論説
下大静脈閉塞に対する外科的治療の検討
著者:
砂田輝武1
西純雄1
寺本滋1
江草重実1
和気秀文1
所属機関:
1岡山大学医学部第2外科
ページ範囲:P.427 - P.432
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肝部下大静脈に閉塞がおこると臨床的に下肢の浮腫,静脈怒張,下大静脈圧の上昇などのほかに門脈圧亢進症状(肝腫大,腹水貯溜,脾腫,食道静脈瘤発生など)と肝機能障害がみられる,従来剖検によつてのみ発見された本症が近時は静脈造影法,肝生検法など診断技術の進歩によつて生前に確診を得ることが可能となり最近外科的治療の対象として関心がもたれるようになつてきた.本症はしばしば肝静脈閉塞を併発する場合が多いことは諸報告にみられる通りで,保存的に治療されると急性例は勿論慢性例においても予後不良なことは衆知のごとくであり,外科療法に依存する期待は大きい.しかしながら静脈閉塞部位の関係ならびに性状および豊富な副行路形成がみられることから決して容易な手術とは考えられず,いまだ治療術式も確立していない現状である.そこでわれわれは岡山大学砂田外科教室で施行した下大静脈閉塞6例の手術経験と文献報告から若干の考察を加え検討してみたい.