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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科21巻10号

1966年10月発行

雑誌目次

グラフ

末梢動脈閉塞症

著者: 三島好雄 ,   太田武史

ページ範囲:P.1333 - P.1337

 四肢の主幹動脈にいろいろの原因で閉塞がおこるとその末梢に2次的にいろいろの程度の阻血症状が発生する.教室で経験した650例の末梢動脈の閉塞性疾患のうち急性閉塞例は約60例で10%にあたり,残りは慢性に経過するものであつて,その原因としては血栓血管炎と動脈硬化症および臨床上特徴に乏しい慢性閉塞症の3者がそれぞれ約1/3ずつをしめ,前者はとくに青壮年男子の下肢に好発し,再発を繰返す傾向にある.
 この状態は欧米のそれとかなり異なるものであつて,欧米では動脈硬化性の病変が多くて血管手術の好適応となるのに対して,本邦では動脈硬化症が少なく,したがつて血管手術の適応も少ないようである.しかし教室の症例を1960年を境として前後の2期に分けてみると,前半では血栓血管炎が圧倒的に多くみられたが,後半では動脈硬化症の頻度がまし,とくに近年動脈硬化性の末梢動脈閉塞がいちじるしく増加してきた.恐らく今後動脈硬化性病変増加と血栓血管炎型病変減少の傾向はますます著明になるものと思われる.

グラフ解説

絶対無菌環境下手術の器具

著者: 橋本義雄 ,   榊原欣作 ,   森澄 ,   榊原文作 ,   鷲津卓爾 ,   高橋英世 ,   宮川正澄 ,   宇野裕 ,   桜井弘一

ページ範囲:P.1386 - P.1391

I.絶対無菌環境下手術の概念
 絶対無菌環境下手術germfree operationとは,手術の行なわれる場において,検索上,微生物を認めない手術である.germfree とは, free from demonstrablemicrooganismという意味であつて,germとは,virusを含めた一切のmicroorganismを指すのである.
 現在,臨床的外科手術において,一般に行なわれている無菌手術aseptic surgeryの方法は,手術野・手術者・手術器具その他に存在する微生物を,殺菌剤および熱などの手段を用いて,殺滅することにより手術の場における微生物の存在を,減少させることを目的としたもので,手術の場における微生物の絶対的不存在を,期するものではない.

外科の焦点

上皮小体の外科

著者: 瀬田孝一

ページ範囲:P.1339 - P.1345

はじめに
 内分泌腺としての上皮小体は,生体のCaおよびP代謝に決定的役割を有する臓器である.原発性上皮小体機能亢進症(primary hyperparathy-roidism)は,従来,汎発性線維性骨異栄養症(Os-teodystrophia fibrosa generalisata,von Reckling-hausen)により代表されてきたが,Albright1)らが本症に尿石症の併発頻度が高率なことを報告してより,尿石症の原因として注目されるようになり,さらに消化性潰瘍2)および膵炎3)の併発、最近はZollinger-Ellison症候群との関連4)が注目され,また精神障害5),高血圧6)などの原因疾患としても重視されるようになり,外科臨床において,これら諸疾患における本症の発見と,その根治的治療は予後の点からも重要となつた.また主として腎不全による続発性上皮小体機能亢進症(secondaryhyperparathyroidism)に対する外科的治療,さらに悪性腫瘍にて臨床的に上皮小体機能亢進症と区別し難い偽性上皮小体機能亢進症7)(pseudo hyper-parathyroidism)が注目されるようになり,続発性機能低下症(induced hypoparathyroidism)においても外科的治療に問題がある.
 これら上皮小体をめぐる外科臨床およびその外科治療を中心にして述べる.

論説

冷凍血液—その理論と実際

著者: 木本誠二 ,   羽田野茂 ,   三浦健

ページ範囲:P.1347 - P.1354

I.現在の血液保存法
 採血した血液にACD液(B処方:クエン酸ソーダ1.32%,クエン酸0.48%,ブドー糖1.33%)を加えて冷蔵庫に保存する現在の輸血血液保存法では,血液は3週間しか保存できない.これは4℃という温度では,血中の酵素作用がかなり残つており,血球の老化が著しく,溶血がすすむためであつて,安全な限界を考えると,2週間を過ぎた保存血は安心して使うことができないのが実状である.すなわちACD液を用いた血液保存法は保存というよりは,むしろ腐敗を遅らせるものに過ぎない.現在抗凝固剤を改良して燐酸塩を加えたり,アデニンヌクレオチッドを加えたりする試みがあるが,これとても血球生存度は向上しても,著しい保存期間の延長を期待することはできない.現在の血液保存法ではこういつた保存期間の制約のために,保存血の需要と供給のコントロールはなかなかむつかしく,需要が少ないために期限切れの余剰の血液が大量に廃棄されることもあれば,またある時には不意の大量の需要のために著しく血液の不足することも多い.

