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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科20巻3号

1965年03月発行

雑誌目次

グラフ

イレウスの診断と治療

著者: 四方淳一

ページ範囲:P.269 - P.274

 腸管の通過障害が起ると悪心・嘔吐・腹痛・鼓腸・便秘・脱水などの症状を呈し,これが続くと全身状態が悪化して危険に曝される.
 通過障害の程度,経過時間,閉塞の原因と部位のみならず,単純または閉塞性イレウスか複雑または絞縊性イレウスかによつて症状と所見を異にするが,要は速やかに診断をつけ,腸管の通過を図らねばならない.のみならず,脱水状態や電解質異常があるため術前に水分や電解質の補給を行う心要がある.ショックを呈している時はショック対策を行う.

新しいX線診断法—ゼロラジオグラフィー

著者: 高橋勇 ,   伊藤久寿 ,   高田貞夫

ページ範囲:P.337 - P.341

 近年写真技術に革命をもたらしつつある電子写真を応用した全く新しいX線診断法としてゼロラジオグラフィー(Xeroradiography)が誕生した.従来の写真が銀化合物の化学作用に基づいて現像,定着,水洗,乾燥の操作を行なう湿式であるのに対し,ゼログラフィーは半導体ガラス状セレンの光電効果と静電気作用を応用して現像,処理を行なう物理的乾式写真である.
 1937年,C.F.Calsonによつて開発されて以来1950年代にX線撮影への応用が実現し,わが国では昭和37年東芝社で,はじめてゼロラジオグラフィー装置が完成し,同時にわれわれはこの装置を用いて,外科領域における臨床面への応用をすすめ,すでに2,3の学会においてそのすぐれた特徴について報告した.

外科の焦点

臨床的に胃潰瘍または胃腫瘍を疑わせる興味ある寄生虫性肉芽腫の解析と新しい課題について

著者: 吉村裕之

ページ範囲:P.277 - P.283

はじめに
 消化管殊に回腸下部にみられる非特殊性限局性腸炎,腸蜂窩織炎またはクローン氏病(Crohn’disease)と呼称される疾患の発症因子の1つとして寄生虫殊に蛔虫の幼虫の局所穿入または迷入が関与する場合のあることは既に先人によつて指摘されているところである.この場合その局所所見は虫体を中心とした好酸球性の肉芽組織または同蜂窩織炎の像を呈する場合が多く従つてその発症病理学的な観点からも種々論議されてきている.
 ひるがえつて胃における寄生虫迷入にもとづく類似の報告例は従来甚だまれではあるが,わが国では越家(1954),石井ら(1956),前田ら(1957),村上(1960),佐野ら(1961),内山ら(1961)および土屋ら(1963)によつていずれも胃壁内好酸球性肉芽腫の症例として報告され,これらの多くの組織切片中に寄生虫の虫体断面を思わせる異物の存在を認めている.これ等の寄生虫は多くは恐らく蛔虫であろうと推察され,時には東洋毛様線虫や蟯虫,その他動物寄生性の珍らしい線虫をも疑つてはいるがその根拠は必らずしも明確でないものが多い.もつとも原因体となる寄生虫がいかなる種類のものであるかということは直接患者の予後にはさほど重要ではないかも知れないが臨床的に胃潰瘍または胃の腫瘍を疑わさせる点に意義があると思われる.

論説

外科的黄疸における閉塞部位決定に関する複合診断法

著者: 槇哲夫 ,   佐藤寿雄 ,   三浦光恵

ページ範囲:P.285 - P.297

Ⅰ.まえがき
 黄疸患者の治療にさいして,まず第1に知りたいことは,その黄疸が内科的なものか,外科的なものかということであろう.最近は新しい肝機能検査がつぎつぎと考案されて広く用いられるようになつてから,黄疸の鑑別診断も従来より一段と容易となつた感がある.しかしながら,臨床経過も極めてまぎらわしく,また,検査成績より判定しようとしても,いずれに該当させるべきか苦慮するようなデータに遭遇する場合も決して少なくはない.さらに,外科的黄疸としても,良性か悪性か,すなわち結石によるものか,癌腫によるものかの判定は必ずしも容易であるとは言い切れない.このような場合,最近は経皮的経肝性胆道造影法が行なわれるようになつたが,本法についての教室の経験は,佐藤(寿)ら1)が報告したごとくである.さらにわれわれは,閉塞部の性状を知るのみならず,術前にその発生部位を判定しようとして,1)十二指腸液内膵酵素活性値の測定による膵外分泌機能検査法,2)経皮的経肝性胆道造影法および3)経脾的門脈撮影法の3検査法を行なつている.これを,われわれは,『複合診断法』と呼んでいるが,この検査法により,閉塞部の性状,発生部位のみならず,腫瘍の切除可能性をも術前に判定しうるものと考えている.以下今日までの検査症例を中心に,本法について述べてみたい.

