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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科19巻6号

1964年06月発行

雑誌目次

特集 外傷の救急処置

頭部外傷の救急処置—自験例を中心として

著者: 工藤達之 ,   石森彰次

ページ範囲:P.733 - P.738

はじめに
 頭部外傷に関する研究,報告は古くから多数1)3)8)20)行なわれて,とくにその診断と治療に関しては最近めざましい進歩をとげつつある,これには多数の外科医,および脳外科医が永年にわたつて,幾多の経験と研究を重ねた結果えられたもので,とくに頭部外傷時に起こる脳および頭蓋の病変に関する基礎的研究から,多くのことが知られるようになり,日常われわれが遭遇する種々の程度の外傷の臨床的な面への応用が行なわれるようになつた.以下頭部外傷の救急処置およびそれに必要な診断的事項について,われわれの自験例を中心として述べてみたい.
 頭部外傷はその受傷機転,受傷部位,受傷状況,年齢などにより千差万別の臨床症状を呈し,しかも受傷当初の処置が適切であつたか否かによつてその経過にいちじるしい差異をきたす.最悪の場合には致命的な状態に陥ることも少なくない.受傷程度によりきわめて軽度でいわゆる打撲の程度のものから,完全に意識を消失した昏睡状態,さらに救急処置をほどこすいとまもなく死亡する重症のものまで種々の段階があり,これに関しては種々の分類1)8)が行なわれてきた.われわれは従来から臨床的な面から重症,軽症の2つにわける簡単な分類法をとつているが,問題はしばしば受傷の程度をいかにして判定するかにかかる.

胸部外傷の救急処置

著者: 宮本忍

ページ範囲:P.739 - P.743

はじめに
 胸部外傷が四肢,腹部,頭部などの外傷と根本的にちがう点は,胸部には呼吸循環をつかさどる心,肺,大血管などの重要臓器があることである.これらの重要臓器は胸廓によつて保護されてはいるが,強い外力で打撲や圧迫を受け,または鋭利な刃物で刺創を受けると間接または直接の損傷を発生する.たとえば,肋骨骨折は骨損傷としては軽いものであるが,血胸や気胸を発生すると致命的な呼吸循環障害がひきおこされる.これは胸廓という骨性の保護機構がかえつて災いするためである.また心膜内の出血は200ccの少量であつても急激に発生すると.心タンポナーデといわれる状態になり,生命の危険を生ずる.
 胸部外傷は便宜上,次の3種類に分けることができる.

腹部外傷の救急処置

著者: 斉藤淏 ,   松林富士男 ,   木下博 ,   山本達郎

ページ範囲:P.744 - P.748

はじめに
 腹部損傷は多くの外傷例の中で,一般に少ないのである.昭和33年日本臨床外科医会の集計した25777例(124病院)のうち2.4%であつた.Po-mers (1930〜1939,712例)の1.2%,Voltmar(1256例)の2.2〜1.7%,前田・林の交通外傷例中での1%などである.すなわち腹部は衣服によつて被われているのみならず,普通の生活時の体位では腹腔の大部分は,肋骨,骨盤骨,脊椎骨ならびに筋肉によつて保護されているからである.しかし,内臓損傷の診断の困難性と緊急処置の必要性とは,この治療を巡つて,今日でも依然として,きわめて車要な問題である.一般に,外傷の治療成績は,最近のショック対策の進歩や、抗生物質の普及などによつて,いちじるしく改善され後遺症もまた大いに軽減されたと考えたい.しかし,交通災害の現状をみるとき,腹部損傷の特異性を,再認識するとともに,さらに研究を深めねばならぬと考える.米国ではしばしば経験例が一括報告され,検討されているのであるが,本邦では少ない.そこでわが教室および関係者によつて.経験した症例について,ともに検討し考究する目的で,最近までの経験例を回顧してみるのもあながち無意味ではなかろうと思い,調査しえたものの,一部を記述することとした.

