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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科19巻4号

1964年04月発行

雑誌目次

グラフ

頭部外傷の救急開頭術

著者: 竹内一夫

ページ範囲:P.425 - P.430

 多くの頭部外傷症例の中で手術的治療を要する場合はそれほど多いものではない.しかし急性頭蓋内血腫などは救急開頭術により血腫の除去,止血を行なうことによつてのみ救命しうる症例である.
 急性頭部外傷症例を収容した場合には,病状の推移を注意して観察しつつ,ただちに外科的処置が必要か,内科的処置だけでよいかをみきわめなければならない.したがつて第一線の外科医は何時でも,何処でも救急開頭術の適応を決定し,手術ができなければならない.いわゆる試験穿頭術(Inspection burr hole)程度の侵襲は,これが正しく行なわれる限り,重症患者に対しても余りマイナスになることはない.そのため救命のためにはただ絶対安静の原則のみを固守することなく,ある程度の積極的処置も許されるであろう.

クローズ・アップされるM. E.(Medical Electronics)

著者: 佐分利輝彦 ,   渥美和彦

ページ範囲:P.489 - P.495

 近代医学の特長は,強いていえば分化であり専門化であるが,さらに境界領域としての学問のいちじるしい進出による洗礼であろう.生物物理学,分子生物学,生体工学など,診断および治療の両面において,それらの影響は無視すべからざるものがあるが,さらに最近ではMedical Electronics(M. E.)が大きな問題として,クローズアップされつつある.ここに,M. E.領域の代表的な主題をとりあげ,それらの装置を紹介することは.まことに意義あることと思われる.

外科の焦点

脳血管障害の外科

著者: 佐野圭司 ,   堤裕 ,   相羽正

ページ範囲:P.431 - P.442

はじめに
 脳血管障害は,常にわが国の死因統計の1位をしめており,その意味で癌や心疾患よりもはるかに重大な医学的ならびに社会的な問題なのである.これには周知のごとくいろいろの病変がふくまれているが,ごく大ざつぱに分ければ,頭蓋内の出血性病変と頸部動脈をふくむ脳血管の閉塞性病変とに2大別できると思う.以下にこれらについて簡単に,外科的治療を中心としてのべてみよう.

論説 胃初期癌

胃初期癌の概念

著者: 田中早苗 ,   清水準也 ,   岡島邦雄 ,   小林淳一 ,   岩藤隆昭 ,   榊原宣

ページ範囲:P.443 - P.446

はじめに
 胃癌は,その初期において無自覚であり,たとえ症状を訴えるにしても胃癌に特有な定型的症状がないために他の胃疾患と誤られて手おくれになることが多い.最近これら無自覚的胃癌の発見を目的とした胃の診断法がおこなわれるようになり,これら無自覚的胃癌患者がわれわれのもとへ手術を希望してくるようになつたので,以前は偶然の機会にしかみられなかつたような初期の胃癌が手術対象となるようになつてきた.そこでわれわれは,教室の胃癌手術例を対象として検討し,われわれが取扱つた症例から眺めた初期癌の概念についてのべてみたい.

胃切除

胃動脈系からみた広範囲胃切除の危険性について

著者: 天野純治

ページ範囲:P.447 - P.455

はじめに
 豊富な血管網をみるとき,今更胃切除後の残胃における血行障害による合併症を問題としていないのも当然であろう.実際残胃の乏血性壊死は非常にまれなものである.しかしその発生するときは重篤な結果となるのは想像に難くない.
 残胃の乏血性壊死例については,Rutter7)(1953)が報告し,過去20年間の文献中には全く例がないと述べている.その後Spencer4)(1956)が1例を報告し,その後5人の外科医から6例を知つたといつている.その後,Stuart and Jordan (1957),Fell et al.8)(1958)はそれぞれ2例を報告している.Jackson6)(1959)は13例を集めそのうちわずかに3例のみ生存しているにすぎないという.ところが,本邦では,加藤14)(1956)は1死亡例を報告している.もとより合併症としてはまれではあるし,死亡率も高いので,他の病名のもとに見過されている場合も少なくないかも知れない.土屋15)(1953)は胃の主要な血管の全部を結紮した後に,手術を中止したが再開腹するに,胃の色調その他全く正常に回復していたと報告している.

