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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科21巻4号

1966年04月発行

雑誌目次

特集 胃手術後の困難症

胃手術と癒着障害

著者: 高山坦三 ,   野崎成典 ,   長沢大晴

ページ範囲:P.451 - P.458

 Ⅰ.
 胃切除後,食餌摂取に関連して不快な症状のおこることがあることは古くから注目されているところであるが,医学の各分野の発展にともない,胃切除術が安全に広くおこなわれるようになつてきた今日においては,ときには術前の愁訴より以土の苦悩ともなりうるこれらの後遺症状の予防ならびに治療は,外科医にとつてまたひとつの重要な課題である.胃は消化管のなかでは複雑な機能を有し,原因疾患の種類,周囲組織・器官との関係,切除部位および切除範囲,胃・腸吻合の術式等は症例によつてそれぞれ異なるから,ひとくちに胃切除後の障害といつてもきわめて多種多様のものがあるわけである(第1表).
 術後癒着障害は,Bollerの分類においては特にとりあげてはいないが,しかし他の腹膣内手術後におけると同様,胃・十二指腸手術(以下胃手術と略)後においても癒着による障害が好ましからぬ後遺症のひとつとして患者を苦しめているのが現状である.もともと腹膜には分泌,吸収機能のほかに,細胞を新生し,それらの細胞は原位置において組織を構成し,第1期癒合をいとなむという形成機能Plasticityがある.

胃手術後の栄養障害(貧血を含む)

著者: 小出来一博 ,   生形圭

ページ範囲:P.459 - P.465

Ⅰ.はじめに
 胃切除術後早期に生ずる栄養障害は術前低栄養状態にあつたものが手術によつてさらに悪化するか,発熱,疼痛による食欲不振,吻合部狭窄による通過障害による食餌摂取量の減少にもとづくものが主なるもので,入院中であるため直接医師の手によつて必要な治療や栄養指導が行なわれるので比較的良好な経過をたどることが多い.これに反して胃切除後後期に生ずる栄養障害は,多くは退院後で,医師の観察が常に行きとどかぬため適切な治療や栄養指導が充分行なわれないことが多い.胃切除後後期に生ずる栄養障害の主なる原因となるものには,いわゆるダンピング症候群や逆流性食道炎,腸管癒着,貧血,下痢等があげられ,食欲不振ないし食餌摂取によつて生ずる種々の症候への危惧による食餌制限に由来する食餌摂取量の不足や,下痢,腸管癒着等に由来する栄養素の消化吸収障害によつて低蛋白症が生じてくる.
 このような原因によつて生ずる栄養障害に対してはその原因を取り除くことが肝要であるが,さらに充分な栄養の補給と適切な食餌指導がその根本となることを忘れてはならない.

術後逆流性食道炎

著者: 愼哲夫 ,   白鳥常男 ,   岡林敏彦

ページ範囲:P.467 - P.476

まえがき
 外科学の進歩により現在胃の手術は安全確実となり,近側(噴門側)胃切除術および胃全剔除術も広く行なわれるようになつた.しかし,その際行なわれる食道胃吻合,食道空腸吻合,食道十二指腸吻合とか,噴門部狭窄のため噴門成形術が行なわれる場合には,噴門部の括約作用が欠除して機能不全をきたし,術後に消化液の逆流が必発する.これが逆流性食道炎の原因となつて,胸やけ,嚥下痛などを招き,食餌摂取が防げられ,栄養低下をきたすほか,時には出血,穿孔,狭窄などの重篤な合併症を起こすこともある.かかる術後逆流性食道炎に対する治療としては,効果のあまり期待できない薬剤段与を中心とした保存的治療法がもつぱら試みられ,また再手術により逆流を防止できる症例がきわめて少ない.したがつて,最初の手術の際に,逆流の起こらない手術を行なうことが望まれ,これまで,種々の予防的手術も企だてられてきた.しかし,噴門機能を,どうしても犠牲にしなければならない場合も多く,逆流性食道炎は,外科医にとつては,現在一つの大きな問題となつている.そこで今回は,術後逆流性食道炎の原因,発生頻度,治療などについて言及すると共に,予防的手術についても検討を加えてみることにする.

