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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科19巻5号

1964年05月発行

雑誌目次

特集 癌の治療成績の向上

食道癌

著者: 赤倉一郎 ,   中村嘉三 ,   掛川暉夫 ,   保坂陽一 ,   渡辺寛

ページ範囲:P.587 - P.594

はじめに
 外科手術の進歩により,幾多の困難性を有する食道癌の手術成績も最近急速に向上してきた.すなわち1940年代と1950年代後半以向の諸家の成績を比較すると,切除数,手術死亡率等に著明な差が認められる(第1,2表).しかし他の外科手術と比較した場合,いまだ死亡率も高く,遠隔成績よりみた治療成績も決して満足すべき状態でない.これらの原因としては、まず癌治療の根本である早期受診,早期発見が行なわれず,なお多数の症例が根治切除不能例であると云うこと,また食道癌患者は高齢者が多く,術前すでに患者としての悪条件を種々有していること,手術にあたつてはその解剖学的特長もあつて,手術手技上非常に困難を有すること.さらには,術後種々の合併症を起こし易いことなどがあげられている.これらの問題点を解決させることが,食道癌の治療成績を向上させうる最短への道であることは論を待たない.実際これらの点に関して,すでに諸家により努力が払われており種々の成果が上げられている.しかし,遠隔成績を見た場合,5年生存率は10%前後というのが現況であり,他の消化器癌のそれと比較した場合かなりの差が見られる.最近放射線療法,特に60Co照射と手術の併用によりその根治率向上にかなりの期待がもたれている.われわれは,自験例276例を中心に,食道癌治療成績向上に関して,60Co術前照射の問題をも含め2,3の点について述べたいと思う.

胆道癌

著者: 秋田八年

ページ範囲:P.595 - P.601

はじめに
 著者は以前本誌1)(臨床外科,16,699-707,昭和36年8月)に九州大学三宅外科教室における10力年間と鹿児島大学第2外科教室の2カ年間の100例(膵頭部癌を含む)の集計をもとに胆道癌についてその概要を論じたことがある.
 その時点でえられた外科治療の面からの結論的なものを拾うと概ね以下のようなものであつた.胆嚢癌については,すでに,胆嚢を含む肝右葉切除というような積極的な術式が登場しているが,その評価は不明で,なお,一般的に症状を臨床でつかめたような場合の胆嚢癌の予後はきわめて悲観的であつた.したがつて,胆嚢癌については,その予防に重点が置かるべきであるという考え方が支配的で,多くの外科医により胆嚢癌の母地とみなされる,慢性胆嚢疾患,なかんずく,胆石症に対し,より積極的に選択的胆嚢摘出術を行なうことが推賞された.

膵臓癌

著者: 鈴木礼三郎

ページ範囲:P.603 - P.610

はじめに
 外科医にとつてメスを加え,それが永久治癒に連結しないほど悲しいことは無い.大きな努力をすればするほどその感を強くすることは誰しも経験することであろう.わたしは桂外科において桂教授および多数の共同研究者と幾度かこの悲しむべき事実に直面し,ついに術後5年生存という膵臓癌の治療成績を上げることができなかつた.ふりかへつてみると,教室で膵臓癌の手術に着手してから十有三年になる,膵臓癌はその発生部位により臨床面および治療予後の問題も大きな差があり,大別して膵頭部癌と膵体尾部癌に分けることができる.また原発性と続発性のものがあるが,本稿では続発性のものは一応除外し,主として膵頭癌について述べる(第1,2図参照).
 膵頭部癌について
 膵頭部癌の永久治癒は,外科解剖学的見地から膵頭十二指腸切除以外に無い,1935年ファーター氏乳頭癌に対しWhippleが二次的に膵頭十二指腸切除に成功して,膵頭癌においても根治手術の可能性を示した.原発性膵頭癌に対し,1937年世界で初めてBrunschwigが膵頭十二指腸切除に,成功したが3ヵ月後に広汎な癌転移で死亡した.

