してくれることが少なく,また腹壁の損傷と内臓の損傷とはその程度が全く一致しないことが多く.したがつて一見して症状の強く出ている頭部,胸部および四肢の外傷を合併していると,その症状に蔽い隠されて腹部の損傷を看過すこともある.

熱傷の治療

著者: 藤田五郎

ページ範囲:P.907 - P.917

熱傷概観
 熱傷患者は,年々増加の傾向があり,最近の統計によれば年間約7万人余の人々が熱傷として医療を受けていることになつている.生活が文化的になり,熱の利用がたかまればそれだけ熱傷患者が多くなつていくのは当然であるけれども,Dr.ArtzおよびE.Reissがその著書"TheTreatment of Burns"の中でも指摘しているように家庭での事故が多いことと,幼小児の患者が比較的多いことは,わが国での家庭生活様式ことに煖房方法が欧米のそれに似てきている今日,注意を要する問題であると思う.また一方,熱傷は創傷学的にもきわめて特異な病態経過を示すものであることはここ20年来多くの学者によつて指摘されているし,それに伴つた治療法の進歩もいちじるしい.それでは"どんな事柄が新しいものか"という質問がおこりうるけれども,熱傷のpathologyが解明されるにつれて蛋白,水分およびelectrolyteの体内における変動が明らかとなり,それに対する輸血・輸液療法が確立されて比較的重篤な熱傷患者の死亡率が減少するようになつたし,そうでなくとも存命期間を相当延長できるようになつたことが最大の進歩と考えられる.その次には,熱傷の重要な死因となつていたSepsisに対する抗生物質の系統的活用があげられると思う.

手術の実際

腸外科—Ⅰ.腸管の縫合,切開,切除

著者: 西本忠治

ページ範囲:P.921 - P.933

 腸管の縫合法には,第1図の1,2に示すごとく種々の方法がある.腸管の小創は,タバコ縫合(巾着縫合〕で容易に閉鎖できるが,少し大きいものは全層縫合(Albert縫合)と漿膜縫合(Lembert縫合)の2層縫合が行なわれる.
 内腔に反転した面は多少壊死に陥るが,肉芽でおき代り,次いで粘膜で被われる.縫合部付近の漿膜が不当に傷けられる癒着の原因となり,全層縫各が粗雑であると壊死も強くおこり,厚い瘢痕を浅すようになる.通常創面には浸出液が出て,24時間以内には完全に気密になるが,初めの数時間は縫目から多少の腸内容の漏出はさけられぬものと思われる.全層縫合は漿膜縫合よりもかなりちみつに行ない,縫合の方向なども慎重にあるべきだ.余り強くしめすぎると却つて治癒の妨げとなる.大体出血が止まる程度でいいと考える.縫合後の一時的な浮腫のためには,キモプシン,ベノスタシン等の使用は適当ではないだろうか.

検査と診断

新しい末梢静脈機能検査法

著者: 阪口周吉 ,   富田濤児 ,   遠藤巌 ,   堀内弘 ,   山田公雄

ページ範囲:P.934 - P.942

 循環障害による四肢の慢性浮腫は大部分が静脈浮腫であるが,わが国では従来これについてはほとんど関心が持たれていなかつた.この分野の病態生理には未だ不明瞭な点が多く,したがつて治療体系も確立されていない現状である1).その大きな理由は数量的に四肢静脈の血流動態を知ることができないためである.著者らはBrodie-Tr-endelenburg法を始めとする従来の各種の静脈弁機能検査法,歩行時静脈圧測定法2)3)4),dyna-mic phlebography5)6)7),などについて検討してきたが,何れにもそれぞれ欠点があつて,満足できるものではなかつた.最近Winsor (1961)8)はDohn9),Mac Kayi10)らによるfunctional Plethy-smographyの考えから種々な体位,運動時の足関節部の容積変動を記録して静脈機能を推定する方法を発表した.著者らはこの方法を検討し,これに種々の改良を加えて簡単でしかもいろいろの静脈機能を量的に測定すべき検査法にまとめた.現在まで70余例に応用し,臨床的にかなり成果をえたと考えられるのでここに方法の詳細とその基礎的検討についてのべ,批判をえたい.