切除胃口側断端における癌細胞残存例の検討

著者: 脇坂順一 ,   弓削静彦 ,   樺木野修郎 ,   大宜見肇

ページ範囲:P.299 - P.305

いとぐち
 臨床的に根治手術を施したと思われる胃癌においてもかなり早い時期に術後再発を来たして不幸の転帰をとることがあり,中でも局所再発は癌再発例のおよそ80%を占めるとさえいうものもある1)2).このような局所再発は手術手技のいかんによつても,ある程度は減少せしめ得る可能性があり,胃癌の転移廓清等の問題とともに,切断端における癌細胞残存防止のための胃切除線の決定は術後遠隔成績を左右する極めて重要な因子であり,拡大根治手術や積極的胃全剔が提唱される理由がある.
 さて,胃壁癌浸潤状態については,Cuneo4),Verbrugghen4)等の研究があり,Borrmann5)6),福重7),堀8)9),青木10)等も胃壁内癌浸潤状態の研究に基いて,胃切除術の再検討を行なつた知見について報告している.

小児手術成績の検討—(新生児,乳幼児の消化管手術を中心として)

著者: 伝田俊男 ,   勝俣慶三 ,   秋山洋 ,   遠藤大滝 ,   一色昇 ,   井上迪彦 ,   石井勝己

ページ範囲:P.307 - P.315

 近年小児外科に対する関心が高まり,手術成功率が極めて低かつた乳幼児特に新生児に対する手術成績も次第に向上しているが現在なお満足すべき状況ではなく多数の問題点が残されている.われわれはその手術成績向上の目的の一助として昭和31年1月より38年5月までの過去8年6月の間に経験した新生児,乳幼児の手術成績特に術後の合併症,死因について検討を加えた.

動脈閉塞性疾患におけるプラスミンの消長について

著者: 高橋雅俊 ,   工藤武彦 ,   古川欽一 ,   島崎和郎 ,   橋本晴雄 ,   藤田哲弥 ,   石井定美 ,   山内正義 ,   斉藤浩司

ページ範囲:P.317 - P.321

はじめに
 閉塞性血管疾患の原因として血管壁の病変,血液凝固因子の変化,血流の遅延の3大因子はVirchowのtraid1)として古くから知られており,病理形態学的にもthromboangiitis obliterans,ar-teriosclerosis obliterans,cranial arteritis,periart-eritis nodosaなどの種々の因子によるものが記述されており,この中でもarteriosclerosis obliteransは外国に多く見られるが,本邦における中小動脈閉塞症はthromboangiitis obliteransの病型が多く,血管の炎症性機序や血栓形成の本態に関してはなお未解決な点が多く残されている.
 1956年Astrup2)は線維素溶解現象と血管壁のatheroma硬化の発生に関して一連の関係を指摘して以来,血管の閉塞性疾患に関してこの方面の研究が注目されるようになつてきた.われわれは血液因子の障害を明らかにして本症の治療面を向上させるために当外科の心,血管患者66例を対象としplasminを中心とした一連の研究を行ない,動脈の閉塞疾患のplasminの消長に関し興味ある結果を得たのでここに報告する.

射創(penetrating wound)の治療について—Débridementを中心に

著者: 藤田五郎

ページ範囲:P.323 - P.327

緒言
 終戦以来,われわれの身辺からは戦傷という形での外傷は一応消えたけれども,社会における各種犯罪が兇悪化して銃火器のための事故が漸増してきている.直接犯罪に関係したものでなくても,銃器の暴発事故,工場における火薬などの爆発事故などは数多いし,これらの創傷は高速,低速の差はあつても一連の射創の形態をとつて現われる.
 一方では"交通外傷"は時代の波にのつてその特性が広い立場から研究されて,それに対する取扱い方や治療方針も確立されつつあることは非常によろこばしいことである.このような交通外傷とは数のうえにおいて比較にならないけれども,これらの銃火器事故にもとずく外傷はやはりそれ独特の特性をもつているものであるので,この種の外傷患者の診療にあたつて最少限必要な事がらだけをわれわれの研究の一端に加えて述べることにしたい.