制癌剤の臨床的使用—外科の立場から

著者: 松崎淳 ,   溝田成 ,   佐藤博 ,   常松匠 ,   徳山英太郎

ページ範囲:P.1355 - P.1358

はじめに
 外科領域における悪性腫瘍に対してなされる治療の根本をなすものは根治手術である.
 しかし,最近の診断法,手術法の進歩により,切除率は向上したにもかかわらず,根治手術による治癒成績はあまり改善されていない.

胆道再建—九大第1外科15年の統計的観察とその実際

著者: 西村正也 ,   永光慎吾 ,   坂口信昭 ,   和田好弘

ページ範囲:P.1359 - P.1365

はじめに
 胆道再建は厳密には,先天的あるいは後天的に胆道の閉塞,欠損あるいは損傷のために胆汁排泄に障害をきたした場合に,他の組織・器官あるいは人体以外の物質を胆道の一部に導入することによつて,胆汁通過障害を除こうとする手術を意味するのであろうが,しかしそのような例は比較的稀なものである.したがつて本稿では広義に解釈して,単に胆汁の流通障害を除く目的をもつて本来の通路以外の排泄路を造設することによつて,胃腸管内へ胆汁を導入する手術をも含めて論ずる.
 わが九大第1外科教室で1950年11月から1965年10月までの15年間に行なわれた胆道再建症例は160例である,その内訳は第1表のごとくである.すなわち良性疾患68例42.6%,悪性疾患92例57.4%である。先天性胆道閉塞症は本稿では除外している.良性と悪性の疾患とでは胆道再建に幾分の考え方,技術上の差があり,また総胆管嚢腫に対する考え方は他の場合と別個に論ずべき点があるので,それぞれについて逐次的に述べる.

血管神経と外科

著者: 堀原一 ,   山崎善弥 ,   藤森義蔵 ,   尾河豊 ,   鰐淵康彦 ,   羽田野茂

ページ範囲:P.1366 - P.1370

はじめに
 この研究は犬における次のような実験的事実に端緒を発している.
 肝動脈遮断の一連の実験で,ペニシリン非使用下に総・固有肝動脈,左右胃動脈,胃十二指腸動脈のすべてを,周囲神経ならびに結合組織からていねいに剥離し,結紮切離した犬は,同動脈を周囲組織をふくめて結紮だけした犬よりも,生存期間が長いことを見出した(第1図の第1,2カラム)1)

透過膜型人工肺に関する研究ならびに臨床例の経験

著者: 勝原幾視子 ,   藤倉一郎 ,   藤村光夫 ,   小船井良夫 ,   三浦勇 ,   山口繁 ,   田中孝 ,   石原昭 ,   榊原仟

ページ範囲:P.1371 - P.1376

はじめに
 従来,根治手術不可能とされていた,重症心疾患の手術適応が多くなつた現在,人工肺装置を長時間安全に使用することができれば,非常に有利である.現在用いられている円板型,気泡型,Mayo-Gibbon型装置を使用して2時間の体外循環には一応成功している.しかし,さらに,この限界を越えて,安全な体外循環を行なうには,人間の肺に近いガス交換機能を持つ,人工肺の研究の必要性がある.その1つに透過膜型人工肺の研究がある,ガス体と,血液が直接触れることによつて,血液蛋白の変化が起こるということは古くから報告されている1).透過膜型人工肺の特徴は,血液が,酸素,炭酸ガス,その他のガス体と,直接触れないで特定の薄い人工膜を介して,ガス交換を行なうのであるから,血液と,ガス体の接触による血液に及ぼす影響は,除去される利点がある.これは,従来の人工肺よりも生理的に近い人工肺と言える.透過膜型人工肺については,1956年Clowes2),1955年Kolff3),1960年Hofstra4)らの報告があるが,人工膜の性質の改良が待たれていた.最近興味ある透過膜型人工肺の研究が報告されているが5)−8),まだ,臨床応用には至つていない.

