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特集 外傷の救急処置
腹部外傷の救急処置
著者: 斉藤淏1 松林富士男1 木下博1 山本達郎1
所属機関: 1日医大斉藤外科
ページ範囲:P.744 - P.748
文献購入ページに移動腹部損傷は多くの外傷例の中で,一般に少ないのである.昭和33年日本臨床外科医会の集計した25777例(124病院)のうち2.4%であつた.Po-mers (1930〜1939,712例)の1.2%,Voltmar(1256例)の2.2〜1.7%,前田・林の交通外傷例中での1%などである.すなわち腹部は衣服によつて被われているのみならず,普通の生活時の体位では腹腔の大部分は,肋骨,骨盤骨,脊椎骨ならびに筋肉によつて保護されているからである.しかし,内臓損傷の診断の困難性と緊急処置の必要性とは,この治療を巡つて,今日でも依然として,きわめて車要な問題である.一般に,外傷の治療成績は,最近のショック対策の進歩や、抗生物質の普及などによつて,いちじるしく改善され後遺症もまた大いに軽減されたと考えたい.しかし,交通災害の現状をみるとき,腹部損傷の特異性を,再認識するとともに,さらに研究を深めねばならぬと考える.米国ではしばしば経験例が一括報告され,検討されているのであるが,本邦では少ない.そこでわが教室および関係者によつて.経験した症例について,ともに検討し考究する目的で,最近までの経験例を回顧してみるのもあながち無意味ではなかろうと思い,調査しえたものの,一部を記述することとした.
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