四肢外傷の救急処置—創傷処置とCrush syndromeについて

著者: 天児民和 ,   小林晶

ページ範囲:P.749 - P.756

はじめに
 近時産業災害および交通事故の激増にともない,外傷患者をとりあつかう機会は非常に増加している.外傷患者を最初にとりあつかう医師の処置如何によつて患者の予後が異なつてくるのは当然であるが,ことに一刻を争う外傷患者の場合は,理論的にははつきりと体系づけているつもりでもいざ行なう段になると,とまどう場合が生じてくる.外傷患者でショック状態にあるものではその対策をたて生命に対する危険を取り除くことはもちろんであつて,これに対する手段は現今ではほとんどの病院において行なわれ普及しているように思われる.またこれに関する文献も枚挙にいとまがない.したがつてこの小論においては,ショック対策や患肢の固定などの事柄は他にゆずつて,一般外科医が是非心得るべき四肢の創傷の処置と,われわれの教室でここ数年来研究を行なつてきたcrush syndromeについて少し触れたい.

泌尿器外傷の救急処置

著者: 西浦常雄

ページ範囲:P.757 - P.761

はじめに
 戦争,天災,交通輻輳,土木建築重工業の発達,スポーツ等の企図の大型化に伴つて,外傷の程度は重篤化する.またその時代の社会事情に応じて,外傷の発生頻度は増減し,外傷の種類も変化する.したがつて外傷の統計的数値はその偶発性と相俟つて刻々と変化する.欧米における外傷の原因は,戦時を除いて,交通事故によるものが首位を占めているのに反し,本邦では工場災害が首位を占めてきていたが,今後は欧米と同様な事情に向うものと思われる.
 泌尿器外傷は,その解剖学的位置関係より外傷の中では比較的頻度の低いものであるが,その救急処置の適否によつては種々な重大な合併症を来す可能性が多い.しかも外傷はその偶発性の故に必ずしも泌尿器科専門医の救急処置を受けることができないので,初診医の泌尿器科的原則に基づいた救急処置が要望されることになる.

災害外科の麻酔

著者: 森岡亨

ページ範囲:P.762 - P.766

はじめに
 交通機関の急激な高速化,土木重建築の隆盛,鉱工業のいちじるしい進展に伴い,広汎損傷や火傷を伴う災害外科患者の治療が注日されるようになつてきた.こういう場合の救急外科治療に対する麻酔は,後述のようにいろいろな問題を孕んでいて,麻酔法の選択施行の適正であるか否かが直接患者の予後を左右することが多い.これらの諸問題点を実際の臨床に照らして述べてみたい.

グラフ

開頭術の実際

著者: 竹内一夫

ページ範囲:P.716 - P.723

 頭蓋内の腫瘍・血腫・血管奇型・膿瘍などを外科的に治療せんとすれば,どうしても開頭術が必要である.開頭術の歴史は古く,古代エジプトやインカ時代にも種々の目的で行なわれていたようであ.もちろん現在では世界中の到るところで脳外科医によつて開頭術が行なわれている.
 開頭術はあたかも缶詰をあけるようなものである.上手にあければ何でもない缶詰も,缶切がなかつたり,一旦あけそこなうと,どうにもならなくなり,指を怪我したり,ついには中味を食べられなかつたりすることさえある.開頭術も同じで,順調にできれば,短時間で目的を達することができるが,時には開頭するだけで数千ccの出血を招くこともあるし,手技拙劣のため硬膜や脳に致命的な損傷を加えてしまうことさえある.

西ドイツの救急自動車

著者: 鈴木又七郎

ページ範囲:P.768 - P.773

 ヨーロッパを代表するロンドン,パリの救急活動は,独立した中央機関の指命に基づいて行動し,西独ケルン,ボンでは,わが国で多く見られるような消防署の管掌になつている.この二つの機構から見た救急活動の批判は,ここでは略しておこう.しかし,いずれも救急活動の計画が整然と進められている点は実に眼を見張るものがある,これは,古い歴史と国民が救急問題に深い関心と理解を持ち,あわせて医師の全面的の協力が進歩の路を開いたのである.
 ここでは,救急活動の第一線で活躍している,西独ベンツ,ミーゼン(Benz-Miesen)で作つている救急車(Kranken—Wagen)を紹介し,外国ではどれだけ傷病者の輸送管理がゆきとどいているか!どれほど救急車を重要視しているか!を知つていただくことにした.

