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講座 外科領域
小児外科における水分電解質の諸問題(その5)
著者: 石田正統1 沢口重徳1 大部芳朗2
所属機関: 1東京大学医学部木本外科教室 2東京大学医学部小児科学教室
ページ範囲:P.1088 - P.1093
文献購入ページに移動2.生体の緩衝系
生体は水分および各種電解質と同様に一定量のH+を含んでいる.しかしながら,正常状態において体液中に遊離の形で存在するH+の絶対量は極めて少ない.通常1日に摂取しまた排泄されるH+は体表面積1m2の小児においては約2mEq/kgであるのに対して,体液中のH+の絶対量は血清PH7.4のとき0.000024mEq/kgにすぎない(第12図).
かくの如くH+の代謝回転は大であり,かつ広範囲に変動するにもかかわらず,生体はH+最を極めて狭い生理的範囲内に維持することができる.この恒常性維持の生理的機片は次の2つに大別して考えられる.第1は体液および組織の化学的緩衝系によるH+の捕捉であり,第2は呼吸器および腎を介しての排泄である.もとよりH+の最終的調節は第2の機序ことに腎性調節によつて完成されるものであるが,その発効にはある程度の時間を要する.この間一時的ながらH+を処理するのは第1の機序にほかならない.換言すれば生体の緩衝系はpH維持のための防衛の第一線をなすものである.
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