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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科19巻7号

1964年07月発行

雑誌目次

グラフ

静脈の外科—静脈移植の場合

著者: 杉江三郎 ,   渡辺正二 ,   村上忠司 ,   田辺達三

ページ範囲:P.861 - P.865

 静脈移植の問題は外科臨床のなかで,いわばとり残された領域のひとつであり,上大静脈閉塞症候群や,下大静脈あるいは腸骨静脈閉塞などの場合に,静脈移植の必要性は痛感されながら,今日まで適確な方法というものがなかつた.
 最近の文献や,われわれの教室の広範な実験的研究からも材質としては,静脈に関する限り自家,同種,および人工血管ではテフロン(Teflon)がもつともすぐれていることが認められた.吻合法は,器械縫合でも手縫いでも特別の差異はないが,要は内膜の適合に注意をはらい,損傷を防止する慎重な取扱いがもつとも重要な条件であるように思われる.

オープンシステムの病院(浜松市医師会中央病院)

著者: 山本正

ページ範囲:P.928 - P.933

 当病院の設立趣旨は,医療本来の姿である医師対患者の人格的つながりの美点を生かし,地域住民それぞれがつねに家庭医をもち,健康保持増進につとめ,万一発病の場合は初診から全治まで一人の主治医の管理下において適切な診断治療がおこなえる一貫診療形体を理想とする.その理想実現のためには,現行の国民皆保険制度下において一個人や,一企業体などの力によつて完備した綜合的医療形体を維持運営することは至難なことである.
 そこで当地区では医師会員の能力の綜合結集を期するため、オープンシステム病院を設立したしだいである.

外科の焦点

静脈の外科—主として静脈移植について

著者: 杉江三郎 ,   渡辺正二 ,   村上忠司 ,   田辺達三

ページ範囲:P.867 - P.872

I.はじめに
 静脈の外科という範囲を広義に解釈すれば,静脈血栓症,静脈閉塞あるいは静脈瘤など種々疾患が包含され,しかもそれらの手術的治療法ということになるが,ここではそのうち,主として静脈閉塞に対する外科治療の問題をとりあげ,ことに今日の焦点のひとつともなつている静脈移植の課題を論じてみたい.
 元来静脈閉塞に対する手術治療の方面はややもすると等閑に附され,未開発のまま放置されてきたきらいがあつたが,それにはもちろん理由があつたわけである.同じく静脈閉塞といつても四肢静脈など末梢の静脈閉塞は副血行路の発達などのため重大な症状を呈するには至らず,したがつて手術適応の上でも,その解決を迫まられるほどの問題は少ないものであつた.また一方比較的太い静脈の閉塞は種々な臨床症状をあらわし,たとえば上大静脈閉塞症候群(Superior vena caval sy—ndrome),Budd-Chiari症候群,あるいは腸骨静脈閉塞による下肢のうつ滞と浮腫などは古くから知られ,種々な治療法も行なわれてきたが,ことに今日まで確実な静脈移植法というものが決定されていなかつたために,成績はむしろ決して良好とはいえなかつたものである.このような困難性のためにややもすると関心が薄れるという傾向も否み難い事実であつたであろう.

論説

Langerhans島腫瘍について

著者: 清水準也 ,   小林淳一 ,   太田隆典 ,   古田宏 ,   藤井宏 ,   榊原宣 ,   有正修道

ページ範囲:P.877 - P.887

はじめに
 内分泌臓器の機能亢進または機能低下時における病態の観察を通じて,そのホルモン作用の本質を知ろうとする内分泌学の発展はいちじるしく,外科領域においても内分泌外科学として注目されるようになつてきた.
 膵の内分泌についてLangerhans(1896)の膵島細胞の発見,そしてBanting & BestによるInsulinの発見以来多方面の研究があり,とくに糖尿病の成立にはLangerhans島以外の諸因子の関与があり,糖尿病=Hypoinsulinismと断定しえない場合が少なくなく,糖尿病に関しては糖代謝の研究とあいまつて多くの業績が報告せられている.しかしLangerhans島の器質的変化によるHyperinsulinismは純粋な内因性Insulinの増多に由来する病態と考えられており,糖尿病に比べるとこのような症例がきわめて少ないためもあつて,いまだ十分解明されていない.Langerhans島腫瘍は1902年Nicholls1)が最初に剖検例について,また1927年Wilder2)がはじめて臨床例について報告している.その後1929年Howland3)ははじめて外科的に良性膵Langerhans島腺腫の剔出術を行ない,発作を消失せしめることに成功した.以来本腫瘍が内分泌外科学の面から非常な興味をもつて報告され,現在まで約600例に達したといわれる4)

