icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科22巻11号

1967年11月発行

文献概要

特集 肝腫瘍外科の課題

転移性肝癌の治療—肝切除と化学療法

著者: 伊藤一二1

所属機関: 1国立がんセンター外科

ページ範囲:P.1543 - P.1550

文献購入ページに移動
はじめに
 肝転移癌の予後は,きわめて悪く,一たび肝に転移をみればきわめて短期間内に患者を死に至らしめるものであり,諸家の成績よりみても平均生存期間は4ないし5ヵ月であり,9ヵ月で全例死亡するとされている.したがつて肝転移を治癒しえたならば,原発巣は手術的切除により治癒せしめ,肝転移をも根絶しうることになり,臨床的意義ははなはだ大といえる.しかしその治療法となると,原発性肝癌をも含めてきわめて悲観的であつて,現在未だ満足すべき域に達しているとはいえない.根治的治療法としては転移巣を含めて,手術的に肝切除を行なうことであるが,肝転移の早期診断の困難なことより,根治的切除を行なえるような限局性の肝転移に遭遇することはまれであり,また広汎な肝切除例は手術侵襲が大であり,その治療成績も決して良好とはいえない.また放射線治療が肝転移に関する限りほとんど意義をもたないことより,残された課題は化学療法である.
 肝転移癌に対する化学療法については,多くの試みが報告されており,特に肝転移巣の栄養血管を通じて制癌剤を投与する局所化学療法としての肝動脈内挿管投与法については,1961年Ecker1),Miller2)の報告以来,多くの学者により追試されいちじるしい効果が認められている.われわれも過去4年間に多くの症例に対して,肝動脈内挿管投与法を行ない,その成績については,すでに数次にわたり発表してきた3)4)5)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?