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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科21巻6号

1966年06月発行

雑誌目次

グラフ 外科病理アトラス

乳腺線維腺腫その他

著者: 増田強三

ページ範囲:P.721 - P.725

Ⅰ.線維腺腫
 Fibroadenoma mammae 好発年齢は比較的若く,Haa-gensenによれば20〜29歳が29.6%であるとしているが,われわれの調査では20〜29歳が53.8%であつた.

病院の新しい設備

東京女子医大日本心臓血圧研究所

著者: 新井達太

ページ範囲:P.816 - P.820

①外来検査室 向かつて左側に,2つの心電図室があり,1日,100〜150人の心電図を撮つている.つぎにベクトル心電図,心音図室があり,その奥には血液,尿,便の検査室がある.
 右は手前から,レントゲン透視室(シーメンス社製のズームレンズ附),ついでレントゲン撮影室,肺機能検査室,テレメーター(無線誘導心電図)室,眼底検査室がある.

外科の焦点

外科と免疫学の問題

著者: 藤井源七郎 ,   広瀬定徳 ,   後藤俊二

ページ範囲:P.727 - P.732

 局所の疾患を対象とした外科に,免疫学という全身性反応を対象とする学問は縁遠いものであつたろう.悪いところを切り取るだけで問題が片付かなくなり,いわゆる外科的疾患の病因を局所から全身性に求めるようになつたとき,まず感染に対する生体の反応—免疫反応—に眼が向けられたのは自然であろう.古くは,ヂフテリア破傷風,狂犬病等で,感染菌の外毒素(exotoxin)による致命的症状に,抗血清やワクチン等の免疫学的手段によつて著効がみられたのは,免疫学の外科における貢献ということではむしろ特異な例である.結核性疾患や,ある種の胆嚢炎等で,外科の立場から熱心に病因が免疫学あるいはアレルギーの基盤に求められた(石橋,昭33)1)が,このような場合,外来の細菌,すなわち異種の抗原に対する宿主反応の局所的発現を外科的な病気としてとらえ,抗体という免疫反応の"あかし"が,執拗に探求されたのである.今日の新しい免疫学の知見,手技からみれば,当時すでに,異種抗原を対象とする古典免疫学から,同種抗原や自己抗原を対象とするに至つた新しい免疫学の基盤が求められていたものといえよう.

論説

胃癌の細胞診における問題点

著者: 卜部美代志 ,   山本恵一 ,   矢崎敏夫 ,   渡辺洋宇

ページ範囲:P.735 - P.745

はじめに
 私共が細胞診の対象とした胃疾患は胃癌96例,胃十二指腸潰瘍44例,慢性胃炎18例,その他,16例計174例である(第1表).
 検索方法として諸家により各種のものが行なわれているが,私共の常用しているのは初期の生理食塩水洗滌法であり,近来のα—キモトリプシン液洗滌法(以下洗滌法と略称する)である.ごく最近,これらと併行して開発しつつあるものに特殊ファイバーガストロスコープによる直視下擦過法および生検法があげられる.

食道癌手術例の検討

著者: 本多憲児 ,   萱場定次 ,   元木良一 ,   加藤功其 ,   千葉惇 ,   河村孝

ページ範囲:P.747 - P.751

 食道癌手術はSweet等1),中山等2)の偉大なる業績によりその手術成績はきわめて良好となつた.しかし食道癌手術を第一線の病院において行なうことはかなり危険が伴うようである.ことに第一線の病院においては比較的末期の食道癌に対して手術を行なうことが多いのでさらに成績が不良となる.
 われわれも今日まで41例の食道癌手術を行ない,種々検討を行なつたが,従来の方法では手術手技未熟のためか,先輩諸家のごとき良好な成績をあげることができなかつた.そこでわれわれの41手術例について2,3検討を行なつた.