経腰的腹部大動脈造影の診断的価値と合併症

著者: 稲田潔 ,   和気秀文

ページ範囲:P.888 - P.896

はじめに
 腹部大動脈造影は,腹部大動脈および下肢動脈の閉塞性疾患,動脈瘤,縮窄症,腎血管性高血圧など各種の血管性疾患の診断,治療法の選定のほか腎疾患,腹部腫瘤の鑑別などに重要かつ有力な検査法として,欧米では各方面で日常広く用いられているが,本邦ではまだ一般にあまり普及していない.
 腹部大動脈造影法としては現在,1)経腰的穿刺法(直接法)と,2)逆行性カテーテル法(間接法)の2つが行なわれている.前者は1929年dos Sa-ntosによりはじめられたもので,血管外科の発展につれ下肢動脈の閉塞性疾患にさいしてはroutineの検査法として普及し,最近腎血管性高血圧が一般の注目をひくようになり,腎動脈造影法としての価値がクローズアップされ,その応用範囲がますます拡大されてきた.逆行性カテーテル法としては,Seldlinger (1953)1)によりはじめられた経皮的に大腿動脈を穿刺し,逆行性に細いカテーテルを挿入して行なう方法が,とくに内科医,放射線科医などに好んで用いられている.本法は前者に比べると操作がやや複雑,また高価かつ特殊の装置を必要とするため本邦では従来ほとんど行なわれていなかつたが,最近ようやく2,3の施設より使用経験が報告されている2)3)4).両法はそれぞれ特徴があり、その優劣はにわかには断定しえないが,操作の簡単という点では前者がはるかにまさつていることはいうまでもない.

胃壁および軟部組織の好酸球性肉芽腫

著者: 大槻道夫 ,   住山正男

ページ範囲:P.897 - P.913

はじめに
 比較的まれな疾患である胃壁好酸球性肉芽腫と,軟部組織好酸球性肉芽腫を経験したのでこれらを報告し併わせて文献的考察を行なつた.

胃ポリープ症に関する臨床的考察—最近5年間に経験した症例から

著者: 松浦雄一郎 ,   藤谷博義 ,   山下憲次郎

ページ範囲:P.914 - P.921

はじめに
 胃ポリープ症については従来も貧血や悪性変化を起こすという点で,臨床家も無関心ではなかつたが,まれにしか遭遇しないものと考えられていた.しかし最近,レ線や内視鏡による検査法が長足に進歩し,他方胃疾患とくに胃癌に対する一般庶民の認識がたかまり,胃検査を積極的に受けるようになつたので,私共は以前よりも本症を経験する機会が多くなつた.そこで最近5年間に私どもの外科を訪れた胃ポリープ症例について臨床的統計的考察を試み,次のごとき結果をえたので報告する.

長期間結紮された尿管の解放

著者: 原田直彦 ,   谷村守彦 ,   福山和宏 ,   酒井浩 ,   岩本洋三 ,   大西確次郎 ,   西崎登 ,   門田嘉弘 ,   佐々木巌 ,   朝倉保 ,   森本譲 ,   服部洋

ページ範囲:P.922 - P.926

はじめに
 尿管結紮による尿路の完全な閉塞を早期に解除して成功したという報告が,現在までに多数発表されている.しかし,尿管を結紮したあと,腎機能がどの程度長く保持されるかということについては,まだよく知られていない.日本の古い産婦人科医は,片側尿管損傷の患者に遭遇した場合には,むしろ病側尿管を結紮してしまうことが多いので,われわれ泌尿器外科医には,しばしばその解除手術をおこなう機会がある.
 最近われわれを訪れた女性患者は,以前に,尿管結紮術をうけており,対側腎に上行感染があつて.その機能が障害されていた.そこでわれわれは,結紮側腎の機能がすこしでも保たれていることを念じ、なお両側腎の機能を発揮させる目的で,尿管結紮解除弄術をおこなつた.その後,約6ヵ月を経て,この患者は死亡したが,この症例は,まことに興味あるものと考えられるので,以下に記載する.

