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論説
透過膜型人工肺に関する研究ならびに臨床例の経験
著者: 勝原幾視子1 藤倉一郎1 藤村光夫1 小船井良夫1 三浦勇1 山口繁1 田中孝1 石原昭1 榊原仟12
所属機関: 1東京女子医大心臓外科 2日本心臓血圧研究所
ページ範囲:P.1371 - P.1376
文献購入ページに移動従来,根治手術不可能とされていた,重症心疾患の手術適応が多くなつた現在,人工肺装置を長時間安全に使用することができれば,非常に有利である.現在用いられている円板型,気泡型,Mayo-Gibbon型装置を使用して2時間の体外循環には一応成功している.しかし,さらに,この限界を越えて,安全な体外循環を行なうには,人間の肺に近いガス交換機能を持つ,人工肺の研究の必要性がある.その1つに透過膜型人工肺の研究がある,ガス体と,血液が直接触れることによつて,血液蛋白の変化が起こるということは古くから報告されている1).透過膜型人工肺の特徴は,血液が,酸素,炭酸ガス,その他のガス体と,直接触れないで特定の薄い人工膜を介して,ガス交換を行なうのであるから,血液と,ガス体の接触による血液に及ぼす影響は,除去される利点がある.これは,従来の人工肺よりも生理的に近い人工肺と言える.透過膜型人工肺については,1956年Clowes2),1955年Kolff3),1960年Hofstra4)らの報告があるが,人工膜の性質の改良が待たれていた.最近興味ある透過膜型人工肺の研究が報告されているが5)−8),まだ,臨床応用には至つていない.
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