虚血性心疾患に対する内胸動脈心筋内移植兼大網遊離移植術

著者: 榊原仟 ,   太田八重子 ,   横山正義 ,   佐藤礼介 ,   五味春人 ,   平塚博男 ,   秋本富夫 ,   岸一夫 ,   村崎芙蓉子

ページ範囲:P.753 - P.756

 狭心症,心筋硬塞の外科治療は古くから行なわれ,わが国でも昭和13年頃,榊原亨1)等の大網膜移植術その他の経験が報ぜられている.著者等は昭和29年以来22例の症例に対し,交感神経節切除術,心嚢癒着術,内胸動脈結紮術を行なつてきた.これらの症例のほとんどは,5〜10年以上の経過をへており,この成績についてはすでに報告した2)が,効果についての判定の困難さもあつて,しばらくは,この方面の手術を行なわなかつた.
 しかるに,最近,冠動脈血管造影法の技術の進歩とともに,本疾患に対する外科手術の発達が期待されるようになつてきた.冠動脈疾患に対する手術としては,直接冠動脈の血流量の増加を計ろうとする方法と間接的に虚血心に対する血流増加を計ろうとする方法とがある.直接法としては内膜切除術Endoarterectomyなどがある.間接法のうち,かつてVinebergの発表した内胸動脈心筋内移植術での,移植した内胸動脈が長年月の後にも開存があることが証せられ,再注目されるに至つた.この方法は内胸動脈の側枝を開放したまま,心筋内に移植し,大動脈→内胸動脈→心筋静脈洞に血流を送ろうとする方法である.

原発肝癌の統計的観察

著者: 清水準也 ,   河島隆男 ,   神村政行 ,   増川禎彦 ,   仙波春樹

ページ範囲:P.757 - P.764

はじめに
 本邦における肝癌の発生頻度は,南アフリカのBantu族,熱帯地方,極東諸国とともに高いとされ,宮地1)らの剖検例による調査では,胃癌,白血病,肺癌,子宮癌についで第5位を占めている.しかし従来肝悪性腫瘍は外科における死角とされ,実際原発性肝腫瘍の診断はきわめて困難であつた.最近は肝生検,腹腔鏡,門脈撮影などにより,比較的早期診断や早期治療が施行される傾向にあり,しかも肝切除術式が諸家により確立された観がある.しかしながらわが教室における症例は殆んど根活手術不能であり.肝腫瘍の早期診断の必要性を切実に感じた.

乳幼児そけいヘルニア—ことに手術遠隔成績

著者: 土屋周二 ,   平野勉 ,   島津久明 ,   松村高典 ,   小暮洋暉

ページ範囲:P.765 - P.770

 そけいヘルニアは乳幼児の外科的疾患のなかで日常もつとも多く取扱われる疾患である.最近の小児外科や麻酔の発達によつて,乳幼児の手術的治療が安全なものとなり,本症に対しては早期手術が原則となつた.しかし,治療方法の細部については,なおまだ議論がたえない.われわれは6歳未満の乳幼児そけいヘルニア症例について,退院後の長期遠隔成績を調査した.この結果を中心に本症の治療方針について検討してみよう.

乳児総胆管拡張症手術例の検討

著者: 斉藤孚 ,   奥山孝 ,   松塚文夫 ,   松葉幹夫 ,   森山貴 ,   山内徹 ,   山口克彦 ,   吉田順子 ,   陶山宏

ページ範囲:P.771 - P.777

はじめに
 教室において今日まで4例の乳児総胆管拡張症に対して手術を行ない,2,3の検討を行なつたので報告する.

各種抗癌剤の使用経験—とくに使用法についての考察

著者: 早坂滉 ,   小西健三 ,   高橋壯之祐

ページ範囲:P.779 - P.785

はじめに
 現在種々の抗癌剤が使用されているが,これらが動物移植腫瘍の治療では卓効を呈するということについては,すでに疑う余地はない.しかし実際臨床的には,根治的効果はもとより,延命効果すら確実に期待できるものはないといつた状態である.これは癌の化学療法が非常に困難であるという幾多の問題があるからである.
 まず第1に,癌細胞と正常細胞相互間の親近性に問題がある.癌細胞は,体外から侵入した一般の細菌性病原体と異り,体細胞から発生した変異体(mutant)1)である以上,その代謝物質ならびに酵素系の生化学的機転において,正常細胞とのあいだに特異的な,また,本質的な差異がないことである.抗癌剤には,細胞毒性物質(アルキル化剤),代謝阻止物質,あるいは抗腫瘍性抗生物質等あるが,そのいずれも癌細胞を破壊すると同時に多かれ少なかれ正常細胞とくに造血臓器の破壊作用があり,これは抗癌剤使用にあたつての副作用として,避る事のできないものになつている.