医学書院/出版だより

「新しい外科管理」

著者: 榊原仟

ページ範囲:P.887 - P.887

 手術といえば,かつて電光石火の早技を要求され,熟練ということが患者の予後に重大な関係をもつていた.
 しかし術前・術中・術後の管理が長足の進歩をとげたため,術者は,手術の目的を理解し,その目的に最も適するように切開し,縫合するという技術を繰返せばよいという状況になり,術者の熟練があまり患者の予後を左右するということがなくなつた.

随想 老外科医の随想・6

看護婦の問題

著者: 中田瑞穂

ページ範囲:P.937 - P.941

 近頃とみに,看護婦の数の不足とドライ化ということが,医師や病院のほとんどすべてから憂慮されている.これは日本ばかりでなく諸外国でも多かれ少なかれ気付かれている問題らしい.こういう事態に至つた原因には,遠因も、あり近因もあり,かくなるべくして成つたのであろうから,急に慌ててあれこれと思いつき的打開策を講じて見たところで,目に見えた解決が出来ようとほ考えられない,しかし医療においては甚だ深刻な問題であり,何とかして,正しい診療に正しい働きを分担しつつ十分な能力の発揮し得る状態にもつて行かねげならないことはもちろんである.私はこの打開に実力もなく自信もないけれども,現状を見ながら,多少自分の感想をのべて叱正を仰ぎたいと思う.
 今日のように看護婦の不足を訴えられるに至つたこと,ずなわち看護婦になりたがらない、またたとえなつても常に不満であり,よりよい他の職業を求めるとか,看護婦として働らくにしても,俸給が安い,勤務時間が多い,夜勤がある,暇がない,と何から何まで不平で、本職もほんの申し訳に時間限だけ表面的にまことにドライにつとめるに過ぎず,も,しもそれを咎め立てすれば,すぐに反撃の体勢に入るというような傾向は,主として戦後世情の激変にもよるものと思う.

講座 境界領域

Chondrosarcomaのレ線像と組織像

著者: 伊丹康人 ,   赤松功也 ,   山下恵代

ページ範囲:P.942 - P.949

Ⅰ Chondrosarcomaとは
 Chondrosarcomaはあまり多いものではない.原発性骨腫瘍の全体の数からみると10%以下でEwing's tumorの2倍,osteogenic sarcomaの半分程度の発生率ということになつている.本腫瘍について比較的多数の症例を報告しているものはHendersom(288例),Geschicter・Copeland(154例),Jaffe・Lichtenstein(21例),O'Neal・Ackerman(35例),Coley等(52例)である.本邦では菊地・高橋等の各2例,鈴木・建持・高取・佐藤・伊藤・富重・岡田・古屋・宮崎等の各1例で計14例が報告されている.また全国の骨腫瘍登録例について調査しても1962年3月まで50余例を数えるにすぎない.従来の文献ではGeschicter・Copelandのごとく本腫瘍をosteogenic sarcomaの一型とするような見方もある.しかし,たとえosteogenic sarcomaの発育過程の中に,chondrosarcomaと類似の組織像を示すものがあつても,組織発生の上からは全くことなつたものである.

外科領域

小児外科における水分電解質の諸問題(その4)

著者: 石田正統 ,   沢口重徳 ,   大部芳朗

ページ範囲:P.950 - P.953

Ⅸ.水素イオン代謝
 細胞外液の水素イオン濃度がきわめて狭い範囲に維持されしているという事実は,水素イオン濃度の恒常性が生体にとつていかに重要であるかを示している.近年,酸塩基平衡に関する内外多数の文献がみられるが,概念および術語の混乱もくわわつてこれらを理解することは必らずしも容易ではないようである,本講においては水素イオン代謝の問題を生体の緩衝機能を中心としてのべようと思う.

