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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科21巻1号

1966年01月発行

雑誌目次

特集 癌の補助療法・1

癌の外科療法に対する補助化学療法

著者: 卜部美代志 ,   山本恵一 ,   綱村史郎 ,   福田明史 ,   大島輝也

ページ範囲:P.17 - P.25

はじめに
 現在癌の治療法として有効なものが三つある.第1に外科療法であり,第2に放射線療法であり,第3が化学療法である.化学療法が第3にされているのは,その有効性が劣つて外科療法,放射線療法に次いで第3番目に位するものという意味ではない.有効治療法として歴史的に第3番目に出現した方法と解することもできようが,それよりも吉田も述べているごとく38),外科や放射線療法が局所的に効果をおさめ,化学療法はあとに残された全身的の癌細胞を攻撃して治療の最終仕上げをするといつた意味に解するのが至当のようである.そこで,本文においては癌の化学療法の奏効機転を考察して,外科治療に合併実施すべき化学療法の意義を論じ,私どもの現在までにあげ得た合併療法の成績について述べることにする.

癌の化学療法

著者: 勝正孝 ,   藤森一平 ,   山本一郎

ページ範囲:P.27 - P.36

はじめに
 周知のごとく,近代医学の各分野における進歩は目醒しいものがあり,従来不治あるいは難治とされていた数々の疾患に対しても,輝かしい成果が挙げられているが,ひとり癌に対する治療に関しては,臨床上今なお満足すべき状態ということはできない.
 癌に対する治療法としては,古くより手術療法が行なわれ,さらに放射線療法がこれに加わり,近年に至りいわゆる化学療法が開拓され,現在この3者を如何に有効に施行するかが癌治療の基本といつても過言ではない.

脳腫瘍の補助療法

著者: 佐野圭司 ,   佐藤修 ,   早川勲

ページ範囲:P.37 - P.46

はじめに
 脳腫瘍の理想的治療は,手術的に腫瘍を全剔することであるが,腫瘍の発育の状態により,あるいは,その発育する場所により,全剔の困難な場合があり,そのような脳腫瘍に対しては,手術に併用して何らかの補助療法が必要となつてくる.このような補助療法の必要な脳腫瘍は,瀰漫性に発育する,病理組織学的には悪性の腫瘍が大部分で,Glioma,転移性癌,原発性肉腫等に大別される.これらが,脳腫瘍内で占める頻度は40),39.4%(Glioma 35.8%,転移性癌2.6%,原発性肉腫1.0%)と,きわめて高いことは,脳神経外科医にとつて,常に重大な問題である.これらの悪性脳腫瘍に対する手術方法は,一般に腫瘍の部分的,あるいは,試験的切除にとどめ,さらに減圧開頭術,Torkildsen手術,脳室心房短絡術等により頭蓋内圧の降下をはかり,その後に補助療法を行なうのが通例である.また,病理組織学的に良性腫瘍の中でも補助療法が必要なことがある.たとえば脳下垂体腺腫は,被膜内腫瘍剔出術が定石であるが,これのみでは,再発率が大であるので,術後放射線療法を併用して好成績をあげている.この場合も補助療法の対象となつていることになる.

肺癌の補助療法

著者: 篠井金吾 ,   早田義博 ,   林源信 ,   篠田章 ,   船津秀夫 ,   熊倉稔 ,   市場正敏 ,   前田澄男 ,   清水正夫 ,   関口令安

ページ範囲:P.47 - P.54

はじめに
 肺癌に限らず悪性腫瘍に対する現在の治療の原則は外科的療法である.
 しかし肺癌においても他の腫瘤と同じく,発見時あるいは初診時すでに外科的療法の時期を失しているものも少なくない.また,外科的療法の適応があつても,根治切除を実施し得る症例は現在でもはなはだ低率である.したがつて悪性腫瘍の治療は早期発見および早期治療にあるが,現状においては根治切除の不可能な症例あるいは手術適応のない症例に対して拱手傍観の態度をとることは許されないものである.

