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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科20巻8号

1965年08月発行

雑誌目次

特集 癌手術例の検討

脳腫瘍5年生存例の検討

著者: 佐野圭司 ,   桑原武夫 ,   関野宏明 ,   真柳佳昭

ページ範囲:P.1007 - P.1017

はじめに
 表題に忠実に従うとすれば,5年生存例がどの位の比率で存在するか,この生存例が如何なる性質の腫瘍で,それが如何なる部位に生じたものであつたか,またそれに対して如何なる手術あるいは治療が行なわれたのであるか,さらにかかる長期生存例が如何なる健康状態で生存しているか等の順に記述せねばなるまい.例えば,胃癌とか甲状腺癌等についてはかかる記述が適当であろうかと思われる.しかしながら,脳腫瘍には大ざっぱに分けても約30種類があり,それぞれが異なつた悪性度を有しており,しかもこれらが頭蓋内のほとんどあらゆる場所に発生し,その手術法もさまざまである.したがつて,上記のごとき記述法によればいたずらに混乱をきたすおそれもある.ここでは,まず脳腫瘍全般にわたり,手術死亡率,5年生存率および生存者の現況等のあらましを述べ,ついで主要な各脳腫瘍のそれぞれについて,その特長ないし性質を簡単に述べ,手術死亡率,術後生存曲線および生存者の現況等を明らかにし,あわせて最近の手術成績の向上について触れたいと思う,
 今日まで,脳腫瘍の手術成績は,大小さまざまのスケールで,脳腫瘍全般にわたりあるいは個々の脳腫瘍について種々諸家により報告されてきているが,まだその数は多くはないようである.

根治手術不能甲状腺癌,長期生存例の経験

著者: 伊藤国彦 ,   西川義彦 ,   関谷政雄 ,   鈴木琢也 ,   成田滋 ,   小森昭宏

ページ範囲:P.1019 - P.1023

はじめに
 甲状腺癌の臨床を論ずるに当つて,まず第1に問題にしなければならないのは,甲状腺癌の病理学的特性である.すなわち,甲状腺腺癌は発育が緩徐であるのに反し,甲状腺未分化癌は,発育進展が早く,予後がきわめて不良である.この両者は同じ甲状腺の癌でありながら,経過も所見も異つているので,まず両者を始めから分けて考えなければならない.もつとも長期間を経た甲状腺癌の一部分に,未分化への変化がみられることがある.われわれ1)が昭和35年から3年間に経験した組織診断の明らかな甲状腺癌は156例であるが,この病理学的分類は,乳嘴状腺癌,78例(50%),濾胞状腺癌68例(43.5%),未分化癌9例(5.1%),アミロイド基質を有する髄様癌1例(0.63%)となつている.すなわち未分化癌は全甲状腺癌の約5.0%にみられ,大部分は腺癌である.この比率は本邦における他の報告とほぼ同一であるが,外国の発表では,未分化癌の率はもつと多くなつている.日本では幸いに予後のきわめて悪い甲状腺未分化癌は比較的に少ないようである.われわれの経験したこの期問の9例の未分化癌についてみても,比較的最近の例であるが,すでに7例が死亡し,しかもその中6例は手術後3カ月以内に死亡している.また2例の生存例も現在放射線治療で抑制中である.

肺癌の根治手術について

著者: 河合直次

ページ範囲:P.1025 - P.1027

 肺癌の5年生存例の検討についての依頼であるが,肺癌の根治手術の問題に限つてわたくしの今までの経験と,これからへの希望などについて述べることとする.
 わたくしが外科の教室に入つた大正の終り頃には,癌手術の遠隔成績を表わすのに3年生存率をとるか.5年生存率とするかはまだ決つていなかつた.この時代には,胸壁手術のさいにあやまつて胸腔を開くと死ぬといましめられていた頃である.胃癌の手術は行なわれていたが,吻合が主で切除はごく稀である.それも全例教授の執刀で,医局にはまわつてこない.しかも切除例は死亡することが多かつた.こういう時代であるから遠隔成績の生存率を何年とするかについて論議されていたことは当然といえよう.しかし,現在一般に使われている5年生存率にもなお検討の余地が残されていることには間違いない.術後5年以上を経過したものに再発を見ることが少なくないことは誰も経験していることであろう.

