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特集 癌の治療成績の向上
食道癌
著者: 赤倉一郎1 中村嘉三1 掛川暉夫1 保坂陽一1 渡辺寛1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部外科学教室
ページ範囲:P.587 - P.594
文献購入ページに移動外科手術の進歩により,幾多の困難性を有する食道癌の手術成績も最近急速に向上してきた.すなわち1940年代と1950年代後半以向の諸家の成績を比較すると,切除数,手術死亡率等に著明な差が認められる(第1,2表).しかし他の外科手術と比較した場合,いまだ死亡率も高く,遠隔成績よりみた治療成績も決して満足すべき状態でない.これらの原因としては、まず癌治療の根本である早期受診,早期発見が行なわれず,なお多数の症例が根治切除不能例であると云うこと,また食道癌患者は高齢者が多く,術前すでに患者としての悪条件を種々有していること,手術にあたつてはその解剖学的特長もあつて,手術手技上非常に困難を有すること.さらには,術後種々の合併症を起こし易いことなどがあげられている.これらの問題点を解決させることが,食道癌の治療成績を向上させうる最短への道であることは論を待たない.実際これらの点に関して,すでに諸家により努力が払われており種々の成果が上げられている.しかし,遠隔成績を見た場合,5年生存率は10%前後というのが現況であり,他の消化器癌のそれと比較した場合かなりの差が見られる.最近放射線療法,特に60Co照射と手術の併用によりその根治率向上にかなりの期待がもたれている.われわれは,自験例276例を中心に,食道癌治療成績向上に関して,60Co術前照射の問題をも含め2,3の点について述べたいと思う.
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