ダンピング症候群

著者: 山岸三木雄 ,   大久保高明 ,   米元敏雄 ,   山岸俊彦 ,   将基面直 ,   森田修平

ページ範囲:P.477 - P.482

 胃切除後の困難症として,いろいろあげられるが,dumping syndromeはその最も重要なものの一つである.しかしその原因に関しては,まだ完全に解明されず,その発生頻度は諸家によりまちまちであり,治療に関しても,ほとんど問題視しないものがある反面,重症例には外科療法も行なわれている.私自身は,患者からdumping synd-romeのため強い苦情を訴えられたことはあまりないが.教室の統計では相当高い発生率を示しており,2,3の手術例も経験している.手術によつて潰瘍症は治癒しても,このようなsyndromeのため,食生活が充分に楽しめないようなことがあつては,はなはだ不本意である.

グラフ

虫垂炎類似疾患

著者: 四方淳一 ,   浮島仁山 ,   渡部脩

ページ範囲:P.425 - P.430

 虫垂炎類似疾患とは急性虫垂炎と誤診しやすい疾患のことをいう.すなわち,術前には虫垂炎との鑑別が難しく緊急手術を要すると考えられたもので,多くの場合に開腹手術を行なつて始めて診断のつくものである.
 メッケル憩室炎、盲腸穿孔,子宮外妊娠破裂,卵巣出血,卵巣嚢腫破裂,卵巣嚢腫茎捻捻転,大網捻転,急性骨盤腹膜炎,限局性腸炎,腸間膜リンパ腺症などが含まれる.

ヨーロッパの心臓外科

著者: 渥美和彦

ページ範囲:P.514 - P.520

 戦後,急速に進歩した米国の心臓外科に,大きく水をあけられていたヨーロッパの心臓外科は,今やほとんど米国の水準にまで追いついた感がある.
 私は,ヨーロッパの3ヵ月の旅の間に,心臓外科の現況をかいまみる機会を得たのでここにそれらの一部を写真で紹介することにする.

外科の焦点

高圧酸素療法の臨床応用(1)

著者: 古田昭一 ,   高木忠信 ,   呉大順 ,   佐藤富蔵 ,   山本俊一

ページ範囲:P.433 - P.439

 昭和39年4月以来,東大病院救急部で1人用高圧室を用いて高圧酸素療法を行なつているので1)−4),その理論と現状と今後の問題点等につき概要を述べたい.

座談会

外科の学会のありかた

著者: 島田信勝 ,   木本誠二 ,   福田保 ,   斉藤淏 ,   佐野圭司 ,   河村謙二 ,   織畑秀夫 ,   綿貫喆

ページ範囲:P.440 - P.449

 司会(島田)今日のテーマは外科の学会のあり方ということです.外科学会のあり方ではございませんで,「外科の」と入つておりまして,外科に関係ある学会のあり方というようにお考えになつていただけばいいと思います.近ごろ外科学会からそれに関係した脳神経外科,胸部外科,その他いろいろ学会ができておりますが、これは外科の教育ということとも直結する問題だと思いますけれども,こうなつてくると日本外科学会というものは,一体どうあるべきか.問題はそこから始まるんだろうと思い表す.対内的に考えるといままで通りでもよさそうに思い主すけれども,対外的にインケーナショナル的に考えますと,どうあるべきかということも自然変わつてくると思います.その辺もお含みおき下すつて,外科学会がどうあるべきか,それからまた脳神経外科,胸部外科その他の学会が,教育,診療,研究等いろんな面では,今後どうあるべきか.少しいい方を変えると,日本外科学会というものは,一般外科を中心にしてやるべきものか,あらゆる広い分野で開くべきか,いろいろご意見があると思いますが,そういうような意味を含めて皆さんのご意見を外科に限らず日本のいろんな学会のあり方について伺ういいチャンスと思います.