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人事消息

ページ範囲:P.756 - P.756

曲直部寿夫〔大阪大助教授 外科)教授に昇任
牧野 博安(千葉大講師 外科)助教授に昇任

簡易検査法

血液検査(1)形態学

著者: 野村武夫

ページ範囲:P.789 - P.792

 臨床血液検査室にとつて血液の形態学的検査項目の中で最少限必要なものには,   血色素定量   赤血球算定   ヘマトクリット値測定   網赤血球算定   血小板算定   白血球算定   薄層塗抹標本の検索があげられる.これらの検査に際しては,たとえば尿検査などで最近広く使用されるテストペーパーによる簡易検査法に比すべき方法はない.もつとも,血色素定量には古くから濾紙法があり,特定の処理を施した濾紙に小血滴を吸わせて,その色調を標準色と肉眼的に比較して濃度を知る方法が種々に工夫され,現在でも一部で使用されているが,著者の経験した範囲では,測定誤差が非常に大きくて実用には供しえないようである.簡易検査法に必要な条件としては,実施に当たり複雑な器械・器具を必要とせず,普通の方法に比し手技が簡便で不慣れな術者にでも容易に施行できることがあげられるわけであるが,いかに簡易な方法であつても測定値が不正確であつたり,再現性が悪くてはならないことはもちろんいうまでもない.血液形態学的検査にはこのような条件を充たす簡易法と称しうるものはないといつてよく,従来の検査書に記載されているそれぞれの検査法にしたがつて検査を進めねばならない.

診断のポイント

僧帽弁・大動脈弁弁膜症

著者: 新井達太

ページ範囲:P.794 - P.801

 心臓には4つの弁があるので,そのおのおのに弁口狹窄,弁口閉鎖不全およびその合併したものがあり,また,先天性と後天性のものがある.
 今回は日常よくみる僧帽弁疾患と大動脈弁疾患について述べてみる.

読影のポイント

脳波の読み方—(6)異常脳波

著者: 喜多村孝一

ページ範囲:P.802 - P.805

 前号までに,正常脳波についていささか冗長気味なほどに記載したが,それは,脳波の異常をよみとるためには,たとえ「脳波の読み方」というごく実用的な面においても,正常脳波に関する十分な知識が不可欠と考えられるからである.極端ないいかたをするならば,正常脳波を十分に理解,体得すれば,その範疇からはずれるものがすべて異常であると考えてよいわけである.しかしながら実際に脳波を読むにあたつてはそれだけの知識で十分とはもちろんいえない.
 すでに読者はお気附きのことと思うが,脳波の正常の範囲,異常と正常との境界はかなり漠然としており,臨床診断にあたつてその処置に迷うことは決してまれでない.臨床症状その他を参考として,正常,異常の判定が下されるが最後まで決定を保留せざるをえないこともある.したがつて,どこの検査室でもこのような脳波に対しては,正常とも異常とも決定せず境界線上borderlineという言葉を用いている.このようなあいまいさに対処し,脳波を臨床検査法の一つとして駆使するには,多くの脳波に接しこれを体得し目を肥やすより他には方法はないであろう.以下号を追つていろいろの異常脳波の実物をお目にかけ説明を加えて,"脳波を読む目を肥やす糧"にしたいと思う.

手術手技 血管外科の手技・2

末梢動脈の手術

著者: 高橋雅俊 ,   工藤武彦

ページ範囲:P.806 - P.810

 末梢動脈疾患の主なものは閉塞性病変であるが,部位的にみると,大動脈弓の分岐動脈,下肢動脈ならびに腹部大動脈の分枝の3者に大別することができる.以下,これらの手術方法について記述する.

