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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科21巻9号

1966年09月発行

雑誌目次

グラフ 外科病理アトラス

消化性潰瘍の病理(2)

著者: 村上忠重 ,   安井昭

ページ範囲:P.1185 - P.1189

グラフ解説

先天性腸閉鎖症と類似疾患の診断

著者: 岡部郁夫

ページ範囲:P.1255 - P.1259

 先天性腸閉鎖症は,胎生期における腸管の発生異常により,腸管内腔の完全閉塞をきたすもので,新生児の外科的疾患のなかで比較的数も多く,重要な疾患である.本症に類似し問題となるものは,ヒルシュスプルング氏病であるが,これは新生児期には急性イレウスの状態を呈することが多く,腸閉鎖と誤られる可能性のある疾患である.このほか先天性異常に関係する,あるいは関係のない種々のイレウスが新生児期にも存在し,問題となる.今回は先天性腸閉鎖症を中心に,新生児期イレウスの鑑別診断について記載する.
 新生児期のイレウスにおいても,嘔吐,腹部膨満,排便障害とか,腹部レ線所見など,大人のイレウスと共通する点が多いわけであり,生後まもなく起こつてくる.とくに出生当日より頑固な,しかも頻回な胆汁性嘔吐をみた場合,まず先天性腸閉鎖症を一応疑い,さらに他の類似疾患と鑑別することが必要である.このためには,まず患児を立位とした腹部単純レ線像が非常に役に立つ.その主な所見として,腸管内ガス膨満像と鏡面形成像がみとめられ,新生児でレウスということが診断され,同時に鏡面像,腸管ガス像の状態から完全閉塞か,狭窄か.さらに通過障害の存在する部位もおおよそ見当がつけられる.さらに,何の原因による通過障害であるかを明らかにするために,造影剤の注腸造影を行なうと先天性小腸閉鎖症では,全結腸がマカロニ様の細い管状物,いわゆるmicro-colonの所見を呈する(第7図).

外科の焦点

頭部外傷と後遺症

著者: 中村紀夫

ページ範囲:P.1191 - P.1198

はじめに
 頭に外傷を受けたあと,すでに一ヵ月以上たつているのに,なお頭痛・嘔気・めまい・耳鳴などいろいろな自覚症状に悩んでいる人々が,いかに大勢いることであろう.現在東大病院脳神経外科外来には,一日平均十数名の頭(頸)部外傷患者が新患として来院するが,その大部分は後遺症を訴えている.このような患者を診察すると,およそ3種類の者が目につく.第1に頭部外傷の急性期には他医で診察治療を受けているが,慢性期に入つてあまり治療されないで,また十分な説明も受けないまま,医師および予後に対する不安の念から大学を訪れる不安型,第2に急性期に診療した医師が,慢性期になつて専門医を受診することをすすめ,紹介状を持参する紹介型,第3に補償問題がからんでいて,専門医による治療と予後判断を求めてくる補償型である.
 この中でことに第1型の患者に接すると,第一線の外科医がこのような慢性期の患者の治療に苦心し難渋していることを感ずるとともに,患者に対する説明が不十分であると,患者の不安が増大し,主訴を一層複雑にする傾向を認めるのである.

座談会

外傷に思う

著者: 斉藤淏 ,   佐野圭司 ,   白羽弥右衛門 ,   吉村三郎 ,   飯塚積

ページ範囲:P.1200 - P.1212

 斉藤(司会)本日の題"外傷に思う",これは島田日本外科学会会長がとりあげられたのですが,この学会でお3方が「頭部,胸部,腹部の外傷における特殊性」という特別講演をおやりになり,引続いて監察医の立場から吉村先生のお話を伺つたわけですけれども,この外科学会に来られなかつた臨床外科医もたくさんおりますし,第一線におられる方々のためにわかりやすく要点をもう一度お話していただきたい,こういうことで座談会を計画したわけなんです.まず各部の外傷について,それぞれお話を願つて,その特殊性を考えながら第一線の治療医はどうしたらいいか,どういうことを心がけたらいいか,というようなところへお話を持つていつていただきましようか.
 まず佐野先生に頭部外傷についてお始め願わなきやならんことになりますね.(笑い)

論説

脳外科術後過高熱に対する副腎皮質ステロイドの影響

著者: 斎藤義一

ページ範囲:P.1215 - P.1220

はじめに
 中枢神経障害により39〜40℃以上の体温上昇と同時に意識障害を伴う場合,これを中枢性過高熱と称するが,中枢障害以外にも全身性水分脱失,各種臓器の機能障害をきたし生命維持の危険信号ともなる.かかる状態は脳外科手術後に過高熱posroperarive hyperthyemiaとしてしばしば経験され原因の究明,治療など討義されてきた.元来第3脳室,視床下部腫瘍などに体温調節が障害され(Strauss et al.3))これら疾患の術後に過高熱をきたすことが知られるが,一般に脳外科手術で脳底に侵襲のおよびやすいときに発現しやすく,第3脳室,視床下部以外にも前頭葉底,下垂体およびその近傍,松果体腫瘍などが代表としてあげられる.
 術後過高熱をきたす場合,通常術後脳浮腫の発生を考え,脳浮腫発生は過高熱の重要な因子といえる.近年脳浮腫防止に副腎皮質ステロイドの利用が注目され脳手術後や,急性頭部外傷例に用いられ,有効視されている.過高熱の原因,脳浮腫や視床下部損傷との関係の細部に関してはなお未解決の点も多いが,一方において臨床的見地から術後過高熱などの防止対策は急を要し,前記副腎皮質ステロイドの利用が普及しつつある.その使用経験は種々報じられるが,使用最の検討は十分といえず,困難であるが重要な問題である.

外科的手術と肝機能の変動

著者: 海藤勇 ,   涌井和夫 ,   佐藤俊一 ,   伊藤清 ,   真田昌彦 ,   松田徳義 ,   熊田博克 ,   山家令史 ,   小山研二 ,   清野祐彦 ,   鈴木秀男 ,   大内敬一 ,   前川康治 ,   鷺坂良 ,   瀬戸淳一 ,   瀬戸恵一 ,   銭谷喜四男 ,   渡辺和三郎 ,   津田敏夫 ,   山家晃洋 ,   当麻忠

ページ範囲:P.1221 - P.1227

はじめに
 手術という非生理的条件を人体に加えると種々の代謝障害が生ずることは周知のことであるが,ことに肝臓は腹腔内最人の臓器であり,代謝の中心をなすものであるから,当然手術という侵襲での影響は最も大きいと考えられる.
 われわれは主として消化器疾患をとりあげ,術前に行なつた種々肝機能検査が術後いかなる変化を示すかについて術後3,7,14日の短期間の観察を行なつたので,その成績を報告する.なお輸血の施行が検査成績に与える影響も無視できないので,この面について検索を加えた.

噴門側切除後残胃運動機能の検討

著者: 平島毅 ,   高橋康

ページ範囲:P.1229 - P.1238

はじめに
 最近における消化管手術の進歩にともない,噴門部癌,潰瘍に対する手術も積極的に行なわれるようになり,その成績も向上しつつある.
 この際行なわれる噴門側切除術式も疾患の種類,位置により,多様であり,しかも.手術の困難性に対する術式の改良がなお検討されつつあるが噴門側を切除したのちに,残胃運動機能がようやく注目されてきた.

