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論説
上部胃癌の検討
著者: 卜部美代志1 山本恵一1 竹森清和1 三浦将司1
所属機関: 1金沢大学医学部第1外科教室
ページ範囲:P.41 - P.49
文献購入ページに移動最近の外科学の進歩によつて,消化器に対する外科手術も,従来困難視されていた部位に積極的に加えられるようになつてきた.しかし,下部食道・噴門癌は現在でもなお他の消化器癌に比らべ,依然として高い手術死亡率を示し,術後生存率もまたきわめて低く,満足すべき状態とはいえない.ただ,近年すべての種類の癌腫に対し,新しい癌病理学の基盤に立つて,その治療法が再検討されている.上部胃癌についても当然として,その手術方法ならびに術後遠隔成績の再検討を企つべき機運が生じつつある.また,下部食道・噴門癌はX線撮影,逆視式胃カメラ検査,abrasive bailoon法など臨床家の努力にもかかわらず,その解剖学的位置より診断のもつとも困難とされるものであり,さらに,胸腹部境界疾患として癌腫の進展の様相,手術法の特殊性などにおいて,上中部食道癌や胃体部ないし幽門部の癌とは異なる1つの独立疾患として検討を要するものとみられている.そこで,先年胃癌研究会では検索対象として上部胃癌をとりあげ,同人の間で論議するところがあつた.そのさい,私どもの教室の材料として提示したものを整理して,ここに,本文を起草した次第である(昭和39年2月現在).
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