検査と診断

心臓外科領域における臓器機能検査法—診断を中心に

著者: 和田寿郎 ,   中瀬篤信

ページ範囲:P.954 - P.963

はじめに
 心臓外科領域の外科の進歩はきわめて厳密な態度でその術前の病型診断を要求するに至つたのはけだし当然である.かつて心雑音を聴取すれば心臓弁膜症と診断し,根治的治療法を持たぬままにその心不全状態の改善のみに意を払うより術のなかつた時代とは異なり,現今のように心疾患に対する外科的療法の適応が拡大されてくると,これら先天性あるいは後天性の心疾患の正確な病型診断と循環動態を把握することが,その手術時期と適応術式を決定する意味において重大となる.だが心臓外科医における循環系疾患に対する診断の進め方といつても一般のそれと変りないが,原因的,解剖的(構造的),機能的の3点からの診断に加えて,その手術適応に関する考察がされなければならない訳である.この意味で心臓外科領域における臓器検査法は重要な役割を占めている.もちろんこれら検査成績は,病歴および一般診察の結果等と綜合的に評価されなければならないのはいうまでもない,以下われわれが心疾患の診断に通常用いている検査法の要項について述べる.

患者管理

Ⅶ.術後管理—2.手術後早期を中心として

著者: 安冨徹 ,   兵頭正義

ページ範囲:P.964 - P.968

いとぐち
 わたくしどもの手術後の病期の分け方については前号でのべたとおりである.本号では,主にその術後早期における共通的な問題をとりあげてみた.

アンケート

慢性膵炎による腹痛の治療法

著者: 秋田八年 ,   鈴木礼三郎

ページ範囲:P.970 - P.972

 慢性膵炎には病理学的に,あるいは原因から,またはその症状から,一応しかるべき分類がなされている.しかし実際臨床でその確診を下すことは必ずしも容易でない.したがつて,上腹部痛を訴える疾患で,普通に見られる胃十二指腸や胆道の疾患を明らかに除外できて,しかも膵の腫脹やその走行に一致する圧痛,特有な放散痛などから慢性膵炎を一応推定している場合も少なくない.これは膵の病変を忠実に反映する信頼度の高い臨床検査法がない今日やむをえないところであろう.
 したがつて,その疼痛に対してもまず一応薬物療法が行なわれしるのが普通で,この場合モルフィンの単独使用は膵分泌を促進し,いわゆるOddi筋のスパスムスをきたすので好ましくない.鎮痛作用があり,膵分泌に抑制的に働くアトロピン,ハバベリン.スコポラミン.バンサイン.プロバンサイン.クロールプロマジンなどがえ使用される.われわれはブスコパンを好んで使用している.さらに内臓神経,第7〜10胸部設交感神経節ブロックや旁背椎麻酔なども行なわれるが,われわれは好んで硬膜外にポリエチレンチューブ(No.15)を留置しておいてTh7〜Th10)の高さで持続硬膜外麻酔を行なう.これらの内科的処置に抵抗する頑固なる疼痛に対して外科的療法が適応される.これには手術時に膵よりの痛みの伝達路を切るいろいろの方法があるが,膵頭神経叢および左腹腔神経節正中側脚切除(吉岡)はその効果が確実であるといわれている.

COMMENT

医学教育について,特に臨床医学教育の改革(3)

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.974 - P.976

 約3年前,昭和36年4月より発足した私どもの東京女子医科大学で行なつている最高学年4年生の各科医局を回る病棟実習の実際について述べます.
 まず病棟実習の時間割を作るために,じゆうらいの臨床講義時間と外来診察の時間を各科別に加え,さらにこれにでンターン生の各科配属期間を加えてみました.この時間的比率を基礎に各科配属期間を決めますと,内科と外科が各6週間ないし5週間、その他の科が約2週間,ごく一部に1週間という割合になります.

連続講座「患者管理」を書き終えて

著者: 安冨徹

ページ範囲:P.976 - P.977

 昨年の9月の終りだつたと思う.医学書院からこの講座の執筆を依頼されて,いささかあわてたものである.私などは講座というようなものは読ませていただく方で,書く方ではない.もつとも,その少し前に[新しい外科管理」(青柳,木本両先生の監修,今年4月刊行)の術後一般療法の章を古書かせていただいたので,その時の「タネ」が少しあつたのが唯一のたよりであつた.