イレウスの診断と治療

著者: 四方淳一 ,   山上明倫 ,   杉原礼彦 ,   浮島仁也 ,   武田昭信 ,   千葉勝二郎 ,   松尾泰伸 ,   村上博俊 ,   高橋正樹 ,   早川勲 ,   本山博信 ,   黒田慧

ページ範囲:P.329 - P.336

Ⅰ.はじめに
 イレウスとはいろいろの原因により腸管内容の通過が閉塞状態を来す疾病であり,これによつて重篤な全身症状を来すので,なるたけ早く診断を下し,治療方針を決定しなくては生命にかかわるものである.
 著者らは"急性腹症"をハウプト・テーマとして研究しているが,今回はイレウスの問題をとりあげた.墨東病院外科におけるイレウスの統計をとつてみると,その死亡率がかなり高いことを反省しているので,これを中心としてイレウスの診断と治療について述べてみよう.

カンファレンス

脳腫瘍

著者: 小島憲 ,   平野謙次郎 ,   大橋成一 ,   布施為松 ,   藤田五郎 ,   堀之内宏太 ,   原田敏雄 ,   隅越喜久男 ,   島田裕

ページ範囲:P.344 - P.348

 藤田 ただ今から第240回のCPCを行ないます.今日検討して頂く症例は,44歳の自衛官で臨床診断は脳腫瘍となつております.本患者の主務科であつた脳神経外科の島田医官に経過をさきに説明して頂きましよう.最初は手術所見までを話してください.
 島田 患者は44歳の自衛官で航空機塔乗員です.家族歴は妻が脊椎カリエスであるほかは特別のものはありません.既往歴としては26歳のとき急性虫垂炎で虫垂切除術をうけています.

講座 境界領域

Osteogenic Sarcomaのレ線像と組織像

著者: 伊丹康人 ,   北村洋一 ,   井上哲郎 ,   霜礼次郎

ページ範囲:P.350 - P.357

Ⅰ.はじめに
 これから述べようとするOsteogenic sarcomaは,Osteogenicという言葉をforming boneと解釈するか,arising from boneと解釈するかによつて,骨形成性肉腫,骨原性肉腫或は骨肉腫(Osteosarcoma)ともなり,まことは瞹昧なことになつてくる.したがつて1923年EwingがOsteogenicSarcomaを"drived from bone"と解釈して以来Codman(1949),Phemister(1930),Coley(1949),Lichtenstein(1949),Geschicter & Copeland(1949),De Palma(1954),Thomson and Turnerwarwick(1955),三木,鳥山(1957),Dahlin(1957),Jaffe(1958),Lindbom(1961),古屋(1960),Price(1961),橋本,安藤(1961),Weinfeld and Dudley(1962),奥泉(1964)等に諸家によつて,臨床的な立場または病理組織学的な立場から,分類がなされて今日にいたつている.

検査と診断

胆嚢集団検診

著者: 小池泉 ,   森近浩 ,   寺田文夫 ,   坂本豊吉 ,   土屋豊 ,   小高光 ,   井上信弥 ,   橋本明 ,   信田重光 ,   黒沢孝夫 ,   滝田照二 ,   矢木義弘

ページ範囲:P.358 - P.361

 1962年11月以来、われわれの施行せる消化管集団検診は15,000例に達した.検診の結果,胃・十二指腸所見以外に,胆石,腎結石などを認めていたので,集団検診時に胆嚢造影を併用し,胆石症,胆嚢下垂等を検出するために1963年4月よりテレパーク,オスビルを使用,400例の成績について検討し得たので報告する.
 受検者は35歳以上の男女で,主として事業所を対象としている.

実地医家のための診断シリーズ・2

上腹部腫瘤

著者: 長洲光太郎

ページ範囲:P.362 - P.365

Ⅰ.原則
 上腹部に腫瘤を触知すれば,何といつても胃癌を第一に念頭におく必要があり,これを除外してはじめて他疾患に頭をむけるという態度は正しいだろう.
 上腹部腫瘤といつても,正中線上か,左右にかたよつているか,移動性があるか,その他腫瘤の触診上の注意は別項で取扱かう.

