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特集 小児外科
小児の肺外科—とくに肺切除術について
著者: 守屋荒夫1 鷹栖昭治1 田村重宏1
所属機関: 1東京都立清瀬小児科病院外科
ページ範囲:P.1014 - P.1019
文献購入ページに移動欧米では,約100年前より,小児外科の特殊性や重要性が唱導されたが,それが実際にみとめられるようになつたのは最近の30〜40年のことである.わが国でも7〜8年前から,この方面の関心がとみにたかまり,従来発見されることさえ安れであつた,新生児や乳児の外科的疾患にたいする手術成功例が続々と報告され,外科領域における1つの焦点ともなつてきたことは大変よろこばしいことである.しかし,小児外科の興味の中心は,新生児・乳児の先天性奇形の外科にあまりにも集中し,比較的年長児の後天性・慢性疾患は,かえつておろそかにされている傾向がなくもない.
われわれがここに述べる小児の肺外科は,まさにこの盲点の1つともいえよう.ごく特殊な例をのぞき,疾病は慢性に進展し,たとえ手術が成功したとしても,そこには新生児外科にみられるような劇的要素はほとんど存在しない.その上,あいつぐ抗生物質の発見と,その臨床応用は,外科的肺疾患の中心となる炎症性疾患を激減させている.われわれは昭和34年6月以降,今年2月末までに164例の小児肺切除をおこなつているが,1施設て,年平均30例以上の小児肺切除の実施された報告は,内外の文献にも類例がなく,この際自験例を中心として,小児肺切除の実態を検討することは,きわめて意義のあることと考える.
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