胃癌

著者: 中山恒明 ,   鍋谷欣市 ,   中野喜久男 ,   大久保恵司

ページ範囲:P.611 - P.617

はじめに
 わが国における胃癌の死亡率は瀬木1)の統計によれば,男性では54.4%,女性では32.6%といずれも他の癌に比してきわめて高率である.これは欧米諸国の胃癌死亡率に比してもはなはだ高率であり,わが国の癌治療対策上,胃癌の治療成績向上はもつとも重要な課題である.
 事実,われわれの教室における1946年より1957年までに取扱つた胃癌患者の統計をみると(第1図),外来総数は全体で3585例であつて,その約1/3はすでに明らかな手遅れの患者である.そして入院手術を施行した患者でも,大部分は進行癌で一応切除術を行ないえた患者は全体の半数以下になつてしまう.手術そのものによる死亡率は現在殆ど0%に近いのであるが,5年以上遠隔生存者はわずかに全体の7.1%と減少する.この成績は内外の報告をみても決して低いものではなく,むしろ優れた成績であるが,教室における胃癌全体についてみたときの実状で,依然として進行癌の多いことが判る.したがつて胃癌の治療成績の向上をはかるには,さらに早期発見の途を開拓すると共に,多少進行した癌に対しても根治率を高めるような努力が必要である.以下,外科的見地からみた胃癌治療成績の現況と,これに対する教室の治療法の改善工夫を述べる.

直腸癌

著者: 卜部美代志 ,   山本恵一 ,   荒川竜夫 ,   中塚勝正

ページ範囲:P.618 - P.628

はじめに
 最近(1956年)日本における癌死亡の統計をみると,直腸癌については,男子では悪性腫瘍による死亡全体の3.3%,女子では3.4%を占め,英米白人の6.6〜4.2%をやや下廻る結果になつている.直腸以外の結腸癌の占める率も日本人は白人の1/4以下である.これは同じ消化器系の癌でありながら,胃癌においては同年次の統計によつて,日本人男子では54.2%,女子では39.4%を示し,英米白人の16.6〜7.0%を数倍凌駕し,食道癌もまた5.2%と約2倍の率を示しているのとまことに対蹠的である(第1図).この結果は,消化器系癌の発生部位と,食餌,習慣などとがかなり密接な関連をもつことを示唆するものである.
 しかし近来悪性腫瘍の急増に伴い,また食餌,習慣などが革まるにつれて,日本においても直腸癌患者の数は年を追うて増加を示しており,その早期診断ならびに治療の対策の向上が期待されている.直腸癌は他の臓器癌と異なる2〜3の特徴を具えている.従つて直腸癌の治療成績を向上するためには,これらの臓器特異性に着目して処理することが必要である.

グラフ

縦隔洞より入る開胸術

著者: 織畑秀夫 ,   服部淳

ページ範囲:P.573 - P.577

 わたしどもの教室で約3年位前から胸骨縦切開によつて縦隔に入る方法を開心術(心室中隔欠損,肺動脈狭窄,ファロー氏四徴症などの手術)に対して用いてきております.この方法について用心する点は出血をできるだけ慎重,綿密に止めることにあります.もちろんこれは人工心肺によつて体外循環をするという因子が大きく作用しているためとは思いますが,非常に重要な点であります.以下簡単に開心までを写真で説明します.

盛況の名古屋外科総会

ページ範囲:P.630 - P.632

□外科学会に取材して 第64回日本外科学会総会は4月1日から3日間,名古屋市で開かれた.
 名古屋市公会堂での開会式にあたつては,NHK名古屋放送管弦楽団によるブラームス「大学式典序曲」の開会演奏のあと,名大教授今永一学会長から「今回の外科総会が外科学を進歩させる推進力となることを願う」と真摯な挨拶があつた.

外科の焦点

電子冷凍の医学的応用—主として電子熱交換器

著者: 山崎善弥 ,   渥美和彦 ,   矢島睦夫 ,   藤森義蔵 ,   青木昌治 ,   上村欣一 ,   大沢安正

ページ範囲:P.579 - P.586

はじめに
 低温が医学に用いられたのは古くより,寒冷麻酔,高熱時の氷枕,炎症部の冷湿布、脳出血時の頭部冷却,胃出血時の上腹部冷却,最近にいたり新陳代謝を下げ外科侵襲を少なくしようとする低体温麻酔,心臓,脳外科手術のための低体温,食道静脈瘤や胃出血時に,食道や胃にBalloonを挿入して,冷却液体をRalloon内に灌流して出血臓器を内部から冷却する止血操作,止血目的のみならず胃潰瘍の治療に使用するWangensteenら1)の生理学的胃切除と称する胃凍結,頭部外傷,脳栓塞,肝性昏睡,重症感染症2)などにおいても低体温度,治療の一助として好結果がえられている.
 このように低温が医学に用いられるのは数限りないのであるが,それに用いられる低温化操作はもつぱら氷,冷水の使用であり,血液冷却による低体温下手術のさいにも,氷水,温水が使用され操作が面倒で温度制御も容易ではない.ときに使用されるCompressor TypeのRefrigeratorと別個にHeaterを備えたTherm O-Riteと称する灌流液体の冷却加温装置もかならずしも満足すべき性能を示さず,特に冷却加温のきりかえは15lに及ぶ灌流液体が,かなりの熱容量があり,順調に加温過程に移行するのに約20分間を要するという.したがつて急ぐ場合あらかじめ温めた灌流液体と,冷えた灌流液体を入れ換えているのが現況である.