外科の焦点

腎臓の移植

著者: 井上彦八郎

ページ範囲:P.725 - P.731

はじめに
 腎臓を移植するという試みには,腎機能障害者の症状を改善し,さらにその生命を救うという目的と,尿管上部の病変の際に,その形成手術が容易に行なうことが出来るという目的とがあるわけである.しかしこれ以外に,この腎移植にはきわめて重要な意味が含まれている.すなわち臓器移植の臨床という面から見ると,腎移植は他の臓器の移植に比べて経験例の報告が圧倒的に多く,少数例ではあるがその成功例もみられている.さらにこの腎移植の成功は,とりもなおさず他臓器の移植に対しての刺激ともなるわけで,この点腎移植は臓器移植を成功に導く1つの鍵を握つているということができる.
 さて今日行なわれているような腎移植は,1936年にVoronoyがはじめて施行して以来,現在まで約200例に達しているといわれている.ここに私はこの30年にわたる腎移植の歩みというものについて順を追つて説明しながら,その現状について紹介してゆきたい.

医学書院出版だより

—橋本 寛敏 著—「写真解説 病院管理」

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.748 - P.748

 橋本寛敏先生は,わが国近代病院管理の大先覚者であり,最高の指導者であることを疑うものはない.今回上梓された本書は,先生みずから執筆された「病院管理」‘書であつてしかもユニークな写真解説という方法をもつて,先生畢生の創作品聖ルカ病院を対象として具体的に解説を試みられたものである.
 既に数年前に,写真解説「近代病院の設備と機能」として出版されたが,今回は大改版し,新たなる構想の下に病院管理として体系化されたものであつて,全く面目を一新したものである.いわば橋本先生の病院管理の理念を世に問うものと理解されるものであつて,病院関係者が大いに注目しなければならない著書である.病院管理というものは本来実際的あつて,実際の経験からその原則が生まれてくるものである.しかしその実際は,人道主義と合理主義に貫ぬかれていなければならない.聖ルカ病院は,創立者トイスラー博士の信念であつた」この病院はキリスト教の教える愛の力を顕現するために生きて働らく有機体である」というスピリットの上に顕現された,わが国病院界の金字塔である.そしてこの顕現こそ橋本院長の手によって完成されたものである.数十年にわたる先生の不抜の信念と非凡の明察と手腕が今日の聖ルカ病院を築き上げたものである.

Medical Notes

脳障害と内臓脂肪変性,他

ページ範囲:P.774 - P.775

 SydneyのRoyal Alexandra Ho-sp.for Childrenで,1959〜1962年間に21例の特異な疾患が観察された(Reye, R.D.K.:Lancet 2:749,1963).生後5ヵ月から8.5歳までの男7,女14の児童.はじめセキ・咽頭痛・耳痛・鼻汁など軽症ではじまり,1〜3日後または1〜3週後,かなり急に悪化し,つよい嘔吐・無関心・昏睡・ケイレンを呈し,半数あまり上気道感染症状があり,呼吸不規則,発熱などがあつて入院1〜2.5日のうちに17名が死亡したというのである.
 ケイレンはfit,focal twitching,tetanic spasm, o,pisthotonusなど一定でない.また治療に抗し抑制しにくい.吐物は暗褐色.昏睡になると嘔吐はやむ古多くは肝触知,やや硬い.筋トーヌス・腱反射は同一患者でも時によつて亢進または低下す.瞳孔散大し対光反射消失す.体位は肘を屈曲,脚を伸展,手を握り,特異である.呼気はケトン臭あり.4例に皮膚発疹があつた.ピンク色丘疹で痂皮をつくることもある,生存わずか4名のみ.髄液<25Hng/100mlでいちじるしく低いのが通例.血糖62mg以下7例で,他は正常かやや高い.血液尿素は被検12例のうち,9例が40mg以上で,これは脱水の結果ではない.