乳癌のリンパ節転移と術後遠隔成績

著者: 島田信勝 ,   石井良治 ,   天晶武雄 ,   吉崎聰 ,   中川自夫 ,   榎本耕治

ページ範囲:P.1029 - P.1032

 乳癌は胃癌等と異なり,表面より腫瘤の触知が可能であり,しかも大部分の乳癌は腫瘤形成を初発症状とするので,患者が注意深く観察しておれば,その発見は必ずしも困難ではない.もちろん時には腫瘤の存在が判然としないこともあるが,異常分泌をしたりあるいは疼痛等なんらかの訴えがあるものであり,また最近は通俗雑誌や新聞,ラジオ,テレビ等でかなり本疾患の常識も宣伝されているので,往年のごとく巨大な腫瘤,潰瘍または多数のリンパ節転移を認める症例ははるかに減少した感がある.本症の術後遠隔成績については度々教室の成績を報告してきたが,この10数年来かなり改善の傾向がある.今回本誌の需めに応じ,昭和39年までの10年間の成績を中心に述べることにする.
 慶大外科教室において施行しつつある手術法に二つの方法のあることも御承知のことと思うが,念のため略述する.すなわちその一つはHalsted法であり,他の一つは臨床的にSteinthalのⅠ,Ⅱ度と思われるもので,腫瘤が大胸筋あるいはその筋膜に癒着していない場合には,筋膜は切除するが大小両胸筋は切除しない方針をとつている.ただし腋窩リンパ節廓清は十分行なうこともちろんであり,また通常はその必要性は殆んどないがリンパ節廓清に胸筋切除を必要とする場合はそれを行なうこともあるが極めて稀である.なお術後はいずれも1週内外の早期より放射線療法を実施している(臨床と研究,41巻,11号,2075頁,昭39).

食道癌5年生存例の検討

著者: 中山恒明 ,   鍋谷欣市 ,   牧野耕治 ,   星野邦夫

ページ範囲:P.1033 - P.1039

緒言
 ここに2枚のX線フィルムがある(第1,2図).その所見は一目で判る食道癌の像である.およそ10数年前,これをみた何人の医師が手術の成功を信じ,何人の医師が5年以上生存することを疑わなつたであろうか.
 かつて食道癌は不治の病とされ,内外の文献をみても全く絶望的な治療成績であつた.1913年Torek1)が始めて胸部食道癌の手術に成功し,その後,本邦では1932年,恩師瀬尾教授2)と京大大沢博士による宿題報告が行なわれたが,当時の手術死亡率は全世界で90%以上の高率であつた.しかし食道癌手術という峻山に歩を進めた先人の苦心と努力は,同じ道を歩むものにとつて無限の鑑である.そして1946年以降,冒頭に掲げたような食道癌がしだいに安全に手術3)され,5年生存例をかなり得るに至つた食道癌手術の歴史は,顧みれば血と涙と汗で綴られた艱難の道であつた.しかも食道癌は現在なお重篤な病の一つであることは,全世界の5年生存例がいかにも少ないことで解る.ここにおいて今までの遠隔成績を深く検討して,将来の治療方針に役立てることはきわめて意義深いものと思う.

膵臓癌5年生存例の検討

著者: 今永一 ,   宮石成一

ページ範囲:P.1041 - P.1046

はじめに
 膵臓は解剖学的に通常頭部,体部,尾部の3部に分たれ,この何れの部にも癌は発生するのであるが,今日までの諸家の統計をみても,また,私共の経験でも膵臓癌の2/3以上は膵頭部に発生するものである.癌の早期診断については,現在各臓器別にいろいろの方面から研究され,しだいにその成果があがりつつあるが,膵臓癌の早期診断は,肝,胆道系の癌と共に最もおくれている分野である.膵臓癌はその初期はもちろんのこと,かなり癌が進行しても特有の症状を欠くもので,僅かに疼痛だけが手懸りとなる場合が多い.しかし,これも多くは癌がある程度進展して,疼痛も漸く持続性になつた場合に膵臓癌を疑わしめるのであつて,したがつて外科的治療を行なう時期にはすでに周囲臓器,血管系への浸潤,あるいは転移が高度な場合が非常に多く,根治手術が施行し得ないのである.ただ,膵頭部に原発したもののうちのあるものは,疼痛発現後,比較的早期に胆道系を圧迫,閉塞することによる黄疸をみて,根治手術ができる場合がある.私の経験でも膵体部癌では,多くは門脈系,腹腔動脈,あるいは上腸間膜動脈への浸潤が著明で,門脈切除によつて膵体尾部切除術を行ない得た症例もあるが,これら症例も数ヵ月後には再発が現われて,根治した例はまだ1例も経験していない.

直腸癌術後5年生存例の検討

著者: 卜部美代志 ,   山本恵一 ,   中塚勝正

ページ範囲:P.1047 - P.1053

はじめに
 直腸癌の手術成績は他の臓器癌のそれに比較して良好である.それは直腸癌の病理学的特長に基づくものと考えられる.それでもなお,術後の局所再発は決して少なくない.したがつて私共はそれらの事態に鑑みて治療法の工夫をすべきである.
 私共の教室の1965年3月現在における直腸癌症例は223例に達する.このうち,人工肛門造設術,診査開腹術および非手術の21例を除き,各種の根治手術の行なわれた症例は202例であり,切除率は90.6%となる.手術術式別では腹腔会陰合併術式が全期間を通じ最多数を占める,これに次ぐものは仙骨腹腔合併術式であるが,とくに,1960年以降において,私共は後に述べるような病理形態学的検索結果に基づいて,本術式を多く行なうようになつたのである.いま,これら直腸癌根治手術例について,手術死亡例および調査不能例を除いた158例を対象として術後成績を観察し,とくに,術後5年以上生存例において,その特長ともいうべきものについて検討した.ここにその大要を述べることにする.