グラフ グラフ解説

肺癌の細胞診

著者: 田嶋基男 ,   池田茂人 ,   坪井栄孝 ,   鈴木明

ページ範囲:P.5 - P.11

はじめに
 肺癌における生検(組織診)は,胃癌の場合と同様,現在の段階において,その範囲に相当の制約があり,最終診としては,主として細胞診が行なわれている.ただしその肺癌の細胞診も,わが国の現況を率直に言うならば,胃癌に比べて,とっつき難い感じがあるためか,実際に系統的に施行している機関は精々10カ所程度であろう.以下,なるべく多くの人に施行して頂けるように,肺癌細胞診の術式をグラフ写真と共に,具体的に記載する.

外科病理アトラス グラフ解説

気管支拡張症および肺嚢胞症

著者: 鈴木千賀志

ページ範囲:P.84 - P.88

1.気管支拡張症
 気管支拡張症とは,中等大の気管支が拡張したもので,気管支の拡張形態によつて円筒状,嚢状および両者の混合型の3型に分けられる.
 同筒状気管支拡張症は,主として第3〜5次気管支が円筒状に拡張し(グラフ①),気管支壁の弾性組織および筋組織が破壊され(グラフ②),拡張した気管支の末梢部にはしばしばグラフ③のごとき閉塞性気管支炎または細気管支炎がみられる.本症の発生因は,種々挙げられているが,気道の感染と閉塞とが主要なもので,患者は乳幼児期に肺炎,気管支炎,百日咳,麻疹等の急性呼吸器疾患の既往歴を有しているものが多いが,未知な内的要因の関与も想定されている.また本症は,しばしば慢性副鼻腔炎を合併し(Mounier-Kuhn's syndrome),また稀にはこれらと内臓転位症の3者を合併するもの(Kartagener's syndroine)もある.

急性局所性腸炎

著者: 石倉肇

ページ範囲:P.89 - P.92

 北海道岩内地方で多発する急性局所性腸炎は,臨床的にはCrohn病急性期と極似するが,組織学的には肉芽腫をつくらず一過性滲出炎を経て急速に治癒する.その疫学的見地や組織学的特徴からAnisakis性腸炎を濃厚に疑わしめるが,まだ病原探究に必要な実験を行ない得る段階に至らないので確証はない.この局地発生性の本症をEnteritis regicnalis exsudativa acutaと称したい.本症は臨床症状はもとより,病理組織像においてもCrohn病急性期の研究にきわめて好箇の資料を提供し得るものである.
 本症は12〜2月の厳冬期に多発し,すけそう鱈の子を喰べたものに多い.腹部劇痛・悪心・嘔吐・下痢で発症.急性重炎と極似する.発熱は軽く,腹壁緊張少なく,垂炎より腹部所見は軽いが白血球増多は強い,血色素係数は低下し,重症ではプトロンビン時間の延長,舌炎,皮膚乾燥,粘液便,血便もある.垂炎と異なり圧痛部位もまちまちで,その範囲は比較的広く,膨化あるいは硬化局所の抵抗を時々触れ得る.前記症状とX線像で確診される.すなわち本症では小腸バリウム停滞長く,分節状に進行し病変口側の膨化あり,罹患部腸壁粘膜の鋸歯状・蜂窩状変化があり,局所が終末回腸に近いと特有なString sign桿棒状を示し,粘膜は"Shaggy"となる.

論説

長時間手術の消毒について

著者: 古田昭一 ,   清水喜八郎

ページ範囲:P.55 - P.59

まえがき
 外科手術の今日の発達は手術々式の工夫創意によることはもちろんであるが,消毒法,麻酔,抗生物質等の発達と全くその軌を一にしていることは疑いない事実である.複雑な外科手術は従来考えもおよばなかつた,長時間手術という型になつて現われてきた.
 第1表は昭和36年4月より昭和39年8月まで東大中央手術部で行なわれた.手術時間8時間以上の症例である.26例中11例までが動脈の再建手術で7例が代用血管を使用している.長時間手術には患者の術中管理,手術者,介助者の疲労等の問題等色々生じてくるが,さらに基本的な問題として,長くて3〜4時間の手術を目標に一応安全性が確認されている従来の手術者,手術介助の看護婦の手,指の消毒法,患者の手術野の消毒法も再検討がなされなければならない,特に長時間に亘る手術では患者の全身状態は短時間のものに比較すると当然悪く,手術時間と術後感染症との間に密な相関があるという報告もある程である1).われわれの症例の多くが代用血管その他の異物を使用し,治療効果を期待する手術が多く,術後感染は決定的な失敗を意味し,移植の技術面の優秀性だけではその成功は期し難いのである.