講座 外科領域

Aneurysmal Bone Cystのレ線像と組織像

著者: 伊丹康人 ,   赤松功也 ,   高槻先歩

ページ範囲:P.776 - P.781

Ⅰ.Aneurysmal bone cystという疾患名について
 Jaffe,LichtensteinのいわゆるAneurysmal bonecystは従来いろいろな名称でよばれてきた.その名称の歴史をたどつてみると次のごとくである.すなわち,1893年,Van Arsdaleは上腕骨骨幹中央部に発生した本疾患に対し,骨膜下に発生したossifying hematomaと名づけた.1910年,Bloodgoodはperiosteal hematomaにより骨皮質殻を形成するbone cystと解釈し"subperiostealhematoma with formation of a peripheral boneshell"とした,1928年,Coneは外傷由古来のossifying subperiosteal hematomaと解釈した.
 1930〜1940年,Geschicter. Copeland(1931)は"subperiosteal giant cell tumor"と呼びGiantCell tumorとの鑑別が困難であると述べている.またEwing(1940)は"angioma"とか"benignbone aneurysma"と呼んでいる.

小児外科における水分電解質の問題(その3)

著者: 石田正統 ,   沢口重徳 ,   大部芳朗

ページ範囲:P.782 - P.789

V.K代謝
1.Kの分布
 前講にのべたNaはその大部分が細胞外域に存在し,細胞外液陽イオンの90%以上を占めるのに対し,Kはその大部分が細胞内に存在する.既述のごとく体K量は新生児45mEq/kg,成人55mEq/kgで年齢的差異は比較的少ないが,分布はやや異なり新生児ではその約60%が筋肉に,20%が脳に,残りが細胞外液,骨その他に分布する.これに対し,成人では約80%が筋肉に,残りが脳,細胞外液,骨その他に存在している.これら体Kの大部分は放射性同位元素K42により速かに交換される35)
 KはMg,燐とともに細胞の主要構成電解質であり,また細胞内外の滲透圧および酸塩基平衡維持,細胞内代謝ことに酵素反応,神経筋機能などに重要な役割を演じている.

検査と診断

外科的腎疾患の診断と検査

著者: 大越正秋 ,   生亀芳雄

ページ範囲:P.790 - P.794

はじめに
 外科医の方が手術の適応となる腎疾患に遭遇されたとき,実際にどのようなことに注意されて診断をすすめ,またどんな検査を行なえばよいか,その要点ともいうべきことを疾患ごとに述べる.

患者管理

Ⅵ.術後管理—1.手術直後期を中心として

著者: 安富徹 ,   兵頭正義

ページ範囲:P.796 - P.800

Ⅰ.術後患者管理の考え方
1. いとぐち
 術前準備と同じく術後管理にも,すべての症例に共通するような,うまい法則があるわけではない.手術術位,手術術式,侵襲の大きさ,術前のrisk,諸種の刺激に対する反応性,さらに予期しない合併症の発来などによつて,術後管理法は千差万別である.私ども臨床医はこれらの各種の状態を,それぞれの時点において正確にとらえ,即応した対策を講じなければならない.

COMMENT

医学教育について,特に臨床医学教育の改革(2)

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.801 - P.802

 前号で現行の社会保険医療制度の諸欠陥から生まれた弊害として卒業後の若い医師の勉学の意慾が失なわれて,大学における医学教育が存在の意義を失なうことから,臨床医学教育の直髄である医局における教育を大学の教育課程の中に移すことが必要であるという主張を述べました.私どもの東京女子医科大学ではこの観点から約3年前の昭和36年4月以来最高学年を約1年間,各科医局に配属して各科医局員と一緒に病床について修練する教育方式を採用しました.
 この方式の採用になるまでの経過としてはいろいろと準備段階があつたわけでありますが,最大の推進力となつたものは現行の社会保険医療制度の弊害を如何にして是正すべきかという点に学長はじめ各教授が目覚めていたことにあるといえます.ただ多くの教授が障害として挙げた項目の中,もつとも強かつた点は教育に当るスタッフが少ないということであります.