故 佐藤清一郎先生

佐藤清一郎先生を偲んで

著者: 篠井金吾

ページ範囲:P.981 - P.982

 外科学会の巨星塩田先生がこの世を去られてから1週程後に,塩田先生に次ぐ外科学会の長老佐藤清一郎先生が逝去され,門下生として先生の追憶の記を書くことが出来ることは私の最大の光栄である.
 佐藤先生がわが国における胸部外科の先駆者として残された功績は永く語り伝えられてよい.すでに大正2年ドイツで"Thoraxphthisicus"という論文を出され,肺結核外科にScalenotomieという新しい一頁を加えられた.私は先生の下で昭和7年から19年迄の11年間,助教授として胸部外科の御指導を受けたが、この間に2回にわたる日本外科学会の宿題報告に関係し,特に昭和13年の「日本における肺壊疽」の宿題報告には,私を共同担当者として名を連ねて戴いた.先生の性格は貴族的な気品が溢れておられたが,またその反面短兵急な御性格で,2度にわたる宿題報告にも研究の進展にいつも矢のような御催促を受けたことを覚えている.忘れられないことは,昭和13年の外科学会総会の折,有名な鳥潟先生と,九大の後藤先生の問で論争された平圧開胸是非論がある.この時,白熱した議論に満場の会員が手に汗を握つていたとき,冷静に両先生の仲に入つて,平圧でよい場合もあり,異圧が必要な場合もあると発言されて大論争にケリをつけられたことも想出の種である.

グラフ

気腹像を示す穿孔性腹膜炎

著者: 四方淳一

ページ範囲:P.983 - P.988

 急性汎発性腹膜炎は緊急開腹手術を要する疾患であるが,その診断は困難な場合が少なくない.一般に腹部単純X線撮影によつて腹腔内に遊離空気またはガス像(気腹像)を認めれば消化管穿孔よる急性汎発性腹膜炎と診断され,その大多数は胃・十二指腸穿孔によるものである.
 消化管より腹腔内に空気またはガスが遊離するには消化管の穿孔部の附近に空気またはガスが存在していることの他に,消化管内腔の圧が腹腔内圧より高いことが必要である.胃・十二指腸穿孔の場合にはこの二つの条件を満足している.一方,腸管の穿孔の場合でもイレウス状態と合併すれば気腹像を呈する場合がある.

"走る手術室"救急治療車

著者: 橋本義雄 ,   榊原欣作

ページ範囲:P.1064 - P.1070

 近年,交通災害をはじめとする各種の緊急災害は激増の一途を辿つている.相次いで起こる交通事故,炭鉱の爆発事故など不慮の災厄は枚挙にいとまがない.突然に起きるこれら不幸な被災者,負傷者の救済は非常に重要な社会問題であり抜本的解決の1日も早からんことが望まれている.
 しかし,とくに臨床医学的な立場からすれば,これら不幸な患者の治療に関するもつとも重要な問題は,もつとも適切な治療をできるだけ早期に開始すること—すなわち迅速適確な初期治療first aid—であると考えられる.初期治療の当否と遅速は患者の生命予後を直接に左右する重要な問題でありながら,従来の救護体系においては,初期治療の重要性はそれほどまでに認識されていなかつたのである.

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人事消息

ページ範囲:P.988 - P.988

本庄 一夫(金沢大学第2外科教授)
 4月1日より京都大学外科学第1講座に転任, 7月31日まで金沢大学医学部第2外科学教室教授を兼任
 佐藤博(日本大学外科助教授)千葉大学教授に昇任

外科の焦点

外科と移植(現況と問題点)

著者: 藤本吉秀

ページ範囲:P.989 - P.994

はじめに
臓器移植の歴史をふり返つてみて
 外科医の仕事は,病変や外傷によつて機能を失いそのまま放置すると身体に有害な影響を及ぼす部分を摘除するのが主であつたが,生命を保持する上にかけがえのない臓器が広範におかされた場合にはそれを摘除するわけにはいかない.そこで人工臓器で機能を代償しようとする試みがなされ,例えば一時的な急性腎不全に対しては人工腎臓で危機を切りぬけることもできるようになつた.これは近代医学の大きな進歩であるが,しかし,今後回復する見込みのない慢性腎不全に対してはいつまでも人工腎臓に頼つているわけにはいかず,できることなら他人の健康な腎を植えてやりたいというのが永年の外科医の夢であつた.
 臓器移植の実験はすでに今世紀のはじめから血.管外科の創始者Carrelらによつて始められている.当時は血管さえうまくつなぐことができれば臓器の移植は可能であろうと単純に考えていたが,そのようにして自己の臓器は移しかえることができても,同種や異種動物からとつた臓器は一旦植わりついたように見えても,数日経つと壊死に陥つてしまうことが分つた.