簡易検査法

尿検査(1)

著者: 茂手木皓喜

ページ範囲:P.64 - P.65

はじめに
 尿の一般検査は,外科領域においても大切な検査の一つであつて,術前術後の管理,薬剤の適性使用などの目的に欠くことができない.それに最近,簡易検査のセットや試薬がひろく普及し,ベットサイドでの実施が容易になり,ますますひろく行なわれるようになつた.以下2,3回のわたつて外科領域で必要と思われる簡易検査について紹介したい.
 臨床的の意義は省略し,検査の実状についてのべる.

診断のポイント

早期胃癌の診断(1)

著者: 市川平三郎

ページ範囲:P.66 - P.69

I.診断のコツ
 早期胃癌診断のコツは何ですか,とよく聞かれる,その時,私はいつも困つてしまうのである.それは,コツというものはどんなことに上達するためにも必要には違いないが,あまりにも沢山あるからであろうと思つている.その上,人によつてコツと称するものが違いすぎるからであろう.早く碁に強くなるためには,高段者と打つことがコツだという人もあれば,同じ位の実力の人と実戦でもみあうのがよいといつてみたり,いや定石を覚えることですよ,といつてみたりする.これは,そのどれもが必要ではあるが,高段者と打つ機会に恵まれない人にとつては,高段者と打つことがコツとなるわけであるから,一般的にコツとは,という言い方は大変むずかしいことなのであろう.
 要するに,コツというもポイントというも,質問した人の現在の立場と,考え方,および実力によつて答えが違つてくるといいたいのである.

読影のポイント

脳波の読み方(1)

著者: 喜多村孝一

ページ範囲:P.70 - P.72

 筆者にあたえられた課題は「脳波の読み方」であるが,脳波の読み方を会得するには,脳波そのものを少なくともある程度知らねばならないことは当然である.したがつて,まず最初に,脳波の概略について説明したいと思う.

手術手技

胃癌に対する拡大根治手術手技

著者: 清水準也 ,   榊原宣

ページ範囲:P.74 - P.78

はじめに
 われわれは胃癌手術にあたつて癌胃組織,転移リンパ節を徹底的に摘出する目的で,拡大根治手術を行なつている.この術式の特長は横行結腸より上部のすべての胃所属リンパ節,あるいはこれと吻合のあるリンパ節を廓清することであり,具体的には結腸間膜内,上腸間膜動脈根部,肝十二指腸靱帯内など従来廓清されていなかつたリンパ節をも含んでいる.
 いまこの廓清範囲を図示すると,小網,胃,大網の平面では図の実線の範囲内を切除し,後腹膜面では結腸間膜の前葉を含み点線の範囲内の腹膜を剥離してリンパ節の廓清をしている(第1,2図).

アンケート

胃手術後の腹膜炎はどう処置していますか

著者: 堺哲郎 ,   中島佐一 ,   本多憲児

ページ範囲:P.80 - P.83

 胃疾患の手術(胃・十二指腸潰瘍と胃癌が殆んどを占あるが)後の腹膜炎発生はそう多いものではない.胃癌では多く避けがたい栄養低下.貧血のための胃腸管壁の浮腫により,また広範なリンパ節廓清と胃切除を行なうため切除断端の血行不足,胃内容に病原菌の多いことなどの因子のため術後の腹膜炎発生は潰瘍の場合より多いことは否めない.