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外科学会印象記—乳腺の部

著者: 藤森正雄

ページ範囲:P.977 - P.977

 乳腺に関する演題には,出血乳房に関するもの,乳腺腫瘍の酵素化学的研究,性染色質からみた乳腺腫瘍の内分泌相関についてのものが各1例ずつあつた.
 門馬氏(金沢病院)は出血乳房58例をとりあつかつて,その原因となるのは乳癌,乳腺症,管内性乳頭腫が多く,管内乳頭腫は全例出血乳房を呈すると述べた.また出血乳房には腫瘤を明確に触知できないものがほぼ1/3あり、そのうちには乳癌が少数ながらあるから注意を要するとしている.天晶氏(慶大)はこれに出血乳房12例の追加報告を行ない,その原因をなすものは管内乳頭腫および乳癌であり,管内乳頭腫は出血乳房を呈することが多いこと,出血乳房では腫瘤を触知できなくとも管内乳腫の可能性が大きく,この際は腫瘍を剔出すればよいとしている.

第37回日本整形外科学会総会傍聴記

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.978 - P.982

 第37回日本整形外科学会総会は東京医科歯科大学青池勇雄会長の司会で昭和39年4月2日,3日,4日にわたつて東京文化会館で問催された.
 数日来の雨はからりと晴れ,上野の山の桜はちらほらほころびかけており,絶好の学会日和であつた.一部の会場は夜間音楽会などのため午後4時30分までという使用制限があつたが,会長はじめ医歯大整形外科教室員のご努力によつて会場はよく整備され,快適な環境であつた.会長の誠実な人柄が会の運営のすみずみまで滲みでており,厳しさの裡にユーモアを漂わせ,和やかに盛会裡に3日間の日程をおえた.実にすつきりした学会と感じたのは筆者ばかりではあるまい.

臨床検査の資料(6)

ページ範囲:P.992 - P.993

 正確な臨床検査が適確な診断から適正な治療へ導く本誌は東大中央検査室の協力を得て,十分吟味された資料を表覧連載し日常診療に資したいと思う.

Medical Notes

新しい奇形,他

ページ範囲:P.986 - P.987

 染色体には異常がみいだしえないが,小頭症・精薄・hypertonicity・発育障害・短かく上向きの鼻・上顎歯槽突起縁ひろく・下顎小・外性器未発育・手掌溝水平・Ⅲ指短小・多指症痕跡・趾Ⅱ Ⅲ合趾・metatarsus adductusその他の奇形を呈する3症例(たがいに近縁関係ないがSmith (J.Pediat.64:210,1964)によつて報告された.その1例の同胞が1名同じ奇形で死亡しているそうで,つまり4例みつかつたことになる.もう一度くりかえすと,身体および中枢神経の発育不全,小頭,顔面異常,性器未発育,指趾奇形を特色とし,食事摂取がうまくできず嘔吐たどあり.染色体は46本で異常がない.予定日またはおくれて生れ,誕生時の体重,身長は平均なみだが,生後の発育は平均よりずつとおくれる.これは食事(母乳・ミルク)摂取がうまくいかないから低栄養であるということも関係している.精神発育はすでに胎内でおくれており,fetal activity開始がおそい.ミルク摂取がうまくできない.muscular hypertonicityがある.1例は死後剖検しえたが,小頭症というほかには中枢に異常はない.嘔吐はしばしばくりかえし低栄養となるが,2例には嘔吐の原因となるpyloric stenosisがみとめられ,その1例は手術的に狭窄を除去したが,なお嘔吐があり,とくに気道感染の際につよかつた.

外国文献

マクログロブリン血性腎不全,他

ページ範囲:P.988 - P.991

 Dysproteinemiaの症状が活発に開拓されているが,たとえばmyeloma kidneyのように腎症状がなかなか多い.
 Waldenströmのマクログロブリン血症は骨髄腫に化学的臨床的に近似し,その腎症状も似ている.ただW病では蛋白尿出現30〜35%(骨髄腫70〜80%),喪失蛋白量<5g/lで骨髄腫より遙かに少い.それを反映してW病では腎尿細管castも少いし,上皮の硝子滴変性も少く,W病腎変化は間質のリンパ球・形質球細網組織球性のfocal aggregationを主とすることになる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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