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食道静脈瘤の外科
著者: 杉浦光雄1 坂本啓介1 阿部秀一1 堀原一1 三浦健1 小島靖1 小倉正久1 市原荘六1 豊島範夫1 山崎善弥1 本田善九郎1 築瀬正邦1 室井竜夫1 出月康夫1 野村満1
所属機関: 1東京大学医学部第2外科
ページ範囲:P.11 - P.16
文献購入ページに移動食道静脈瘤をきたす疾患は主なるものとしては門脈圧亢進症がある.Weinberg1)は上部食道にできる静脈瘤として上大静脈閉塞,鬱血性心疾患(成人)をあげ,下部食道にできるものは門脈圧亢進によるものとしている.またPalmer,Brick2)らはWeinbergの上部および下部食道の静脈瘤以外に特発性をあげており,門脈,上大静脈の圧亢進のないものとし,350例の食道静脈瘤中13例(3.7%)にみられたと報告している.Mikkelsen3)は上大静脈閉塞例で7年の経過で上部食道静脈瘤の範囲が拡大した1例を報告し,Aufses4)は骨髄増殖性血液病で食道胃静脈瘤からの大量出血2例を報告し,Polycythemiaによる静脈瘤の進展の可能性について論じている.このように静脈瘤のできる部位によつてその原疾患が論議され,一方,門脈圧亢進に関しても組織学的に肝硬変症,肝線維症,日本住血吸虫症などあり,特殊なものとして肝静脈閉塞を伴う肝部下大静脈閉塞症(Budd—Chiari症候群)があるが,門脈圧亢進の原因として肝を中心とする門脈,肝静脈の狭窄または,血管床の減少が主因であり,どちらが先か不明ではあるが,補助的なものとして動静脈瘻があるといわれている.
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