重複癌

原発性重複癌について

著者: 中津喬義 ,   大槻道夫 ,   後藤政治

ページ範囲:P.457 - P.468

はじめに
 著者らは,昭和25年1月より昭和37年12月末までの12年間における慶大外科学および病理学教室関係の悪性腫瘍症例を検索した.
 これらの中からほとんど同時に,またはある期間を隔てて2種類以上の原発性悪性腫瘍が同一患者に発生した,いわゆる重複癌の症例を21例えたので,これらの症例と,さらに日本病理剖検輯報の昭和33年度より昭和36年度までに認められた症例9)−154)ならびに著者等の調査せる諸文献より選択した症例9)150)316例を加えた統計337例を資料として統計的考察をおこなつた.

幽門狭窄症

先天性肥厚性幽門狭窄症とその外科治療成績

著者: 中村義彦 ,   上野幹雄

ページ範囲:P.469 - P.481

はじめに
 先天性肥厚性幽門狭窄症は乳児期の消化管の外科において最も重要な疾患の1つであり,手術的治療によりきわめて満足すべき結果を期待しうる疾患である.
 本症の本態に関してはまだ不明な点が多いにもかかわらず,その外科的治療成績は,1912年にRamstedtにより粘膜外幽門筋切断術が報告されて以来,いちじるしく向上し,とくに最近の小児外科の発展と共に小児麻酔学の進歩により,術中はもちろん,手術前後の患児の管理が改善されて本症の手術死亡率は多くの報告では現在ほとんど零に近かい好成績を示している.

虫垂切除

虫垂切除後障害

著者: 菱山四郎治 ,   武田輝世

ページ範囲:P.483 - P.488

はじめに
 虫垂炎の外科療法が普及し,今日のように,右下腹部痛をみとめる場合,患者みずから手術を希望して外科を訪れるようにもなつたことは,虫垂炎治療の歴史的変遷をかえりみて,先輩諸氏の努力に対し深く敬意を表するものである.
 しかし,虫垂切除術は,外科医であれば誰でもが行なえ,技術の巧拙を問わず,今日ではどこでも簡単に行ないえる手術となり,これによつて多くの患者が恩恵を受けてきた反面,手術数の増加とともに術後障害を訴えるものが増加していることは確かなようであり,医学的にもまた社会的にも,現今手術の適応その他の諸点について反省あるいは,再検討を要する点もあると思われる.

随想 老外科医の随想・4

医学の進歩,診療の進歩とその普遍

著者: 中田瑞穂

ページ範囲:P.496 - P.500

 最新医学知議を次々にとり上げ,それを実地の診療に移して,文字どおり,全国のすべての病人にその力を完全にかつ平等に普遍し,一人でも新しい診療の思恵にもれなく浴せしめることは,理想ではあつても,なかなかおいそれと実現できるものではない.
 ただしかしわが国では年を追うて少しづつでも医療進歩の普遍化は拡大しつづけてきた.数々の悪条件(保険制度の)に抗して医学者と医師はこの努力を今もつづけている.

講座 境界領域

Osteoid Osteomaのレ線像と組織像

著者: 伊丹康人 ,   赤松功也 ,   高柳慎八郎

ページ範囲:P.502 - P.508

I.Osteoid Osteoma
 本腫瘍は,従来,"Osteomyelitis with annularsequestrum","cortical bone abscess","locali-zed bone abscess","sclerosing non-suppurativeOsteomyelitis(Osteomyelitis of Garré)""Osteo-myelitis chronic from the beginning","fibrousosteomyelitis"等と診断され,骨における特殊な炎症性疾患という考えのもとに論ぜられていたものである.
 しかるに,1935年Jaffeはその炎症性の性格を否定し,腫瘍性のものとして,本疾患をOsteoidOsteomaと命名した.しかし,本疾患の病巣があまりにも限局されていること,またそのNidusと称せられる部が期間に関係なくいつまでも小さいままで,一定度以上の増大をみないこと,しかもその周囲にNidusの皮殻を形成するかのごとく,著明な骨肥厚や硬化をみることなどは,一見腫瘍性の印象に乏しい感がある.