症例研究 診断の困難だつた症例

虫垂炎から心膜炎へ

著者: 松林冨士男 ,   小金沢滋

ページ範囲:P.93 - P.93

 日常ありふれた疾患として気軽に手術されている虫垂炎でも,ときには心膜炎にまで発展することがありうる.このような心膜炎は血行性によるものをまず考えられるが,化膿性炎症がつぎつぎに隣接臓器をおかしついに心膜炎にまで及ぶ場合もある.われわれは最近このような症例を経験したので以下これについて述べてみる.

新しい検査法・2

電気抵抗法によるヘマトクリット測定法

著者: 中村孝哉

ページ範囲:P.94 - P.94

 臨床的に広く用いられているヘマトクリット値(以下Ht値と略す)測定には,主としてウイントローブ法および毛細管法がある.しかしながらこれらはそれぞれ不都合な点もある.すなわち,ウイントローブ法では1mlという比較的多量の血液が必要で所要時間も30分を要する.また毛細管法では高速遠沈により所要時間は5分,要する血液量も微量ですむが,使用する毛細管のチューブ内径がおのおので異なり,各1本の毛細管についても両端の内径がおのおので異なり,かつ採血後に一端を閉じる操作でも細管底を正確に平に閉じることは技術的に困難である.しかも遠沈後にHt表で赤血球層の高さを測定する時にも誤差が生ずることとなる.これらの欠点を補うことのできる測定法が必要となる.すなわちHt値を測定するまでの操作が簡単で,必要血液量も少なく,かつ採血が容易で所要時間も短く誤差の生ずる操作の少なくて済む方法が望ましいわけである.そこで私共はこれらの点を考慮して以下に述べるように赤血球の電気抵抗を利用したYSI Model 30 Electronic Hema-tocrit(米国イエロースプリング社製)を使用するHt測定法(以下電気抵抗法と呼ぶ)を推奨する.

MEDICAL Notes

頸椎損傷/交通外傷の死亡時間

ページ範囲:P.95 - P.95

 運転者のwhiplash injuryをはじめ,交通事故その他による重症頸椎損傷が,ふえているようである.HoustonのBaylor大学,V A Hospでは,(1)レ線で骨折脱臼なきもの,(2)骨折・脱臼あるものの2群に区分し,それをさらに,(a)神経症状なし,(b)改善しつつある部分的神経障害あり,(c)増悪しつつある部分的神経障害あり,(d)部分的神経症状固定,(e)脊髄横断というように細分している.(1)(a)は保有療法,牽引療法でよい.(1)(b)で急性型なら前と同じ療法,慢性型ならmyelographyで圧迫の有無を見,必要あらば手術,(1)(c)の急性型はGol(J. Trauma 5:379,1965)のいうように,注意が必要.まず安静,牽引,時間ごとに神経症状を見よ.3〜12時間のうちに改善なければemergency myelography,適応にはすぐ手術.亜急性型は12〜24時間おなじ治療を加え,よくなければ手術.(1)(d)の急性型は牽引.12〜24時間で改善なければmyeloを行ない必要なら手術.(1)(e)は急期型なら牽引2〜3時間,不変ならemergency myelo,必要なら手術.亜急性,慢性型には手術は不要.(2)(a)急性亜急性はつよく牽引,3〜6時間で重量をへらしてみる.骨折ならlaminectomyが必要のこと少なからず.

トピックス

"サーモグラフィー"

著者: 桜井靖久

ページ範囲:P.96 - P.97

 はじめにThermographyとは何かというと,体温の分布状態を図または写真などの像に表わして研究するものであるといえる.
 温度が絶対零度(0゜Kまたは−273℃)以上にあればどんな物質でも自ら赤外線を放射している.赤外線は一種の電磁波であり原子と分子の振動と回転によつて発生される.赤外線スペクトルは0.75μから約1,000μの間すなわち可視光線の長波長端とマイクロ波の間にある.物体が自然に放出している赤外線を検出してそのものの温度を測定しようというのが赤外放射温度計の原理である.さて人体の放射率(入射した放射線のすべてを完全に吸収する物体を黒体といい,この放射率は1である、放射や吸収の効率をいう)は0.99であつてほぼ黒体とみなしうる.したがつて人体表面から放出される放射エネルギーの量は殆んどその表面温度のみに依存すると考えてよい.ここで問題になるのは体温(300°K)程度の低温度の物体の放出している放射線の波長は比較的長いものが多く10μ位のところにピークがある.したがつて適当なフィルターを用いてこの範囲の波長だけを選択的に検出してやれば外乱やノイズを除去でき正しい体表面温度が計測できる.