Estrogenの止血機構に関する研究—基質酸性粘液多糖体に及ぼす影響について

著者: 神谷喜作 ,   塩野谷恵彦 ,   恒川晋

ページ範囲:P.1377 - P.1379

はじめに
 最近Estrogenが止血剤として主に毛細管性出血に対し各分野で使用されている1)-3)5).その止血機序は血液凝固因子に影響を及ぼすのでなく,その他の因子,すなわち基質酸性粘液多糖体(以下AMPと略)に及ぼすと言われている4).われわれはEstrogenの投与に起因すると思われるAMPの動態を組織化学的に追究したので報告する.

検査法

腹部動脈撮影法

著者: 庄司佑 ,   駒崎富士男 ,   佐々木嘉直 ,   宮本雄二 ,   山手昇

ページ範囲:P.1380 - P.1384

はじめに
 腹部動脈撮影法は最近急速に進歩した血管撮影法の一分野で,腹部疾患診断上の一検査法として応用範囲も広い.
 すなわち腹部動脈撮影法の適応となる疾患としては,腹部大動脈およびその主要分枝の,拡張性または閉塞性疾患,あるいは動静脈瘻のごとき短絡性疾患のように,血管系の変化が主であるものがまずあげられ,これらの診断には不可欠であることは言うまでもない.

外国雑誌より

経皮カテーテル穿刺法(Seldinger法)の合併症について

著者: 上井巌

ページ範囲:P.1393 - P.1393

 心臓血管外科の発達にともない,動脈撮影の技術が広汎に診断にとり入れられるようになり,とくに経皮的カテーテル穿刺法(Seldinger法)1)が開発されそれが,比較的簡略であるところからますますひろく安易に行なわれるようになつたが,その合併症も無視できない数に上るものとみられる.この経皮穿刺法に伴う合併症について考察してみたい.
 1950年代は賢不全.神経傷害,アレルギーなど,主として造像剤の不備によると思われる合併症が主であつたが,最近は造像剤もかなり良好なものが出回わつており,Seldinger法にともなう合併症の報告は主としてその手技に関係があると思われるものが多い.経皮穿刺法は刺入点としておおむね鼠径部をえらび大腿動脈を通じてカテーテルを挿入するのが通例である.合併症としては表に示したように,この刺入点における動脈の血栓による閉塞,ならびに出血,大血腫,仮性動脈瘤などがそのほとんどをしめている.なかでも血栓による動脈閉塞は比較的よくみられる合併症である.血栓は内膜の比較的広範囲の損傷によるものと考えられるが刺入操作の粗暴,刺入血管が細小なこと,動脈の硬化性病変,カテーテルを出し入れする操作を頻回行なうことなどがその原因と考えられている.血栓によつて動脈が閉塞した場合,足背動脈の脈搏をふれず,さわると冷たく感じ,虚血のため白つぽく見えるなどの症状が現れる.

トピックス

新しいX線写真法

著者: 徳山倶康

ページ範囲:P.1394 - P.1397

はじめに
 ここに述べる新しいX線写真法は,1964年徳山によつて発明されたもので,発明者の名により,トクヤマグラフィーTokuyamagraphy(以下TGと略す)と名づけられた.このX線写真法が従来のX線写真法と異なることは,1枚のフィルムでステレオ写真が撮影でき,また1枚のフィルム中に2種類以上の写真を組入れることができ,また1枚のフィルムで映画のような運動を見ることができるというように,種々の特長をそなえていることである.以下そのTGについて,原理および撮影法,観察法について述べたいと思う.
 TGは撮影法によつて大体3通りに別けられる.それは2方向撮影法,多方向撮影法,連続撮影法である.これら撮影法は第1表のごとき写真法に応用せられる.これについて上から順を追つて説明したいと思う.

海外だより

Tulaneの人々

著者: 粟根康行

ページ範囲:P.1398 - P.1399

 Tulane Universityは1834年,medical collegeとして発足した大学であるが,1884年,Tulaneという実業家が多額のdonationを行ない,綜合大学となつたものである.Atlanta (Ga.)のEmory Universityと共に,南部の名門校といわれている.外科は,血管外科の創始者の一人である,Rudolf Matasが初代教授で,次いで肺外科のAlton Ochsnerが主宰し,現在はOscarCreechが主任をつとめている.米国の外科学界でも名門といえよう.
 University campusはGarden district(up town)にあるが,Medical SchoolはTulane Ave.(down town)にあり,Charity Hospital of Louisianaの隣にある.さらにその隣にはLouisiana State University MedicelSchoolがある.Charity Hospitalの後にはVeteransAdministration Hospitelがあり,これらでmedical cen-terを形成している.この中心にあるCharity Hospitalはone roofでは世界第2あるいは第3位といわれるほど大きく,約3000床あるという.

患者と私

外科医生活四十五年—修業医時代と指導医時代の思い出

著者: 大沢達

ページ範囲:P.1400 - P.1402

 学生時代に先輩の外科医から「内科はなおる,外科はなおす」と聞かされ,何となく外科が好きになり,学窓を出るとただちに外科の教室にお世話になつた.それから今日までの45年間ドイツ留学中の2年間と,一昨年のウィーン国際外科学会出席を兼た海外旅行約2ヵ月の間を除き,片時も患者と離れたことなくひたすらに外科の道を歩み続けた.
 1921年から1940年までが教室時代(この間教授3度び渡欧,約3年間教授代理),1940年から東洋第一といわれた大連病院外科臨床の外科主任として10年間,1951年より病院を経営して15年間,顧ればどの時代も臨床と研究にあわただしく忙しい毎日であつた.このたび本誌からこの欄に後進の人々のため何にか書くようにとのことだが,非常にせわしくて落ちついてまとまつたことを書いていられないので,40余年間患者との歩みをふりかえつて,ただ思い出すままに多少とも御参考になりそうなことを語つて見たい,

雑感

音があるか?

著者: 羽生順一

ページ範囲:P.1403 - P.1403

 内科医にとつて腹痛という訴えは苦手の一つです,というのはその次にすぐ外科的処置が必要かどうかと云うことがひかえているからに他ならないのです.内科的処置で可能か,あるいは速かに外科的処置に移すかの決断をせまられます.赤恥をかかない為には慎重ならざるを得ません.時間外特に深夜になるとむしろ来た患者がうらめしくなることさえあります.
 若い青年が矢張り上腹部痛を訴えて来ました.重い物を持ち上げたさい,何か「プッン」といつて切れた様な感じがして,急に痛くなつたと訴える.型のごとく上腹部を触診すると,特にデフアンスはなく,圧痛点もない.すでにその青年とは熟知の間でしたが,特に胃腸障害もなかつた.然し痛みが激しいので,しばらく経過を見様とのことで,一応鎮痛剤を注射して見ました.三十分,一時間位たつても痛みは去らないばかりか,上腹部の膨満感を訴え,実際に軽度に膨満し,打診断有響音を示す状態となります.潰瘍の穿孔?それにしても既往症もないのに等と考えつつも,兎に角外科に転医,手術と有なつた次第です.矢張り十二指腸潰瘍の小穿孔が認められました.風船玉ではあるまいし,音をたてて破れたのかあるいは本人がそう感じたのか,穿孔したのは事実でした.もう一人はお嬢さんで,高校の体育の時間,跳躍をしたとたん,ぷつんという音がして,胸がしめつけられるように痛んだ,その後心なしか何んとなく息苦しく感じたという.

私達の救急対策(東京オペグループ方式)

著者: 大村清

ページ範囲:P.1404 - P.1404

 最近救急処置が誌上を賑わしているが,われわれ産婦人科医にとり,これ程切実な古くて新しい問題はない.つまり正常分娩が異常となり,場合によつては死を招くような事態もあり,また静脈麻酔,人工中絶時にも事故が起ることがある.この様な場合,個人ではどうしても力の限界があるので考えを同じくする産婦人科開業医60余名が集り東京オペグループ(T.O.G.)を結成し(昭和28年),色々の活動をしている.以前にも杉山がここに紹介したが,今回はその救急対策の面を紹介し,御批判を乞いたいと思う.

外国文献

Computers,他

ページ範囲:P.1405 - P.1408

 JAMA (196:927〜984,June13,1966)はcomputersの特集で注目を惹いた.ちよつと日本でこれを実用化しようとしても無理であろうが,何しろ医学の世界に急速に取りいれられているので,外科学会あたりでも特別講演か何かやつてもらいたいものだ.higital computerは極めて正確で,もしも誤りが出れば,MEの方でなく人の方に過があるとさえ言われ,かつ極めて迅速である.digital comp.は陽陰あるいは有無のシグナルで表出されるが,analog comp.は各種の電気的シグナルで働くから各種の波型の分析に適する.hybrid comp.は,digital comp.とanalog comp.との組み合わせのようなもので,特に医学における用途がひろいようだ.Kent(pp.927)はdigital comp.一般論ことに,informationstorage,retrievalの応用から医学的診断への利用を報じた.Ladley (pp.933)の長文には,鑑別診断,検査法決定,治療プランというような応用法がのべられている.その他,ここには紹介しきれない興味ふかいシンポジウムがあつて,この号の一読をおすすめする.

