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文献詳細

雑誌文献

臨床外科20巻12号

1965年12月発行

文献概要

雑感

一耳鼻科医のつぶやき

著者: 小西一衛

所属機関:

ページ範囲:P.1737 - P.1737

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 「盲腸を取るなんてキミイ,手術のうちに入らんよ,ワッハッハッハ」と笑いとばされる先生がいらつしやるそうである.誠に頼もしい先生である.患者は先生のその自信に満ちた態度に安心し,欣然とまではいかなくても,不安を抱かずに手術室に入つて行くことができるだろう.たしかに患者に安心感を与えるという意味では効果的であり,いやがる患者,興奮ぎみの患者を無理やりやるよりは,手術はスムースに行なわれ易いことも事実と思う.だがこれはあくまでも患者むけの態度であり,素人向けの言葉である.私は最近つくづく手術は難かしいとの感を深くしている.そして,アッペの378.0点の1割にもみたない30.2点のアデノイド切除でノイローゼ気味である.つまりうまく取れないのである.
 「奥さん,こりやあ坊ちやんのアデノイドをお取りになつた方がいいですね」というと,「先生この子は1昨年手術しました」なんてことがある.開業当初は自分で手術をした患者の名前も顔も一々覚えているが数年たっと一々覚えきれない.「アデノイドを取りましよう」なんていうと,「先生に取つて貰つた筈です」なんて逆ねじを食わされ,とんだ恥をかくことがある.アッペならナルベがあるから,とにかく腹を切つたことは分るが,アデとなるとよく分らない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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