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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科20巻1号

1965年01月発行

雑誌目次

特集 外科と内分泌・1

〔外科の焦点〕外科と内分泌—副腎及び甲状腺疾患

著者: 三宅儀 ,   西村敏夫 ,   河野剛 ,   鳥塚莞爾 ,   日下部恒輔 ,   稲田満夫 ,   吉見輝也 ,   菅野泰 ,   江崎正 ,   多田敏明 ,   新保慎一郎

ページ範囲:P.11 - P.20

Ⅰ.緒言
 近年の内分泌学の進歩は,各種内分泌疾患の病態生理を鮮明し,その診断法に著るしい進展をもたらした.また薬物療法の進歩,アイソトープの治療面への導入によつて,従来主として外科療法に依存してきた内分泌腺機能亢進症にたいする内科的療法の発展が見られたが,また診断法の進歩は内分泌疾患の外科的治療に新らしい進展をも開いた.したがつて日常の診療に際し,内分泌疾患の正確な診断はもとより,その治療は外科的になすべきか,内科的になすべきかの適確な判断が必要とされる.
 本稿では副腎疾患に関しては,主として著者らの経験した症例を中心に,Cushing症候群,原発性アルドステロン症,副腎性器症候群,クロム親和性細胞腫の診断および治療法の選択に関して述べ,甲状腺疾患に関しては,本院外科で手術された結節性甲状腺腫,甲状腺癌106例についていろいろ検索した成績を記し,これら疾患および甲状腺機能亢進症の治療方針を述べる.

下垂体の外科

著者: 川淵純一

ページ範囲:P.21 - P.34

 下垂体の外科という課題を与えられたので脳神経外科の立場から,主として下垂体ならびにその近傍の腫瘍について述べ,さらに最近盛んになつてきた内分泌外科の一環としての下垂体除去についてふれてみたい.

―甲状腺の外科―悪性甲状腺腫

著者: 伊藤国彦 ,   西川義彦

ページ範囲:P.35 - P.41

はじめに
 悪性甲状腺腫の中で肉腫はごく稀であるので省略し,甲状腺癌についてのみ述べることにした.とくに近年になつて甲状腺癌の発生は増加の傾向があるといわれているが,われわれの日常臨床においても本症の増加の傾向はたしかにうかがわれる事実である.今年度の甲状腺研究同好会においても,"悪性甲状腺腫の治療方針"がテーマとしてとり上げられ,全国10数余の教室および病院からそれぞれの治療方針が発表され,活発な論議が展開された.以下われわれは甲状腺癌についての今日の考え方を,われわれが昭和35年より3年間に経験した症例を中心に述べることにした.

―甲状腺の外科―非中毒性甲状腺腫

著者: 桑原悟

ページ範囲:P.43 - P.47

はじめに
 はなしは非中毒性結節性甲状腺腫からはじまる.おなじく非中毒性でも瀰漫性のものは内科的治療で相当よくなる,炎症性腫瘍にも興味ある課題がすくなくない.

胸腺の外科

著者: 片岡一朗

ページ範囲:P.49 - P.55

 胸腺については1650年にVesaliusが解剖学的記載をしたのが初めで,その後DeGaaf (1671),Ruyach (1736),Hassall (1846),Hammer (1926)などによつて胸腺の基本的研究が行なわれた.
 臨床的には1889年Paltaufは普通の人ではなんでもない僅かの原因で突然死亡し,剖検によると胸腺の肥大がある以外には全く病理学的変化の認められない例を検討し,その原因は特異な体質によるものとして,胸腺リンパ体質と呼んで注意を喚起した.

乳腺疾患とホルモン—進行乳癌例を含む

著者: 藤森正雄 ,   饗場庄一

ページ範囲:P.57 - P.63

はじめに
 乳腺は副性器として内分泌的影響を強く受ける.すなわち,卵巣を主として下垂体,副腎,甲状腺など内分泌腺相互の影響のもとに,その発育と機能が維持されている.なかでも卵胞ホルモン(estrogen)は乳腺輸出管およびその周囲結合織の発育に,黄体ホルモン(progesterone)は乳腺腺葉の増殖に,催乳ホルモン(prolactin)は乳腺小葉の終末腺胞の発育と分泌機能に関与している.したがつて乳腺疾患にはその成立過程において内分泌環境の異常に基因するものが少なくない,また治療の面でも性ホルモンの投与のみならず,卵巣,副腎,下垂体などの剔除術すら行なわれることがある.
 ここでは,とくにホルモンと密接な関係をもち,日常外科臨床で遭遇する機会の多い乳腺症と乳癌について略述する.