海外だより

黒衣の女と白い砂(2)

著者: 桜井靖久

ページ範囲:P.98 - P.99

 サウジアラビア王国はアラビア半島の大半を占める大国で入口は800万とも2,000万ともいう.まだ遊牧のべドウイン族が多いからはつきりした人口が判らない.この国は一口でいうと日本の明治維新前後の時点にいる.首都リアドの街の中央の広場に公開刑場があつて毎週金曜日(回教国では金曜が一般の国の日曜に相当する)ここで種々の見せしめの処刑が公開される.軽い方からいくとまず鞭打ち.これも軽い罪のときは力の弱い老人が数回尻つぺたをぶつ程度であるが重罪になるにつれ力逞しい若人が数10回も鞭打つ.ある時,われわれの診療所にカフジ地区の警察署長が2人の若い男をつれてきた.飲酒と喧嘩の罪か何からしい.回教徒は絶対禁酒である.だから街中にバーなど1軒もないしパチンコ屋もない.クエートではホテルで紅茶というと赤ブドウー酒を,ソーダというと白ブドー酒を紅茶々椀に入れてそつと出すそうだ.サウジでは外国人でも人前で公然とメートルを上げると逮捕される,私室でひそかにのまなければいけない.石油会社のお蔭で酒の味を覚えたアラブ人がアルコール恋しさのあまりヘヤートニックを1瓶あけて頓死したなんて話もある.さてその警察署長がアラブ人の医師と何か話していてしばらくして帰つて行つた.

雑感

外科医と産婦人科医とのあいだ

著者: 本田三郎

ページ範囲:P.100 - P.100

 私達の医師会には,毎月,M・G・D集談会という実地医家らしい勉強会があります.そこで,あれこれ饒舌し合つている中には,お互いに気心もわかり,助け合いの気風も生まれてきます.M先生は新鋭の外科医ですが,私の国立病院勤務中にインターン生として過したこともあり,同じ医師会に入つてからは,集談会を通じて一層仲良くなり,有無相通じるようになつて,有無をいわさず引つ張り出したり出されたりしています.そんな例を二つ.
 その1."ひとつ,経腕ダグラス窩穿刺をやつてみせて下さい" と頼まれたのが,64歳の老婦人です.ある内科医から引きっいだ患者で,数日来,下腹痛と下痢があり,それが主訴です.全身症状は少ないが,悪心,食慾不振と共に,発熱38℃前後,白血球数21,000,回盲部に軽度の圧痛とデファンスがある.直腸診で痛みを訴える.老人性虫垂炎と思うが,経過と白血球数とに多少ギャッフ。を感じるし,ダグラス窩貯溜があるらしい.経膣ダグラス窩穿刺を試みたらと思うので,先生のやり方を見せてほしい,というわけです.膣鏡と単鉤鉗子と穿刺針を用意し,型のごとく穿刺すると,少量の汚繊混濁した膿汁が採れてきた.虫垂に穿孔があるのは疑いないと開腹すると,その通りで,先端の部分の3分の1が化儂,破潰している.手術,経過大過なし.

眼疾患について

著者: 寺田雄之助

ページ範囲:P.101 - P.101

 専門医でない,他科の各位が読んで参考になる記事との御意向なので,他科の方々が平素患者から尋ねられたり,近親,家族の中にもみられるような眼疾患についてその主点を簡単に記載してみました.

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田代義徳先生生誕百年記念祭

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.102 - P.102

 田代義徳先生生誕百年記念事業の一つとして去る11月20日墓前祭が谷中墓地において,記念講演会,遺品展示,記念晩餐会が上野精養軒で行なわれた.
 明治21年東大卒業,明治39年東大教授となり,わが邦最初の整形外科学講座を開設した田代先生は元治元年栃木県足利郡山辺村の生誕,田部井森平氏の3男,明治16年田代家に入つた.生誕百年をもつて算すれば昭和39年がそれに当たるが昭和40年をもつて記年事業が行なわれることになつたものである.11月20日の行事に引きつづき昭和41年をもつて記念出版と,記念文庫(東大整形外科教室内)の設立が予定されている.

外国雑誌より

Nathanのペースメーカと心房細動

著者: 須磨幸蔵

ページ範囲:P.103 - P.103

 NathanのP波同期型ペースメーカ(Synchronous Pacer)は杜絶した房室伝導路の回復という点で注目に価するものである.これは心房に縫着した電極でP波を導出しそれより約0.16秒の房室伝導時間に相当する遅れ時間をつけて心室に電気刺激を与える同期回路を含むペースメーカである.
 したがつて身体の要求に応じたP波と同じ数だけの電気刺激で心室がdriveされること,心房と心室が房室伝導時間の間隔をもつて相前後して収縮するので心搏出量が増加するなどの利点があり,生理学的見地からは従来のペースメーカに優るものである.なおこれには安全装置が内蔵されており,心房電極の破損とか心房の活動電位が同期回路を作働させるには小さすぎるような場合には自励の刺激装置が働いて毎分52の電気刺激を発生する.さらに過頻度のP波のすべてに対して同期装置が働作しないよう不応期をもち,P波が毎分110以上になるとその1/2,220以上では1/3の数の電気刺激しか発生しないという巧妙な仕組になつている.

第15回病院学会より 京都市

救急医療の諸問題

著者: 古玉太郎 ,   橋本義雄 ,   西村周郎 ,   宇山理雄 ,   百渓定七郎 ,   田村駒吉 ,   鈴木又七郎

ページ範囲:P.104 - P.108

 救急医療の問題は,最近とくに注目され,関係各方面で対策が検討されているが,さる5月13日,京都会館で開催された第16回日本病院学会(会長:国立京都病院長 萩原義雄)でも専門集会として取りあげられ,大きな話題をあつめた. 「急救医療の諸問題」は1昨年の専門集会「病院の救急業務」にをさらに具体化したテーマで,医療の総合学会としての日本病院学会を特色づけるものである.学会事務局の好意により,その討議を圧縮たて発表していただくことにした.

他科の意見

循環器疾患について外科への希望(1)

著者: 斎藤十六 ,   木川田隆一

ページ範囲:P.109 - P.110

 外科的手術は,見かけ上,一般的には,心の仕事を増すと考えられるけれども,この考えをつづけるハッキリした根拠はなく,今日では,正しく用いられた麻酔下で行なわれる.ふつうの手術措置ならば,心の仕事量を増さないとされている.

講座

外科領域における水分電解質の問題(1)

著者: 高藤歳夫

ページ範囲:P.111 - P.114

 近年,外科関係の領域においても,水分電解質の問題についての論文が,数多くみられます.この問題が外科領域でなぜ必要であるか,というその理由を考えてみますと,大ざつぱにつぎのようなことが挙げられます,第1に,外科患者では,食餌を経口的に摂取することが困難であつたり,または不能であつたりする場合が,非常に多くみられることであります.食道癌・胃癌・結腸癌などによる消化管の狭窄状態は,日常よくみる疾患でありますが,急性・慢性のイレウス,幽門狭窄,各種の腹膜炎,その他,外傷による失神状態,脳腫瘍,破傷風などの際にも,経口的に栄養を摂取することができません.それから種々の手術後の状態ですが,とくに開腹術後数日間,経口的に十分の栄養のとれないことは,いうまでもありません.さらに疾患の状態によつては,嘔吐であるとか,下痢・腸瘻などのように,水分や電解質を異常に失う場合もあります,以上述べたような生体の状態に対しては,どうしても,水分や電解質を,蛋白を含めて栄養とともに,非経口的に与えることが必要となります.すなわち輸液でありますが,この基礎的の知織として,水分や電解質の代謝に関する知見が要求されるのであります.
 本稿では,まず生体における水分や電解質に関する一般的のことがらを述べ,その代謝や脱水のこと,更に手術侵襲時におけるこれらの変化,最後に輸液に関する考え方といったことについて,述べてみたいと思います.