術後の栄養管理に関する研究—術後におけるオルニチン・アスパルテートの肝庇護効用について

著者: 高山坦三 ,   早坂滉 ,   福井四郎 ,   鴫野貞隆 ,   高田義人 ,   吉本其徳 ,   青山尚義 ,   池本憲紀 ,   坂本博 ,   武田忠明 ,   村田俊雄 ,   柳沼剛 ,   滝本祐 ,   前仏郁夫 ,   落合信彦 ,   平間道昭

ページ範囲:P.1239 - P.1246

はじめに
 近年,外科学は,その手術手技の進歩,抗生物質の発展,麻酔学の開発とともに,術前・術後における患者の病態生理ならびに代謝動態が解明されるにつれて,飛躍的に進展したが,われわれは過去10数年にわたり,手術侵襲時における生体の反応を追求してきたが,ここ数年において手術の経過を安全なものとするために,手術患者の栄養管理の面をとくに重視し,合理的な輸液法の確立を目的として,その内分泌動態,とくに副腎ホルモンの動態,アミノ酸代謝,水分・電解質代謝に関して周匝な実験をかさね,その結果を発表してきた.
 今回は,術後におけるTCAサイクルおよび尿素サイクルの異常,ならびにこれらの変動を血中NH3の消長を中心として検索をおこない,いささか知見をえたので発表する.

簡易検査法

老人の検査

著者: 村上忠重 ,   鈴木快輔 ,   熊谷勝 ,   今村一男

ページ範囲:P.1250 - P.1254

はじめに
 老人の検査といつても特殊な検査方法があるわけではなく,一般成人と同様な検査が必要であることはいうまでもない.ただ老人の場合,主要臓器の機能低下や生体反応の低下があることを念頭におかなければならない.したがつて心機能,肺機能,腎機能,肝機能などの検査が必要である.また生体反応の中核をつかさどり,生体防禦に重要な役割を演じている副腎皮質の機能検査も重要である.
 心,肺,肝機能などの検査については,しばしば成書にもみられるので,ここでは副腎皮質の機能,ならびに腎機能について述べたいと思う.

トピックス

心臓の移植

著者: 近藤芳夫

ページ範囲:P.1262 - P.1264

 心臓は古くは魂の座"the seat of the soul"と考えられ,最後まで外科医の手を免れた臓器であつた.しかしながら,その機能は2組のポンプ作用に要約されることが明らかとなり,これを他の装置で置き換えようとする要求が,近年の代用心臓(heart substitute)の発達となつた.その第1は人工心肺装置で,心臓外科の今日をもたらす礎石となつたのは周知のことであり,装置の改良に絶え間ない努力がくり返されているが,心肺機能の完全な代行はなお4〜6時間が限度とされている.
 その第2は人工心臓で,心臓の取り換えを目指すものから,機能の一部を分担し本来の心臓の負担を軽くしようとする補助心臓(booster heart)まで種々な型のものが作られことに後者についてはDe Bakeyは5例,Kantrowitzは2例の臨床例を実施し,そのニュースが新聞紙上を賑わしている現況である.第1図は人工心臓開拓者の1人としてDr.Kolffとともに研究を重ね,その後Dr.Kantrowitzのもとに加わつたDr.Akutsuの最新型の完全置換人工心臓の胸腔内埋没部分である.

可動部分のない電磁ポンプ

著者: 藤正巌

ページ範囲:P.1264 - P.1264

 磁界中にある導体に電流を流せば,導体はフレミング左手の法則による力をうける.もしこの導体が液体であつたら,ここに働く力は液体を動かしポンプ作用を行なう.これが電磁ポンプであり,ちようど電磁流量計の逆の作用を利用したものである.電磁ポンプは今まで水銀用のものがあつたのみである.
 このポンプの特色は
 (1)可動部分がない
 (2)液体のないときはポンプは停止する.
 (3)制御性が良い.
などである.

海外だより

ソ連医学の現況

著者: 渥美和彦

ページ範囲:P.1265 - P.1267

 去年の8月,東京で開催された第6回国際ME&BE学会で,ソ連医学アカデミーの副総裁のParin教授がソ連医学会を代表して,『宇宙生物学と宇宙医学とにおけるエレクトロクス』と題して,2時間余にわたり特別講演を行ない,宇宙飛行士の脳波,心電図,心音図,呼吸数,血圧,眼球運動,などを無線で遠隔測定した貴重な記録を公開し,われわれに深い感銘を与えたことがある.また双頭の犬や,心臓移植の実験,切断肢の血管吻合器による縫合など,断片的なニュースのみ知られているソ連医学の現状を正確に知りたいと考えるのは,ひとり私のみではないであろう.私は,2週間余りの短い滞在ではあるが,Moscowに滞在し,ソ連医学の一端に触れる機会を得たので,ここに簡単に紹介したいと思う.
 現在,ソ連の医学研究には,宇宙医学,神経生理学,癌の研究,人工臓器の4本の研究の柱がある.残念ながら,期待した宇宙医学を見学することはできなかつたが残りの3本の研究に関しては,一通りではあるが見学することができた.ソ連の医学研究所は全国で300以上あるが,それらの医学研究の中心となつているのは,やはり32のソ連医学アカデミー研究所であり,その中の26がMoscowに集中されている.

患者と私

誠実であれ,功を急ぐな

著者: 津田誠次

ページ範囲:P.1268 - P.1269

 我々が大学を卒業した頃は,いわゆるkleines Fachでは,医局生活1年ですでに地方病院へ医長として赴任することができた.内科,外科でも3年もすれば,ひとかどの先生としのて待遇を受けた.私も恩師のすすめで,医局に満2ヵ年も勤めないうちに,台湾総督府医学専門学校教授として台北へ赴任することとなつたが,まだ独身であつた.
 医専の付属病院は日赤台湾支部病院であつて,台湾総督府台北医院とは別であつた.赤十字病院の医長が専任の医専の教授で,台北医院の医長は兼任教授であつた.赤十字病院は内科,外科の2病棟で石造りの病室からなり,常夏の台湾では天井も高く廂もふかく床にリノリウムを敷き,涼しく作つてあつた.その頃の台湾人いわゆる本島人が患者の2/3位を占めていた.台湾人のある女性ですでに20歳を過ぎているのに発育が遅く12〜13歳の少女のような患者があつたが,主訴は幽門狭窄で食事が十分にとれず発育が遅延していた.私はその患者に胃腸吻合を行なつたところ,食事が十分に食べられるようになつて非常に患者の喜びと満足とを得た.ある日私が回診していると,その患者はリノリュームを敷いた床の上に跪いて私を拝んで礼を述べた.その時の患者の喜悦と感謝の態度とは深く私に印象づけられた.

雑感

剖検すれば病因がわかるだろうか

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.1270 - P.1270

 外科系統の先生方や病理解剖にたずさわる方々は,病因なり死因なりは,開けてみると,または剖検してみると,一目瞭然であると言われる.
 たしかに,大部分はそうかも知れない.しかし,内科系統の私たちに言わせると,そうでもない.疑念をさしはさむ余地のないほどの病変が見つかつても,それが病因なり死因なりでない,といつたケースが,しばしばあるのである.

期待される医師像

著者: 日向野晃一

ページ範囲:P.1271 - P.1271

 病気になると人間だれでも良い医師に診て貰いたいと思うものです.もし貴方が非常に厄介な病気になつたとして,貴方と全く同様の医師がいたと仮定したら,その人に診て貰いたいと思いますか? 胸を張つてYesと答えられたら貴方は本当の名医です.では良い医師とは一体なにを意味するのでしようか?

