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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科2巻4号

1947年11月発行

雑誌目次

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跟骨々折に對する觀血的療法の問題

著者: 神中正一

ページ範囲:P.1 - P.6

 跟骨々折の機能的豫後は一般に甚だよくない。昔の消極的非觀的療法から現代の積極的な非觀血的療法(例へばBöhler, Westhues, Herman等)に轉換して餘程成績が向上して來たが,未だに滿足すべき所までに達してゐない。特に跟骨體部の骨折中,跟骨々折のほゞ半數に近い頻度を占める後方距跟開節が骨折脱臼したものに於て特に成績が面白くない。そこで非觀血的療法一點張りの從來の獨逸流から脱却して非觀血的療法では目的を達し得ない症例に觀血的療法を施してはどうかといふ問題が當然起つて來る筈である。Böhler自身も或種の跟骨々折に對しては非常に苦心して非觀血的療法主義を固執してゐる,が未だ充分の成果を擧げて居らず,又氏の法は非觀血とは言ひながら相當猛激な外力を加へるから,寧ろ觀血的療法の方が侵害が少いのではないかと思はれるものがある。跟骨體部の陳舊變形骨折には以前から獨逸でも變形矯正手術が行はれてゐるが,これも決して滿足すべき成果を得てゐないのである。さて此問題に先鞭をつけたのはフランス學派であるから,先づフランス外科の意見を述べてみやう。

原發性肋膜腫瘍の外科的經驗

著者: 篠井金吾 ,   石井正一

ページ範囲:P.6 - P.11

1. 緒言
 胸部に生ずる腫瘍は大別して胸壁腫瘍と胸廓内腫瘍に分つ事が出來る。胸壁腫瘍は乳腺を除外すると肋骨及胸骨に好發し胸廓内腫瘍は肺に最も多く縱隔竇之れに次ぎ肋膜腫瘍は最も稀れである.
 我々の調査によれば肋膜腫瘍は我國に於ては68例であつて,此の中眞性腫瘍は64である。共の頻度は肺腫瘍及胸壁腫瘍に比して甚だ尠い。

射創性晩發性癲癇の腦髓描寫圖に就て

著者: 伊藤忠厚

ページ範囲:P.12 - P.31

内容抄録
 癲癇に關する腦髓描寫圖(Encephalogram)の觀察研究は,多數發表されてゐるが,之等の多くは,眞性癲癇に關するものであり,外傷に基くものは極めて少く,且つ,本症例の如く射創により晩發的に發生した癲癇症を多數觀察したものは,未だ行はれて居らぬ所であり,これが觀察研究は,癲癇の本態が,未だ未解決である現時,甚だ意義のある事と思ふ。私は,第一に88例の腦室像に就いて,形態的に觀察し,第二に,其の内の37例,74個の腦室像に就いて,ブラニメーターを用ひ面積測定と縦横徑測定とを行つた。第三に,腦手術前後に於ける變化に就いて,13例の腦室像を形態的竝に計測的に觀察し,以下の如き興味ある結果を考察し得た。(1)形態的觀察に於ては,全例に異常を認め,然かも80.68%に強變化を認めた。これを更に詳細に,變化部位,左右不同,形状,腦室系統の移動,第III腦室の擴大等に就て観察した。從來受傷の強さと,腦室像變化度とは,平行すると一般に言はれてゐたが,本症例に於ては,受傷程度が輕くとも,著變を認めたものが多い事を知つた。又,癲癇の特徴ある所見とされて來た腦室空氣非充填像は,1例も認めず,從つて從來の意義に對し一義を與へたものと思ふ。(2)計測的觀察に於ては,蝶形像及び,從來測定されなかつた牛角像及び側面像,更に私の考案した分劃區分法に依り,側面像各部位別測定を行ひ,形態的観察に依て認めた腦室像の異常,殊に擴大及び左右不同の顯著なる事實を更に數値的に實證し得た。(3)本症例に於ける如き腦手術は,多くは,術前後の腦室像に變化を示さないが,手術後,初めて癲癇症を發生した2例に於ては,何れも,術後著明なる擴大を示す事を,形態竝に數値的に認め得た。

臨床講義

破傷風

著者: 福田保 ,   織畑秀夫

ページ範囲:P.33 - P.36

 本日御目にかける患者は13歳の男生徒,住所は足立區本木町,昭和22年9月26日の朝頃から兩頬に疼痛が起り,口の開き工合が惡く,附近の醫師に診て貰つたがよく分らずそのまゝに放置した。其日の晝頃まで歩るいてゐたが次第に疼痛が増強し,然も疼痛は顔から下降する傾向を示し,やがて脚がつ張るやうになつたので午過ぎ床に就いた。
 翌27日朝再び醫師の診察を受けたところ破傷風であるから大學病院へ行つた方がよいと云はれ,その日の午後4時頃急病患者として當科に來院し直に入院した。主訴は項部強直,全身痙攣,開口不能である。

臨床例

副膵に依り慢性腸狹窄症を惹起せる1症例に就て

著者: 思田光明 ,   小林太郞

ページ範囲:P.37 - P.38

緒言
 1840年Engelは副膵に關して始めて記載した。爾來内外に亙り其の多數の報告例を見るが,主として剖見の際の發見例が多い。腸管に出現して臨牀的に種々の障碍を惹起した症例は稀である。最近我が教室に於て余等は空腸上部に發生し慢性腸狹窄症を起し十二指腸の著しく移動性になつた1例を經驗したので茲に其の大要を述べ,諸賢の御批判を仰がんと思ふ。

幼兒に見られたる巨大なる特發性總膽管嚢腫の1例

著者: 加藤讓 ,   窪田靜夫 ,   岸伊佐子

ページ範囲:P.38 - P.41

 特發性總膽管嚢腫は總膽管が原發的に嚢腫様擴張を起し,臨牀的には腹部腫瘍,黄疽,腹痛等の症状を呈する比較的稀な疾患であつて,其の臨牀診斷も困難なものとせられてゐるが,最近本症の1例に遭遇し,手術前に診斷を確定し,且死後剖檢する機會を得て種々興味ある點が存するので茲に報告する。

外傷性破裂により發見せられたる先天性腎水腫に就て

著者: 藤田承吉 ,   齋藤行弘

ページ範囲:P.41 - P.43

緒言
 本邦に於ける外傷性腎臓皮下破裂の報告は腸管のそれに訳で多く既に126例を數ふるが,腎水腫ありしものゝ皮下破裂は甚だ少く僅かに高橋,千頭氏等の各1例に過ぎず。余等は外傷性皮下破裂によつて發見されたる先天性腎水を經驗したのでこゝに本次邦例に追加報告す。

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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