座談会

実地医家と大病院のつながりはどうあるべきか

著者: 榊原仟 ,   織畑秀夫 ,   藤崎喬久 ,   春日豊和 ,   永井友二郎

ページ範囲:P.996 - P.1006

 司会(織畑) 本日は日曜のところをお集りいただきまして,ありがとうございました.本日のテーマは,実地医家と大病院のつながりということで,実地医家の先生方と大病院として,東京女子医大の榊原先生にお話いただくわけです.この問題は,本当に理想的な治療をしようという場合には,非常に大切な問題でありますが,不幸にして日本の現状ではその理想的なところまではなかなかゆかない.むしろはるかに下りつつあるんじやないかというような,心配な状態にありますので,こういつた企画が行なわれましたのも,一つはそういうものをいかにして,よくしてゆこうかというところにございます.それで本日のこういうテーマの中に含まれますのは,卒業後の実地医家というものと,それから,病院における勤務医というもの,そういうものを含めて,医学をともに勉強しているという.医学教育の一部を担つている形で,それをいかにうまくやつてゆくか.医学教育という面を中心にお話し合いを,進めてゆきたいと思います.それで.教育という問題はハッキリとは打出さずに,具体的に実際の患者を治療してゆく場合についていろいろと問題が出て参りますので,そういつた具体的な問題をテーマにしまして,実地医家の先生方の方から大病院にたいして,こういうふうにして欲しい.あるいは,こういう点が,欠点だろうと思うというようなご意見をまずお伺いし,そのつぎに大病院側としての意見を述べていただく.

緊急検査法 血液検査・2

出血素因の検査

著者: 野村武夫

ページ範囲:P.1054 - P.1055

 本欄でとり上げるのは,臨床医がベットサイドで必要とする検査の術式である.したがつて精密な機器も不要であるし,訓練された技術員でなくてもよい,誰がいつ,どこでやつても実施できるという,迅速にできる簡易検査を主に紹介する.

実地医家のための診断シリーズ・8

胆道胆嚢造影法の実技

著者: 浜田博之 ,   駒瀬義夫 ,   杉浦啓太郎 ,   伊藤怜子

ページ範囲:P.1056 - P.1058

 胆嚢胆道疾患々者は,われわれの日常の診療にて遭遇することが,かなり多く,既往歴および理学的検査により,本疾患を疑い,精密検査施行のため,レントゲン検査に廻される率は,私達の病院においても,消化器系愁訴を主訴とするものの5〜10%に相当する.
 胆嚢胆道疾患には,胆石症,急性および慢性胆嚢炎,ジスキネージ,腫瘍,寄生虫疾患などが主なるものとして挙げられるが,なかんずく,胆石症胆嚢炎,ジスキネージの3者は,臨床症状も互に相似た点が多く,その鑑別は毎常必ずしも容易とはいえない.ことに,胆石が存在するか否かの診断は,実際の治療面に関連する所が大きいので,その重要性は議論の余地のない所で,X線検査で,胆石陰影を証明する,あるいは十二指腸ゾンデ法にて胆石を認める場合以外は確実な決め手となり得ない.最近7〜8年来,超音波診断法も,わが国の大病院で,試みられ,多大の成果を挙げつつあるが,まだ広く実地医家が,日常操作として駆使し得るという段階にまでは達していない(超音波検査法については別項論文参照).今回,私達が,当病院の外来および入院患者に施行している胆道胆嚢造影法の実際について述べる.

診断のポイント・7

肝膿瘍と誤診された胃癌の肝転位

著者: 松林冨士男 ,   小金沢滋 ,   古井勇 ,   海老沢健二 ,   戸塚哲男 ,   佐藤薫隆 ,   加藤明彦

ページ範囲:P.1059 - P.1061

 司会(松林) 本日の症例は50歳の男性で,内科から外科に転科した患者ですが,まず病歴・検査所見を内科および外科の受持医から話していただきます.
 加藤(内科受持医)主訴は咳嗽,弛張熱,右季肋部痛,羸痩です.家族歴では父が胃癌で死亡.現病歴は約3ヵ月前に発熱,咳嗽など感冒様症状があり"カゼ"の治療を受けていましたが主訴が改善されないので,第45病日目に当院内科を受診,胸部X線写真では左右に心臓が軽度に拡張している他は異常なく,血沈115mm/h白血球8,800血液像に異常なく顔面蒼白でしたが胸部,腹部の理学的所見では特に異常なく,とりあえず鎮咳剤と抗生物質を使用致しましたが約10日程して突然右季肋部の激痛を訴えるようになり,右季肋部は緊張強く圧痛著明で,X線上右横隔膜は前回より1.5肋間挙上し,主訴は漸次増悪し,第66病日目に内科に入院致しました.入院時,右季肋部から心窩部にかけて圧痛著明でした.諸検査の結果は,赤血球388万,血色素70%,白血球10,500,血沈128mm/h,便潜血はグアヤック(—),ベンチジン(±),血清蛋白7.7g/dl,A/G38.15/61.85,globurin α 21.52%,β18.61%,γ21.72%.Meulengracht 6,コバルト RO (3),BSP 30分値15%.電解質.Na 133.4mEq/l,K4.8mEq/l動脈血培養:72時間陰性でした.