簡易検査法

血清学的簡易検査法(1)

著者: 鈴田達男

ページ範囲:P.486 - P.489

 これまでの血清学的検査法の観念では,たくさんの試験管を立て,巧みな手さばきで目盛ピペットを操つて独特の倍数希釈を行ない、恒温槽や冷蔵庫中に長時間放置して反応させるのがふつうであつた.しかし最近の臨床検査の簡易化の傾向はわれわれの領域においても例外でなく、きわめて簡単な方法で手問もかからず,短時間に結果が判明し,しかも標準法にくらべて感度もそれほど悪くない検査法が用いられるようになつた.その上市販されている製品は必要な試薬,器具などがすべて一組になつて箱解におさめられており,しかも,試薬はすべて調整済であり,器具は使用後使いずてできるようになつているので、準備や後片附けに要する時間や手間を省け,セットの箱を開けたら机の片隅でも検査ができるようになつているので,スペースの節約にもなり,中小病院のみならず大きな病院の中央検査室においても,少数の人員で多量の検体をあらこしするスクリーニングテストに便利に用いられている.

診断のポイント

チアノーゼ性心疾患—Fallot四徴症を中心に

著者: 新井達太

ページ範囲:P.490 - P.496

 チアノーゼは皮膚や粘膜に現われる青紫色の色で,循環血液中に還元ヘモブロビンが増加するために起こります.この還元ヘモゲロビンの量が5g/dl以上の場にチアノーゼが現われます.
 チアノーゼの原因には,肺性,末梢血管性,血液などの因子があげられますが,心疾患では右→左短絡があり静脈血が動脈血に流れ込み,decreased pulmonary arte-rial vasculatureの場合に認められます.

読影のポイント

脳波の読み方(4)

著者: 喜多村孝一

ページ範囲:P.498 - P.502

Ⅰ.年令による正常脳波の変貌
 脳波をよむにあたつて頭を悩ます問題の一つに,幼児の脳波の正常・異常の判定がある.小児科で脳波を専攻し幼児脳波の検査に連日たずさわつている専門家ならばいざ知らず,主として成人を対象として脳波検査を行なつている脳波学者にとつては,幼児脳波の正常・異常の判定はけつして容易なわざではない.成人の脳波に現われれば異常とされる波形で,幼児ならば正常とされるものが多数あり,さらに小児脳波に限つてみても,年齢の差によつて正常脳波の基準はことなるからである.身体のいろいろの生理的機能,検査データーは小児と成人で異なるのが当然であり,このことはひとり脳波に限つたことではないが.年齢による正常脳波の基準の推移はけつして簡単でなく,その判定にあたつてはきわめて慎重な態度が要求されるのである.

手術手技 乳幼児の手術手技・3

先天性巨大結腸症に対するDuhamel手術

著者: 森田建 ,   富永幹洋 ,   東悦雄

ページ範囲:P.503 - P.508

はじめに
 先天性巨大結腸症の根治手術として,Swenson手術が最も根治的で秀れた方法であることはすでに広く認められているところであるが,その手術手技は必ずしも容易なものではなく,細心の注意の下に繊細巧ちな手技によつて初めて種々な合併症を避けうることもまたよく知られている事実であり,State, Rehbein, Duhamel, Soaveらによつてつぎつぎと新しい術式が考案されている所以である.
 なかでもDuhamel術式は,Swenson手術に代る最も有望な方法として内外ともに広く試みられる傾向にありGrob, Martinなどの変法も提唱されている.私どもの教室においても昭和37年以来,Duhamel術式を試み,現在までに30例の経験を重ねている.いまだ遠隔成績を論ずる段階には達していないが,現在までの観察では術後の排便機能は比較的良好でり.ことに手術手技上Swenson手術に比較して明らかに容易であることは本術式の大きな利点と考えている.Swenson手術についてはすでに多くの報告があるので,ここでは紹介の少ないDuhamel術式を取挙げ,私どもの現在実施しているところに従つて述べてみることにしたい.

外来の治療 実地医家のための外来治療・12

外来における四肢外傷の治療(1)

著者: 小谷勉 ,   豊島泰

ページ範囲:P.509 - P.513

はじめに
 四肢の外傷のうち,どの程度のものが外来で誤りなく治療できるかということは,疾患の軽重とともに,通院治療中の観察が十分できるかどうか,(特に数人の医師が交代で外来診察に従事する場合に)が本質的な要因になると思われる.空床数や,患者の経済,家庭の事情によつても,少々のリスクを覚悟しながら外来治療を敢えて行なわねばならぬことがある.かかる場合には,とくに私どもが十分の注意をもつて治療に当らねばならぬので,簡単な疾患以上に医師のエネルギーが要求される.
 第1,2,3表はそれぞれ昨年1年間の大阪市大・整形外科における夜間救急外来でとり扱つた四肢外傷、外来手術,外来ギプス固定症例数であるが,私どもの整形外科の常時使用ベッド数が85であるので,この中には入院加療が望ましいと考えられるものも多数含まれるが,2,3の関係病院を調査してみても,だいたい上肢の肘以遠,下肢のうち下腿以遠のものは外来治療が可能の範囲内にあるものが多い.

