文献詳細
文献概要
法律の知識 臨床医に必要な法律の知識・2
医師の責任と病院の責任
著者: 唄孝一1
所属機関: 1都立大
ページ範囲:P.797 - P.800
文献購入ページに移動〈使用者責任ということ〉
Q先生,前回は,輸血梅毒事件にことよせて,医師の過失を裁判所がどのように認定するかという論理的過程をくわしく報告申し上げました.そこで,つぎにはほかにいつたいどんな過失の事例があるか,というような点につき申し上げるのか順序かもしれませんが,ここではそのことは一応別にゆづつて,医師の過失と病院の責任との関係という問題に立ち進んでゆきたいと思います.過失の有無はA医師について問題になつていたのに,損害賠償を払う責任者(つまり被告)としては,国が登場しているということにつき——,前回は保留したままになつているからです.それは,御推察のように,A医師が国立病院の勤務医であることに基づくのですが,そこの法律的論理をややくわしく説明しようというわけです.
輸血梅毒事件で損害賠償が問題になるのは,民法の中の不法行為という規定にもとづくことは前回にも申し上げたとおりです,すなわち,「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」(民法709条)というわけですが,その事件では,A医師が不法行為をしたのに,損害賠償はA医師自身でなくて,国が責任を負つているのは,そこに法学上「使用者責任の法理」といわれるものが作用しているからです.
Q先生,前回は,輸血梅毒事件にことよせて,医師の過失を裁判所がどのように認定するかという論理的過程をくわしく報告申し上げました.そこで,つぎにはほかにいつたいどんな過失の事例があるか,というような点につき申し上げるのか順序かもしれませんが,ここではそのことは一応別にゆづつて,医師の過失と病院の責任との関係という問題に立ち進んでゆきたいと思います.過失の有無はA医師について問題になつていたのに,損害賠償を払う責任者(つまり被告)としては,国が登場しているということにつき——,前回は保留したままになつているからです.それは,御推察のように,A医師が国立病院の勤務医であることに基づくのですが,そこの法律的論理をややくわしく説明しようというわけです.
輸血梅毒事件で損害賠償が問題になるのは,民法の中の不法行為という規定にもとづくことは前回にも申し上げたとおりです,すなわち,「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」(民法709条)というわけですが,その事件では,A医師が不法行為をしたのに,損害賠償はA医師自身でなくて,国が責任を負つているのは,そこに法学上「使用者責任の法理」といわれるものが作用しているからです.
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