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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科19巻1号

1964年01月発行

雑誌目次

グラフ

頭部外傷に対する治療的低体温法

著者: 光野孝雄 ,   金谷春之 ,   淵沢敬吉

ページ範囲:P.5 - P.8

 最近頭部外傷の激増とそれら障害の重症化しつつあることは今更ここに論んずるまでもなく,その治療法の確立は緊急を要する課題である。
 頭部外傷急性期の病態の解明に伴ない硬膜内・外血腫に対する血腫剔除術の普及をみるにいたり,その治療成績をいちじるしく向上せしめたことは誠に喜ばしいことである。しかし血腫以外の重症な脳挫傷をいかに治療して救済するかは重要な問題であるがまだ明らかでない。

脳神経外科で用いられる諸器具

著者: 佐野圭司 ,   桑原武夫

ページ範囲:P.60 - P.66

 脳神経外科の特長とでもいえることは,手術前には,病変の正確な局圧を診断しなければならないこと,手術に際して第1,頭蓋のすぐ下にある軟かい脳組織を傷めないように,いかにして硬い頭蓋骨を開けるかということ,第2,傷つきやすい脳組織をいかに保護しつつ病変部に達しこれを手術するかということ,第3,頭皮,骨,脳はいずれも一般に出血の多いものですが,これをいかにして止血するかということです.以上の目的のために,いくつかの補助診断法があり,また一般外科とは異なつた手術器械,手術手技があります.

外科の焦点

外科における接着剤応用の現状

著者: 吉村敬三 ,   太田和夫 ,   古川俊隆 ,   小池正 ,   日野和雄 ,   水野克己 ,   高田真行 ,   登政和 ,   稲生綱政

ページ範囲:P.9 - P.16

はじめに
 外科手術に接着剤を使用する試みは,ここ2〜3年ますます盛んになり,血管,消化管および皮膚等にその応用範囲をひろげ,幾つかの見るべき効果をあげている.これらのうちの一部はすでに実験的な検討を終えて,臨床応用の段階に入つた感が深いので,今回は主としてその現状を紹介するとともに使用上の実際面について触れたいと思う.

論説

胆石の生成機序について

著者: 三宅博 ,   永光慎吾

ページ範囲:P.17 - P.28

はしがき
 胆石の研究を系統づけた最初の人と目されているThudichumが胆石の生成機序に関する論文を発表して今年がちようど100年目にあたつている.
 その間,胆石の成因に関する研究発表は枚挙にとまなく,殊にNaunynとAschoffの学説の対立は大きな関心を呼び,この方面の研究発展に大いに貢献したことは,人のよく知るところである.

外科的黄疸について

著者: 綿貫重雄 ,   窪田博𠮷 ,   福島元之

ページ範囲:P.29 - P.38

はじめに
 黄疸発生の病理はビリルビン代謝の研究,電子顕微鏡的知見の導入などから新らしい再検討の段階にある.
 したがつて,その分類方法もいろいろあるが,胆道の中で,胆汁の流れに障害があるかないかという生理学的見地から分類したPopperのシエーマ1)(第1表)がもつともわかりやすく思われる.

先天性胆道閉塞症の治療

著者: 植田隆 ,   岡本英三 ,   岩崎武

ページ範囲:P.39 - P.45

はじめに
 先天性胆道閉塞症は,濃厚胆汁症候群(乳児肝炎を含む),あるいはときに胆管嚢腫等との鑑別が,特に生後月齢の早期において問題であり,生後1ヵ月くらいまでは遷延性黄疸あるいは乳児閉塞性黄疸として一括取り扱われることが多いが,これらの中もつとも頻度の高いものは先天性胆道閉塞である.
 著者の手術例からみた比率では,真の閉塞症(先天性胆道閉塞)45例,濃厚胆汁症候群13例,胆管嚢腫10例で,約66%が胆道閉塞症となる.この比率はGellis1)(第1表参照),Hsia2)3),Krovetz4)等の比率とほぼ同様である.しかし手術をしなかつた症例,たとえば,先天性胆道閉塞症で既に生後月齢が進み肝硬変および門脈圧亢進症状の著明なものや,また濃厚胆汁症候群で明らかに自然治癒が期待できるため手術をしなかつたもの等を加えると,実際診療した実数は,閉塞症および濃厚胆汁症候群のそれぞれにおいて上述の数字よりさらに20%近く多い.さらに小児科において観察中自然治癒をきたした濃厚胆汁症候群は,われわれ外科側の観察数を遙かに上廻るものと思われる.