新しい検査法・1

超音波検査法

著者: 長洲光太郎

ページ範囲:P.1062 - P.1063

 超音波とは人間の耳にききとれない程の波長の短かい,言いかえると振動数の多い音波のことをいい,医療用として用いられるのは次の二つである.

手術手技

冠動脈の手術(間接法)

著者: 田中大平 ,   津崎滋 ,   赤沢章嘉 ,   二宮凛 ,   永野稔 ,   田村清孝 ,   永津正章 ,   大橋正世 ,   大原毅

ページ範囲:P.1071 - P.1076

 冠動脈疾患の手術療法は外科医にとつて一つの大きな夢である.そのうち,間接法は心筋阻血部への副血行路の形成を促すに過ぎないとはいえ,現段階においてさえ内科療法では得られない永続的な効果をもたらすことが,この方面を熱心に研究している一部の外科医達の間から多数に報告されている.しかし,Beckが臨床成功例を発表して以来20数年を経,しかもその間多くの新法が考案されたにかかわらず,まだ普遍化するに至らない.これは臨床手術例からの客観的データが採り難いために内科的療法との比較を十分になし得ないこと,動物実験においても手術による阻血部への機能的血流増加を証明すべき方法が確立されていないことによると思われる.元来,間接法を意図する理論的根拠は,正常心筋が血流の殆んどない冠動脈間毛細管吻合を多数にもつに対して,冠動脈閉塞患者の心筋ではこの吻合管が著しく発達して血流を通し,時には阻血部位と心嚢とが癒着してそこに新生血管が認められるという事実が,阻血部のblood supplyを支えていると推測させる点にある.したがつて,人為的にこの状態を作ろうとする間接的手術法の目的は,主として冠動脈管吻合の発達を,一部,心外膜に癒着した他組織あるいは異物を通じてのarterial bridgeの形成および冠外性血行路の新生を,十分に促がすこととなる.

外来の治療 実地医家のための外来治療・4

破傷風の治療・ガス壊疽の治療

著者: 志賀厳

ページ範囲:P.1077 - P.1079

はじめに
 破傷風およびガス壊疽は,創傷感染症のなかでも外科的特異性伝染症,腐敗性伝染症として,古くから創傷治療上大きな意義をしめてきた.特に戦傷との関係が深く,予防ならびに治療面の進歩には,第1次および第2次世界大戦における経験の貢献が大きい.しかし平時の創傷においても,最近における交通災害の激増,創傷の複雑化にかんがみ,破傷風,ガス壊疽多発の傾向を考慮する必要があろう.

アンケート

熱傷の救急処置—救急疾患

著者: 藤田五郎

ページ範囲:P.1080 - P.1081

 熱傷ほど初療のたいせつなものはない.ことに,熱傷には"局所に油を塗るのがよい"という古い概念が一般家庭にまで普及しているために,病院治療の妨げになることが少なくない.熱傷は,"新鮮な創"という考えかたで救急処置にあたることがたいせつである.
 熱傷の原因,ていど(深さと広さ)部位などによつて一様ではないが,一応局所と全身の救急処置に分けて述べることにする.

熱傷

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.1081 - P.1084

Ⅰ.状態の把握法
 熱傷患者の状態,救急治療,予後を予め把握するには,つぎの5因子を確かめるべきである.
 A.熱傷面積
 B.熱傷の深さ
 C.熱傷部位
 頭顔,手,陰部などの熱傷では早期ショックを合併しやすい.

Pain clinic・2

顔面痛(1)

著者: 西邑信男 ,   木内実 ,   久場襄

ページ範囲:P.1085 - P.1088

 顔面とその周囲の痛みはpain clinicにおいて,もつとも治療の対象となるものの一つである.一般に,顔面痛はみな三叉神経痛と素人も考え,また,多くの医師が三叉神経痛として診断し,治療しているのが特徴である.実際的に言えば,これらの部位の神経痛には第1表のごとく,多くの種類の疾患が含まれるのである.前に述べた,顔面痙攣に疼痛を伴う場合もやはりTrigemi-nal Neuralgiaと誤つて見られ治療されることがある.これらの神経痛をいかなる方法でわけるかはむずかしい所であるが,臨床的にはtrue Neuralgiaと,atypicalNeuralgiaに分けた方が便利である.true Neuralgiaとは疼痛が一つもしくはそれ以上の神経の走行,もしくは神経枝の走行にあらわれる状態を言うのであり,atypi-cal neuralgiaとは痛みが広範に広がり,神経の分布部位に限定せず,むしろある血管の分布部位に沿つて広がつているような場合である.これらtrue Neuralgiaもこれをさらにprimaryおよびsecondary typeに分けることができる.primary Neuralgiaは原因が不明であり,idiopatic Neuralgiaであり,時期的にあらわれ,非常に短時間であつて,激痛である.

