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文献詳細

雑誌文献

臨床外科20巻8号

1965年08月発行

文献概要

外科の焦点

外科と移植(現況と問題点)

著者: 藤本吉秀1

所属機関: 1東京大学医学部第2外科

ページ範囲:P.989 - P.994

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はじめに
臓器移植の歴史をふり返つてみて
 外科医の仕事は,病変や外傷によつて機能を失いそのまま放置すると身体に有害な影響を及ぼす部分を摘除するのが主であつたが,生命を保持する上にかけがえのない臓器が広範におかされた場合にはそれを摘除するわけにはいかない.そこで人工臓器で機能を代償しようとする試みがなされ,例えば一時的な急性腎不全に対しては人工腎臓で危機を切りぬけることもできるようになつた.これは近代医学の大きな進歩であるが,しかし,今後回復する見込みのない慢性腎不全に対してはいつまでも人工腎臓に頼つているわけにはいかず,できることなら他人の健康な腎を植えてやりたいというのが永年の外科医の夢であつた.
 臓器移植の実験はすでに今世紀のはじめから血.管外科の創始者Carrelらによつて始められている.当時は血管さえうまくつなぐことができれば臓器の移植は可能であろうと単純に考えていたが,そのようにして自己の臓器は移しかえることができても,同種や異種動物からとつた臓器は一旦植わりついたように見えても,数日経つと壊死に陥つてしまうことが分つた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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