文献詳細
症例
下大静脈閉塞によるBudd-Chiari症候群を呈した1症例
著者: 斉藤敏明1 津村整1 石田堅一1 山本一郎2 勝正孝2 西山保一3
所属機関: 1川崎市立川崎病院外科 2川崎市立川崎病院内科 3川崎市立川崎病院検査科
ページ範囲:P.1399 - P.1404
文献概要
1846年Buddが肝膿瘍による肝静脈血栓症を報告し,また1899年Chiariがこれの臨床的および病理学的検討を行なつて以来,肝静脈閉塞に起因する一連の症候群はBudd-Chiari's Syndrome,あるいはChiari's Syndromeと呼称されて,興味ある疾患として研究され,すでに欧米では150例,本邦でも数10例の報告がある1),しかしその原因ならびに病態は複雑で,今日,静脈造影法,肝Biopsy,肝カテーテル法など,本疾患にたいする診断にかなり有力なものがあるとはいえ,なお困難な点が多く,また治療上でも少数例に外科的療法が試みられたにすぎない2-4).その原因によつては明るい期待がもたれるとはいうものの,なおまだ困難な問題が多い.
われわれは最近下大静脈の完全閉塞により本症候群を呈した1例を経験したが,結果的にみて,診断の甘さから手術の選択を誤り,加えて高度の肝硬変のため,不幸な転帰をとつた.剖検上きわめて興味ある所見を見いだしたので聊検討を試みた.
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