他科の知識 外科領域に必要な泌尿器科的疾患・1

腎性高血圧症

著者: 宍戸仙太郎 ,   夏目修

ページ範囲:P.1096 - P.1101

 近年,泌尿器および血管外科の進歩に伴つて爾来原因不明のため本態性高血圧症として取扱われていたものが,手術によつてその原因を除去することにより高血圧を治癒しうるいわゆる外科的高血圧症を経験した報告がかなりみられるようになつた.外科的高血圧症としては腎性,内分泌性,心血管性高血圧症などが挙げられるが,比較的簡単な手術により高血圧が治癒する点で臨床上非常に意義があるものと考えられる.またこれら疾患の頻度はそれほど高率ではないといわれているが,腎性高血圧症は割合多くみられるもので,泌尿器科と外科,とくに血管外科との境界領域における疾患としても重要である.

他科の意見

泌尿器科から外科への希望(2)

著者: 仁平寛巳

ページ範囲:P.1102 - P.1103

 泌尿器科医にとつては非常に重要な症状であるのに,他科の人がそれ程に考えていないものの一つに血尿がある.特に疼痛,発熱,浮腫などの全身症状や尿意頻数,排尿痛などの排尿異常もない,すなわち他の自覚症状を全く伴わず,しかも誘因と思われるものもなくてある日突然に出現する肉眼的血尿である.これは無症候性血尿と称して,40歳以上の人に現われた場合は尿路悪性腫瘍の発生を警告する最も重要な初発症状であるが,医学的知識のない一般の人はもちろんのこと,お医者さんでもそれ程重大な徴候とは考えていないのではないかと時々疑問に思うことがある.それというのも膀胱癌などでたいていは1年前から,ひどいのになると2〜3年前からこのような血尿が出没して,その度に止血剤の治療を受けていたという病歴によく接する.思うにこの種の血尿は,大部分の場合安静にしているだけで数日から週余で自然に消失するものであるから,患者のみならずお医者さん自身もまあ大したものではなかつたと考えてしまうのではなかろうか.しかしながら血尿といえば血痰,吐血,血便などと全く同じ性質の症状であるのに,何故に尿路の場合に限つて出血の原因には無関心で対症的治療に傾くのか,この点が泌尿器科医にとつては不思議でたまらないのである.

カンファレンス

閉塞性動脈炎か(第2回)

著者: 小島憲 ,   石川浩一 ,   松田源彦 ,   手墳正二 ,   福田圀如 ,   布施為松 ,   小沢啓邦 ,   太田怜 ,   藤田五郎 ,   岸本孝 ,   森永武志 ,   堀之内宏太 ,   笹村義一 ,   前田昭三郎

ページ範囲:P.1104 - P.1106

本例経過の概要(第1回の討議から)
 患者:75歳 ♂
 既往歴:30歳で淋疾,37歳で血清ワ氏反応陽性のため駆梅療法

薬剤の知識

抗性物質使用上の注意(1)

著者: 真下啓明

ページ範囲:P.1108 - P.1109

I.薬剤選択についての注意
 一つの抗生物質で感染症のすべてに有効であるものはない.広域抗生物質と称されるものもやはり限界がある.また逆に病原体の側から眺めれば当然選択薬剤の順位がある.しかしこれは試験管内抗菌力の強さでの問題であるから,臨床的には薬剤の可能投与量,薬理学的性質,また副作用,さらに病態如何を考えねばならないことになる.
 原則的には起炎菌に対する薬剤感受性試験の結果どの薬剤を用いるかを決定するのが理想的である.とくにブドウ球菌あるいは大腸菌,赤痢菌等のグラム陰性桿菌,結核菌などは薬剤感受性に幅があり,常に同一薬剤がよいといえない.一般感染症については,この感受性試験結果の判明するのを待てないことも多い.

患者と私

ささやかな抵抗

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.1110 - P.1110

 「いつたい,どういうわけで,今ごろになつてそんなことをいい出すの?」私は聴診器を手にもつたまま,患者の傍のおやじさんを睨みつけた.——初めから手術の予定で入院したのじやなかつたか.今になつて少しばかり具合がよくなつてきたからつて,手術をとり消すという法があるものかと私は憤慨した.
 いわゆる慢性再発性の胆のう炎の患者.55歳の主婦,もうこの3年間,時々胃ケイレン様発作の再発を繰りかえしている.タンセキといつてあるのだが,Biligraphinによる経静脈性胆のう造影では,うまく影が出ない.いつも外来治療でおさえているのだが,こんなことなら,去年の大発作の時,手術にもつていけばよかつた.こんなことをくりかえしているうちに,だんだん状態は悪化する.げんに,肝機能検査なんか,BSP試験にしろ,血清アルカリフォスファターゼにしろ測るたびに成績が落ちる一方じやないか.肝機能検査といえば,これをくわしく調べるという理由の下に一時内科治療にゆだねたこともいけなかつた,間歇期手術にもつていこうとしたのがいけなかつたかもしれない.