胆嚢捻転症について

著者: 代田明郎 ,   富田一男 ,   友野忠之

ページ範囲:P.47 - P.54

緒言
 胆嚢捻転症は1898年Wendel1)が23歳の女子にみられた最初の一例を報告して以来,欧米においてはCarter & Thompson (1963)ら2)の報告によると今日までおおよそ200例内外に接するということであるが,本邦においてわれわれが調査し得た範囲においては昭和7年横山3)の報告以来,わずかに25例4-32)を算するに過ぎないきわめてまれな急性外科的胆道疾患の一つである.
 われわれは松倉外科教室においてたまたま右上腹部の疝痛と反覆せる嘔吐,右上腹部の腫瘤を主なる症状とした患者に遭遇し,これを急性壊疽性胆嚢炎と診断して開腹したところ,胆嚢捻転症であることを確認し,本症例に胆嚢剔出術を施行して救助し得たので,ここに報告するとともにこの自験例を経とし,文献を緯として本症について述べてみよう.

講座 境界領域

Fibrous Dysplasiaのレ線と組織像

著者: 伊丹康人 ,   赤松功也 ,   木島英夫

ページ範囲:P.70 - P.79

 Fibrous dysplasiaという疾患名が現われるまで
 Jaffc, Lichtensteinがfibrous dysplasiaという疾患名を用いるまでは,osteodystrophia fibrosa, osteitis fibrosalocalisata u.generalisata, hyperparathyroidism, osteitisfibrosa disseminata, juvenile osteitis deformans, fibro-cystic disease,osteitis fibrosa von Recklinghausen's di-sease of bone, generalized osteitis fibrosa cystica, hyp-erparathyroidism等のいろいろな病名が用いられるとともに,その類似疾患としばしば混同されてきたものである.いま,本症に関する歴史的経過をたどつてみると次のようである.
 1915年:osteitis fibrosa cysticaの患者からparathy-roid tumorが剔出された.その頃,パラトルモンが発見されるにおよび,hyperparathyroidismとvon Recklinghausen's disease of boneが同じものであるということがわかつた.

外科領域

自家免疫に関連して—Ⅰ.癌患者における自家免疫性溶血性貧血

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.80 - P.89

はしがき
 外科領域でも自家免疫現象が活発に開拓されているが,ここでは自家免疫病自体を取り扱おうというのではない.癌患者には,何らかの自家免疫現象がなかなか高頻度に合併するという事実を,つかみ出してみたいと思うのである.自家免疫現象は1面からいえば個体の免疫機序に異常があるためであるから.癌患者には免疫機構に,したがつて生体防衛機作に,異変があるということになるだろうと思われる.なかには,そういつた自家免疫現象が癌のすべての症状よりも,かなり長い期間,先に出てくることがある.そうしてみると,癌患者に出てくる自家免疫現象は,癌発生の結果として起こつてくるという風に一方的には解しにくくなる.発癌と自家免疫発現とは,もつと深いところで,密接に関連しているのではあるまいか.先に筆者は,癌患者に血栓栓塞症が好発する事実,糖代謝異常の高頻度に合併する事実などを,簡単にうかがつて,そういつた方向から癌に接近する方法があることを述べた.自家免疫現象という角度から,癌の本態に肉迫する方法もあると思われる.こういつた意味で,癌患者における自家免疫現象の追究は,きわめて重要である.
 まず自家免疫性溶血性貧血(autoilmnune hemo-lytic anemla,AIHA)をうかがつておきたい.

