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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科19巻9号

1964年09月発行

雑誌目次

特集 脳・頸部・胸部の症例

頭蓋内血腫における脳循環と代謝について

著者: 斉藤義一

ページ範囲:P.1141 - P.1147

はじめに
 主として頭部外傷に起因する各種頭蓋内血腫の治療は脳外科における一つの重要な部門である.脳血管撮影はもとより,最近では超音波によるなど早期発見とことに早期に適切な手術が行なわれて治療成績の向上も著しいが一般的にはなお満足すべきものとはいえない.
 たとえば(京大)松村氏15)の成績をみると全体の死亡率は23%で急性型に悪く慢性型に良好である.宇山氏10)らは急性頭蓋内出血型の手術で40%以上の死亡をみて本来手術で救われてよいはずの症例群の高率の死亡を歎じている.慶大工藤氏11)らはまた手術方法の改良を試みて頭蓋穿孔による洗滌法で優秀な成績をあげているがこれは一面じうらいの方法が氏らにとつて必らずしも満足すべきものでなかつたのかと思われる.著者も時折り本疾患手術を経験するが決して満足すべき成績に至らない.

トルコ鞍部腫瘍の手術前後における尿17-OHCSと内分泌障害

著者: 稲垣秀生

ページ範囲:P.1149 - P.1156

はじめに
 トルコ鞍部腫瘍の手術にさいしては,術前より存在するhypopituitarismにより,あるいは脳下垂体視床下部に対する侵襲により,理論的にはもちろん,また臨床的に術後早期にいわゆるendocrine complicationを起すことが知られている.
 すなわち①比較的簡単な手術でも術後pituitaryshockの状態をきたすことが早くから知られていること2)4),ことに術前のhypopituitarismの存在は術後のendocrine complicationを起しやすいこと1)

頭蓋陥没骨折ならびに硬膜損傷の治療経験

著者: 西本詮 ,   八木健 ,   増川禎彦 ,   杉生了亮 ,   梅田昭正

ページ範囲:P.1157 - P.1159

はじめに
 近時,交通災害の急激な増加に伴ない頭部外傷の患者も年々倍加する傾向がみられる.これらに対しては,とくに救急治療としての頭蓋内血腫の診断と手術や,低体温法などが注目を集めているが,頭蓋陥没骨折や硬膜損傷に対する整復・補填などの成形手術についての論議は比較的等閑に付されがちである.しかしながら,外傷は決して同一ではなく,一つ一つの症例によつてその状況が異なるため,治療すなわち成形手術を一律に規定することは困難であり,したがつて,手術方法の細部は各外科医のその時その時の判断にゆだねられることが多い.一方,合成樹脂化学の発達によりいろいろな補填材料が考案されてこの方面に応用され,治療上非常に便利になつたが,各症例に適合する材料をすみやかに得ることは必ずしも容易ではない.
 われわれはこのような現状において,とくに一定の方針に偏することなく,個々の症例に対して適当と思われる方法で,しかも手軽に得られる材料を用いて手術を行なつてきた.そこで,ここに最近2年間に岡山大学ならびに川崎病院の脳神経外科において,われわれの取扱つた頭蓋陥没骨折35例,硬膜損傷15例および外傷以外の原因による頭蓋骨欠損5例,硬膜欠損7例に対する整復手術ないし成形手術の経験につき報告し諸賢の御批判を仰ぎたいと老える次第である.

