icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科19巻2号

1964年02月発行

論説

破傷風の予防と治療

著者: 志賀厳1

所属機関: 1東京労災病院外科

ページ範囲:P.190 - P.196

文献概要

はじめに
 第2次世界大戦後一般衛生状態の改善,ペニシリンその他の抗生物質の進歩等によつて,破傷風の発生は年々減少してきており,破傷風の治療も新しい優秀な鎮静,鎮痙剤を中心に進歩改善され,死亡率も低下してきている.これは世界的な傾向であるが,わが国も例外ではなく,今や破傷風は極めてまれな創傷感染症となりつつある.しかし疫学的に日本の破傷風患者発生率を見ると,過去13年間に破傷風患者は約半数に減少しているが,1961年度においても届出患者数は758人(破傷風は届出伝染病である).死亡572人で,ジフテリアやポリオよりも多数の人が死亡していることが知られている.散発的に発生するために目立たないだけで,全国的に見れば,その数は決して少ないとはいえないのである.また1958年から1961年の4年間の破傷風患者数は,ほぼ横ばい状態を呈してきており,従来の予防対策,即ち受傷時予防的抗毒素注射や,各種抗生物質投与のみでは,現状以上の破傷風減少は期待しがたく,ようやく破傷風発生予防の限界にきていることが推定されている(舘野).ふりかえつて破傷風の歴史を見ると,EckmanのMonograph"Tetanus"(1960)には,西歴紀元前,既にHippokratesが,受傷後1週間で発病した定型的症例を記載していることがのべられている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら