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文献詳細

雑誌文献

臨床外科20巻8号

1965年08月発行

文献概要

特集 癌手術例の検討

根治手術不能甲状腺癌,長期生存例の経験

著者: 伊藤国彦1 西川義彦1 関谷政雄1 鈴木琢也1 成田滋1 小森昭宏1

所属機関: 1伊藤病院

ページ範囲:P.1019 - P.1023

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はじめに
 甲状腺癌の臨床を論ずるに当つて,まず第1に問題にしなければならないのは,甲状腺癌の病理学的特性である.すなわち,甲状腺腺癌は発育が緩徐であるのに反し,甲状腺未分化癌は,発育進展が早く,予後がきわめて不良である.この両者は同じ甲状腺の癌でありながら,経過も所見も異つているので,まず両者を始めから分けて考えなければならない.もつとも長期間を経た甲状腺癌の一部分に,未分化への変化がみられることがある.われわれ1)が昭和35年から3年間に経験した組織診断の明らかな甲状腺癌は156例であるが,この病理学的分類は,乳嘴状腺癌,78例(50%),濾胞状腺癌68例(43.5%),未分化癌9例(5.1%),アミロイド基質を有する髄様癌1例(0.63%)となつている.すなわち未分化癌は全甲状腺癌の約5.0%にみられ,大部分は腺癌である.この比率は本邦における他の報告とほぼ同一であるが,外国の発表では,未分化癌の率はもつと多くなつている.日本では幸いに予後のきわめて悪い甲状腺未分化癌は比較的に少ないようである.われわれの経験したこの期問の9例の未分化癌についてみても,比較的最近の例であるが,すでに7例が死亡し,しかもその中6例は手術後3カ月以内に死亡している.また2例の生存例も現在放射線治療で抑制中である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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