〔外国文献抄録〕外科と内分泌

ページ範囲:P.66 - P.74

1)視床下部,下垂体および松果体
視床下部過誤腫による早発思春期
 真正完全型の早発思春期に体質型と脳型とがある.体質型は女児に多く,男児にまれ,後者の多くは家族的.副腎性・睾丸性のタイプを除けば同性(isosexual)の早発思春期は大部分が脳型,つまり,視床下部性である.したがつて気脳写で診断できるのが多い.各種水頭症・脳炎・髄膜炎・多発硬化症などのほかに,腫瘍では松果体腫・クラニオ・神経線維腫・上衣腫・神経膠腫などが原因になる.これらに共通の傷害部位はⅢ脳室漏斗部の壁をなす中央隆起からやや尾側に偏つた付近である.Reichlin(New Engl. J. Med. 269:1182, 1963)によると,この部の小損傷が早発思春期発現に必須であるという.Loop(New Engl. J. Med. 271:409, 1964)は2歳9カ月少年に典型的な早発思春期を見つけ,気脳写で灰白隆起付近に小腫瘤を発見,開頭し経1cm球形のhamartoma剔除.諸文献からこの部のhamartoma 21例を集めるに,11例に早発思春期が合併,あとから早発思春期になつた2例がある.

グラフ

経皮的脳血管撮影法

著者: 桑原武夫 ,   相羽正

ページ範囲:P.5 - P.9

① は我々の用いている撮影器具である.このように注射針と注射筒とを内径3〜4mm,長さ30〜50cmのビニール管で接続して用いる.接続部はリュアロック式コネクターを使用し注入時に造影剤が漏れないようにしてある.これにより撮影者がレントゲン線曝射から避けることができ,また注入時の注射針の移動を防止して注入を容易にすることができる.注射筒は頸動脈,椎骨動脈撮影の場合は10cc,逆行性上腕動脈撮影では30ccのものを使用する.注射針は外径0.8mm (V8-JIS規格)〜10mm (V 10),長さは頸動脈撮影用6cm,椎骨動脈撮影用7.5cm,逆行性上腕動脈撮影用4.5cm程度のものが適当である.
② 動脈撮影用注射針は針先を通常の注射針よりかなり短かく,鈍角に切つてあるがこうすることによつて動脈壁内注入や針先がつきぬけてextravasationをおこす危険を防ぐことが出来るしかし頸動脈撮影の場合は通常の輸血針を代用することも可能である.

国立身体障害センターのリハビリテーシヨンサービス

著者: 稗田正虎

ページ範囲:P.75 - P.81

 身体障害者全体としての社会的問題は,予防医学,治療医学の向上,肢体不自由者児対策の普及,産業革新,労働力の不足などから最重度の心身障害者の問題を除き,遂次解決されつつあるかにみえるが,一方,新たに疾病や災害によつて,最新の標準的治療をうけながらも,永続性の障害をのこす人が発生しつつあることは事実で,急性期の治療をおわり,なおかつ回復期において専門的リハビリテーションサービスをうけることなく,じんぜんと日をすごしている入院中の,また家庭療養中の人が多数あることが予想される.
 これらの身体障害者を時期を失せず適時に,すみやかにリハビリテーションの過程にのせることが社会医学の立場から重要である.

カンファレンス

肝硬変症と食道靜脈瘤破綻(脾臓静脈吻合術)

著者: 小島憲 ,   平野謙次郎 ,   布施為松 ,   上野幸久 ,   藤田五郎 ,   太田怜 ,   武田定衛 ,   佐藤亮五 ,   吉本和夫 ,   前原義二 ,   田中満 ,   大久保克祐 ,   山田瞭 ,   高島民守 ,   前田昭三郎

ページ範囲:P.83 - P.87

 藤田(司会)それでは只今から第251回CPCを行ないます.今日の症例は,内科,一般外科ともに重要な関係のあるケースですが,計議進行上,先に一般外科のほうから一応全経過を説明していただいて,そのあと内科側から必要な事項を補足説明していただくようにしたいと思います.
 武田 患者は,41歳の会社員,主訴は吐血および下血です.昭和38年9月16日共連三宿病院内科に入院,同年3月2日外科に転科して同月27日死亡した症例です.家族歴および既往歴にはとくに申しあげるようなものはありません.現病歴は,昭和36年からクモ状血管腫に気付いていましたが,昭和38年8月初旬から38℃〜39℃ていどの不定の発熱をみ,同月下旬頃には下肢の浮腫,下腹部膨満感を訴えるようになつたので,某医に受診したところ肝疾患を疑われて利尿剤の投与をうけていました.しかしながら,るいそう,食思不振も加わつてきたので,共連三宿病院内科に受診,9月16日肝硬変症の疑いで入院しました.入院時,肝機能検査,胃レントゲン検査,胆嚢造影,腹腔鏡検査などを施行した結果,肝硬変症の診断のもとに治療をうけ,愁訴や他覚的所見も好転しました.この間の治療は,プレドニゾロンを主としたものでありましたが,投与期間は10月9日から約2ヵ月,総計約1200mgです.

講座 境界領域

内軟骨腫のレ線像と組織像(その2)

著者: 伊丹康人 ,   赤松功也 ,   井上新也

ページ範囲:P.92 - P.97

§多発性内軟骨腫,multiple enchondromatosis,skeletal enchondromatosis
 本症は軟骨組織の高度の増殖が多数の骨の中間帯部を中心にして現われるものである.遺伝的性格が考えられたがその確率は少ない.先天性であるかどうかということも確証はない.幻小児に発見され種々な四肢の変形や肢長の短縮などを見るようになる.臨床症状の少いことが多いので四肢に変形があらわれたり病的骨折をおこすことによつて初めて気づくこともある.