外科領域

小児外科における水分電解質の問題(その1)

著者: 石田正統 ,   沢口重徳 ,   大部芳朗

ページ範囲:P.510 - P.516

Ⅰ.はじめに
 体液の代謝生理についての知識は,今日の臨床医学特に小児外科領域においては不可欠なものとなつているにもかかわらず,その複雑な理論は実地臨床に十分活用されていない上に病態生理学的知見にも乏しい憾みがあつた.
 ここに小児外科臨床の立場から水分電解質代謝の問題をとりあげ,小児の体液生理学的特殊性をのべ,ついで病態生理学的考察を加え,輸液療法の実際に言及しようと思う.

手術の実際

全肺靜脈環流異常症の手術

著者: 榊原仟 ,   中山耕作 ,   高尾篤良 ,   都筑康夫 ,   倉重賢三 ,   豊田義男 ,   三森重和

ページ範囲:P.518 - P.523

はじめに
 全肺静脈環流異常は比較的まれな疾患で,その根治手術は困難とされていた1)2)3).しかし1956年Lillehei, Gott2)等がはじめて根治手術に成功して以来,欧米においては多数の成功例が報告されている1)3)4)5)6).本邦ではまだ成功例をみなかつたが,われわれは最近その根治手術に成功したので報告する.

患者管理

Ⅳ.術中管理—1.麻酔を中心として

著者: 安冨徹 ,   兵頭正義

ページ範囲:P.524 - P.527

いとぐち
 術中管理といえば,今日では麻酔学の領域である.しかし実際においては,麻酔医が十分な人数配置されている病院は,非常にまれである.
 多くの中・小病院においては外科医自身が麻酔をかけ,手術をしながら患者の全身状態に気を配つているのが実情であろう.そのような「片手間的」な患者管理であつても,その行なうところは,あくまで最新の麻酔学に立脚した合理的なものでなければならない.その意味で,この項(次号をふくめて)は専門家の兵頭博士に共同執筆してもらつた.

アンケート

膀胱,尿道損傷のとり扱い方

著者: 井上彦八郎 ,   大越正秋

ページ範囲:P.528 - P.530

 膀胱或は尿道が損傷された場合,当然のことであるが,迅速かつこれら臓器の特性をつねに念頭において取扱わないと,将来いろいろの難治な後遺症を招き,長期間にわたり患者を苦しめる事となる.
 膀胱及び尿道の損傷は,ともに尿道からの出血と,はげしい尿意を感ずるにもかかわらず純血性尿が少量出るか,またはまつたく排尿がないという症状でわれわれのもとを訪れるものである.ところが両者の間にはその他の症状が異なり,その取扱い方も違うので,これを具体的に説明してゆく.

COMMENT

外科的疾患診断の困難性

著者: 桂重次

ページ範囲:P.531 - P.532

 外科医は,外科的疾患の診断にあたつては,病変の状況を適確に判断し,これが手術療法を行なうによい状態であるか,その予後はどうかというところまで正しく判定しなければならない.外科を訪れる患者は即刻に手術を必要とするものもあれば,慢性の患者で十分な検査の結果を綜合判定する場合もあつて,短かい頁数でその全貌を述べることは困難であるが,外科医をもつともしばしば訪れる2,3の疾患を想定し乍ら急性の場合と慢性疾患に分けて述べてみたい.

日本農村医学会と外科臨床医

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.533 - P.534

 日本農村医学会が日本医学会の分科会に正式に認められてからもう2年.その社会的研究テーマと特異ななり立ちは,各方面から注目されているようであるが,その中で活躍するメンバーに,農村の外科臨床医が少なくないことも事実である.
 日本農村医学会が第1回の総会を開いたのは昭和27年.その時の特別講演は,福田保教授の「外科領域における栄養問題」であつた.「日本農村医学会雅誌」第1巻第1号にその時の会長若月の挨拶が載つているが,その中でこの学会のレゾン・デェートルが,次のように脱明されている.

研究

Antiseptic Plastic Dressingの実験的ならびに臨床的検討

著者: 石井良治 ,   王鉄城 ,   石引久弥 ,   大井博之 ,   恒川陽

ページ範囲:P.539 - P.544

 外科的治療においては程度の差はあつても多くの場合皮膚に何らかの創を伴つているので,その処置は臨床上当然おろそかにはできない.創処置の適否が経過を左右し,無為に治癒が遷延されたり,重篤な合併症を引き起すこともあり,これは単に治療上の問題のみでなく時間的,経済的損失も少くないと考えられる.しかしこの領域の検討は軽視され勝ちで旧態依然とした手段がとられている感がある.
 近代高分子化学の進歩につれてその医学方面への導入が盛んとなり,重要な役割を果しているが,その一つとしてわれわれは殺菌剤を含有する合成樹脂を包交材料として使用する機会を得たので臨床効果を観察し.併せて実験的検討も行ない考察を加えてみた.