患者管理

1.術前検査を中心として

著者: 安冨徹

ページ範囲:P.90 - P.93

はじめに
 近年外科手術の適応がしだいに拡大され,過去においては過大と考えられたような侵襲が敢行されるようになつた.しかし,他方において手術による直接死亡は逆に減少の一途をたどつている.これは術前・術中・術後における外科医および麻酔医の患者管理についての慎重な努力のたまものにほかならない.しかしなおこの領域にはまだ未解決の問題点が少なからず残されていることは,われわれ実地外科医の共通のなやみでもある.
 今月号から数回にわたつて,患者管理についての講座を担当するように依頼された.わたくしごときものが,「講座」の担当など,とんでもない話であるが,実地医家の一人として,わたくしどもの患者管理のroutineを御披露して,読者諸賢の御批判を仰ぎたいと思つて敢えて筆をとることにした.

手術の実際

胸部上中部食道癌の手術

著者: 中山恒明 ,   山本勝美 ,   矢沢知海

ページ範囲:P.94 - P.98

緒言
 もつともしばしば遭遇する胸部上中部食道癌で今日,教室で一番多く施行している手術法を紹介する.それは手術を3期的に分割して行なう.右開胸,胸壁前食道・胃吻合術である.なぜこのような手術を施行するかというと,全世界の胸部上中部食道癌の手術成績をみると,その大部分が25%以上という高い死亡率であるからである.この手術死亡率が高い理由は,食道癌患者の多くは高齢者である上に,栄養状態悪るく,いわゆるPoorRiskの症例で,開胸・開腹,あるいは開胸・開腹頸部手術という侵襲の大きい手術に耐えなければならず,しかも諸外国で多く行なわれている胸腔内吻合術のように,一度吻合部の穿孔を起こすと現段階では救命できないからである.元来,食道と胃断端の吻合部は血液循環の障害されやすい部分で,容易に組織壊死に陥つて穿孔を起こす危険がある.したがつて吻合部を胸壁前の皮下におくことは手術を安全にするという意味で大切である.以上の理由から,教室では,胸壁前食道胃吻合術を3期的に施行し,手術成績の向上とともに遠隔成績をよくしている.

随想 老外科医の随想・1

外科の専門分化ということ(1)

著者: 中田瑞穂

ページ範囲:P.102 - P.103

 私がここに述べることは著述の動機が自発的でないので結局無用のものである.あるいは独断である.私も古稀を過ぎたので若い血気さかんな新進の方々の考えとはもう随分隔つていることと思う.私がいろいろ反省して見ても,現在思つたり信じたりしていることはずいぶん若い頃に思つたり考えたりしたことと違つていることに気づく.若い時のみではない.つい2,3年前まで,否昨日こうと思いこんでいたことが,もうそうでもないと思われて来ることがいくつもある.脳のはたらきの悪さで退行現象としての変説もあろうし,矛盾もあろう.しかし,年を食つたために気短でなくなり,生々しいファイトも失せ,どういうふうに世間から思われても,たとえ誤解されても,叱られてもたいして気にならなく鈍感になつたために,いうこともまた,変貌して来たという面もあるであろう."おまえは前にこういつたではないか,しかも今は手のひらを返したように逆なことをいう.怪しからぬ奴だ"というお叱りをうけるところも絶無ではあるまい.しかし,永年外科をやつて来て,退職閑地についた一人の男がこういうことをいつていると,ひとごとのごとく読み棄てる寛容な気持の読者には,ところどころ,"そういう考えもあるな""それはだめであろう"と自分ご自身の現在の年齢とか環境に応じて,多少の批判的興味はうごくかも知れないのである.

アンケート

胃切除後の障害を少なくする工夫

著者: 武藤完雄 ,   浜口栄祐

ページ範囲:P.104 - P.106

1.通過障害
 胃切除後重篤な合併症の1つは吻合部の狭窄による通過障害である.これには種々の原因が挙げられるが治療上からは一過性と恒久性のものに分けられる.手術直後には高度の浮腫,細胞浸潤あるいは彎縮のため1過性の狭窄状態となり,急性胃拡張症状が起こることがある.これらに対して2〜3日胃内容を持続的に吸引することによつて軽快ないし消失することがあり,このような場合には心配はない.
 BI法については,われわれの経験は少ないが,BII法よりも手術直後通過の傾向をみるようであるが,術後3ヵ月を経過すれば通過良好となるといわれている.