診断のポイント

膵疾患の鑑別診断(3)—膵癌その他

著者: 若林利重

ページ範囲:P.1416 - P.1419

Ⅰ.膵癌
 最近10年間に,膵癌または黄疸(おそらく膵頭部癌)という臨床診断で開腹した症例は32例であるが術前診断の適中したものは23例であり,誤診例は9例であつた.誤診例9例の内訳は慢性膵炎4例,総胆管癌3例,胃癌,後腹膜腫瘍各1例である.やはり慢性膵炎との鑑別は問題になるが,膵癌は慢性膵炎に比較すれば臨床的に診断しやすいようである.それは発生部位からみて膵癌の約65%は膵頭部癌であること,年齢的には50〜60歳台に多くみられ症状も比較的固定していることによる.ちなみに体部癌は約7%,尾部癌は約10%,広汎性癌は約18%といわれている.

読影のポイント

脳波の読み方—(9)てんかんの脳波

著者: 喜多村孝一

ページ範囲:P.1420 - P.1426

 脳波は機能的検査法であるため,脳の機能的疾患の1つであるてんかんの診断において,もつともはなやかにその真価を発揮する.てんかん学は脳波あつてはじめて今日の隆盛をきずいたし,また反面,黎明期の臨床脳波はてんかん学者の努力によつて開発され発展してきたのである.脳波とてんかんとは切つても切れない関係にあるということができる.
 Jacksonてんかんにその名を遺しているJohn Hugh-lings Jacksonは,脳波が発見されるよりもはるかにはやく,「てんかんの本態は神経細胞の発作的な,病的に過度なdischargeによるもの」と考えた.彼の卓見はまことに驚くべきものである.彼の考えの正しかつたことは,後に脳波によつて証明されたのみでなく,てんかん脳波の定義として,現在でもなおそのまま生き続けているのである.

手術手技

幽門括約筋保存胃切除術

著者: 中尾行保 ,   勝見正治 ,   西垣彰夫 ,   岡田至弘 ,   田中晋二

ページ範囲:P.1427 - P.1433

はじめに
 1881年および1885年に偉大な外科医Billrothにより初めてなされた胃切除法,いわゆるBill-roth,I,II法は,以来吻合法に多少の変法を産みつつ,今日まで胃切除法の基準として君臨してきた.しかも本法は胃癌などの悪性疾患の胃切除法として,いまなお確固たる地位を占めているが,潰瘍などの胃良性疾患の胃手術法としては術後障害の面より最近漸く批判されるに至つた.すなわち標準胃切除後にはdumping syndrome, smallstomach syndrome, diarrhae,などかなり重要な後胎症の現われる頻度が高い1)2).また消化性潰瘍の病態生理の解明,Vagotomyの再認識とあいまつて,欧米においては十二指腸潰瘍に対しては,いわゆる迷切合併胃半切除術が広範胃切除に代りつつあり3)4),その他dumpingを防止すべく考慮した種々の吻合法,あるいは幽門括約筋を保存する目的でのPylorus reserving gastrectomyなどが行なわれ始めた.
 本邦においては友田の胃嚢形成B-I法5),大脇の隔輪挿入胃切法6),あるいは槇のPylorus reserv-ing distal gastrectomyなどがそれである.

他科の知識 顔面形成の基本手技・3

立体の手術

著者: 丹下一郎

ページ範囲:P.1434 - P.1438

はじめに
 厳密にいえば,手術というものはすべての場合に立体的であり,3次元的な拡がりを有する.しかし,ここでとくに「立体の手術」を区別する理由は,内臓手術のように「立体で」手術を行なうのと異なり,顔面を「立体に」手術するからである.そのように能動的な立体造形のためには,顔面の構成についての美術解剖学的な知識が必要であり,この種の手術は,いわば,形成外科における極意ともいえるのである.
 もちろん,通常の意味での医学的知識や技術は根底として必要なものであり,ことに軟骨,皮膚などの造形素材を駆使するために欠くことができない.しかし,同時に決め手となるのが顔面各部の均衡,比例,あるいはそれに関連する審美的,ないし心理的問題なのである.