交感神経節ブロックに関する知見補遺,特に頭部外傷および脳卒中を中心として

著者: 天瀬文蔵

ページ範囲:P.1161 - P.1166

はじめに
 交感神経節切除術が所期の効果をあげ得ず,ときにはかえつて病状を増悪させる場合があつて,手術適応の決定に困難をともなうことがあるが,術後生体に現われた諸変化を検討すれば,これのよい裏付けと思われるものをみることも少なくない.とくに末梢血行への悪影響と思われる術後変化については,すでにたびたび報告してきた(天瀬1)-4)).元来本法が治療方面に応用されるに至つた直接の動機は,それによつて起こる末梢血管の拡張あるいは血流の促進であるが,その作用機序は必ずしも常にかかる血行面のみにあるのではなく,特に脳血行に関しては,頸部交感神経節切除により脳血流量の増加を認めるもの(Schenkin5)),また不変を報告しているもの(Harmel6),Scheinberg7,Naffziger8),高山ら9))があるように,きわめて複雑,難解なものがあることは衆知の通りである.ところが本法術後の生体の諸変化,さらにこれと治療効果との関係を比較検討してみると,症例によつては遮断作用はかならずしも永続性を要せず,のみならず切除術等永久的遮断よりもプロカインによる一時的遮断に,臨床的意義上より多くの重要性を認める場合のあることを知り(天瀬10)),また脳卒中,脳外傷に対する臨床例(天瀬11))を以後さらに重ねるにおよんで,とくにますますその確信を深めるにいたつた.

Sturge-Weber氏病の1例

著者: 宮崎義宣 ,   松本繁男 ,   村井英夫 ,   新津勝宏

ページ範囲:P.1167 - P.1170

はじめに
 Sturge-Weber氏病は三叉神経の一枝あるいはそれ以上の分枝の支配領域に見られる血管腫,緑内障あるいは牛眼,同側性半肓,癲癇発作,半身不随あるいは不全麻痺,筋萎縮,脳内血管腫,脳内石灰化像,知能障害等の症状を有する一つのPhakomatoseである1)2)3).われわれは最近かなり症状の揃つた木症を経験し,脳病変についても検索し得たので,2〜3の考察を加えて報告する.

原発性舌背部腺腫の1例

著者: 佐藤進 ,   河村基 ,   三又忠

ページ範囲:P.1171 - P.1173

はじめに
 舌の実質性良性腫瘍としては,乳頭腫,線維腫,舌根甲状腺腫,腺腫などが成書に記載されている.これらはいずれも稀なものであるが,なかんずく腺腫は非常に稀有なものである.
 最近,私どもは舌体部の舌背において,分界溝と左右側縁に接して発生した舌腺腫の1例を経験し,これを切除して,治癒させたので報告する.

閉塞性大動脈炎—脈なし病の病理

著者: 稲田潔 ,   江草重実 ,   林力 ,   当山雄紀

ページ範囲:P.1175 - P.1181

はじめに
 大動脈縮窄症は欧米では日常比較的しばしばみる重要な先天性大血管奇形であるが,本邦では稀で,しかもその発生部位が左鎖骨下動脈直下のいわゆる定型的なもの(isthmictype)よりむしろ他の部位に発生する異型のもの(subisthmic type)が多いことはよく知られている1).しかもこれらのうちには大動脈弓症候群を合併し,脈なし病類似の所見を呈するものが少なくなく,両者の間に種々の程度の移行型の存在することが明らかとなつてきた.著者らは数年前より両疾患は同じ範疇にいれるべきことを主張してきた2)3)4).すなわち異型大動脈縮窄症の多くは脈なし病同様後天性の動脈炎により発生するもので,ただ主病変の位置が異るため一見相反した臨床症状を呈するにすぎないことを主張してきた.
 最近29歳の女子で,胸部下行大動脈より腹部大動脈にわたる高度の縮窄に,大動脈弓分枝の閉塞性病変を合併する例で大動脈のbypass移植後死亡し,剖検により詳細な病理学的検査を行いえた1例を経験したが,本例はわれわれの主張を立証する好個の症例であり,またこのような例の剖検報告をみないので詳細を述べ一般の参考に供したい.