医学書院洋書だより

—Albert B. Ferguson, Jr.著—Orthopedic Surgery in Infancy & Childhood,他

ページ範囲:P.601 - P.601

 小児整形外科はとくに.興味のある諸問題を多数蔵しているが,とくに小児に限つて記述した著書は少ない.
 著者は,Pittsburg大学整形外科教授として令名高く,Pittsburgメデカルセンターや小児病院の要職を兼ね,1957年初版を増補改訂して,広汎な経験と多数の資料を蒐録し,又整形外科,小児科,外科並にレ線学者等多方面に渉る専門家の協力によつて,小児を対照とする独特の整形外科分野の疾患とその治療法について,平明に解説している.

随想 老外科医の随想・5

うまい,まずい

著者: 中田瑞穂

ページ範囲:P.634 - P.639

 大分前のことであるが,拙著「外科今昔」の中でも私は手術のうまい,まずいということについて,私の感ずるところを一と通り述べた.今またこの随想の前章に医療の普遍とか新医学知識の普遍について書いたので,外科手術の巧拙ということも多少の関連のある問題の一つでもあるから,そして,手術のうまい,まずいのちがいはそれだけのことに限れば,別に幾度もとり上げて考えて見たり感想をのべる必要もないと思うが,手術の巧拙ということは,それからそれと影響する範囲が決して狭くないし,殊に現医療制度による煩雑な制限とか点数などの問題ともからみ合う点が少なくないと思うので,私の思つていることも述べ読者の各自の御意見もうかがつて見たいと思うに至つた.
 世の中すべての仕事には必ずといつてよい程うまいとまずいの差のあることは免れ難いことである.すべての生物の優劣のあることは誰でも知る通りである.芸術にせよ,料理にせよ,大工,左官職,商売,政治,何でも仕事という仕事には必ず上手と下手との区別がついて廻る.手先,口先のうまい,まずい,野球その他競技のうまい,まずい,殊さらに一つ一つあげて数えるまでもあるまい.

講座 境界領域

Solitary Bone Cystのレ線像と組織像

著者: 伊丹康人 ,   赤松功也 ,   山下恵代

ページ範囲:P.640 - P.645

Ⅰ.Solitary Bone Cystとは
 本症にはsolltary bone cyst,benign bone cyst, solitary unicameral bone cyst,juvenile unicalneral bone cyst,simple bone cystなどの名称が用いられている.本症の存在はすでにVirchow (1876)の時代からあきらかになつているが,Bone Cystという概念のもとに論ぜられた報告は,Bloodgood(1910)によるものがはじめてであろう.しかしosteitis fibrosa generalisataやaneurysmal bone cyst,osteitis fibrosa cystica, fibrous dysplasiaその他のfibrocystic diseaseなどが混同されたまま長い年月が経過してきた.したがつて,その本態と成因についてはまだ解明の域に達していないといつてよい.

外科領域

小児外科における水分電解質の諸問題(その2)

著者: 石田正統 ,   沢口重徳 ,   大部芳朗

ページ範囲:P.646 - P.652

Ⅳ.Na代謝調節
 体液の滲透圧を生理的範囲に維持する機構については前稿で述べたが,Naは細胞外液の滲透圧ひいてはその量を規定するもつとも重要な因子である.
 第4図28)はNa代謝の自働制禦的調節機構を模型的に示したものである.今このNa代謝調節系においてなんらかの原因により細胞外液よりNaが失われたと仮定しよう.細胞外水分が比較的保たれている限り細胞外液のNa濃度ひいては滲透圧の低下が起こる.視床下部には滲透圧感受装置Osmoreceptorがあつて,この滲透圧低下に反応し,下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(ADH)の動員を抑制するため,腎における水分再吸収が減じ,その結果細胞外水分が失われる.細胞外脱水は循環血液量の減少を来し,またこの循環血液量の減少は頸動脈洞にある圧あるいは容積感受器に感知され,直接神経伝導路を介し,また間接には副腎皮質を介して腎に働きNaを保持せしめる一方,食塩に対する内的要求を起こさせる.かくして体Na量が増加すると,前稿で述べた水分調節機構が発動して水分を体内に貯留させる.その結果細胞外液,ひいては循環血液量が増加すれば,Na保持の刺激は消失し,体液は元の平衡状態を回復する.