COMMENT

手術麻酔管理の重要性

著者: 山下九三夫

ページ範囲:P.107 - P.108

 数年前の医師国家試験に全身麻酔と脊椎麻酔と局所麻酔の何れがもつとも安全であるかという問題が出てその模範解答に窮したことがある.出題者の正解は何であつたかは知らないが"解答不能"か,"何れも同じ"というのが正解であつたかもしれない,Waters & Gillespie(1944)の報告でも各麻酔法の死亡率は吸入麻酔0.100%,静脈麻酔0.127%,脊椎麻酔0.139%,局所麻酔0.106%で母集団が多くなると死亡率は何れも0.1%近くにしぼられて来る.しかし私はこの1,000名に対し1名の死亡は氷山の一角で1名の死亡のかげには10名の重篤者,100名の要注意者があるに相違ないと思う.幸い患者は自ら生理的に代償してくれるので,見かけ上は無事手術が終了したまでのこととも考えられるので新しい手術管理の方法とは,第1に不注意による事故を完全に防止し,第2に今まで曖昧にされていた患者の病態生理を術前および術中術後に亘り時々刻々に把握し,第3に万一事故が起った時も何より早くこれに対処するということにある.

Photographic and Radiographic Atlas of Anatomy—その考え方と試み

著者: 横地千仭

ページ範囲:P.108 - P.109

 戦前には解剖図譜といえば大体ドイツ物と相場がきまつていたが,戦後はわが国においても多くの図譜が出版され,中にはすぐれたものもできた.しかし同時にまた,他のものと同じようで全く個性のない本も出て来ている.すなわち以前から出ているものよりもむしろ劣つた,何でこんな本が出版されるのかと疑わざるを得ないようなものも現われ始めている.それからもう一つ気づくことは,わが国の解剖図譜は一般的に臨床方面のことをほとんど意識しないで作られているということである.このことは特に米国のと比べてみると明らかであり,おそらくドイツの伝統を引継いでいるためであろう.そして現在の肉眼解剖学は臨床と提携することなく,超然として独走しているようにみえる.もちろん解剖学者が生噛りの知識をもとに臨床解剖学図譜というようなものをかいたならば,専門の臨床家の目で見た場合には中途半端な,ピントのずれたものができ上る可能性が多分にある.現に,有名なRauberの教科書が50年以上の命脈を保つているのは,純粋に客観的な解剖の立場から書かれているためだといわれている.それならばこれらの完成された立派な本が多数出ている今日,もはや新たに解剖の本が出る必要性は全くないように見える.しかしそれにもかかわらず何が物足りない感じがするのは何故であろうか.

Medical Notes

Radioisotope Renography,他

ページ範囲:P.110 - P.111

 Öser & Billion (Fortschr.Roen-tgenstr.76:431,1952)はIopax-I131を静注して尿に出る放射能をグラフに描いて腎機能をうかがつたが,scintilationを用いていないので今日のようなrenogramが描かれない.Rosebengal-I131で肝機能をしらべはじめたTaplin,WinterらはDiodrast-I131を用いて始めて今日のようなrenogramを得(J.Urol.78:107,1956),以来この方法はひろく応用されるようになつた.欧洲ではnephrogramとよぶものが多く,米国ではrenogramといわれる,アイソトープとしてはI131,I125Cr51などが,造影剤としてはDiod-rast,Hypaque,Perabrodil-M,Uro-grafin,Miokon等が用いられる.正常では数秒間のinitial spike(vascu-lar spike)につづいて,さらに上昇するfunctional segment (4〜6分)があり,その後に2〜3分のうちに急に低くなる曲線を描く.描画紙を早くうごかせば,この各スパイクをくわしく分析できる.sciutillationCounter,recorder,ratemeterなどにさまざま工夫がなされている.