診断のポイント・2

腹部結石像

著者: 四方淳一 ,   浮島仁也

ページ範囲:P.367 - P.371

 四方 今日は腹部単純レントゲン写真で結石像の写つている症例についてお話をします.3例ともレントゲン写真を撮つて結石が偶然発見されたものです.

アンケート

下垂体腫瘍について

著者: 半田肇 ,   深井博志

ページ範囲:P.372 - P.375

 1.照射療法.外科療法の選択基準(すべて照射療法なら.その理由)
 近年下垂体腫瘍の照射療法の有効性が強調され,両耳性半盲,およびトルコ鞍拡大を伴なつた定型的な下垂体腫瘍は原則として照射療法を行なうべきであると主張する人も多い.確かに症例によつては著効を呈する例も少なくないが,下垂体腫瘍に対する照射療法の適応,および効果については必ずしも意見の一致をみておらず,下垂体腫瘍に対する治療としては,照射療法,手術療法,ホルモン療法が併用されているのが現状である.われわれは,下垂体腫瘍で視力が正常またはごく軽度にしか浸されていない場合には,まず照射療法を行ない乍ら経過を観察し,その他の例,例えば,1)視野が進行性に狭窄してくる例,2)視力が進行性に低下してくる例,3)視神経萎縮が著明な例,4) diaphragma sellae への浸潤,圧迫による頭痛の著しい例,5)頭蓋内圧亢進を伴なつている例,などではまず手術療法を行なつた後、照射療法を併用している.なお,照射療法を行なう場合にも,手術療法を行なう場合にもホルモン補償療法は十分行なつている.要するに,下垂体腫瘍に対する照射療法,手術療法の選択基準は,神経症状,殊に視神経,視神経交叉の圧迫の程度によるもので,圧迫の著明を思われる例では手術をまず行ない,発育抑制の目的で照射療法を行なつている.

随筆

それからそれ(その3)—小林一三さんと私

著者: 青柳安誠

ページ範囲:P.376 - P.377

 『東宝』というのが,もし東京宝塚劇場を略しての言葉であるとすれば,これは私の父がこの世に残した,生命のある唯一の遺物であろう.何十冊か書いた性や女性研究の書物よりは,たしかに後年まで残るものと思われる.
 父は,浅草のオペラを愛し,自らペラゴロを以て任じ,『ペラゴロ草紙』などという著書もあるが,同時に宝塚少女歌劇の創立当時からのフアンであつた.最近評判をとつた朝日新聞紙の,新・人国記秋田県の巻で,私のこともちよつと紹介してあつて,その中に『父の有美は文学者で宝塚少女歌劇の創始者の1人だつた』と記されてあるが,これは誤りで,父は宝塚少女歌劇の単なるフアンに過ぎなかつたのである.

外国文献

高圧酸素療法,他

ページ範囲:P.378 - P.383

 ある種の酸素欠乏状態に高圧酸素療法が有効なことは確認されているが,この療法が血管新生を阻害するという見方も出ている.Heppleston (Lancet 1:1135,1964)はマウスの組織in vitro培養で,高圧O2が血管新生を傷害するとし,in vivoでも同じ作用があるか否か検討の必要があるとしている.各種動物の未熟網膜血管は高圧O2で閉鎖するし,人体では新生児において酸素中毒でretrolental fibroplasiaを招くことが知られている.成熟した網膜血管は高圧O2で収縮はするが閉塞することはない.これは圧の機械的作用でなく,酸素張力の増加のためである.Winstanley (Brit.J.Ophth.47:542,1963)はdiabetic retinopathyの血管新生に対し高圧O2を用いたが影響がなかつたとしている.Henkind(Lancet 2:836,1964)はモルモツト角膜で高圧O2が血管新生に及ぼす影響をしらべた.alloxan前眼房注5〜7日後,角膜血管新生のおこるところで,高圧O220〜40時間加える.生前,死後精査して血管新生傷害は全くないという.

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臨床検査の資料(12)

ページ範囲:P.384 - P.385

 正確な臨床検査が適確な診断から適正な治療へ導く本誌は東大中央検査室の協力を得て,十分吟味された資料を表覧連載し日常診療に資したいと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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