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眼科の窓から
著者: 手代木由紀子
所属機関:
ページ範囲:P.1698 - P.1698
文献購入ページに移動私が医局に入つた当時は,ペニシリンやストマイガ普及し始めた頃で,眼科の患者は半減するだろうと言われたものでしたが,爾来10数年,抗生物質は今や花ざかりの状態となりましたが,病気のほうは半減どころか,結膜炎だけでも,あらゆる抗生物質無効のアデノヴィールスによる流行性角結膜炎が年々増加して,プールの頃になると私ども開業医を苦しめます.このはやり目は点眼薬はおろか,あらゆる日常用いられる消毒薬では,かえつて媒体になるくらいの抵抗力と感染力をもつていますので,私どもは自分自身が感染源にならないために必死の努力をします.薬用石鹸で水道の水を流しつ放しにしてブラシで何回もこする—そしてアルコール綿で拭いてしかる後消毒液—こんな患者に5人も来られるとそれこそ手はガサガサとなり,こちらが皮膚科へ行かなければならないようです.そのため皆いろいろ工夫しているようです.A先生は正午から10分間だけをこの患者の診療にあてているそうです.B先生は手術用のゴム手袋をたくさん用意して,一人見るたびにはずしては,後でまとめて煮沸する由,C先生は窓口に水を入れた洗面器をおいて,患者のお金はすべてこの中に放りこませるとのこと,親和会の席上この話が出て,当然,「お札はどうするんでしようね」との質問に直ぐ「お札も煮て,あとでアイロンをかけるとピンと致しますよ」と言うお返事あり.
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