臨床病理検査についての2,3の意見

著者: 福田純也

ページ範囲:P.802 - P.803

 臨床病理検査には,1)手術材料の組織診,2)生検(試験切除)材料の組織診,3)穿刺液,喀痰その他の塗抹細胞診がある.これらの諸検査の過程は,症候の確認—局所の十分な肉眼的観察—材料の採取(塗抹を含む)—固定—切り出し—包理—薄切—染色—封入—鏡検(診断)であり,固定までを臨床の先生方が,切出しと包埋以後を病理関係青が担当することになる.したがつて,臨床病理検査が正しく行なわれるためには,(1)上記諸過程の実施の適否,(2)検査目的を十分認識した上での臨床と病理の連絡の密接さが重要なのである.本稿では,これらの問題について,あまり形式ばらずに外科臨床に役立ちそうなことを思いつくままに記すことにする.
 1)臨床関係の事項をできるだけ詳しく病理担当者に通知していただきたい.年齢,性,職業,(現在ならびに過去の)住所,臨床診断,臨床経過,他の臨床検査,揚合によっては治療方法(特に手術材料については術式を含めて)等である.

症例

破傷風患者をアメリゾールの筋注で治療した経験

著者: 福田浩三 ,   安井貞夫 ,   岡昭 ,   斉藤喜八 ,   鈴木正康 ,   天野嘉之

ページ範囲:P.811 - P.813

はじめに
 破傷風患者に接する機会は年々少なくなつていく感があるが,ひとたび本症の激烈な筋痙攣発作を呈する患者を日前にすると,あらためてその治療法について,誰しも強い関心と,いささかの懸念を抱かざるをえないであろう.最近私共は,一破傷風患者に対し,従来の治療のほかに新しい試みとして,クラーレの一種である筋弛緩剤塩化ツボクラリンd-Tubocurarine chloride(アメリゾール 武田)を長期間筋注使用して良好な結果をえたのでここに報告して諸賢の御参考に供したい.

多発性十二指腸潰瘍の中の1個が穿通して惹起された胆嚢十二指腸瘻形成症例

著者: 対馬甫 ,   小野不二男 ,   小野慶一

ページ範囲:P.814 - P.819

はじめに
 胆道が周囲組織特に腸管の一部と癒着し,とくに腸管内腔に穿孔して瘻孔を形成することは古くから知られた事実であり,特発性内胆道瘻として外国文献には数多くの報告例を見る.しかるにかかる瘻孔形成の本邦における報告はX線診断例,手術例および剖検例を合せても未だ25例を数えるに過ぎない.これらの病因の過半数は胆石症を主とした胆道系疾患に求めうるものであつて,一次的に消化管潰瘍が存在し,それが胆道系に穿孔して起つた瘻孔形成症例は,自験例を含めてわずかに5例を数えるに過ぎない.元来十二指腸潰瘍の穿孔自体が,現在においてはまれにしか見られないものであり,山形1)によれば十二指腸潰瘍患者の1.5%であるという.従つて消化管潰瘍に基因する胆道瘻形成例に遭遇することはかなりまれなものと考えねばならない.
 われわれはレ線検査により「十二指腸潰瘍の胆嚢への穿孔による胆嚢瘻」なる診断を下し,手術によつてこれを確かめえた症例を経験したので,ここに報告すると共に収集した本邦における胆嚢消化管瘻の報告例をも合せて本症に関する総括的考察を加えた.

外反膀胱に臍帯ヘルニア等2〜3の奇形を伴つた新生児の経験

著者: 石田堅一 ,   林寛治 ,   西山保一

ページ範囲:P.820 - P.826

はじめに
 膀胱外反と臍帯ヘルニアを合併した外に,2〜3,奇形を伴つた新生児の1例を経験したので,報告する.

