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文献詳細

雑誌文献

臨床外科18巻9号

1963年09月発行

論説

十二指腸憩室の臨床経験

著者: 村上忠重1 大津留敬1 山本三雄1 溝口一郎1 山崎又次郎1

所属機関: 1昭和医科大学外科学教室

ページ範囲:P.1157 - P.1162

文献概要

Ⅰ.緒言
 今から約8年近く前のことであるが,発作性の上腹部激痛を訴えて入院した,47歳の女性があつた.諸所の病院で胃,十二指腸潰瘍,あるいは胆石症などを疑われて検査を受けたが,症状を説明するような所見は何処にも発見されなかつたという.当科における検査でも同様であつたが,最後に大きな十二指腸憩室が膵頭部に存在することが分つた.当時膵頭の憩室だけを剔出する自信がなかつたので,この患者にBillroth Ⅱ法による胃切除術を施行した.幸い激しい疼痛発作は去り,患者は喜んで退院したが,上腹痛が全く消失したわけではなかつた.なお不規則な軽い疼痛が時に起り,稀には鎮痛剤の注射を必要としたこともある.しかし疼痛は時間と共に軽減し,現在では殆んど医治を求めることはなくなつたが,残念なことに一向に太らず,現在はそれが患者の唯一の愁訴となつている.
 この例を経験してから,私どもは十二指腸憩室という病気が,上腹部消化管の疾患の中で,時に奇妙な役割を果たすことを知り,胃十二指腸の透視にさいし,出来るだけ見落さないように注意するようになつた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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