文献展望

アイソトープによる下垂体破壊

著者:

ページ範囲:P.527 - P.527

 下垂体腫瘍を伴う副腎過形成Cushing病にはLuft(Acta Endocr. 24:1, 1957),Ray(J. Neurosurg 17:1, 1960)のように下垂体剔除を推奨するものあり,Spr-ague(Modern Trend in Endocrinology, London 1961)のように下垂体深部照射をすすめるものあり,Soffer(Am. J. Med. 30:129, 1961)のように下垂体照射と副腎剔除をすすめるものありで,どの方法が最善か未決定である.照射だけでは再発がかなり多く(Soffer,前出),Linfoot(New Engl. J. Med. 269:597, 1963)のようなhigh-energy heavy-particle beamがよく,あるいは最近のCalif.大学のような-190℃というcryosurgeryがよいであろう.Yt90挿入はMolinatti(Acta Endocr. 34:323, 1960),Glasgow一派(Illingworthら)が早く,ロンドンのJoplin(Lancet 2:1277, 1961)がついで,その効果をみとめた.

トピックス

乳児用小型人工心肺

著者: 石戸谷武

ページ範囲:P.528 - P.529

 先天性心疾患に対する開心術は最近乳幼児,新生児へと向けられ,積極的に行なわれる機運にある.開心術の手段としては大別して低体温法と人工心肺使用の二つがある.東北大学葛西外科教室においてこれまで80数例の3歳未満乳幼児開心術を行なつて来たが,大部分は低体温法に冠灌流併用で成果を挙げて来たものである.複雑な心奇型の修複に際し,低体温法における遮断許容時間を越えて長時間心遮断を要する場合等にはどうしても人工心肺装置が必要となつて来る.当教室において,先年来文部省試験研究費の交付を受け乳児用小型人工心肺の試作を行ない,動物実験を経た上で臨床応用し,好成績を得ているので,この小型人工心肺装置を中心に灌流操作をも含めた患者管理について述べる.

患者と私

修業時代の思い出

著者: 武藤完雄

ページ範囲:P.530 - P.531

 木誌編集室から「患者と私」と云う題で随筆をかく様にと依頼を受けた.何を書こうかと思つたが,幸に同時に見本が送られて来た,僚友桂名誉教授の執筆である,早速読んでみた.冒頭に教授生活が長くなつて来ると忙がしくなつて,患者と親しく接することが,少なくなってくると反省されている.ここに患者と私の随筆のヒントを得た様に感じた.
 「患者と私」の患者を単数にすれば,手術が特にうまく行つた場合や,反対に手術がうまく行かず苦しんだいくつかの思い出が頭に浮ぶ.これらは教授就任後の事例で,患者さんが知名の士であつたために,社会的事情が加わり,色々苦労したなどである.これに反し患者を複数と考えた場合の思い出は修業時代,助手時代の古い記憶が多い.桂教授が教授生活が長くなるにつれ,忙しくなつて患者とゆつくり話も出来なかつたと云う反省と一脈相通ずるものがあるのであるこれは私が桂教授と共に長い間同じ地方に,同じ時期に勤めていたためとも思うが,あるいはわたくしの時代の教授と云うものに共通の傾向であったかもしれない.