外来の治療

外来における四肢外傷の治療(3)—手の外科を中心に

著者: 小谷勉 ,   豊島泰

ページ範囲:P.811 - P.815

I.創傷処理
 外科医が日常よくとり扱う開放創の閉鎖処理について,特に皮膚より深部の血管・神経・筋・腱・骨などの諸組織にも損傷がある場合に守らねばならぬ幾つかの原則がある,けして健康保険の点数には見合わぬ程のたいへん手間のかかることであるが,初期の努力こそが感染を防止し,あとのよりよい機能を保たしめ得るので,外科医はそれによつてのみ報いられると言つても過言ではない.この初期の注意をおこたつて化膿をおこしたり,あるいは2次的な瘢痕治癒による創の閉鎖を期待することは,むしろ罪悪と言うべきではなかろうか.以下私どものとつている処置について少しくくわしくのべる.
 救急の処置としては,駆血帯による止血と創面を清潔なガーゼでおおうのみで十分であろう.もちろん骨折があれば外固定を要する.

トピックス

末梢循環障害に対するポーラログラフ法の応用

著者: 恒川謙吾

ページ範囲:P.823 - P.823

 近年の血管外科の発達は,めざましいものがあるが,われわれが実際に取り扱う閉塞性未梢動脈疾患のうちには直達血管手術の適応のないものが,まだ,少なくないのが現状であり,腰部交感神経切除は,なお,治療上有力な手段の一つとなつている.しかし,交感神経切除の効果の判定は,きわめてむつかしく,したがつてその適応についても諸家によりまちまちである.
 従来より,循環動態の検査法は,血流量の測定法をはじめとして,容積脈波,アイソトープクリアランス法など,種々あるが,末梢循環の動態把握を目的として,臨床的に応用しうるものは数少ない.

患者と私

手術の思い出—あれこれ

著者: 前田友助

ページ範囲:P.824 - P.825

 五十余年を外科医一筋道で辿つて来た私は過去を顧みて色々の思い出がある.私の卒業当時にはまだ輸血もなく気管内麻酔もなく電気焼灼器もなく結核の特効薬もなく腸線もほとんど用いて居られず,骨手術等に今日多く用いられる無刺激に近い金属もなく,抗生物質もなくかく数え立てれば殆んど際限がない程で,これ等の発明発見と共に色々な新しい手術が行なわれるようになり患者が如何許りか幸福を得られる様になつたか計り知れない.これは専ら諸先輩の苦心研究の結果であつてこれからまだどこ迄進歩するか判るものでない.私は同僚諸氏と同じように出来るだけこれ等の新しい知識を早く身につけようと何時も努力してはきたが,それは到底私には出来る事ではなく言い換えれば患者にその時代時代の最善の治療を施すことが出来ず,往々にして失敗をし,患者にまことに申訳ないことをしたと心から詑びなければならぬことが稀でなかつた.これは恐らく私のみならずどのような優秀な頭脳,技術を有する人でも必ず完全には避け得られないことであると思われる.
 医者殊にメスを用いる医者が患者に治療を施す時一旦不幸にして手術の方針を誤つたり或いは手術創が化膿したり又は治療法に手落ちがある時等にはこれが為に起る不結果を完全に取除く事は多くの場合殆んど不可能である.

雑感

耳環

著者: 塩谷裕

ページ範囲:P.826 - P.826

 最近,やや流行してきたcosmeticoperationについて感じたことを申し上げてみたい.
 古来,女性は(男性もときにはあるが)躯の各突起部に装飾を施す傾向が多いのは,諸先生の疾くと御存知のところである.