雑感

なが夕顔

著者: 木島昂

ページ範囲:P.1112 - P.1112

 手術室の窓には白光の真夏の日が射して,青桐の大きな葉が風に動くたびに,黒い蔭をちらつかせていた.緊張していなければならない保には,コントラストのはつきりした光と影の模様をうつした硝子窓が,若さを海や山に発散する季節から,重苦しいおしつぶされた保の現実を隔絶する動かしがたい厚い牢獄の壁に思えて,さつきからうとましくてならなかつた.
 「バカヤロー,何をポカンとしとるんじやい,ブルーテンしとる,ブルーテン!!」汚い言葉が先か,手術台の下でステテコから出した毛臑をサンダルで思いきり蹴られたのが先かわからなかつたが,下から上へ骨の芯を伝わる痛みは脳にひびいて鉄棒で打ちのめされたようなめまいを感じた.今日で3回目のオペの助手をつとめた保の臑には,真横に青黒ずんだ創がもういくつもついていたが,くる日もくる日もほとんど,顔うりの煮つけと丼7分目の粥一杯の病人食餌の腹ごしらえでは,何くそという気迫も消えてしまつて,情ない涙が大粒で転がりおちた.傍に立つている看護婦がガーゼで涙を拭つてくれると,母親の優しさにいつそう悲しくなつた少年の日のように新しい涙が湧いて,切りひらかれた赤い肉の術創も止血鉗子もかすんで見えなくなつてしまつた.

扁桃摘出手術時の一止血法

著者: 岡三郎

ページ範囲:P.1113 - P.1113

 扁桃摘出手術時の出血は,多かれ少なかれ耳鼻科医の悩みの種であつて,その止血方法はわれわれの大先輩の方々によつて種々報告され,血管結紮の器具も考案され,実用に供されている.私も勤務医の頃は,しばしば大出血に遇つて,止血に数時間を要した事もあつた.10%硝酸銀,過クロール鉄を用いたり,トロムボゲンその他の止血剤を着けた綿球で圧迫したり,止血鉗子で長時間挾んでおいたり,最後にはガーゼを手術創に入れて前後口蓋弓を縫合したりした.血管結紮も行なつたが,何の器具も使用に手数がかかつて仲々慣れる事が出来ず,ここで考えついたのが,動きの弱い部分であるから結紮した糸は1回結びでも脱落することはあるまいという事であつた.そこで結紮糸のなるべく太いのを選んで直径4センチ位の「わな」を作り,固定された方の糸の結び目から1/2ないし1センチの処を他の止血鉗子で挾み,絞断器の針金の輪を送り込むと同じ要領で血管を挾んでいる鉗子の2コの指環を越えてから「わな」を絞つて,そのまま尖端へ送り,尖端をはずれた事を確かめてから,糸を挾んだ鉗子と動く方の糸を指にまきつけて血管を絞める.普通の結紮の場合と同じ形になるが二重に結ぶ必要はないから両方の鉗子をはずして糸を結び目から1ないし2センチの処で切る.結んだ糸は4〜5日で自然に脱落することもあるが普通は5〜7日目頃に鑷子で軽く引つぱれば取れてくる.

外国雑誌より

抗癌化学療法剤の術中使用への期待と評価

著者: 井上善弘

ページ範囲:P.1114 - P.1115

 近年,抗癌化学療法剤の研究と業績が多く発表されており,これらがまだ十分な成果と満足すべき結果に至るまでには,なお幾多の困難な問題があるにもかかわらず,次第に高い評価と期待とが持たれつつあることも事実である.次に最近の抗癌剤についての見解を述べた二つの文献を紹介する.
 その一つは,Jeanne C.Bate-manらが,Surgery,(December1964,Vol.56,No.6,1067〜1077)に記載したものである,すなわち彼らは,癌細胞の静脈血中への侵入はかなり以前より病理学者によつて認められているが,その臨床的意義は最近まで一般の注意をひくに至らなかつた.1950年Grinnellは癌細胞の静脈内侵入と5年生存率との関係を報告し,Engellは手術時に腫瘍を灌流する静脈血中および末梢血中に9.7%の割合で悪性細胞を認め,異型細胞を8.5%に認めた.Sandbergは進展した腺癌患者では末梢血中に38%に悪性細胞が見つかると述べている.創面からの悪性細胞の剥離が時に治療不全を起こすことから,創部の癌細胞を破壊する物質を用いようとする気運が生れたのである.アルキール塩類に属する抗核分裂剤が多方面にわたつて癌の手術に補助的に使われているが,動物実験では腫瘍の転移を減少させるためには,ナイトロジェンマスタードよりもThio TE—PAの方が僅かに良い結果を示すようである.

