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文献詳細

雑誌文献

臨床外科19巻11号

1964年11月発行

文献概要

論説

腸癒着の病態と診断

著者: 田北周平1

所属機関: 1徳島大学医学部第1外科教室

ページ範囲:P.1461 - P.1469

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はしがき
 消化管の癒着が病変を被覆する現象に対しては外科医は大なる恩恵を感じている.しかし開腹手術が広く行なわれる現今では,かえつてこの癒着による不良影響が無視できないことが認識され,腹膜癒着症あるいは腸管癒着症と称する一つの疾患として重要視されるに至つた.癒着が手術後に起こる場合,故意に作成された癒着を除いては,大部分が招かれざる不良癒着であつて,すみやかに解除されることが望ましく,その予防も必要となる.手術以外の原因すなわち腸炎,腹膜炎などのために癒着が続発する場合には,炎症の限局化のためには癒着は少なくとも一時的に歓迎されるが,あとで不良癒着に変る可能性がある.このような術後ならびに非術後の不良癒着が慢性経過をとりつつ,われわれの前に現われた場合,いわゆる癒着症として警戒されるわけである.しばしば急性経過を肉発させて,癒着性急性イレウスとしての重篤所見を呈する危険を内臓していることが外科医をおびやかしつつある最大の原因と思われる.
 1959年に広く調査したところによると1),総数2798例の癒着症例のうち81.7%が前に開腹手術を受けていた.自然に起こつた癒着症が18.16%にあるとはいえ,大多数の症例が手術に続発していることは,あたかも外科医が本症を作成するかのごとき印象を与えているものに外ならない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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