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文献詳細

雑誌文献

臨床外科20巻12号

1965年12月発行

文献概要

薬剤の知識

酵素剤の使い方(1)

著者: 石井兼央1 竹内正2

所属機関: 1国立がんセンター 2国立がんセンター内科

ページ範囲:P.1706 - P.1708

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はじめに
 近年の酵素化学の臨床応用の進歩は目ざましいものがある.消化酵素のようにかなり以前から治療に用いられたものもあるが,本格的な臨床面への応用は第2次世界大戦後,とくにこの数年以来広く行なわれるようになつた.疾病の鑑別診断に,経過や治癒の判定に血清中の酵素の測定が行なわれている.酵素蛋白として純粋なものをうることができるようになつてからは,酵素そのものを治療に用いるようになつてきた.
 歴史的に顧みると,古くから経験的に酵素の作用を治療に応用していることが知られる.たとえば,皮膚の化膿部位がハエの卵から孵化したウジ虫によつて浄化されることが認められており,これを現在の酵素化学から考えると,ウジ虫の産生する蛋白分解酵素,とくにcollagenaseによる作用であると解される.また,胃液や膵液を浄化の目的で皮膚の潰瘍や化膿創に用い,胃から分泌される蛋白分解酵素であるpepsinが発見されると,これを消化不良に内服したり,植物起原のpapainがジフテリー義膜の除去や,皮膚結核の潰瘍に用いられたりした.これらは19世紀後半のことである.20世紀になつて純粋の酵素標品がえられるようになつて,本格的に治療に応用できる酵素剤が出現したといえる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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