検査と診断 日常外科に必要な臓器機能検査法

脳機能検査法

著者: 星野列

ページ範囲:P.98 - P.102

はじめに
 本稿の執筆にあたつて,少し当惑したことには,普通に臓器機能検査と言つているのは,試薬や器械を用いて機能障害の程度を数量的に推定する方法であつて,臓器の機能障害によつて現われる身体的症候を見出すことを指してはいないらしいという点である.ところが,脳外科で常用する検査法は,主として形態的な変化の発見を目的としたもので,そのような意味の機能検査法は全然ないと言つてよい.強いて言えば脳波がこれに属するかも知れないが,これも少し意味が異なつている.また,脳機能を大まかに神経機能と精神機能とに分けるとすれば,精神機能の検査法は私の守備範囲外である.そのような理由で,結局,神経学専門家以外のものが,外来診察のさいに承知しておくべき神経学的診断法について,ごく簡単に記載することにしたい.

患者管理

外科領域における栄養管理(その5)

著者: 日笠頼則 ,   松田晉

ページ範囲:P.104 - P.109

Ⅱ.外科領域における栄養管理の実際
 (2)術後管理の方針
 (ⅱ)水分・電解質の補給対策
 (A)術前全く水分・電解質代謝の異常を認めずかつ手術侵襲も左程過大でなく,術後3〜4日目頃から十分な経口的食餌摂取が可能となる場合: 一日の水分喪失量は呼気により800cc,術後の発熱等があれば発汗により500cc,排便があればそれにより100〜200cc,尿により500〜1500cc(術直後は乏尿!),したがつて最小限に見積つても一日約2000cc内外の水分喪失をみることになる(術後の第1,2病日は,したがつて通常2000〜2500cc程度—ただし,手術日の水分の出納が平衡を保つていた場合一の水分補給で十分なのが普通).しかし,発熱が著るしく、発汗もはなはだしくなつた場合や呼吸困難の存する時はその水分喪失量も必然的に増大し,2500〜3500ccあるいはそれ以上ともなる.

症例

胃蜂窩織炎の1例

著者: 鈴木竹一 ,   田中昭四郎 ,   田辺靖彦 ,   小原和夫

ページ範囲:P.111 - P.114

 胃蜂窩織炎はまれな疾患である.最近われわれは急性腹症の診断の下に緊急手術を行ない全治せしめ得た本症の1例を経験したので報告する.

アンケート

内上四分限の乳癌

著者: 島田信勝 ,   藤森正雄 ,   片岡一朗 ,   久野敬二郎

ページ範囲:P.116 - P.119

 1)慶大外科では原則として行わない.理由は,後述する.
 術前の化学療法も行なわない.

診断のポイント 診断のためのカンフア・1

血便と鼓腹を示した症例

著者: 四方淳一

ページ範囲:P.120 - P.123

はじめに
 左下腹部痛とイチゴ・ジェリー状の下血を主訴として入院した.糞便の顕微鏡的検査によりアメーバ赤痢と診断され,アメーバ治療を行つた.
 その間にイレウス症状を呈し,腹水,腹部腫瘤をふれたほかに直腸指診により直腸内に腫瘤をふれた.

随筆

それからそれ(その1)—芋の煮えたもご存じない

著者: 青柳安誠

ページ範囲:P.124 - P.125

 まだ京都大学に職を奉じていた頃の話である.

MEDICAL Notes

腎移植における感染,他

ページ範囲:P.126 - P.127

 腎移植を要するような尿毒症患者では,感染が高率で低抵抗である(Schreiner, G.E.:Uremia, C.C.Tho-mas,1961)。また手術時の脾剔が感染susceptibilityの重要な原因になる(Laski, B.:Pediatrics 24:523, 1961)。そのうえ副腎ホルモンを与える必要があるので,移植には感染が重要な問題として随伴する,Hume (J.Clin.Invest.34:327,1955)の最初の移植報告9例では実に7例に感染がおこつた.感染者はすべてコーチゾン投与をうけている.その後のHume (Ann.Surg.158:608,1963)にはモニリア症死があり,Murray (New Engl.J.Med.268:1315,1963)の5移植例の3例に感染があつた.腎移植のみでなく,骨髄移植でも感染が危険な合併症とされている(Thomas.E.D:Arch.int.Med.107:829,1961).Colorado大学でも盛に腎移施を研究していることは本誌にも何回か紹介された(たとえばStarzl,T.E.:SGO 117:385,1963)が,6〜49歳の30例(♂25,♀5)の移植がなされ,厳重な無菌操作が取られているが,実に26例に感染がおこり,全30例の死亡12例の実に8例が感染死であつた.

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臨床検査の資料(10)

ページ範囲:P.129 - P.129

 正確な臨床検査が適確な診断から適正な治療へ導く本誌は東大中央検査室の協力を得て,十分吟味された資料を表覧連載し日常診療に資したいと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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