外国文献

外的マッサージによる心蘇生,他

ページ範囲:P.112 - P.115

 Montreal,Royal Victoria Hosp.でresuscitation unitをつくつて,レジデントが何時でも,ECG器・ペースメーカー・外用A-C defibrillator・人工呼吸器をもつて即座に活動できる態勢をつくつた.2年間に126例を治療.この半数は心筋梗塞で24時間以上生存17,退院8例.つぎに多いのは呼吸性のアノキシア(11例)で半数が24時間以上生き,1例は退院できた.126例のうち24時間以上生存42例(33%),退院17(13.5%).外的マッサージは30分〜2時間.心蘇生に成功しなかつたのは,心筋高度傷害が,あるいは,マ中止後の心搏出量を十分に維持できなかつたか.マ施行時年齢は60歳台,ついで50歳台多く,生存は50歳台が高率で,60歳台は悪かつた.マ施行に伴う合併症はかなり重篤で,肝破裂2,脾破裂1,血心膜2,縦隔気腫1,気胸1,肺脂肪栓塞1,肋骨骨折25例となつた.ふつう30〜60分で無効ならマを中止したのが多いが,瞳孔散大して固定したのは決して不可逆の徴でなく,回復しえたものがある.成功にはまずマを即座に開始すること.ベットに臥ていれば直ちに床の上におろし,胸骨下1/3に手をあて椎体に向つて1分間60回圧を加う.1〜1.5インチ凹むぐらいの圧がよい.次に呼吸も停止していればppで口一口呼吸法を施す.

講義

新生児とくに先天性小腸閉鎖症の外科的治療について

著者: 若林修

ページ範囲:P.117 - P.127

 ただいまご紹介いただきました日大の若林でございます.今回はからずもこちらの大学へ伺つて,みなさまに講義をきいていただく機会をえましたことを大変結構なことと存じます.
 本日は私どもの大学であるいは教室でやつておりますことを中心として,お話を申し上げることの方が目的にかなつたものと思いまして,私共が手をつけてからまだ10年にはなりませんが,もう6〜7年になりますか,小児外科という日本では比較的新しいとされております領域のことに関しまして,お話するつもりでございます.

症例

痔核に対する注射療法の危険性について

著者: 弓削静彦 ,   山内胖 ,   山田勝義 ,   福久由光 ,   馬場繁行

ページ範囲:P.128 - P.132

いとぐち
 直腸肛門疾患,とくに痔核に対する薬物注射療法は古くから行なわれている方法であり,本法による治癒例も決して少ないとは思われない.しかし反面,本法による合併症や後遺症のため苦悩した患者も必ずしもまれとはいえない.これらは,患者の希望するがままに適応の選定が十分でなかつたものや,注射手技が誤まられたものもあろうが,一方には,これ等の注射療法を用いている人々の多くが,父子相伝の法として公開を拒む傾向にあることも一因をなしていると思われるし,このようなことが注射療法の進歩,ひいては直腸肛門病学の進歩を阻害しているとも考えられる.私共は脇坂外科教室過去10年間における直腸肛門疾患について統計的観察を試みたところ,注射療法による合併症または後遺症と思われる38例を経験したので,その概要を述べると共に,本法に対する私共の考えをも述べておきたいと思う.

痔疾患に対する遠隔成績—特にWhitehead氏手術を中心に

著者: 坂本光生 ,   巷岡昭雄 ,   国島昭夫 ,   服部昭夫 ,   岡嘉彦

ページ範囲:P.133 - P.136

Ⅰ.緒言
 痔核手術には種々の方法1,2)が行なわれて居るが,単なる痔核切除術に対する最大の不振はその再発にある.もつとも理想的な根治ということに関してはホワイトヘッド氏法(以下W氏法と記載)による肛門周囲の痔静脈叢を粘膜と共に切除することにあるということは認められて居ることであるが,手術侵襲の点,術直後の愁訴,遠隔成績における後遺症の発生が問題となつて居る3,4).そこでわれわれは最近5ヵ年間,本院外科において痔核切除時手術を受けたものを対照とし,次に示すごときアンケート方法により回答を求めて,調査成績およびその後遺症の発生頻度等を検討したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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