内頸動脈瘤手術治験例—低体温下内短絡併用による血管移植

著者: 大原到 ,   高久晃 ,   原田範夫

ページ範囲:P.1183 - P.1187

はじめに
 頸動脈瘤は1962年,Kinmonth等による500例の動脈瘤中4例(25%)を占め比較的頻度が低いが,その治療法を文献的にみると,1955年以前には内頸動脈,あるいは総頸動脈より発生して居るものには,何れも動脈瘤中枢例の血管結紮が主として試みられていた(Winslow等1962年および1937年,Kirby等1947年).しかしながら動脈瘤以外の症例,たとえど頸動脈球腫瘍を含む頸部悪性腫瘍の摘出にさいして,あるいはまた頭蓋内動脈瘤や動静脈瘻等に対する頸動脈永久結紮の場合でも,脳血流遮断による脳の低酸素状態による合併症として,反対側の偏麻痺あるいは死亡の危険が17〜15%(Nelson)の高きに達して思る.かかる合併症を防ぐ上からも一時的な脳血流遮断に止めて,動脈瘤を切除したあと脳血行路を再建する方法が過去数年の間に2〜3試みられて居るが,症例も少い為一定した術式がまだ確立しておらず,また血管移植例も少ない.著者等は低体温下(口腔温28℃)で内頸動脈瘤を切除後内短絡を用いて脳血流を維持しながらダクロン管(テトロール)移植に成功した症例を経験したので報告し手術方法について述べる.

内頸動静脈瘤の1治験例

著者: 西島早見 ,   堀江法彦

ページ範囲:P.1189 - P.1191

はじめに
 最近における脳神経外科領域の発展は著しいものがあり,頭蓋内動脈瘤に対しても積極的に外科的侵襲が加えられるようになつた.われわれは最近頭部外傷に基づく海綿洞動静脈瘤の1例を経験し総頸動脈結紮術を施行して著効を得たので報告する.

一家系内に多発した単純性甲状腺腫について

著者: 的場直矢 ,   松橋賢次 ,   柴崎真吾 ,   佐藤定見 ,   和賀井啓吉 ,   芳賀昭

ページ範囲:P.1193 - P.1199

はじめに
 甲状腺疾患の中,バセドウ氏病は時に同一家系内に発生することが経験されているが,一方いわゆる甲状腺腫地帯以外で,家族性に単純性甲状腺腫が見られることもBraim1),Thiem2),Friedlieb3)等により報告されている.わが国でも七条ら4)により,同胞内に発生した甲状腺腫症例が報告され,これらは甲状腺ホルモン合成過程に何らかの先天的欠陥が想定されるに至り,にわかに注目を集めている所である.私どもの教室でも十数年来,結節性甲状腺腫が多発している一家系に遭遇し,その診療に従事しているので報告したい.なおその1例は頭蓋骨転移を形成し,いわゆる転移性甲状腺腫の性状を示した点注目される.

術後の甲状腺クリーゼの経験例

著者: 尾山力

ページ範囲:P.1201 - P.1204

1.症例
 35歳女子.病名:バセドウ氏病.主訴:前頸部腫脹,突眼症,心悸亢進.経過:7〜8年前より上記症状現われ始め抗甲状腺剤による治療をうけてきた.入院時には下肢の強い脱力感,無月経,流汗,熱感,食欲不振,消化不良なども訴えた.
 検査所見:血圧156/72mmHg,脈搏86/分,体重50kg.入院時昭和36年11月2日,BSP=12.5%,血清蛋白=6.4%,クンケル=9KU.,チモール=1.9M.U.,総ビリルビン=0.5mgであり,BSPからすれば肝機能低下がみられた.血清電解質はNa=147mEq/L,K=4.6,Cl=109,Ca=11.9であつた.

Riedel甲状腺腫の1例

著者: 広津三明 ,   服部竜夫 ,   岡田進

ページ範囲:P.1205 - P.1207

はじめに
 本症は1896年Riedelが報告した1種の慢性甲状腺炎に始り,比較的稀れで大凡切除甲状腺の0.2%に過ぎない.Hosteは1962年迄に36例を報告し,本邦においては現在迄に諸氏の報告を合せると126例を数える.われわれは最近その1例を経験したので,ここに報告し文献的考察を加えた.

