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特集 癌手術例の検討
膵臓癌5年生存例の検討
著者: 今永一1 宮石成一2
所属機関: 1愛知県がんセンター病院 2愛知県がんセンター病院第3外科
ページ範囲:P.1041 - P.1046
文献購入ページに移動膵臓は解剖学的に通常頭部,体部,尾部の3部に分たれ,この何れの部にも癌は発生するのであるが,今日までの諸家の統計をみても,また,私共の経験でも膵臓癌の2/3以上は膵頭部に発生するものである.癌の早期診断については,現在各臓器別にいろいろの方面から研究され,しだいにその成果があがりつつあるが,膵臓癌の早期診断は,肝,胆道系の癌と共に最もおくれている分野である.膵臓癌はその初期はもちろんのこと,かなり癌が進行しても特有の症状を欠くもので,僅かに疼痛だけが手懸りとなる場合が多い.しかし,これも多くは癌がある程度進展して,疼痛も漸く持続性になつた場合に膵臓癌を疑わしめるのであつて,したがつて外科的治療を行なう時期にはすでに周囲臓器,血管系への浸潤,あるいは転移が高度な場合が非常に多く,根治手術が施行し得ないのである.ただ,膵頭部に原発したもののうちのあるものは,疼痛発現後,比較的早期に胆道系を圧迫,閉塞することによる黄疸をみて,根治手術ができる場合がある.私の経験でも膵体部癌では,多くは門脈系,腹腔動脈,あるいは上腸間膜動脈への浸潤が著明で,門脈切除によつて膵体尾部切除術を行ない得た症例もあるが,これら症例も数ヵ月後には再発が現われて,根治した例はまだ1例も経験していない.
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