他科の意見

検査の出し方

著者: 富田仁

ページ範囲:P.1439 - P.1441

はじめに
 外科医は,面倒くさい検査をするより,試験的に開いて見れば分かる,という言葉をよく聞いた.このように気楽に手術する気持がなければ,外科医はつとまらないであろう.しかし手術するだけが外科医の使命ではなく,手術せんとする疾患の診断を正確に下し,手術の適応を決定し,一度手術するに当つてはその前中後においては,正確な情報を得て的確な処置をしてこそ立派な外科医と言えよう.著者は中央検査室にいて臨床各科から毎日のように,検査が提出される状態を見ているが,その立場から外科医に検査提出の現状を述べ,検査室からの希望事項を記述する.

講座

X線撮影の仕方(3)—臨床的なこと(つづき)

著者: 木村和衛

ページ範囲:P.1442 - P.1451

Ⅳ.腹部消化器系
 腹部において,特に急性腹部症を考えさせる症例は立位,臥位の腹部単純服影を造影剤使用透視撮影に先立つて行なうべきである(第14図).透視診断は造影剤の良否および投与方法が撮影技術とあいまつて写真の良否を決定してしまう.胃の各部位について細心の注意をもつて体位を変換し透視することが肝要であり,これが透視法の最大の強みである.また撮影にはスポツト撮影装置が絶対必要であり撮影時には螢光板を患者に密着させて行なうことが大切である.

カンファレンス

胆汁性腹膜炎

著者: 小島憲 ,   平福一郎 ,   林豁 ,   若山晃 ,   松田源彦 ,   手墳正二 ,   高木顕 ,   上野幸久 ,   布施為松 ,   太田怜 ,   藤田五郎 ,   板谷忠重 ,   前原義二 ,   作正雄 ,   河上隆 ,   臼井正彦

ページ範囲:P.1452 - P.1458

 藤田(司会) 今日は,当院の職員であつた方の症例で,臨床診断は胆汁性腹膜炎となつております.当院に転院してくるまでに,都内の某病院に救急患者として搬入され,約10日間入院治療を受けていた症例です.まず外科の作先生に経過を説明していただきます.

症例

胃切Billroth I法後に合併せる空腸重積症

著者: 赤沢喜三郎 ,   佐藤紋郎 ,   村松正久 ,   檜山嘉也 ,   本山博信

ページ範囲:P.1459 - P.1464

はじめに
 今日では手術手技ならびに化学療法の進歩にともなつて,胃切除術は安全に,かつ広範に行なわれており,治療成績は向上している,術後の腸閉塞などは少なくなつたが,稀な合併症として周切除後の腸重積が知られている.
 1914年Bozziが胃切除後に発生した空腸胃内腸重積を最初に報告しているが1),本邦では1931年(昭和6年),小柳2)の発表が第1例であり,胃切除術の増加とともにこの合併症も増え,現在までに74例の症例が報告されている.このうち大部分は胃切Billroth II法後に起こつており,胃切Billroth I法後に合併しているのは2例のみである.非常に稀な例として第3例目の臨床経験を報告し,多少の文献的考察をつけ加えた.

Dermatomyositisの1例

著者: 横井勝広 ,   片山国昭

ページ範囲:P.1465 - P.1468

はじめに
 皮膚筋炎は膠原病の代表的疾患の1つで,従来まれなものとされていたが,最近は増加の傾向にある.しかし整形外科領城の報告は少なく,1961年中野氏の報告をみるにすぎない.
 われわれは最近四肢の運動障害を筋肉痛と主訴として来院した1例を経験したので報告する.

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第17回日本医学会総会 風見鳥ニュースNo.4/第17回日本医学会総会 風見鳥ニュースNo.6

ページ範囲:P.1329 - P.1329

第17回日本医学会総会シンボルパターンが決定
 第17回日本医学会総会を型の上で象徴するシンボルパターンが,このほど正式に下記の風見鳥に決定しました。ここに皆さま方にご報告申しあげると共に,以後のこ愛重を切にお願い申しあげる次第であります。

人事消息

ページ範囲:P.1379 - P.1379

北村勝俊(九州大学講師 脳神経外科)教授に昇任
篠井金吾(東京医大教授 日本外科学会副会長 厚生中央病院院長)1966年9月3日 尿毒症のため逝去 60歳

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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