いわゆるGraham氏悪性甲状腺腫の臨床経験

著者: 瀬田孝一 ,   北川幹雄 ,   藤田崇 ,   佐々木純 ,   鈴木鶴松 ,   小山宗生 ,   桑田雪雄 ,   矢川寛一 ,   高山和夫

ページ範囲:P.1209 - P.1213

はじめに
 1927年Allen Grahamは甲状腺機能亢進症の甲状腺腫中に原発性甲状腺癌を合併したもの6例を報告し,Adenocarcinoma not originating in an adenomaと名ずけた.これらはいずれも限局性で,かつ被膜を欠き,間質や隣接甲状腺組織に浸潤性発育を示し,血管侵襲像も認められたという.
 その後,Moritz,Goetsch,Berlin,Pemberton,Haz-ard,Minder等により症例が追加され,計56例が記載されている.

膜様中隔動脈瘤の1治験例

著者: 黒島振重郎 ,   田原信一 ,   浅野晋 ,   山中啓明

ページ範囲:P.1215 - P.1219

 近年,直視下心臓手術の著しい発達とその普及にともない,きわめて稀な心奇形の手術治験例も,ようやくみられるようになつてきた.
 ここに報告する膜様中隔動脈瘤は,1826年Laennec1)により記載された心奇形であり,その報告はすでに80例以上に達しているが,その手術治療例はきわめてすくなく,貴重なものと考える.

鎖骨に原発せるエオジン好性細胞肉芽腫の1治験例について

著者: 渡辺徹夫 ,   永野昌男 ,   上野幹雄 ,   鳥巣要道 ,   木原弘之 ,   高木東介

ページ範囲:P.1221 - P.1223

はじめに
 骨に原発するエオジン好性細胞肉芽腫は,1929年Fizが最初に報告し1940年にLichtensteinおよびZaffeがEosinophilic granulomaと命名した.
 本邦でも1950年高木,浦川両氏の報告以来かなりの症例をみるがわれわれも最近左鎖骨に原発したと思われる一例を経験したのでその概要を報告する.

われわれの経験した頸動脈蛇行症について

著者: 神谷喜作 ,   安井貞夫 ,   岡昭

ページ範囲:P.1225 - P.1228

 頸部の搏動性腫瘤を訴え,一見動脈瘤とまぎらわしいが,動脈撮影により,はじめて動脈瘤ではなく,総頸動脈あるいは腕頭動脈の蛇行屈曲が認められる,いわゆる頸動脈蛇行症は欧米では古くから記載があるが1)−5),本邦では最近になつて2・3の報告が見られるにすぎない.特にその切除例については菱田ら6)の1例,井口ら7)の1例の記載があるのみである.
 最近われわれは本症の5例を経験し,内1例を手術により全治せしめたので,ここに報告する.

耳下腺結核の1症例

著者: 河又正紀 ,   滝弘康 ,   川井忠和

ページ範囲:P.1229 - P.1232

はじめに
 耳下腺結核は比較的稀な疾患で筆者等の調べたところでは,1893年,DePaoliにより初めて報告されてから1960年迄に56例,本邦では1935年の秋谷の6症例以来14例の報告があるに過ぎない.最近われわれも耳下腺結核のⅠ例を経験したので報告する.

縦隔腫瘍を疑われた胸廓内ザルコイドージスの1手術例について

著者: 甲田安二郎 ,   春日英昭 ,   岩波弥 ,   谷友雄 ,   秋貞雅祥

ページ範囲:P.1233 - P.1236

はじめに
 ザルコイドージス(以下「ザ」と略す)はわが国でも最近注目されてきた疾患である.じうらいは皮膚科領域の疾患として取扱われてきたが,昭和29年頃より内科領域からの報告が次第に多くなり,「ザ」は胸部疾患を取扱うものにとつては深い関心を要する疾患となつてきた.しかし外科方面からの「ザ」に関する報告はきわめて少い20)
 われわれは最近胸部X線検査にて縦隔腫瘍を疑われ,開胸手術により縦隔・肺門リンパ腺の著明に腫脹した胸廓内「ザ」であることを確認し得た一症例を経験したので報告する.

Mondor氏病の2例

著者: 天晶武雄 ,   椎名栄一 ,   松田博青

ページ範囲:P.1237 - P.1239

はじめに
 Mondor氏病は主として前胸部皮下に生ずる硬い索状物を主訴とするもので,数ヵ月の経過で自然に消失する良性疾患である.本症については仏人Mondorによる詳細な報告があり,これがMondor氏病といわれるゆえんでもある.
 本邦ではすでに鬼束,外賀,最近においては綿貫が詳細に報告しており,これまで考えられていたほど稀有な疾患ではないという見解があるように思われるが,最近著者らも2例を経験したのでここに報告する.