外国雑誌より

冷凍血液その理論と実際

著者: 豊田忠之

ページ範囲:P.533 - P.533

 Polgeらは1949年,鶏の精子にグリセリンを加えて冷却すると凍結下でも死滅を免かれるということを発見し,ついでSmithは人赤血球に対してもグリセリンが同様な保護作用を示すことを発表した.その後,ヂメチルスルフォキサイド(DMSO)やプロピレングリコールにもこのような作用があることが分り,これらの物質はECA (Endocellular Cryo-phylactic Agent)と総称されている.これらのECAは細胞内水分と強い水素結合や共有結合を作ることができるので,凍結状態においても細胞内水分が氷となつて一カ所に集まることを防ぎ,ひいては溶質の濃縮を抑えることができる,これが低温下の細胞保護機構である.こうして−85℃に保存した冷凍血液を加温融解して輸血するには,ECAを除去しなければならない.著者はその方法について新しい装置を考案した.正常pH城では血漿中γ—グロブリンと赤血球ははなれて存在するが,pH5.2〜6.1の領域ではγ—グロブリンと赤血球壁リポプロテインとが可逆的な結合体を形成する.ついでメデイウムのイオン強度が下るとグロブリンが赤血球をつけたまま沈でんする.再分散させるには電解質液を加えてグロブリン相互間結合を切るか,pHを上げてグロブリンーリポプロテイン結合を切つてやればよい.

雑感

内科医業の窓から

著者: 春日豊和

ページ範囲:P.534 - P.534

●うちの近所の中小企業の工業主はとかく医師の診療時間無視を平気と心得ているご仁が多いが,先日脊椎込り症で東一の依頼で赤外線をかけに来ている工員の娘さんに,「会社の仕事も大事だから,すぐかけられる私の往診時間にいらつしやい」と声をかけたら,「いえ私の主人は医者通いは"からだ"のことだから,先生の診療時間に合わさないといけない,といつて,何時でもお暇をくれますので…」とのこと,時にこんな理解のある小工場主があるかと思うと,気もはればれする.現にその隣りの同業の町工場のアンチャンは目オヤジがうるさくて,医者通いもできネェー」とつい先日ボヤイていたばかりだけに…

専門外の研修

著者: 上田篤次郎

ページ範囲:P.535 - P.535

 私は一応内科を標榜して医院を開設しているが,もし専門はと聞かれれば,生理学と答えるところだろう.しかしその生理学の中でも比較的興味を持つて長い間研究の真似事のようなことをしていた心臓生理については,学会で話を聞いていても少しは分るが,他の分野のことになると分らないことの方が多いと言つた方が正しいようである.
 医学の進歩がその速度を早めるためには専門的に細分化されることが運命である以上,専門的研究に打ち込めば打ち込む程,同じ医学の中でも他の分野に関する知見の吸収に時間を割くことは困難になりやすいのはある程度やむを得ないことであろう.

外国文献

diencephalic syndrome,他

ページ範囲:P.536 - P.539

 小児本症はinanition syndrome, athrepsia, failure tothrive等の名称でも知られ,Russell (Arch.Dis.Child.26:274, 1951)がはじめて記載したが,1964末までに文献に23例あり,うちRussell (Excerpt.med.1957,pp. 111)は10例自験してをり,もつとずつと頻度高いと思われる.最近Smith (J.Neurosurg.23:348,1965)とTorrey (Am.J.Dis.Child.110:689, 1965)が症例を追加している.Smithの1例は13〜15カ月男児,分娩正常,9週まで発育正常,以後体重増加せず,皮下脂肪つよく失われ,cystic fibrosis, malabsorption等精査したが該当せず,気脳にて本症を疑い入院.hy-perkinesis,水平眼振,第3脳室前方の腫瘤.15月で開頭,左視神経から右間脳に及ぶ大腫瘤,生検astrocy-toma,切除せず,Co60の4000r tumordose照射,2年後健存.

他科の知識 循環器疾患の治療・3

高血圧性心臓病の治療

著者: 森博愛

ページ範囲:P.541 - P.545

 本態性高血圧症は循環器疾患の中で最も多く,外科臨床においてもしばしば合併症として遭遇する.戦後,次々と多数の降圧薬が開発されたが,最近はこれらの降圧薬に関する臨床データーも豊富になり,一応高血圧症の治療体系ができてきたので,降圧薬を主とする本態性高血圧症の治療法の現況を述べる.

