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外科の焦点
頭部外傷急性期の鑑別診断—計数表による推計学的診断
著者: 佐野圭司1 中村紀夫1 山田久1 平川公義1
所属機関: 1東大脳神経外科
ページ範囲:P.701 - P.712
文献購入ページに移動世界中の文明国同様,わが国も頭部外傷の激増になやんでいることは周知のとおりである.わが国では実に年間50万余の頭部外傷患者があり,そのうち18,000〜19,000の頭部外傷死がかぞえられる(1963年では19,255)のである.この頭部外傷の増加は交通事故の増加と切つても切れない縁があることはいうまでもない.頭部外傷死の原因の約70%は交通事故であり,交通事故死の死因の約70%は頭部外傷なのである1).そして文明がすすむにつれ,ほかの病気による死亡はだんだん減少して行くが,交通事故や労働災害,産業災害等による死亡——その大部分は頭部外傷による——は増加の一路をたどつているということは世界中に共通した現象である.しかも頭部外傷は過半数において一家の働き手や両親の希望のにない手をおかす(たとえば1963年にはわが国の頭部外傷死の年齢分布は15〜54歳が63%で,また男女比は4:1であつた2)のでその意味からも国家的の大問題である.
この頭部外傷はいつ,いかなるところでも発生する可能性があり,その患者にまず直而させられるのは,頭部外傷の種々相に通じた脳,神経外科医とは限らず,むしろそうでない場合が大部分である.
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