モンドル氏病の3例

著者: 大沼倫彦 ,   河村基

ページ範囲:P.1241 - P.1243

 モンドル氏病とは,一般に前側胸壁および乳房部における圧痛をともなわない皮下索状物形成症を指し,古く1854年,Addisonの報告を嚆矢とするが,1939年,Mondorが自験例に他の文献を加え詳細に報告してより本疾患が,モンドル氏病と称されるようになつた.しかし本疾患の本態に関しては,まだ定説なく,論議されつつあるところであるが,本邦においても,最近に到り,若干の報告例がみられるようになつた.
 著者等も,1年間において,3例を経験したので,症例を報告し,考察を試みた.

いわゆる乳管拡張症

著者: 松田博青 ,   天晶武雄

ページ範囲:P.1245 - P.1249

はじめに
 乳輪下の乳管の拡張と,これを取り囲む壁状の線維増生,その周囲の急・慢性炎症所見を主体とし比較的中年者に多く発生するといわれている乳腺の疾患は,1909年IngierによつてMastitis obliteranceとして発表されて以来,Payne, Strauss & Glasser(1943)も同様の名称を用い,またVaricocele tumor(Bloodgood,1923), Localized Lymphogranuloma (Küchens,1928),Plas-mocytoma of the Breast(Gronwalt,1931),Plasmacell mastitis(Cheatle & Cutler,1931, Adair, 1933),Comedomastitis(Dockerty & Cromer,1941)等さまざまな名称を付されてきたが,1951年および1957年StoutおよびHaagensenはこれらの名称をMammary DuctEctasia乳管拡張症として統一し,この疾患が独立した一つの良性疾患であると提唱した.この疾患の重要性は,上記のいろいろの名称が示すごとく,時に炎症々状が主徴をなし,また時に乳癌に類似した症状を呈するがゆえに,不必要に乳癌にたいするような根治的手術が行なわれる危険性のある点にある.

乳嘴のFlorid papillomatosisについて

著者: 高橋希一 ,   久道進 ,   内田清二郎

ページ範囲:P.1251 - P.1255

 輸出管乳頭腫症(Duct papillomatosis)は乳腺の輸出管内に乳頭状に上皮の増殖を示したもので,多くは末梢輸出管に見られ乳管の基幹部に形成されることは比較的まれである.それがさらに中枢部の乳嘴内に発生することはむしろかなり珍しいことであり,そのさら本来の輸出管は瀰漫性に増殖した乳頭状上皮細胞群により置換され,あたかも浸潤性発育を思わせもする像を呈する.このような乳嘴の乳頭腫症に対して1955年Jones1)は"Florid papillomatosis"と呼称し,爾来,本症に関する論文が時折り見受けられるようになつた.われわれは10年間の経過をもつて発育した乳嘴部輸出管乳頭腫症の1例を経験したので鑑別診断などの2〜3点につき考察を試みたい.

長期ホルモン療法を行つた乳癌脊椎転移例の剖検所見

著者: 小泉正夫 ,   茂手木三男

ページ範囲:P.1257 - P.1261

はじめに
 最近悪性腫瘍に対する薬物療法の研究が活溌となつてきたが,その中でも乳癌や前立腺癌のごとき性腺癌に対するホルモン療法が,臨床上かなり重要視され利用されつつあることは周知のところである.
 癌のホルモン療法はBeatson (1896)が乳癌に対して,Estrogenの産生源を絶つ目的で,卵巣剔出術を行つたのが最初で,その後数多くの報告がある.

von Recklinghausen氏病にともなえる胸腔内Neurofibromatosisの1治験例

著者: 春日英昭 ,   岩波弥 ,   谷友雄 ,   甲田安二郎

ページ範囲:P.1263 - P.1266

はじめに
 われわれは,最近集団検診において,右肺上野に異常陰影を認め,精密検査でRecklinghansen氏病(以下レ氏病と記す)に伴う胸腔内神経線維腫なることを確かめえた例を報告し,2,3の考案を述べたい.