トピックス

機械による心臓蘇生法—体外式心臓マッサージ機

著者: 桜井靖久

ページ範囲:P.1116 - P.1116

 今世紀はじめから胸廓をリズミカルに圧迫して心停止後の血液循環を保とうとする試みがなされていた(1908年Pikeら).周知のように1960年Johns Hopkins病院のKouwenhovenらにより臨床的にその有効性が明らかにされた.これを体外(閉胸)式心臓マッサージと称している.胸骨下約1/3の部分を脊柱に向つて強く圧迫し心臓をマッサージすることによつて40〜70mmHg,時には100mmHg以上の血圧をうることができる.開胸して行なう直接心臓マッサージと違つて外科的技術を要しない.場合によつては素人でもできるので人工呼吸と同様,救急蘇生法としての意義が大きい.さて以上は聊か旧聞に属するわけだが,ここで人力によつてこの体外式心臓マッサージをやる場合の仕事量を考えてみよう.成人の胸廓を約5cm圧迫するのには60〜120ポンドの力がいる,われわれの実験によると成人の胸廓に加える力と変形との関係はバネ定数1kg/mmの発条とほぼ等しい.5cmの圧迫ストロークをうるのに50kgの力がいるとして毎分60回これを繰り返し1時間続けると約1万キログラム・メータの仕事量になり術者自らの体重や筋肉の効率などを考慮に入れると数百カロリーのエネルギー消費になる.経験者なら誰でも覚えがあるが心臓マッサージを10分間位続けるといい加減疲れてしまう.

MEDICAL Notes

postpericardiotomy syndrome/neurofibromatosis

ページ範囲:P.1117 - P.1117

 Ito(Circulation 17:549,1958)が命名したもので広汎な心外膜切開後に発熱,心嚢・肋膜・肺に炎症性反応を呈する.postcommisurotomy syndromeとよばれ僧帽弁切開後にリウマチ性炎症が再発するためかといわれたが,Engle (Am.J.Cardiol.7:73,1961)はリウマチとは全く別の疾患でもおこりうることをたしかめpost-pericardiotomyとよんだ.Dressler (J.A.M.A.160:1379,1956)は心筋梗塞のあとにおこるpostmyocardial-infarction syndromeを記載したが,これも同じものであろう.Goodkind (New Engl.J.Med.263:874,1960)は胸部のblunt traumaでも同様症状のおこることを,Tabatznik (Am.J.Cardiol.7:83,1961)は外傷性血心膜症でも長いfollow-upで32%に本症のおこることを,それぞれ報告している.この成因は明らかでないが,Ito,Engleは心膜内の血液に対するhypersensi-tivityと考え,Dressler,Tabatznikらもそれに近い考え方である.

海外だより

ドイツ医学感想

著者: 金子俊昌

ページ範囲:P.1118 - P.1119

 心臓外科の研究のため約1年6ヵ月間にわたつてドイッのデユセルドルフ市にある医学アカデミーのデラ教授のもとに留学した.その後,ウィーン大学の第一外科のフクシック教授のもとで4ヵ月間滞在して消化器外科も見学して来たが,ここではとくにデラ教授の外科教室を紹介する.
 ちようど,私がデユセルドルフ市に到着したのは1963年10月晩秋の深まる頃であつた.飛行機の窓から大きく蛇行したライン川に沿つて人口約60万のデユセルドルフ市を見たとき童話の国に来たような気分になるほど美しい街に思われた.豊かで美しい田園調な風景,整理された高速道路など雑踏の東京では想像もつかないほど静かな町であつた.

外国文献

気管支癌に伴つたmalabsorption,他

ページ範囲:P.1120 - P.1123

 Williams(Thorax 15:30,1960)は気管支のoat cellCaが5HTを産生しカルチノイド症状を呈し,下痢,malabsorptionを来した例を報告したが,この例には脂肪便はなかつた.癌でamyloidosisを来してmalab症状を呈したのはAldersberg(J.A.M.A.134:1459,1947)にみられる.癌で上腸間膜動脈閉塞を来すと,Joske(Am.J.Med.25:449,1958)例のようにmalab症状がおこることがある.糖尿性neuropathyでもmalab症状がおこる.気管支癌では周知のように癌性neuropa-thyが少なくないので,こういつた意味でmalabのおこる可能性もあろう,Wangel(Gut 6:73,1965)71歳♂,hypertrophic osteoarthropathyで来院,精査し左肺門付近に癌発見,linear-accelerator法で5400 r照射,1年後malab症状著明におこる.糞内脂肪18g/24h(正常く5g),中等度のmacrocytic anemia,葉酸欠乏1.0mμg/ml,Co60—B12吸収障害(24時間尿1.0〜1.4%),低Al血(2g),低K血症(3.0mEq)あり,intrinsicfactor,膵酵素無効.4カ月で死亡.剖検してある.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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