他科の意見

麻酔科から外科へ(2)

著者: 岡田和夫

ページ範囲:P.546 - P.547

 前回は臨床医が遭遇するかもしれない救急蘇生対策につき述べたが,今回は,外科手術前後における患者管理の呼吸面を考えてみたい.Hypoxiaが麻酔の技術,知識,訓練が進んだ現在でも最も臨床上の大きな問題である(麻酔時には酸素欠亡の方が炭酸ガス蓄積よりは生命に対して危険緊急度大).一昔前のような悲劇的な事故は無くなつたが,診断法が発展するとかなりの程度のHypoxiaが麻酔時,後に存在することも明らかになつた.
 麻酔死亡例,合併症の統計でも1500例に1例で死亡していることを示しているが(J.A.M.A.178:261,1961,Dripps, R.D.et al.),麻酔とHypoxiaの関連が注目されたのは,外科手術患者の対象が拡がつて老人,poor risk患者が多くなつてきて,この患者達がHypoxiaに対しては若年健康者よりは異常に反応するからであり,麻酔時は各種のHypoxiaに対する循環系の反応が麻酔剤で変化させられているからである.

器械の使い方

心臓血管カテーテル(2)

著者: 藤本淳

ページ範囲:P.548 - P.551

 前回は既製品といえる心臓血管カテーテルの種類を示したが,今回は血管造影の普及により広く利用されるようになつた加工用のカテーテル管および心臓血管カテーテル検査に当つて利用される各種の補助具(Catheter bittings and accessories)を示し,最後にカテーテルの清掃・清毒および取扱上の注意についてまとめた.
 加工用心臓血管カテーテル: これはレントゲン不透過性のポリエチレン管で,加温により容易に屈曲加工することができる.製品としては米国USCI社からは"RoPol",欧洲からは"Oed—man-Ledin"(Ehema-Schönander社)として長尺のまま(1巻約5m)で市販されている.sizeはRopolではF−7, F−9の2種,Oedman-Ledinでは4種の大さのものがある.この種のカテーテルは目的に合わせて容易に選択時に所望の血管に挿入できるようまた造影剤の注入が容易な様に例孔を適当に開ける.その加工法の基本は第3図に示すごとくである.先端部位を挿入部位に適合するように屈曲させるがこの操作を容易にするためのstyhettsを提供されている(第4図).

講座

疾患別にみた局所麻酔のかけ方(1)

著者: 西邑信男 ,   木内実

ページ範囲:P.552 - P.556

局所麻酔について
 局所麻酔がおこなわれる目的は,大きくわけて,手術のため,疼痛その他の治療のため.診断のためとあり、全身いずれの場所でも局所麻酔がおこない得るといえる.しかし例えば手術のための局麻としてはおのずから,部位、疾患の範囲,程度,患者の全身状態,年齢,局麻の手技の難易等が関係して限られている.このため軽い全麻を併用したり,全麻のみでおこなわれざるをえない場合もある.
 今回は比較的一般におこなわれている局麻法についてのみ,三つのグループにわけて,末梢神経ブロック,硬膜外麻酔,交感神経ブロックについてそれぞれ述べてみたいと思います.

薬剤の知識

降圧剤の使い方(1)

著者: 新城之介

ページ範囲:P.557 - P.559

はじめに
 降圧剤による治療は,高血圧治療の中心をなすもので,その使い方の適・不適は高血圧症の予後に影響するところがきわめて大きい.元来,降圧剤使用の目的は,血圧を持続的に下げることによつて,高血圧症の進展を防ぎ,続発して起こる脳,心臓,腎臓などの重要臓器の血管障害を予防することにあり,高血圧の原因療法を目的とするものでない.
 高血圧は種々なる原因によつて起こるものであるが,従来はその殆んど90%は原因がなお詳らかでない本態性高血圧とされていた.しかし本態性と考えられていた高血圧症の中にも,近年慢性腎盂腎炎によるもの,また腎動脈の狭窄あるいは閉塞を原因とする腎血管性高血圧の存在が少なくないことが注目され,腎動脈異常によるものはクローム親和細胞腫と共に,いわゆる偏腎性高血圧として,手術的に原因療法が可能な場合もある.かかる患者に慢然と降圧剤による治療を続けていてはならない.

症例

結核性潰瘍に因る回腸重積症の1例

著者: 奥野匡宥 ,   紙野建人 ,   中村資朗 ,   谷沢芳郎 ,   和佐武

ページ範囲:P.561 - P.564

はじめに
 結核性潰瘍が原因となつて発生した回腸重積症の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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