Medical Notes

胃切除後の骨軟化症/膵損傷

ページ範囲:P.827 - P.827

 Jones (Stammer, Gastrectomy, pp.190, 1963),Deller (Austr.Ann.Med.12:295, 1963),Clark(Proc.R.S.Med.57:580, 1964)が胃切後10〜15%の頻度で骨粗鬆・骨軟化症の発生することを指摘し,本欄でもCrooksの成績を紹介した.alk.Pase上昇,低Ca血は30%近い.本邦でもこの方面に十分の関心が必要であろうと思われる.Morgan (Lancet 2:1085,1965)らはYork County Hosp.1年2ヵ月の胃切1228名についてこの方面を精査した.消化性潰瘍で胃手術を受けない183名では,低Ca血症5.5%.迷切239名では9.2%,Polya手術681名では16.1%.この値を血漿蛋白で補正すると,おのおの1.6, 3.8,および5.3%となる.低Ca血は50歳以下より60歳以後の患者に好んで発生する.術後時間経過はこの数字に大きく関係しない,alk.Pase上昇はそれぞれ6.2%,8.4%および12.3%であった.これも60歳以後に特に頻度が高い.骨生検,vit D負荷で骨軟化のないことが確かめられたのは胃切のうち100名ばかりであつた.

海外だより

北欧医学"あれこれ"(2)

著者: 沢村献児

ページ範囲:P.828 - P.829

看護婦制度
 デンマークでは,看護婦になるには中学卒業(小学校7年,中学3年)または,国民高等学校卒業(年齢19〜20歳)後,半年間のホームメイドが義務づけられ,これらを経たものが看護婦学校学験の資格が与えられる.他人の家庭の家事手伝を義務づけているのは,ナイチンゲール精神を体得させる一助にするものであろう.大病院に附属した看護婦学校の入学試験は他の業種のそれよりも難しく,収入も良いので若い女性のあこがれの的になつており,半年間の基礎学修得の上,3年間病院の実習と講義があり,この間,4ヵ月毎の試験と最終の国家試験がある.卒業するとその出身校(病院)のバッジを常時胸に着け,これに誇りを持つている.この国には看護婦麻酔士制度があり,これを取るにはさらに2年〜3年の実地訓練の上国家試験を経てこの資格を取得する.なお,面白いことに看護夫も少数ながらおり,看護婦同様に出身校のバッジをつけ,手術の介助をしたり麻酔をかけたりしている.給与も同程度とのことであつた.
 看護婦の数はかなり多いと思われるが,それでも人手不足とかで,外国人看護婦もかなりおり,老齢の看護婦も病院によつては半数以上を占めている.

文献展望

carcinomatous neuromyopathy

ページ範囲:P.830 - P.830

 Brain誌(Vol.88, Part 3, 1965)に8編の癌性神経筋症の報告があり,注目されなくてはならぬもので,ここに取扱いたい.Croft & Wilkinson (pp.427-434)はその162例について半数が肺癌にもとずくが,sensoryneuropathyでは75%が肺癌.神経症の50%はneuro-muscular typeで,次がperipheral mixed型,その次が小脳および脊髄型.sensory型では中枢,なかんづく後根神経節に免疫学的competent cellが出現(Hashimoto病ほど高度でない)し,ネウロンに破壊がある.剖検時より数ヵ月前に完成した病変であろうと云うので,自家免疫性成立を示唆した.木症患者血清に自家抗体を証明したのはGrace (Cancer 12:648, 1959)の乳癌2例,Curtis (J.A.M.A.178:571, 1961)の気管支癌1例だが本報の1人Wilkinson (Lancet 1:1301, 1964)はsen-sory型に補体結合型抗体を証明し,その自家免疫病性成立の可能性を示したが,他の型のneuromyoには抗体が証明しえないとしている点,本報と一致する.Wilkin-son & Zeromski (pp.529-538)は重層螢光抗体法を用いて,sensory型に1例を除き,陽性の結果をあげた.

外国文献

好気性感染症の高圧酸素療法,他

ページ範囲:P.831 - P.834

 in vitroで2気圧の高圧酸素(HBO)はpyocyaneus,Staphyl.aureusなどの好気性菌にbacteriostaticである(たとえばSchreiner, H.R.:Hyperbaric Oxygena-tion, Edinburgh, 1965).
 これを2〜3気圧にすると,これらの菌およびColiに対する抑制作用が増強する.Ross (Lancet 1:579,1965)は肺炎菌感染に2気圧,Zaroff (Arch.Surg.&91:586, 1965)はpyocyaneus感染に3気圧がよいとしている.Irvin (Lancet 1:392, 1966)はモルモットのpyo-cyanea, Staph.aureus感染傷に2気圧O2,72時間治療を行ない,その間は菌が抑制される.しかし治療を中止すると再び対照と同じ感染状態になるとしている.Ol-lodart (J.A.M.A.191:736, 1965)はpyocyaに対しHBOは62%,aureusには25%という不完全な抑制にすぎないとしている.in vivoでは,in vitroとちがつて菌のpathogenicityが異なつてくるから,結果は,あまり明瞭でなくなる.