大動脈絞窄症の1治験例

著者: 西村正也 ,   正木秀人 ,   小田代憲一

ページ範囲:P.827 - P.833

はじめに
 最近の心臓血管外科の躍進とともに,それらに対する診断法も日進月歩の改善を見せており, したがつて本邦ではまれとされていた大動脈絞窄症も最近ようやく注目されつつある.著者の一人西村1)は,広汎な胸部大動脈絞窄症で手術不成功に終つた1例を報告したが,その後定型的な大動脈絞窄症の手術治験例をえたので報告する.

マンニットールの臨床経験

著者: 竹内一夫 ,   矢作保治 ,   千ヶ崎裕夫 ,   相羽正 ,   水谷弘 ,   中条泰行 ,   永津正章 ,   三井利夫

ページ範囲:P.835 - P.841

はじめに
 脳腫瘍や頭部外傷等による脳圧亢進は患者に苦痛を与え,全身状態を悪化し,ひいてはhernia-tionを惹起して生命の危険をもたらす.これらを軽減,防止するために第1表のごとく脳圧を下降調整する種々の方法が行なわれている.手術的に根治または持続的減圧を計る方法は別として,一時的減圧が患者の苦痛を軽減し,さらにはhern-iationを防止しうるのであつて,この方法として脳室または腰椎穿刺により髄液排除および種々の薬物による減圧がある.脳室穿刺は手術的に穿頭術が必要であり,脳室拡大がない時や,脳室の偏移変形がある時は余り適当ではない.また,腰椎穿刺は適応が問題であり時には危険を伴うため,一般に手軽で安全な方法として薬物使用による減圧法が行なわれている,従来使用されている薬物は,50%ブドー糖,Pereston-N(PVP),高張尿素液,ステロイド,利尿剤等であるが,これらは一長一短があり,もつとも容易に,安全に,副作用なく,減圧効果が大きくしかも速かに効く理想的な薬物が望まれるわけである.
 著者らは昨年10月初めより,20%mannitonを使用しているが,従来の薬物に比べてはるかに優れた種々の利点があるのを認めた.

外国文献

ショックの胸管リンパ,他

ページ範囲:P.842 - P.845

 乏血ショックでは再輸血後にもI131アルブミン(RI-SA)が肝・内臓領域につよく集まり,循環量回復後もRISAがこの領域の血管外に大量に出ていることを物語つている.したがつて血漿と血管外リンパとの蛋白交換という問題は一層の精査を必要とする.イヌ37頭を用い頸部で胸管にカニユーレ挿入,10分間隔でリンパを採取.そこでレゼルボアに脱血し動脈血圧を25〜30mmHgとし2〜2.5時間おき,輸血す.RISAは脱血前に注射したのも,脱血後注射したのもある.リンパ流量は前27.8±10.6ml/hから低血圧時19.9±8.6ml/hに低下するが,再輸血で32.7±18.8ml/hへ上昇した,脱血前期はRISA注10分後血漿の放射能は平衝に達し,以後,漸減する.脱血低血圧期にRISAを注入すると血漿放射能は急速に低下し30〜60分で平衡を得る.再輸血後の血漿放射能は急減することなく早く平衡となる.一方リンパの放射能は脱血前注でだんだん増加し,2時間後には血漿の50%(平均)に達する.脱血ショック期にも少し上昇の傾向を取るが,血漿放射能に比して33%(平均)にすぎない.再輸血後のリンパ放射能は急増し,2時間後には血漿の73%(平均)となる.以上の成績から,リンパは脱血2〜2.5時間のうちには,血漿量復元にあまり貢献していないということになる.

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臨床検査の資料(5)—Ⅴ.正常値(生化学の領域)

ページ範囲:P.846 - P.847

 正確な臨床検査が適確な診断から適正な治療へ導く本誌は東大中央検査室の協力を得て,十分吟味された資料を表覧連載し日常診療に資したいと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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