肺門部石灰化淋巴腺の気管支内穿孔によつて再燃した左上葉結核の1切除治癒例

著者: 宇野勝丸 ,   中島泰久 ,   三浦昭彦 ,   辛島匡士

ページ範囲:P.1267 - P.1270

はしがき
 成人肺レ線写真の明らかなリンパ腺石灰化像はじゆうらいしばしば初感染巣における1つの臨床的治癒像として,免疫学的な立場から看過放置されることが多かつた.しかるに最近肺の直達療法が盛んに実施されるようになつて,肺門リンパ腺を直接検索できるようになるとレ線上明らかな石灰化像を示しているにもかかわらず,一部はなお乾酪化し転移源としての性格をそなえているような例に遭遇することが多い.これが気管支内に穿孔した場合当然管内性転移が考えられるわけであるが,その一好適例を左肺上葉切除例において確認することができたのでここに報告する.

超速効性Barbiturateによる麻酔導入時の心電図の変化—麻酔専門医による影響

著者: 武島晃爾 ,   埜田健吾

ページ範囲:P.1271 - P.1277

 1918年に心電図の技術がはじめて医学界に紹介されて3年後に初めて麻酔の分野にも応用された1)2).爾来,各種麻酔剤の自律神経系に対する影響について心電図が応用され,これに関する多くの発表がある3)−8)
 気管内挿管の循環器系に対する影響を心電図で調査した報告は1940年が最初であり,気管内挿管により,心電図上変化のあることがその後多くの文献にあらわれるようになつた10)−26).これらの者の大多数は60%以上において次のような変化があらわれると報告している.すなわち,電気軸の変化,洞性の徐脈ならびに頻脈,心房性細動,結節調律,ブロック,心室性領脈,Bigeminalventricular tachycardia,心室性の期外収縮,P波の低下,PR間隔の延長または短縮,QRSの棘高の減少,QT間隔の延長または短縮,T波の平低化,およびSTの下降等である.

Medical Notes

成人celiac disease,他

ページ範囲:P.1278 - P.1279

 非熱帯スプルー,特発性脂肪便といわれる状態はc-eliac diseaseの成人型と見てよいようで,McIver (Lancet2:1112,1952)がはじめてgluten-free 食の奏効することを見出し,治療に明るい光明が灯された.本症患者は短躯ときに侏儒(Frazer,A.C.:Proc.Roy.Soc.Med.49:1009,1956)で,ことに婦人が短身になりやすい.症状が長くつづくのは軽症だからで,従つて本症をもちながら活動的な生活ができる.医師に発見されるのは下痢と体重減少が主訴(75%)で激しい腹痛,腹部膨満は稀(10%).筋ケイレン・テタニー・出血傾向・貧血・骨痛などは20〜30%の頻度で,むろんこういつた症状があれば活動的でなくなる.gluten-free食で急速に軽快(30%)する型,1〜2週後に軽快のはじまる型(50%),反応のきわめてのろい型などがある.低AI血症・低Ca血症・低カロティーン血症・低プロトロンビン血症などは,gluten-free食が奏効すると良く回復しうる.Hb・Ht・赤血球数・Co60-B12吸収・血清Fe・Fe結合能などで見た貧血も,同様にして,よく回復する(Badenoch,J.:Blood 9:123,1954,Benson,G.D.:Medicine 43:1,1964).

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脳・脊髄および神経系の用語説明—(sign:徴候,symtom:症状,syndrome:症候群)

著者: 堀浩

ページ範囲:P.1282 - P.1291

 Abadie(アバディー)'s sign アキレス腱を強くつまんでも痛覚を訴えない。脊髄癆の徴。
 Amaurotic familial idiocy (Tay-Sachs disease,cerebromacular degeneration)ユグヤ人家系に発生する重篤な知能欠如で盲,視神経萎縮および黄斑部の暗紅色斑点を伴う。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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