外国文献

γ—glによる輸血肝炎予防,他

ページ範囲:P.1272 - P.1275

 Grossman (JAMA 129:991,1945)が始めて予防的にγ—glを用いたが,その効果についてはNat.Res.Council(1965)の報告でもはなはだ不定である.Holland(JAMA196:471,1966)は1963年10月〜1965年1月の間の開心術施行患者のうち,少なくとも術後6カ月以上生存しfollow upしえた167名について,γ—glを与えた84名と,与えない83名とを比較して,有黄疸輸血肝炎発生をうかがつた.老人で後天的心疾患は輸血黄疸になりやすい(Rubinson,R.M.:J.Thor.Card.Surg.50:575,1965)といわれるから,先天的心疾患児,先天的心疾患成人,後天的心疾患成人をそれぞれ別に取扱つている.167名中から黄疸18名発生,うち確実17(10.2%).γ—gl投与84名中から11名(13.1%),非投与83名では6名(7.2%).γ—gl群平均33.1±1.7歳,非γ—gl群29.6±1.9歳.輸血量,血液供給源は両群に差なし.有黄疸肝炎の重症度も両群に差なし.潜伏期はγ—gl群53日,非γ—gl群51日で差なし.黄疸を呈したものは平均40.6歳輸血量29.1unitsで,年齢が進み,かつ大量を輸血されたものに黄疸が出やすいと言いうる.そうしたものにはγ—glの予防効果は認められない.

診断のポイント

膵疾患の鑑別診断(2)—慢性膵炎

著者: 若林利重

ページ範囲:P.1278 - P.1282

はじめに
 慢性膵炎は,内科では比較的多い疾患とされており,近時増加の傾向にあると言われているが,外科医が開腹によつて診断しうる慢性膵炎は意外に少ないように思われる.
 昭和31年から40年までの10年間に,臨床的に慢性膵炎として開腹したものが27例ある.そのうち,術前診断の的中したものはわづかに12例にすぎず,慢性膵炎と他の疾患(胆石症2例,環状膵1例)との合併例が3例,慢性膵炎でなく,まつたく別の疾患であつたものが12例もある.別の疾患の内訳は膵癌3例,胃・十二指腸潰瘍,低圧性胆道ヂスキネシー,腸管大網癒着症各2例,十二指腸癌,移動十二指腸,Vater乳頭部狹窄各1例である.また術後診断が慢性膵炎で,術前診断が他の病名であつたものは11例あるが,その内訳は膵癌,胃潰瘍各3例,胃癌2例,胆石症,胃炎,総胆管嚢腫術後後遺症(黄疸)各1例となつている.以上の数字から推しても慢性膵炎の誤診率はかなり高く,その鑑別診断は非常に難しいといわざるをえない.

読影のポイント

脳波の読み方—(8)頭部外傷の脳波

著者: 喜多村孝一

ページ範囲:P.1284 - P.1291

 少なくとも意識が障害される程度の頭部外傷をうけたものは,外傷急性期にはほとんど全例がなんらかの脳波の異常を呈する.
 受傷の直後にどのような脳波がみられるかは,実際にはそのような時期での脳波検査が不可能なため.なかなか知ることができなかつた.動物実験によれば,受傷後の数分間は脳波は平坦になることが知られていたが,近年になつて,ボクシングの際のノックアウトのように期待できる急性頭部外傷について,受傷の直後に脳波検査を行なう機会にめぐまれるようになり,人においても受傷の直後は脳波は著るしく平坦化していることがわかつた.これに引続いて数分以内にび漫性徐波が現われる.

手術手技

Billroth II法による胃手術について

著者: 中山恒明 ,   岩塚迪雄 ,   小林誠一郎 ,   遠藤光夫 ,   秋田善昭 ,   榊原宣

ページ範囲:P.1294 - P.1297

はじめに
 胃切除術は最近,もつとも普及した外科手術法となつた.欧米の症例と比較して,本邦では十二指腸潰瘍より胃潰瘍の症例が多いということ,および胃の解剖学的差異などから胃切除後胃と十二指腸とを吻合するBillroth I法である中山式胃切除術法が提唱され,もつとも安全にしてかつ容易な手術法として成書にも記載されている.しかし胃癌の症例のみならず,日常生活の欧米化,stressの増強などによつて十二指腸潰瘍の症例も増加する傾向にある.これら症例のうち手術適応のあるものはほとんど中山式胃切除法によつて手術されている.しかし,少数例ではあるが,胃切除後,胃空腸吻合をするBillroth II法を行なわざるをえない症例もある.そこで胃空腸吻合術にのみ問題をしぼつてこのコツについてのべてみたい.

