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特集 イレウスの治療—その困難な問題点
イレウスをめぐつて診断の困難な場合どうするか
著者: 葛西森夫1 四方淳一2 松尾泰伸2
所属機関: 1東北大学医学部第2外科 2東京都立墨東病院外科
ページ範囲:P.1373 - P.1377
文献購入ページに移動急性腸閉塞症の診断は定型的なものでは比較的容易であるが,診断が困難な場合として次のようなものがあげられる.(1)腸管にある程度の通過障害があることは確かであるが,急性イレウスと診断すべきかどうか,(2)突然激痛を伴つて発症した場合,この代表的なものは腸捻転であるが,消化管の穿孔との鑑別に注意を要する,(3)急性腸閉塞症特に閉塞性イレウスの進展例で腸麻痺を合併した場合は,消化管穿孔後時間を経過した例との鑑別が困難となる.(4)麻痺性イレウスと器械的腸閉塞症との鑑別は,手術後や器械的腸閉塞症が進行した場合に困難である.(5)また.手術後には腸管麻痺と縫合不全による汎発性腹膜炎との鑑別も難しい場合がまれでない.(6)特殊な例ではあるが,新生児期にイレウス症状をきたす疾患で早急に手術を必要とする先天性腸閉塞症や腸異常回転位症に伴う腸捻転などと,必ずしも手術を要しないヒルシュスプルング病,あるいは手術が有害無益である機能的イレウスとの鑑別は時にいちじるしく困難である.
以上述べた(1),(4),(5),(6),は,病名診断が直ちに開腹手術を行なうべきか否かの決定に関連する.それに対して(2),(3),の場合はいずれにしても開腹手術を必要とする.しかし,開腹手術が必要であつても,汎発性腹膜炎かイレウスかにより,またイレウスであればその型と閉塞部位によつて開腹部位または皮切の方向も異ならねばならない.
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