手術の実際

頸部リンパ腺結核の根治手術

著者: 松下良司

ページ範囲:P.654 - P.660

Ⅰ.根治手術と姑息手術の相違
 頸部リンパ腺結核にたいする手術を,その治療効果の面より別けると,根治手術と姑息手術に二大別される.
 ここでは,著者が十数年来,実地に試みてすぐれた成績をあげている根治手術法の術式を解説するつもりであるが,本論に入るに先立つて,根治手術と姑息手術の相違について説明しておきたい.

患者管理

Ⅴ.術中管理—2.一般管理と危険症

著者: 安冨徹 ,   兵頭正義

ページ範囲:P.662 - P.665

はじめに
 術中管理のうち麻酔に直接関連した事項は前号で述べたので,今回は主として術中の一般的管理と種々の危険症に対する対策と処置などについて述べることにする.

アンケート

胃の手術後,ダンピング症状の予防はどうしているか

著者: 井口潔 ,   佐分利六郎

ページ範囲:P.666 - P.667

 胃の手術といつても,一般実地臨床上多く行なわれる手術に胃切除と胃全摘出があり,またダンピング症候群にも,その発現時期,発現機序などを異にする早期および後期症候群の2種類がある.したがつて,本症に対する対策に関してもけつして単一なものではない.本稿では,実地臨床上,もつともしばしば遭遇する胃切除後の早期ダンピング症候群の対策に関して,私どもの教室で現在施行している方法の要点を述べ,後期症状および胃全摘出の場合の対策をも簡単に補足してみたい.

COMMENT

小児外科学会発足して

著者: 若林修

ページ範囲:P.668 - P.669

 待望の小児外科学会が,いよよい発足することとなつた.去る昭和39年1月28日東京大学:構内好仁会食堂三階の大広間において,全国の各大学や大病院より集つた70名の外科,小児科,麻酔科,産婦人科,泌尿器科にわたる先生方の熱心な討議により幕を開き,3時間にわたつて行なわれた日本小児外科学会創設発起人会において,全員異議なく満場一致にてその発足が可決され,その具体的計画についても一部決定せられ,実施計画の段階に入つたのである.
 わが国の小児外科に関しては,海外の諸国に比して,いちじるしく立おくれていることがかねてより識者の知るところであり,その領域の広さと重要性から,海外を視察し,この方面に関心をもつ方々よりは,深く案ぜられていたことは周知の事実である.

医学教育について,とくに臨床医学教育の改革(1)

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.669 - P.670

 医学教育といつても範囲が広く,その立場によつて意見はいろいろと思います.私としては外科学を通じてある程度教育に従事している立場とここ数年来,社会保険医療の医学教育,とくに臨床医学教育に及ぼす弊害がいかに大なるものであるかを痛感しておりますので,その立場と2つの立場から述べたいと思います.それにつけ加えて約3年前より私どもの東京女子医科大学で実施しています最高学年を各科医局に配属して病棟実習を通じて学習させるシステムについて言及したいと思います.紙面の都合上,3回に分けて述べることをあらかじめ御諒解戴きます.
 まず医学教育のうち臨床医学教育についていかなる点を改革しなければならないか,私見を述べさせて戴きます.

症例

尿膜管化膿症の1例

著者: 横山蒼 ,   宮沢護 ,   曽我淳

ページ範囲:P.679 - P.682

はじめに
 尿膜管疾患は比較的まれなものであり,その退行過程において多少の異常があつても臍尿瘻以外は臨床的にはほとんど問題とされず,炎症または結石を合併してはじめて外科的治療の対象となることが多い.われわれは最近,膀胱に開口する尿膜管に起因する下腹部膿瘍の1例を経験し,手術的に治癒せしめえたので報告する.

