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特集 小児外科
小児の悪性腫瘍
著者: 植田隆1 岡本英三1 岩崎武1 吉竜資雄1 米田光作1 長岡豊1
所属機関: 1大阪大学医学部第1外科教室
ページ範囲:P.1047 - P.1054
文献購入ページに移動阪大第一外科における昭和29年以降10年間の小児期悪性腫瘍(厳密な病理学的意味での悪性ではなく,明らかな良性腫瘍をのぞいたもの)は,第1表のごとく,ほぼ114例に達する.その内訳をみると,脳腫瘍(40%),後腹膜腫瘍(21%)の順になる.この比率は,米国の小児病院の比率と同じ傾向を示す.ちなみに著者が滞在したChica-goのChildren's Memorial Hospitalの統計は第2表のごとく,外科的対象とならないleukemiaをのぞくと,中枢神経腫瘍,後腹膜腫瘍の順になる,脳腫瘍は,少なくとも乳児期以後,大多数が幼児期であつて,その臨床上のとりあつかいに関して小児外科的特殊性はあまり存在しないのである.腫瘍の臨床病理学的種類において明らかな小児期腫瘍の特殊性は存在するが,脳外科的一般検査,すなわち,気脳術,脳血管撮影などは成人と同じように施行し得るのであつて,臨床の実際面における特殊性はあまり認められない.脳外科方面における小児外科的特殊性は,むしろ,先天性脳奇型,たとえば,hydroancephalyや,porence-phalyやsubdural effusionのような新生児脳外科の方面に強く存在するのであつて,たとえば,新生児脳の器質的変化にたいする有力な診断武器たるTransillumination technique1)などに,成人脳外科とは全く異なる特殊性が見出されるのである.
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