他科の知識

内分泌疾患の内科的治療(2)

著者: 鳥飼龍生

ページ範囲:P.839 - P.843

I.副腎皮質疾患(つづき)
 3.原発性Aldosterone症
 本症はその大部分が副腎皮質の腺腫に起因するものであるから,治療はもつぱら腫瘍摘出による.ただ,脳出血や心疾患を合併した場合には,しばらく内科的治療を続けることもありうる.すなわち安静,食塩制限,降圧剤投与などを行なう,この場合,thiazideやDiamoxの投与は本症の低K血を一層著明にするから,これに対しては,血清Kを測定しながら1日4〜12gの塩化カリを経口的に投与する.
 Spironolactone (Aldactone)やtriamtereneのような抗aldosterone剤は,aldosteroneに拮抗的に作用し,血圧を下げK喪失を防ぐ効果があるので,本症の内科的治療には適した薬物と考えられる.われわれ1)が本症にAldactone (SC−9420)を1日300〜600mg投与した場合の効果を図示した(第1図).Na摂取量1日170mEqの場合には単独投与では効果がなかつたが,Naを充分に制限した場合,あるいはthiazideと併用した場合には,血圧低下,電解質正常化などの効果がみられた.しかし本剤による治療も対症療法に過ぎず,かつ長期治療には種々の困難もあるので,現在のところ術前準備に行なわれるだけである2).すなわち本症は,できる限り早く手術を行なうべきである.

他科の意見

内分泌疾患について外科への希望(2)

著者: 三宅儀 ,   吉見輝也 ,   辰己学 ,   大迫文麿 ,   伊藤省吾 ,   平盛勝彦

ページ範囲:P.844 - P.847

 前号でわれわれは甲状腺疾患および副甲状腺疾患の治療法について,内科の立場から外科への希望を述べたが,本号では,副腎疾患について述べたいと思う.副腎疾患のうちで外科的療法の対象となるのは,副腎皮質ならびに髄質の機能亢進症である.そのうちでも腫瘍によるものは現在ではもつぱら外科的治療にたよるほかはない.過形成によるものは放射線療法と外科的療法が平行して行なわれている.副腎機能亢進症は一般に進行性で,放置すれば大部分は高血圧による脳心腎の血管障害のため死亡する.したがつて早期発見,早期治療が必要で,全身の血管病変が可逆的である間は完全治癒が期待できる.外科的治療の対象となる副腎機能亢進症にはCushing's Syndrome,Primary Aldosteronism, Adrenogenital SyndromeおよびPheochromocytoma等があるが,その治療法も疾患によつて異なるので以下疾患別に治療上の問題点を述べたい.

薬剤の知識

降圧剤の使い方(3)

著者: 新城之介

ページ範囲:P.848 - P.850

Ⅰ.降圧剤の選択
 一般に,降圧剤の第1選択はRauwolfia製剤またはThiazide系の利尿降圧剤である.これらはいづれも作用が比較的確実で緩除であり,しかも耐薬性や危険な副作用がなく長期にわたつて使用できる.1剤を増量して多量にすると副作用をみることが多くなり,作用機転の異なる降圧剤の併用はしばしば相乗作用が期待できるから,適当量を併用するのがよい.したがつて何れか一方を基礎降圧剤として用い,他を併用することが行なわれている.
 Hydralazineは末梢血管拡張作用が強く,拡張期血圧をよく下降させるから,Rauwoifia製剤とThiazidc製剤の併用で所期の降圧がえられない場合の併用剤としてもつとも適当であるが,本剤はしばしば心悸充進をきたすからRauwolfia製剤と併用することが必要である.