他科の知識 顔面形成の基本手技・2

曲面の手術

著者: 丹下一郎

ページ範囲:P.1299 - P.1303

 顔面は,形成手術に際して,静止した状態(人相)ばかりでなくその動き(表情)についても考慮されるべきであり,また色調,触感(肌ざわり)なども大切な問題である.しかし本稿では,前回における「曲線の手術」に引続き,顔面を構成している曲面に注目し,それに関する問題を扱う.
 曲面の手術は2次元的な拡がりを有するものであり,曲線の手術が他からの組織補填を要しないのに較べて,外表組織の置換がその作業の主な内容である.

他科の意見

病理から外科へ

著者: 細田泰弘

ページ範囲:P.1304 - P.1305

 外科医と病理医との接触ないしは共同作業は,いろいろな形で持たれるわけであるが.日常の臨床と最も重要な関連のあるのは,hospital pathologist「病院病理医」と「生検」の問題と思われるので,それらの点を中心にして日頃考えていることを2,3思いつくままに述べたい.

講座

X線撮影の仕方(2)—臨床的なこと

著者: 木村和衛

ページ範囲:P.1309 - P.1314

はじめに
 臨床的に,よいX線写真とは前回に述べた基礎的な条件が満足されるだけでなく,病変の部位,性状およびその周囲の様相がよく現出されていなければならない.
 この仕事を順調に,かつ、すみやかに進めていくには(1)医師,看護婦,X線技師および患者自身の協力,(2)各部位の基本撮影(最初に行なうべき最低限のX線検査)を手順よく計画することが大切でいきなり高度の技術を要する撮影を行なうことは感心したものではない.撮影体位, 撮影条件などの詳細は成書にゆずるが原則として標準体位における2方向撮影が基本であることを銘記していただきたい(第1図).

カンファレンス

上交代性片麻痺

著者: 小島憲 ,   平福一郎 ,   高木常光 ,   松田源彦 ,   堀之内宏太 ,   太田怜 ,   森永武志 ,   原田敏雄 ,   吉崎正 ,   前原義二

ページ範囲:P.1315 - P.1320

 森永(司会)今回は,交代性片麻痺の患者で,入院中に頓死した例です.では担当の吉崎医官にお願いします.

症例

第1中足骨種子骨の無菌性骨壊死症の2例

著者: 倉田和夫 ,   能登省三 ,   伊藤惣一郎 ,   桜川徳次郎

ページ範囲:P.1321 - P.1323

はじめに
 中足骨部に疼痛をきたす疾患としては,Molton病,扁平足,第2Köhler病,外反母趾など種々の疾患がみられるが,私達は比較的まれとされている第1中足骨種子骨の無菌性骨壊死症の2症例を経験したので報告する.

慢性炎症性盲腸腫瘍についての2,3の知見

著者: 佐藤進 ,   渡辺哲夫 ,   大島健一 ,   田沢睦男 ,   庄司忠実 ,   奈良坂俊樹 ,   小檜山満雄 ,   小野寺耕 ,   荻生徳弘 ,   山下淳平 ,   五十嵐三𠑊

ページ範囲:P.1325 - P.1327

はじめに
 私たちは過去3年間に5例の慢性炎症性盲腸肺瘍の症例を経験している.そのあるものは,全く既往歴がなく突然.腹痛を訴えて来院し,急性虫垂炎の診断で開腹して,初めて発見されたものであり,また,あるものは,数十年来.なんらかの愁訴を持ち,諸処の病院で精査をうけたにもかかわらず,異常所見なしといわれて放置されていたもので,その経過はさまざまである.また,開腹手術の際の所見では盲腸癌との鑑別が困難な程,炎症性所見にとぼしいものもある.私たちは,この慢性炎症性盲腸腫瘍の経過,診断などについて,2,3の知見を得たので報告する.

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人事消息

ページ範囲:P.1323 - P.1323

景山直樹(京都大助教授脳神経外科)関西医大教授に就任
寺尾栄夫(東京大助手脳神経外科) 広尾病院脳神経外科医長に

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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