症例

腎珊瑚状結石症の1例

著者: 米川温 ,   谷口遙

ページ範囲:P.545 - P.547

はじめに
 腎珊瑚状結石症治療の最近の傾向としては,腎切半術による結石剔出などの腎保存手術が施行されるようになり,その成績もみるべきものがあるとのことである.著者は最近本症の1例を経験し腎剔出術を行なつた症例を経験したのでここに報告する.

腹部外傷の特殊な合併症(尿浸潤)

著者: 佐々木純 ,   宮崎義宣 ,   湊谷基

ページ範囲:P.548 - P.549

はじめに
 最近われわれは腸破裂と誤診した興味ある腹部外傷の1例を経験したので報告する.

軸捻転を伴える虫垂粘液嚢腫の1例

著者: 遠藤良一 ,   渡辺喜栄 ,   広瀬義明

ページ範囲:P.550 - P.553

はじめに
 虫垂の粘液嚢腫は1842年RokitanskyがHydrops pro-cessus vermiformisとして本症の記載を行ない,Virchowが1863年にふたたびこれを取あげ,Rokitanskyが1866年さらに3例の本症の追加報告をなしてよりしだいに報告例はその数をまし,1916年には,Dodgeが142例の文献蒐集を行なつたほどである.本邦においては明治44年斎藤氏の報告が最初のものといわれ,その後昭和30年小坂氏の集計にては63例を算し,さらにわれわれは昭和30年以降昭和34年までの5ヵ年間の集計で77例をえている.最近の外科手術数の増加より考えると未報告例も数多く存在すると思われ,虫垂の粘液嚢腫はそれ程まれな疾患ではないと思われる.
 一方虫垂の軸捻転症は1907年Finkが,Appen-dicltis traumaticaの報告を行つた内の1例がこれに相当し,1910年Ringelが本症を1つのentityとしたのが最初のようであり,本邦症例は椎谷氏1)によれば大正7年宮田氏の報告以来19例にすぎないという.その後われわれの蒐集した森部2),米光3),小川4),野村5),川崎6),花房7)の諸氏による7例を加えても26例にすぎず,さらにこれが粘液嚢腫を合併した症例は椎谷氏の報告をもつて嚆矢となし,われわれの症例はこれについで本邦第2例目と思われる.

外国文献

Kell不適合にもとづく腎不全,他

ページ範囲:P.554 - P.557

 抗Kell抗体で輸血副反応を招いたというのは数少いが,うち急性腎不全に陥つたものが6例あり,その2例が死亡している.
 それはOttonsooter(Blood 8:1029,1953)とPeschel(JAMA 167:1736,1958)とで,抗Kell抗体をチェツクしておけば防げるはずだから,抗Kell抗体が注目されるわけである.著者例58♂,吐血下血あり某院で輸血500cc,副反応なし.4日後250cc輸血,クロスマッチでは適合血とされたが,悪寒戦陳・側腹痛・39.3℃の反応生ず.翌日200ccの"dark"尿,蛋白(?),第2〜3日尿"dark"で250ccのみ,72時間後のBUN80mg,血清ビリルビン1.0mg,悪心嘔吐あらわる.血圧140/106,嗜眠性となり当院来院(Northwest,Univ.),BUN85,血清クレアチニン14, Na 117, K3.7,CO228.5, Ca 7.3.ただちにtwin-coil人工腎で透折.しかし3週まで尿量5〜350cc/24hで,輸血後32日に回復利尿をうるまでに7回透折.57日までfollowされ全治.第3回目の輸血血液に対し間接Coombs (++)1〜2回の血液(−).患者血液は0型,cde/cde, kk (Kell陰性).1〜2回血はkk,第3回血がKell陽性.

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臨床検査の資料(3)—Ⅲ.血清検査

ページ範囲:P.558 - P.559

正確な臨床検査が適確な診断から適正な治療へ導く本誌は東大中央検査室の協力を得て,十分吟味された資料を表覧連載し,日常診療に資したいと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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