ウェーバー氏症候群を呈した蝶形骨稜メニンジオーマ

著者: 尾形誠宏 ,   堀出礼二 ,   小野辰久

ページ範囲:P.683 - P.686

はじめに
 ウェーバー(Weber)氏症候群は,一側の動眼神経麻痺と他側の片麻痺をきたす場合で,一名上交代性麻痺ともよばれるが,本症状を呈するのは,解剖学的にみて動眼神経核と大脳脚を含めた中脳の障害と考えられる場合が多い.
 われわれはウェーバー氏症候群を呈した蝶形骨稜メニンジオーマを脳血管写により診断し,これを亜全摘出しえた症例を経験したので報告する.

小腸亜全領域,盲腸,上行結腸,横行結腸右半の壊死を伴える腸間膜血管閉寒症の1手術治験例

著者: 大沼倫彦 ,   河村基

ページ範囲:P.687 - P.690

はじめに
 いわゆる急性腹症とよばれる疾患群のなかに,腸間膜血管閉塞症があるが,比較的まれにして,しかも症状不定なるため術前に確診を下すことは困難であり,早期手術によらねば,予後もなお重大である.著者らも最近本症の1例を経験し,来院時すでに手術時期を逸した感があつたが,広範性腸切除により一命を保ちえたので報告し,あわせて本症にかんする若干の考察を試みた.

特発性総輸胆管拡張症の手術治験例—手術法に関する考察

著者: 山川年

ページ範囲:P.691 - P.693

まえがき
 本症は1817年Todd1)により最初に記載されたが,1852年Douglas2)がこれを確認報告して以来,その報告は逐年増加し,Shallow (1943)3)は文献上175例を,Attar (1955)4)はこれに追加して201例を,またAlonso-Lej (1959)5)は403例の多数を蒐集報告した.しかも本症は本邦人に比較的多く,これら報告の約3分の1から半数を占めている点は興味が深い.本邦にては佐久間(1905)が最初に報告して以来,四ツ柳(1936)6)は50例を,渡辺(1947)7)は90例を,津田(1956)8)は1943年以降108例を,さらに最近日高(1659)9)は194例の多数例を報告している.このように本邦においては,決して稀有な疾患とはいいえないがなお経験する機会は一般に少ないようである.私は28歳の家婦で,術前に診断しえた特発性総胆管拡張症の1例を経験し,手術により軽快せしめえたので報告するしだいである.

麦角製剤Hyderginの外科領域の使用

著者: 綿貫喆 ,   石塚忠夫 ,   望月宣明

ページ範囲:P.694 - P.699

はじめに
 麦角アルカロイドの臨床への応用は従来はおもに産科方面に限られていたが,近年その薬理学的研究がすすみ応用領域はしだいに拡大し外科的疾患にも使用されるようになつた.ヒデルギンはその1つで以前エルゴトキシンとよばれていた天然アルカロイド群から誘導されたものであつてその薬理作用は多岐にわたつている.そのおもなものを列記すると
1)血管運動中枢に直接作用して血.管緊張を抑制する.

外国文献

術中の空気感染,他

ページ範囲:P.700 - P.703

 1年半にわたつてPeter Bent Brigham Hospの3手術室で行なわれた250回の手術について,患者169名,外科医79名,手術関係者・技術者・外来見学者309名,手術室の細菌学的検査を行なった.手術室は3700ft3,滅菌空気で1時間7回換気されるコンジショニング,手術器具机はじめ5個所を培養.Staph.aur.52/52A/79/42D/7/7O/73/80/81/82/47Cのcangierに接触した患者169名から術後2名(1.2%)の同株菌創傷感染が発生した.1例は胆剔,1例は腎移植の供与者で,その感染の状況が精査されている.検査技術者169を名のマスク・咽喉・鼻腔・直腸の培養でSt.aur.52/…47C菌がいくつか証明された.手術室からの同菌検出は48.5%(うち器械机が33%).患者は術前・術中・術後・退院後,それぞれ65ザンプルをとつて培養したが,在院中,同菌キャリヤーとなつたものはない.術者・見学者のマスク・ゴム手を培養するに,マスクから同菌検出7名で微量であつた.特定のdisseminating carrier以外に同菌を多量に保有することはない.キャリヤーでは鼻腔咽喉に同菌を保有し,いかに洗いたての着衣,消毒ずみのマスク・手術衣を用いても,きわめて容易に検出された.

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臨床検査の資料(4)—Ⅴ.正常値(生化学への領域)

ページ範囲:P.704 - P.705

 正確な臨床検査が適確な診断から適正な治療へ導く.本誌は東大中央検査室の協力を得て,十分吟味された資料を表覧連載し,日常診療に資したいと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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