講座

疾患別にみた局所麻酔のかけ方(3)

著者: 西邑信男 ,   木内実

ページ範囲:P.851 - P.856

Ⅰ.星状神経節ブロック
 一般に星状神経節ブロックは,上肢,頭,顔面,頸,上胸部等の交感神経線維の関連している領域の疾患の診断あるいは治療に用いられている.頸および上胸部交感神経は互に線維を連結しており,星状神経節のみのブロックを行なう場合も上頸,上胸交感神経についても考えねばならない.
 星状神経節のブロックを考える場合に,短時間作用性の薬剤で起こる場合と,stellectomyの場合と2通りある.いずれもHorner's syndromeがあらわれてくる.また片顔と腕の温度上昇を伴なう,触覚圧覚は残るし運動機能は侵されない.しかし時に肩の脱力をきたすことがあるが,これは薬剤のover flowと考えられる.

書評

—岩原 寅猪 片山 良亮 佐藤 孝三 監修 池田 亀夫 松本 淳 丸毛 英二 鳥山 貞宣 編集—整形外科診断必携

著者: 天児民和

ページ範囲:P.856 - P.856

 従来小さな整形外科の書物は2〜3出版せられてはいるが,それらは全く医師国家試験に合格するに必要な最低の知識をもりこんだものであり,大学教育を受ける大々にとつてはあまりにお粗末と感じるものが多い.今回の書物もそんなものではあるまいかと思いながら頁を繰つてみるとなかなかどうして細かいところによく気のついた書物である.各種の整形外科的疾患の診断の要点をきわめて簡潔に書いてあり,しかもこれらは古い教科書を要約したものではなく新しい感覚で処理せられている.ことにSyndromeを一括して第3章に集めてある.元来このような人の名前を冠した症状は決して好ましい表現の方法ではないが,現実にこれが多数使用せられているのでこれを簡単にひき出すにはこの書物は頗る便利である,しかし何と言つてもこの書物の一番の圧巻は第4章のSynopsisである.これは整形外科の色々の検査方法を一括して示してある.もちろんこのような方法は大きな書物では一応書いてあると思われるが,それを探し出すことはなかなか大変だろうし,さらにこの書物を詳しく読むと整形外科の専門書から少し外れた境界領域の検査方法も記載してある.
 さて誰がこのような書物を書いたかと表紙を眺めると監修の3先生は整形外科の老大家であるが,実際の編集をしてある池田,丸毛、松本,鳥山の4氏のお知恵だろうと思う.

カンファレンス

脊髄硬膜外腫瘍

著者: 高木常光 ,   小沢啓邦 ,   原田敏雄 ,   藤田五郎 ,   松田孝史 ,   杉本研士

ページ範囲:P.857 - P.860

 藤田 今日は,第292回の臨床検討会ですが,整形外科の方から脊髄硬膜外腫瘍という臨床診断の症例を提示されました.記録を拝見しますと,すでに手術を受けて経過良好という症例のようですが,先日,本検討会で討議されました"左下肢単麻痺"の患者はまだわれわれの記憶に新しいのであります.この両者をあわせて考えながら検討していただくことも意義があろうと思います.まず,整形外科の松田先生に現病歴を話していただきます.
 松田 患者は,52歳の男性で,機械業を自営しております.主訴は,歩行障害と両下肢の知覚異常です.家族歴にはとくに申し上げることはありません.既往歴としては,約20年前に気管支喘息をわずらつております.現病歴は,昭和37年8月,海水浴中に波に打たれて転倒し,背部を判撲し主した.打撲部の疼痛は数日で消退しましたが,2週間後に,両下腿前面にピリピリとした感じおよび軽い脱力感を生じました.その後,これらの自覚症状はだんだんと強くなり,歩行も困離になつてまいりました.昭和38年1月,某病院を受診したところ,腰椎椎間板ヘルニヤと診断され,その治療をうけております.昭和38年3月,当三宿病院整形外科外来を受診し,同年4月1日に第4,5腰椎の椎間板造影術を施行しております.しかしながら,そのときには椎間板の異常は認めておりません.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

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