臨床外科19巻4号

1964年04月発行

論説 幽門狭窄症

先天性肥厚性幽門狭窄症とその外科治療成績

著者： 中村義彦¹² 上野幹雄¹²

所属機関： ¹九州大学第一外科 ²現在：呉共済病院外科

ページ範囲：P.469 - P.481

はじめに
　先天性肥厚性幽門狭窄症は乳児期の消化管の外科において最も重要な疾患の1つであり，手術的治療によりきわめて満足すべき結果を期待しうる疾患である．
　本症の本態に関してはまだ不明な点が多いにもかかわらず，その外科的治療成績は，1912年にRamstedtにより粘膜外幽門筋切断術が報告されて以来，いちじるしく向上し，とくに最近の小児外科の発展と共に小児麻酔学の進歩により，術中はもちろん，手術前後の患児の管理が改善されて本症の手術死亡率は多くの報告では現在ほとんど零に近かい好成績を示している．