講義

肺化膿症

著者: 篠井金吾

ページ範囲:P.943 - P.954

 篠井でございます,本日は肺化膿症についてお話しいたしますが,少し前おきがよすぎて失望されるかも知れませんが…….時にはよその人の話を聴くのもいいと思いますし,交換講義の意義とはこの点にあるのではないかと考えます.
 最近までにわれわれの教室で取扱つた肺の疾患は第1表の様で殊に外科で取り扱つた疾患ではどういう病気が多いかということを示したもので,結核,これがいままで一番多かつたのです.最近はずつと減つております.

症例

舌咽神経痛の診断と治療—2治験例

著者: 石森彰次 ,   樋口公明 ,   波多野録雄 ,   秋山洋

ページ範囲:P.957 - P.960

緒言
 舌咽神経痛は1910年Weisenburgの報告以来,定型的な激烈な疼痛発作を主症状とする稀な独立疾患として欧米の文献には報告を散見するが,本邦においては報告例は極めて少なく,喜多村等の1例をみるのみである.本症はその診断にしばしば困惑することがあり,特にわれわれの症例のごとく舌咽神経痛と三叉神経痛を合併している場合には診断が甚だ困難であること,およびその治療として外科手術以外に有効な方法のない疾患であることから,われわれの最近経験した症例を中心に種々検討を加え,あわせて文献的考察を試みたい.

トピックス

成人celiac disease,他

ページ範囲:P.964 - P.965

 つまり非熱帯性スプルーで,空腸の絨毛萎縮,円柱上皮の扁平化,固有層の形質細胞滲潤を呈し,d-xyl-oseテスト等で見てmalabsorptionが明かであり,尿の5HIAA排泄が増加している.非熱帯スプルーが成人celiac diseaseに相当することは30年ほど前から知られており,本症の30〜50%は小児期にceliac dis-easeをもつているか,家族にその存在をみとめる.本症の原因について,おどろくなかれ100年あまり前にGee (1848)はある種の食物を避けると本症がよくなることに注目していた.その惹起食物として澱粉が擬せられたが,バナナは本症を惹起しない.glutenとして知られる蛋白複合体が本症惹起物質であろうことは,Andersen (J.Ped.30:564,1947),Sheldon (Arch.Dis Child24:81,1949)ごろからだんだん明かにされ,gluten-free食で本症が急速に改善することはMclver (La-ncet 2:1112,1952),Grytting(Nord.Med.52:1339,1954),Ruffin (New Engl.J.Med.250:281,1954)等によつて確かめられ,gluten負荷,gluten-free食は本症診断に用いられるようになつている.

保険の話

保険診療の問題について(5—Ⅲ)

著者: 近藤芳朗

ページ範囲:P.966 - P.968

Ⅵ.医学と医師
 誰もが知つていて誰もが一寸想い出せない医学概論の抄録を参考にまとめて見る.
 A.医学の目的 単的にいえば「人間の健康を増進し,疾病を治癒せしめることである」.

外国文献

気管支癌,他

ページ範囲:P.969 - P.971

 Iowa大1949〜1960年間の気管支癌1097例中,開胸624,うち肺切283,葉切66あり.切除不能例では41%が未分化癌であつたが,切除可能であつたものは末分化癌21%(前者の1/2)にすぎず.epidermoid ca圧倒的に多く,腺癌15%.年齢50〜69歳.男子は女子より6.4倍多く手術をうけた.肺切死31例(11%).その半数は心血管系合併症による,葉切死14(21%),その半数が肺合併症,28%が心血管系合併症に由つている.葉切で死亡率が高いのは,より高年者で一般状態が悪い為であった.開胸のみで切除せずして術後30日以内死亡15%.合併症は術後早期には不整脈・感染・肺性心,おくれてからは感染・肺性心が主なるものであつた.肺切では不整脈35(fibrillation 24, flutter 6, flutter-fibrillation3など).ジギ・キニジンで回復した.不整脈は69歳以上の患者に多い.葉切ではfibrillation 3(うち2例は69歳以上).肺切ではCor pulm 12例,このうち7例は2〜3カ月内に死亡.1年以上つづいたもの5例.葉切ではCor pulm死3.術後膿胸は肺切に7例(うち4例は術後早く発生,ただし気管支瘻なきものが普通).術後3〜4年後に膿胸死に陥つたものもあつたわけである,それらには気管支瘻があつた.葉切群からは膿胸1例発生,誘導にて治癒.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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