カンファレンス

膀胱腫瘍

著者: 小島憲 ,   平野謙次郎 ,   平福一郎 ,   若山晃 ,   松田源彦 ,   福田圀如 ,   宍戸隆典 ,   大出良平 ,   岸本孝 ,   藤田五郎 ,   遠藤法 ,   都丸昌明 ,   隅越喜久男

ページ範囲:P.115 - P.120

 藤田(司会) 291回CPCは,岸本泌尿器科医長担当の症例で,29歳の男子自衛官ですが,膀胱腫瘍という臨床診断になつています.遠藤,甲斐両医官の担当でありますが,遠藤君に経過を話して頂きます,
 遠藤 患者は,29歳の男子自衛官で,臨床診断は膀胱腫瘍です.

器械の使い方

腹腔鏡の使い方

著者: 上野幸久 ,   芳賀稔 ,   有川早治 ,   広瀬茂和

ページ範囲:P.121 - P.124

はじめに
 本邦における腹腔鏡検査法は戦後常岡ら,山川ら,山形らがそれぞれ器材の改良を行ない,特に山川らがカラー写真の撮影に成功して以来,主として内科領域で急速な進歩普及をとげ,特に肝・胆道疾患の有力な診断法として,肝生検とともに両輪の役割を果している.本検査法は比較的手軽に,患者にさしたる苦痛も与えずに,反復して行なえる利点があり,たんに内科医のみならず広く外科,婦人科領域でも実施されるべき検査法である.特に原発性または続発性肝癌の初期診断,胆のう癌の診断,悪性腫瘍の腹腔内転移の有無,術後癒着の状態等の確認には試験開腹にほぼ匹敵する偉力を発揮するが,紙数の関係上その詳細には触れず,本稿では主として腹腔鏡検査の実施法について述べる.

薬剤の知識

酵素剤の使い方(2)

著者: 石井兼央 ,   竹内正

ページ範囲:P.125 - P.127

I.酵素の局所および注射療法について
 酵素を局所に用いることは壊死組織の消化除去を目的としたものであるが,すでに.述べたように歴史的にみてかなり古くから行なわれていた.そのすべてが蛋白分解酵素であつた.こうした経験が今日の蛋白分解酵素や核酸分解酵素、ムコ複合体分解酵素を用いる治療への道をひらくいとぐちになつたものである,近年の化学療法剤の進歩によつて酵素剤の治療への応用はさらに重要な意味をもつようになつている.

外国文献

ジギのestrogen作用,他

ページ範囲:P.130 - P.133

 ジギトキシンはcyclopentenophenanthrene核をestra-diolと共通にもち,LeWinn (New Engl.J.Med.248:316,1953)がその持続投与で女性乳房を惹起したと報告,Masukawa (Obst.Gyn.16:407,1960),Koss(Acta cyto.6:519,1962)は閉経期婦人にその投与で腟上皮cornificationの発来することを報告し,ジギが何かestrogen様作用をもつらしく思われる.Navab (J.A.M.A.194:0,1965)は55〜90歳の心疾患婦人52伊1にdigitoxin 0.1〜0.2mg,3カ月〜15年投与,心gly-cosideを全く使わぬ同年齢婦人50例を比較した.2年以上使用20例では腟扁平上皮のmarked maturation(estrogen作用高度),2年未満2例同様,2年未満3例中等度maturation,他の短期間26例では上皮atrolphicで対照と同じ.estrogen作用顕著の5例ではgonadotro-phin分泌亢進はない.ジギが単独でestrogen作用を発揮したか,合併する肝不金が寄与したか確定はしえないが,用いた限りの肝機能検査では肝正常だつた、こうなると,乳癌患者などでは,ジギを長く使うことは避けなくてはならなくなり,注目される.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

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