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論説
熱傷の治療
著者: 藤田五郎1
所属機関: 1自衛隊中央病院
ページ範囲:P.907 - P.917
文献購入ページに移動熱傷概観
熱傷患者は,年々増加の傾向があり,最近の統計によれば年間約7万人余の人々が熱傷として医療を受けていることになつている.生活が文化的になり,熱の利用がたかまればそれだけ熱傷患者が多くなつていくのは当然であるけれども,Dr.ArtzおよびE.Reissがその著書"TheTreatment of Burns"の中でも指摘しているように家庭での事故が多いことと,幼小児の患者が比較的多いことは,わが国での家庭生活様式ことに煖房方法が欧米のそれに似てきている今日,注意を要する問題であると思う.また一方,熱傷は創傷学的にもきわめて特異な病態経過を示すものであることはここ20年来多くの学者によつて指摘されているし,それに伴つた治療法の進歩もいちじるしい.それでは"どんな事柄が新しいものか"という質問がおこりうるけれども,熱傷のpathologyが解明されるにつれて蛋白,水分およびelectrolyteの体内における変動が明らかとなり,それに対する輸血・輸液療法が確立されて比較的重篤な熱傷患者の死亡率が減少するようになつたし,そうでなくとも存命期間を相当延長できるようになつたことが最大の進歩と考えられる.その次には,熱傷の重要な死因となつていたSepsisに対する抗生物質の系統的活用があげられると思う.
熱傷患者は,年々増加の傾向があり,最近の統計によれば年間約7万人余の人々が熱傷として医療を受けていることになつている.生活が文化的になり,熱の利用がたかまればそれだけ熱傷患者が多くなつていくのは当然であるけれども,Dr.ArtzおよびE.Reissがその著書"TheTreatment of Burns"の中でも指摘しているように家庭での事故が多いことと,幼小児の患者が比較的多いことは,わが国での家庭生活様式ことに煖房方法が欧米のそれに似てきている今日,注意を要する問題であると思う.また一方,熱傷は創傷学的にもきわめて特異な病態経過を示すものであることはここ20年来多くの学者によつて指摘されているし,それに伴つた治療法の進歩もいちじるしい.それでは"どんな事柄が新しいものか"という質問がおこりうるけれども,熱傷のpathologyが解明されるにつれて蛋白,水分およびelectrolyteの体内における変動が明らかとなり,それに対する輸血・輸液療法が確立されて比較的重篤な熱傷患者の死亡率が減少するようになつたし,そうでなくとも存命期間を相当延長できるようになつたことが最大の進歩と考えられる.その次には,熱傷の重要な死因となつていたSepsisに対する抗生物質の系統的活用があげられると思う.
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